ゆるふわオーディオ日記

気に入ったイヤホン、ヘッドホン、アンプ等のオーディオ機材のレビュー等を思うままに書いています。ゆるキャラ、モフモフ、ポフポフ、ふわふわが大好きです。

レビュー:TINHiFi T1S 結論:低音描写力が素晴らしい3000円台ベリリウムコートの音色(提供:HifiGo様)

こんにちは

 

今日はタイトルの通りHifiGo様より提供いただいたTINHiFiのエントリークラスの1DDイヤホンT1Sのレビューになります。

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要約

ベリリウムコートドライバにコストのすべてを注ぎ込んだと思われる機種で、3千円台のエントリークラスではリケーブルなどによって圧倒的な低音の描写能力を発揮する玄人向けのリスニングイヤホンです。中低音が強い機種なので人を選びますが買ってそのままの構成で使うのではなく、標準のケーブルやイヤーピースを交換してドライバの再生能力を活かしつつ、好みの音色に寄せることを楽しめるイヤホンです。商品コンセプトとして近いのはNICEHCKのDB1やCCZのCoffeeBeanですが、DB1がナチュラル系の弱ドンシャリな音色に対してこのT1Sは低音重視のズンズン系で量感と質感良い低音を求めている方に良く合うイヤホンです。DB1以上に本体が軽く小さく装着感が極めて優秀なことも素晴らしく、低音の質感はCoffeeBean以上と、装着感と低音とカスタマイズ性を求めている人にはおすすめできます。

TinHiFi T1s HiFi Earphoneshifigo.com

 

動機とか

NICEHCK LoftyやTRI Meteorなど低価格のベリリウムDDイヤホンが多数登場するなかで、ほぼ最安に近い価格のベリリウムコートドライバを採用していることが気になった為です。
TINHiFiと言えば私の中ではP1 PlusやP2 Plusといった平面駆動ドライバの先駆けとなったメーカーという印象ではあったのですが、A10K以下のT3Plusなどバランスが良い素晴らしいイヤホンを多数出しているメーカーで、このメーカーがベリリウムコートのドライバを使うとどんなチューニングをしてくるのだろうか?っと興味を持ったことも理由の一つになります。

 

スペックとか

www.tinhifi.com

いつもどおり、このあたりは公式サイトを確認していただくほうが確実ですしリンクをのせておきます。特筆すべきはやはりベリリウムメッキエリア98%以上の振動板を採用していることでしょう。

外装とか

パッケージ

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上記が届いたパッケージの写真なのですが、P1 PlusやP2 Plus、T3 Plusのどれよりも綺麗でオシャレなデザインのパッケージで驚きました。デザインだけでなくダンボールなどの紙の質感も良く百円均一のイヤホンなどを使っていた人からすればこのクラスの出費でも高額であることを考えるとかなり良いユーザー体験ではないかと思います。

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ただよくよく見るとパッケージの内部の箱はT1plusになっています。気付かなければ良いのですが気付くとちょっと戸惑います。どうやらT1SはT1plusの後継機の様でパッケージの再利用と思われます。

付属品

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付属品はこんな感じでイヤーピースが2種類、サイズ違いで3セット、計6セットと、付属の3.5mmステレオミニジャックのケーブルが付いています。この値段帯であれば十分すぎる付属品だとは思いますが、残念ながらイヤーピースについてはどれも私にフィットしなかったです。あまりコストをかけることは難しいですが、イヤーピースについてはTypeEの様にもうすこしサイズ展開を多くしてほしいところです。

筐体

筐体について特筆すべきはやはりその本体の筐体サイズでしょう。かなり小さい薄いことはもとより本体の重さは実測2.55gとかなり軽量です。本体の内部が透けて見えますが内部の構造はすっきりとしておりダイナミックドライバに配線されている様子や、前方後方に空いたベントが見えます。価格も価格なのでかなりシンプルな構造が見て取れます。この薄さのおかげもあってこのイヤホンの寝フォンのしやすさは抜群です。音色の傾向は前述の通り低音が強いのでその傾向が好きなのであれば寝フォンとしては最高のつけ心地のイヤホンの一つと言って良いと思います。f:id:el_snow:20220722153135j:image

筐体の刻印もT1Sでは無くT1plusになっています。

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ケーブル

付属のケーブルは最低限度のものだと言わんばかりの見た目と使い勝手です。使う分には最低限度の機能はありますが絡まりやすく、タッチノイズもあります。ケースも付いていないのですが、ケーブルをまとめるタイや、ケーブルスライダが付いているのでこのクラスとしては使いやすさは十分です。本体はQDCタイプのリケーブル可能な仕様なので、音質や絡まりやすいケーブルが苦手なのであれば変更する方が良いかと思います。

