こんにちは
今回は64Audio Nioのレビューです。正直言うとこのイヤホンについては発売してからかなり時間が経っており、有名なBlogerさんがレビューしていますので敢えて自分がレビューしなくても良いという気持ちだったのですが、自分が購入したロッドについては付属品が新しいものに変わっているということがわかりましたので、新しい付属品という立場からレビューできればと思っています。
結論を先に書けば、聴き比べをしたことで購入したNioの満足度がますます上がりました。元々Nioは素晴らしいイヤホンでしたが、新しい付属ケーブルになり音場がさらに広大になり音の鮮度が高く、新生Nioと言っても過言ではない程のアップグレードを感じます。但し総合的に見た目としてはややチープになっていますので旧製品のほうが高級感はあるかと思います。もちろん感じ方には個人差があるかと思いますので、旧ケーブルで一度聴いたけれど合わなかったという方も試聴をトライしてみる価値はあると思います。検討されている方は現在は円安基調ですので値上げする可能性もありますのでその前に試聴、決断されるのが良いかもしれません。
■購入動機など
まぁ有り体に言って安売りしていたこと、某Blogの影響、Twitterのタイムラインの影響、ストレス?の4つが要因ですね。一番大きかったのはやはり安売りとストレスでしょうか(笑)。ただ、聴いた音の感想で購入した動機などはどうでも良くなりました。
■パッケージとか付属品とか
今回のメインのコンテンツでしょうか、下記が公式の付属品リストです。基本的にはこの内容に準ずるのですが、実際に私が去年の11月に購入した際には別のものに切り替わっていました。
まず、ケースが茶色の糸の縫い目のあるレザーケースでしたが、私の購入したものは黒色一色の一回り小さいレザーケースです。そして付属している見た目レベルでケーブルもL字プラグ、つや消しのタイプからストレートプラグかつ艶ありケーブルに変わっています。ケースもケーブルも高級感が無くなっているので憤慨したいところですが、HP等には付属品は予告なく変更すると記載していることもあり、最初はコストダウンのため安いケーブルに切り替わったのかもしれない、泣き寝入りかと思っていました。
しかしながら最近になって64AudioのUSサイトを見てみますと自分のNioに付属していたケーブルとケースが新しいラインナップとして販売されています。そして旧付属品はLegacyケースやケーブルとして少し安く販売されているようす。Mixwaveに問い合わせてみましたがコストダウンかアップグレードかはわかりませんが、やはり付属品の切り替え時期に当たっただけのようでした。付属品の詳細はUSサイトの以下のリンクなどから確認ができます。
Protective Caseswww.64audio.com
ということで付属品、特にケーブルが切り替わったのであれば、今までのレビューなどと異なる使い勝手、音になっている可能性が高く、今回聴き比べをして音が違っていたのでレビューを書くに至りました。
まずケースですが、見た目以外の変更点は見当たりません。公式サイトで比較する限りも黒く落ち着いた印象に変わっただけという感じです。大きさも同じなので使い勝手としては全く同じ感じでしょうか。本体とケーブルとAPEXモジュールとイヤーピースを入れても若干の余裕がありますので、少し太いケーブルにリケーブルしても余裕を持って入れられそうです。高価格帯のIEMにも関わらずこのあたり全く使い勝手を考えていない会社もあるのでここは流石の64だと思いました。
例えばA8000などのケースはC106の標準ケーブルでもかなりギリギリのサイズでMMCXプラグとMMCXアシストを付けていながらも他のケーブルに絶対にリケーブルさせないぞっという意思が垣間見える様です。もちろんFinalとしてはC106が最も合う音作りだと決めているのでそれで良いのでしょうが、4.4mmプラグにするだけでもかなりギリギリなので心配になってしまいます。個人的には個別のケースにはおまじないレベルですが乾燥剤を一緒に入れたいタイプの人間なのでA8000についてはもう少し大きい付属ケースを期待したいです。
実物の使用感ですが、ケースのフタはかなり精密に作られておりフタを閉めるとき開ける時に空気が抜けたり入ったりする抵抗を微かに感じる高級感のある絶妙なサイズで作られており、見た目以上に所有感の良いケースになっています。フタを上に乗せると自重でゆっくりとフタがしまっていく感覚は上質そのものです。最初は前のケースの方が良いなと思っていたのですが、今ではまぁ黒も落ち着いていて良いなと思っています。