音漏れ/遮音性

イヤーピース部分を両手で塞ぐと音圧がだいたい1/3ほどになりますので、遮音性、音漏れはある程度はある感じですが、大きくは無いという程度かと思います。

その他、総評

概ね4Kという価格の中では平均より豪華な付属品と品質かと思います。特にパッケージの品質が素晴らしいのでこの金額での開封体験としては最高に近いと思います。

 

音質とかf:id:el_snow:20220722152828j:image

〇ファーストインプレッション

ケーブルは標準、イヤーピースは装着感が良いSpiralDot++を付けてM17とBTR7で聴いたのですが圧倒的な中域〜低域の量感に圧倒されました。強すぎる低音によって他の帯域の音色が細くなり、暖色系の音色も相まって全般的に音が曇っていると感じます。KZのESXの低音の量感をそのままにぼやけさせたような音色で、とても4K近くするイヤホンとは思えないバランスです。一番近い帯域バランスだと感じたのは100円均一の中の優秀な方のイヤホンで、4K付近のIEMタイプの優秀なライバル機種としてはモニターサウンド水月雨Moondropの竹CHU、ドンシャリ系のリスニングサウンドとしてはCCAのCRA+などがあるのですが、バランスの良さでは比べるまでもないです。中低域の厚みが凄いのでそれらの帯域が重視される音楽や、ゆったりと低音を聴く用途専用とも思えました。

エージングとか

ファーストインプレッションで「流石にこれはちょっと」と感じたのでベリリウムコートDDなこともあり音が落ち着くまでエージングさせることにしました。エージングについては諸説ありますが実際に手持ちのLoftyやA8000などのベリリウムを使った振動板のイヤホン2年ほどのエージングによって音が変わり、試聴機などと比べるとかなり音が違います。

エージングについては合計400時間ほど自分の視聴曲プレイリストをループ再生させました。当初はこのように長い時間エージングさせるつもりは無かったのですが音の変化が少なく、どうしようもないかと思って諦めようかと思ったところ3日ほど前から大きく変化があり中域の曇りがだいぶ晴れました。すべてのT1Sがこの様に長い時間のエージングが必要なのかはわからないのですが、少なくともエージングの効果はあるイヤホンかもしれません。

ちなみにエージング方法については諸説ありますが、私は自分の視聴曲のプレイリストを使うこと、そして湿度の変化が大きい場所に曝露させて行っています。持論としてはエージングの多くは稼働部品の動作による劣化もあるとは思うのですが、紫外線による外装や筐体の変化(ヘッドホンの場合)、温度変化、そして汗などの湿度による樹脂フィルムの伸縮などの影響などが考えられ、少なくとも自分が良く使う環境になじませるという効果が最も大きいとも思っています。なので、今回は放置してならしっぱなしにしたのですが普通に使用してエージングさせると400時間もかからずもう少し早くエージングが進むのではないかと思います。

 

〇環境とか

価格を考慮してiPhoneのLightning to 3.5mmTRRS変換やBTR7をメインに低価格な環境で試聴しました

iPhone12 ProMax  -> A1747-> 標準ケーブル-> T1S -> SpiralDot++

Xaomi 11T Pro -LDAC-> BTR7 -標準ケーブル-> T1S -> SpiralDot++

M17 -標準ケーブル-> T1S -> SpiralDot++

AGPTEK A19X ->  標準ケーブル -> S12 -> SpiralDot++

 

○帯域バランス

中音低音〜低音の量感が強くその帯域の音色が際立つバランスです。エージングでかなりマシになったように感じますが、箱出しのバランスでは低音が強いと感じたKZ ESXでさえこれに比べれば普通と言えるほどイカれた量感の低音で、中低音の張り出し方は100円均一のイヤホンのサウンドバランスと紙一重と感じました。尚、中音〜高音域までのバランスは概ねフラットで高いシンバルなどの音色も聞き取れます。

 

○音色(寒暖、明暗、響き、固液)

暖色よりのサウンドです。明るさは普通程度で、ベリリウムらしい暖色かつボワつくようで締りがある独特の低音の響きと、キラキラした金属的な高音域の音色を持っています。この価格でベリリウムメッキのダイナミックドライバらしい音色を楽しめるのは素直に素晴らしいように感じました。

○音場(広狭、重心、遠近)

音場については一般的な広さです。左右も上下も奥行きについても一般的です。この価格帯で狭いと感じる部分が無いのは十分な再生能力があるように思います。重心としては少しボーカルは遠い感じはありますが全体としては標準的な重心かつ近さです。

○定位、音像

音像と定位に関しては4K前後の価格の競合機種の竹CHUやCRA+を考えると悪いように感じます。解像度の低さと分離の悪さなどからくる音の滲みと境界のぼやけは楽器の音色や複数ボーカルの位置や音像を掴もうとすると気になってしまいますのでそれを目指したイヤホンではないのだろうと思います。

○解像度、分離

定位、音像でも触れましたが解像度や分離は競合製品竹CHUやCRA+を考えると悪いです。定位についてもそうなのですが最近の4K前後の価格の製品が圧倒的に素晴らしいのであって、数年前の3K前後の機種をイメージすればそれほど悪いとも言い切れませんので、CRA+や竹CHUなど最近の機種を持っていないのであれば十分におすすめできるかと思います。

○低域の質について

このイヤホンの一番の売りの部分だと思います。中低音の張り出した100円均一イヤホンっぽい音色さえ許容できれば、低音の響きはまさにベリリウムコートドライバです。ピアノの低音からティンパニー、ウッドベースやドラムなどの楽器の低域には独特の豊かな響きがあり、その余韻や音の広がり方が上品です。ただ、代わりと言っては何ですが、低音のアタックやリリースはやや弛れている印象があり、スピード感が失われています。近い音色の響きとしてはCCZのCoffeeBeanなどが浮かんでおり、響きの質としては上位互換に近いところはあるのではないかと感じます。この値段でこの響きを安く味わえることにどれだけ価値を見いだせるかがこのイヤホンの音質に関しての価値を決めるポイントになるのではないかと思います。

○中音の質について

中低音の張り出し方が100円均一のそれに似ていることからやや品が無いと感じやすいですが、聴き込めばそれほど悪い印象はありません。若干ながらボーカルなどの音が遠いと感じてしまうのは欠点かなと感じます。一方で迫力が少ないことからゆったりとした上品な低音を聴くということを主体にして中音は添えるだけっと考えればそれでまとまりがある音色だと感じます。

○高音の質について

高音だけの質を言えば悪くはないのですが基本的には中音と同じで低音とその響きを楽しむと考えればこの帯域はおまけだと言えます。ベリリウムを使ったドライバに期待される派手な量感の高音のきらめきはありませんが、音色の質としてはその系統です。イコライザなどを使い中低域を下げれば響き方を残したまま量感を調整できるので良いかもしれません。

○ジャンルの得意不得意

やはり低音の響き方、音の帯域バランス、そのすべてがゆっくりとしたリラックスできる音楽ソースに合うように思います。本体の筐体が極めて装着感が良いことからも就寝前に寝フォンに使ったりするようなジャンルの音楽に合うように思いました。解像度の低さもその様な用途を考えると理にかなっている様にも思えます。

 

●F特性グラフ

公式サイトの周波数特性

上記が公式サイトに記載がある周波数特性なのですが、物凄いフラットで驚きました。けれどよく見てみるとグラフの上限が200dBというとてつもない値になっています。こちらで取り直してみたグラフがこれです。

T1S Average(LRx2)

よくよく比較するとグラフの概形はそっくりです、低域を除けば。っということで見て分かる通りかなりグラフ上も低域が強いことがわかります。

TINHiFi T1S vs KZ ESX

上記は先日紹介しましたベース音しか聴こえないと言ったESXと比べています。ESXと比べても中低域が張り出しているのがわかります。代わりに低いところのサブベース帯域は弱いですね。

○アンプによる印象の違いについて

アンプを変えても概ね印象は同じです。BTR7やM17などアンプに応じて解像度は上がっていきます。特に低域の音の締まり具合などはM17クラスまで上げていくとベリリウムの素晴らしさを実感できるほどの音色になっていきます。再生環境が貧弱であるほど良い点が見つかりにくい難しさのある玄人好みのイヤホンだと思います。

○ケーブルによる印象の違いについて(注意)

幾つかBTR7でリケーブルを試してみた感想を書きますと

〇NICEHCK LitzPS 4.4mm

全体的に解像度が上がり1枚ヴェールを履いだような感覚を味わえます。特に超高音域、超低音域の量感が補われて全体の音色のバランスがよくなる方向に変化します。中低音の音域が強いところは勿論変わらないのですが、ボーカルが近くなることや100円均一の洞窟感が薄れることから値段は張りますが、ベリリウムらしさを感じられるのでおすすめのリケーブル候補だと感じました。