続いて新ケーブルですが、ピカピカしているので高級感が無い以上にビニル特有の摩擦などがあって絡まりやすいように見えますが、実際は全くそんなことは無く手触りもつるつるして手とは摩擦があるにも関わらずケーブル同士は摩擦が無く滑るようでほぼ絡まりません。若干ながら癖がつくところはあるのですが、ケーブルとしては癖が付きにくい方で十分な品質です。一見して「ああ、コストダウンだ」と思いこんでいたのですが、比べて使ってみると旧ケーブルの方はやや細くコシがあるようでシックな見た目は良いのですが若干クセが付きやすいです。スプリッタの意匠も写真でみると新型の方が安っぽいと思っていたのですが、旧型はゴム製でこちらについては甲乙付け難い感じです。コネクタ部に関しては旧製品がハリガネで形状を保持するタイプで、新型が熱収縮チューブでクセを付けているタイプです。こちらについては好みが分かれそうです。プラグ部分はロゴの無い汎用のL字プラグから64のロゴの入った特製プラグに変わったようです(もちろんOEMだとは思いますが)。こちらも最初はコストダウンに見えたのですが、実物を比べてみると見た目は好みの範囲の変化というところで、どちらかというとL字とI字がどちらが好きかという範囲の問題でした。
値段で音質や使い勝手を決めつけるのは良くないのですが実際には先程紹介したリンクを見て分かる通り旧付属品のLegacy Premium Cableは129$で新ケーブルのPremium Cableは199$になっていますので実質はアップグレードの様です。
■外観とか使い勝手とか
こちらについてはMXモジュールについてなど、様々な意見がありますが敢えて多数あるレビューを参照いただくとして、自分の気になった点として、APEXモジュールが寝フォンにかなり最適だということです。一般的なイヤホンではドライバに対して前方、後方に開放ノズルが設けられているのですがこの解放量を変更することはできません。寝フォンに最適なイヤホンに求めらている条件として、「筐体のサイズが小さい事、横からの圧迫に対して音像が乱れにくいこと、長時間付けても耳が疲れにくいこと」などが挙げられますが、まさにこのAPEXモジュールは音像が乱れず、耳が疲れにくいという特徴を持っています。ただ、IMEのサイズはやや大きめではあるのでここは人を選ぶかもしれません。ただ、ハイエンド帯のIEMは価格以上に本体も大きい傾向があるのでその点はかなり小さい方ではあると思います。
■音質とか
基本的にはケーブルの聴き比べをメイン記載したいと思います。
○環境
M17DC(TankSet)AppleMusic→付属ケーブル→Nio(MX)→SpiralDot++
MBP15 Late2013(BigSur) AppleMusic→USBISO→E50→自作オーグライン(bal)→L50→3.5変換→付属ケーブル→Nio(MX)→SpiralDot++
○ファーストインプレッション
新ケーブル:非常に広大な音場と空間表現の秀逸さが光る価格に見合う素晴らしい音。
旧ケーブル:新ケーブルと別物の音、音の重心が低く繊細な音の表現が得意。
○帯域バランス
気持ちの良い弱ドンシャリ〜ドンシャリバランス、好みとしてはMXとM15の間がほしいと思った。
新ケーブルと旧ケーブルで帯域バランスの変化はほぼ感じなかったが、旧ケーブルはほんの少し空間が狭いため低音が描写空間全体に広がりやすいためほんの少し低音が強いと感じやすい。
○音色
新ケーブル:やや寒色よりだが概ねニュートラル、音の鮮度が高く彩度が高いビビットな音色、音のダイナミックレンジが高い、静寂さの表現もある程度は秀逸。
旧ケーブル:やや寒色よりのサウンド、すこし乾いた音色が特徴で抑揚に左右されない冷静な音色、若干俯瞰的にみるような音色で静寂さがあり新ケーブルと比べるとややモニター寄りの表現と思える。
○音場
新ケーブル:音像の近さ、音の重心は標準的でお手本のよう、上下左右共に音場が広大で正直頭内定位としては最大級と言っても過言ではないと思う。前後も価格帯に見合うほど十分に広く申し分ない。
旧ケーブル:音像がやや近く、音の重心は新ケーブルと比較してやや低い、左右の音場は広いが上下前後の空間も新ケーブルに比べれば狭い、但し、価格帯としては十分に優秀な部類。一方で音色がやや冷静なのでクラシックやJAZZなど俯瞰的かつ楽しく音楽を聞きたい場合等に向くように思う。
○定位、分離
新ケーブル:両方共に価格に見合う素晴らしい定位と分離で音の広がりとエッジが明確かつ濁らずわかりやすい、楽器だけでなくボーカルの主旋律が追いやすいのでモニターとしても使えると感じるレベル。
旧ケーブル:両方共に良好ではあるが、やや音場が上下に圧縮されているため上下の分離は若干劣るように感じた。
○解像度
価格に相応しい素晴らしい解像度。録音の粗まで見つけるような残酷さは無く、あくまでリスニングライクに粗を消してくれている感がある。新ケーブル、旧ケーブルを比べるとやや新ケーブルの方が解像度が高い。
○低域
量感はMXモジュールによってが大きく変わるが、M15,M20は低音がやや多いが、MXは少し多い程度となる。個人的にはM15とMXの間、MXよりも低音が少ないモジュールもほしいと思った。低音が少ない方はAPEXを付けず開放させれば良いようにも思うがAPEXモジュールはダストフィルターも兼ねているようであまり良くないと思われる。
新ケーブル:価格帯としてはやや低音のスピード感アタック感、余韻の残り方の表現に不足を感じる印象がある、一方で空間表現の秀逸さからかどの様な量感でも低音が別帯域に被ることが無く、見通しが良い。