〇JSHiFi Shadow 4.4mm

中音の張り出し感が消えて、音が纏まり、聴きやすいサウンドに変化しました。LitzPSの様にサブベースや高音が煌めく様な方向性ではないのですが、低音の存在感が和らぐことと、Shadowらしい音色の統一感が出て、聴いていてリラックスできるサウンドがより極まって相性が良いと感じました。当然ですが標準ケーブルよりは解像度が上がるのでコストを変えずに音色を変えたいという場合は良さそうです。

〇Tripowin Jelly 4.4mm

今回は大きな化学反応が起きることもなく順当に解像度が上がり、左右の音場が広がり音色に艶感と開放感が出ました。ボーカルもぐっと近くなったことに加えて音色が外連味の効いた華やいだ音になるので効いていて楽しい音色です。音色の変化に迷ったらコレ!!みたいな感じで使っているJellyですがこれもまた好きな音色だと感じる人が多いのではないでしょうか。

他にもCooyinの2000円ほどのケーブルなどでは低音の質の良さをハッキリと認識でき、音の重心が少し下り、音色が近づくこと、解像度がやや上がり迫力が出たりしましたので、付属ケーブルはやはり音質としては最低限度のものが付いていると思います。ケーブルでこのやんちゃな特製を変えてやるというのも一つの楽しみ方かもしれません。

 

○イヤーピースによる印象の違いについて(注意)

イヤーピースについてはかなり選び方が難しく、強すぎる中低音を下げるためにAEX50や清泉、TWS用などなどかなりの数を試したのですが、低音は下がるのでかえって中低音が目立つことになりかなり苦戦しました。結局は逆にドンシャリ型のSpiralDot++をつけてやるほうが全体のバランスが取れて良い音色になるという結論に至りました。リケーブルをしないのであれば眠たい音になるので、どのようなイヤーピースでも一緒かもしれません。

○所感

全体としてはやはりベリリウムコートの音色を格安で味わえるというところにポイントがあるかと思います。特に低音の量感が強いということはマイナスにも思えるのですが外使いでは低音が埋もれがちなのでこれぐらいのほうが丁度いいとも言えます。

装着感が良く低音が強いということでコンセプトとしてはCoffeeBeanが浮かぶのですが、寝フォンに使えるところなど雰囲気や用途も似てくるかと思います。そこにベリリウムコートが加わった癖の強い音色なのでその音色も中華イヤホンのリケーブルやイヤピの交換で自分なりの好みに寄せて遊ぶ玄人好みのイヤホンだとも感じます。そういう意味では玄人向けということでNICEHCKのDB1が最も使い方として近いイヤホンとも感じています。

一見すると最近発売された競合イヤホンと比べるとかなり厳しいかと思えるのですが、外使いで強い低音がほしいなど、癖の強い音色を探しているという用途であれば光るものがあるかと思います。

■結論

ベリリウムコートドライバにコストのすべてを注ぎ込んだと思われる機種で、3千円台のエントリークラスではリケーブルなどによって圧倒的な低音の描写能力を発揮する玄人向けのリスニングイヤホンです。中低音が強い機種なので人を選びますが買ってそのままの構成で使うのではなく、標準のケーブルやイヤーピースを交換してドライバの再生能力を活かしつつ、好みの音色に寄せることを楽しめるイヤホンです。商品コンセプトとして近いのはNICEHCKのDB1やCCZのCoffeeBeanですが、DB1がナチュラル系の弱ドンシャリな音色に対してこのT1Sは低音重視のズンズン系で量感と質感良い低音を求めている方に良く合うイヤホンです。DB1以上に本体が軽く小さく装着感が極めて優秀なことも素晴らしく、低音の質感はCoffeeBean以上と、装着感と低音とカスタマイズ性を求めている人にはおすすめできます。

〇最後に

今回レビューの機会をいただけたHifiGo様に感謝申し上げます。

TinHiFi T1s HiFi Earphoneshifigo.com

■Appendix

〇測定環境 

ハードウェア:Apple Macbook pro 15 Late2013 BigSur11.6.4

ソフトウェア:REW V5.20.9

INPUT:MOTU M2 IN1 XLR (VXLR+)192KHz24bit

OUTPUT:MOTU M2 192KHz24bit 3.5mm変換

カプラ:IEC711クローン 刻印( IEC60318-4 Type E610A)※100〜10KHz用


イヤーピース:Final TypeE Black Mサイズ

〇測定パラメータ

 入出力バッファ512K、Acoustic Reference

 出力音圧レベル:−12dB

 Length:2M(10.9sec) 、192kHz、0〜20,000Hz

 カプラキャリブレーションファイル適用、SoundCardキャリブレーション実施済み