旧ケーブル:新ケーブル同様でやや表現力に不満が残るが、やや低音が
○中音
新ケーブル:量感が弱いが、表現は極めて秀逸で中高域にかけて楽器や声の全てを空間に描写しようとする気迫すら感じる。このビビッドな表現は特に中高域に及ぶためこの帯域の鮮烈さがほしいのであれば新ケーブルが合う。量感に関してはボーカル等の歌声をメインにしたい場合にはMXモジュールなど低音を少なめに調整した上でイヤーピースなどをボーカル重視のものに変更すると良い。
旧ケーブル:基本的には新ケーブルと同じ方向性ではあるが音像がやや近いため迫力がある、楽器に比べてボーカルの音像は高くまるでスポットライトが当たった様な印象を受ける。ボーカルの音場を重視する場合はこちらのほうが好みという人もいるかもしれない。一方で解像度や艶感などが新ケーブルと比べると弱いため、その点は物足りないと感じがちかもしれない。
○高音
新ケーブル:中域同様に秀逸で高域の繊細な表現を余すところ無く出し切るような気迫がある。量感としては十分で伸びやかで綺羅びやかさもある。女性ボーカルのサ行は刺さる曲では若干刺さる。旧ケーブルと比べると相対的ではあるが音が明るすぎると感じる人もいるかもしれない。
旧ケーブル:新ケーブルと同様の傾向ではあるが、高域の音像の重心が新ケーブルと比べると低く、上下でも天井の抜け感が気になる人もいるかもしれない。量感についても概ね同じではあるが相対的にやや明瞭なのでサ行も刺さりがちと感じる、また全体の音としてやや暗いという印象を持つ人もいるかもしれない。
●F特性グラフ
○気になったこと
この様にケーブルの仕様変更音は確実に変化したと体感しているのですが、この当たりは個人差もありますのであくまで一見解として理解いただければ幸いです。一方で音以外の部分では、購入したのは11月と5ヶ月ほど前になりますが、まだ公式サイトは旧付属品のままです。サポートに確認した際には伝えたのですが、まだ更新されていないようです。AKGのK3003の製造国が中国に変わった時にも公式サイトはオーストリア製とずっと記載していた件は有名な話ですが、予告なく変更する分には仕方のないことかもしれませんが、付属品が変わって5ヶ月間そのままというのは少し気になります。
○所感
まぁよくよく考えれば旧Premium CableがLegacy Premium Cableに変わり、新たなPremium Cable が販売になったということは旧ケーブル所持者はアップグレード先として499$のPremium Silver Cableと199$の新Premium Cable が追加されたということでもあります。今回新ケーブル聴き比べた感想としては変更する価値はあると感じたことです。また、新ケーブルに切り替わる前にNioを試聴をしたけれどあまり好みに刺さらなかったという人も新ケーブルに切り替わった今であれば再度試聴し直す価値があると思いました。もちろんヘッドはそのままですので別物とまでは行きませんが、かなりアップグレード感のある変化ではあります。
当然ながらNioは購入した際に標準のPremiumCableから個人制作の高級ケーブルから中華のフラグシップケーブルNiceHCKのSpaceCloudなど様々なケーブルへ変更することをトライはしたのですが、見た目の直感に反して標準ケーブルが一番良く不思議な気持ちになりました。今回、FFさんから旧ケーブルをお借りすることができて、Nioの付属ケーブルの良さを認識できた次第です。しんちょさんありがとうございました。
■結論
聴き比べをしたことで購入したNioの満足度がますます上がりました。元々Nioは素晴らしいイヤホンでしたが、新しい付属ケーブルになり音場がさらに広大になり音の鮮度が高く、新生Nioと言っても過言ではない程のアップグレードを感じます。但し総合的に見た目としてはややチープになっていますので旧製品のほうが高級感はあるかと思います。もちろん感じ方には個人差があるかと思いますので、旧ケーブルで一度聴いたけれど合わなかったという方も試聴をトライしてみる価値はあると思います。検討されている方は現在は円安基調ですので値上げする可能性もありますのでその前に試聴、決断されるのが良いかもしれません。
また、中古商品を買われる際はどの付属品が付いているのかを含めて試聴、確認すると良いかと思います。
■Appendix
〇測定環境
ハードウェア:Apple Macbook pro 15 Late2013 BigSur11.6.4
ソフトウェア:REW V5.20.5
INPUT:Scarlett Solo XLR (VXLR+)192KHz24bit
OUTPUT:ADI2DAC fs (3.5mm IEM端子、DJ44C併用)768KHz32bit 0dB
カプラ:IEC711クローン 刻印( IEC60318-4 Type E610A)※100〜10KHz用
イヤーピース:AET07 Mサイズ
〇測定パラメータ
入出力バッファ512K、Acoustic Reference
出力音圧レベル:−12dB
Length:2M(10.9sec) 、192kHz、0〜20,000Hz