ゆるふわオーディオ日記(blog)

気に入ったイヤホン、ヘッドホン、アンプ等のオーディオ体験を日記ブログとして思うままに書いています。ゆるキャラ、モフモフ、ポフポフ、ふわふわが大好きです。2年で400本ぐらい機材が増えてレビューBlogになりつつあります💦。アフィリエイトはレビューとかプレゼント企画の資金にさせてもらっていますニャ。

レビュー:ヘッドホンSIVGA SV021 Robin 結論:A20K Tier1 圧倒的な解像度で中高音の伸びが美しい高コスパヘッドホン

こんにちは

今日は今日はSIVGA様よりレビュー依頼いただきましたヘッドホンSV021 Robinのレビューです。レビュー記事は長いので短く結論を知りたい方はindexから気になる部分と結論のみご覧いただければ幸いです。PHOENIX同様に提供ではありますが普通のレビューと変わらず書いていますのでよろしくお願いいたします。f:id:el_snow:20221027183602j:image

結論(Abstract):A20K Tier2→1 参考価格:23,000円

SV021 Robinは中域~高域にかけての伸びが美しく単純に高音質で高品質でありながら低価格という高いコストパフォーマンスを持つ木のヘッドホンです。加えてスマートフォン直刺しにも対応できる高感度低インピーダンスで音漏れが少な目な半密閉型、ソフトな装着感という使いやさとデザインにも優れたヘッドホンな為、初めての高価格ヘッドホンとして初心者にも勧められる完成度です。さらには出力の高いアンプに繋いだ時には価格帯を超えるほどの高い解像度と音場感と華やかな音色を奏でるため、玄人にも勧められる見事なバランスです。木材という素材を使用しているためか本領の発揮には数百時間ほどの長期間のバーンインが必要な点は注意が必要ですが、価格帯の名作ヘッドホンと比べても遜色無い音質の上に個性も兼ね備えた万人に勧められる素晴らしいヘッドホンです。

px.a8.net

 

2023.02.14. 競合ヘッドホンの価格帯上昇、圧倒的に高い解像度を考慮してTier2からTier1へ変更します。

■動機付けなど

PHOENIX同様にSIVGA様からレビュー依頼が動機になります。概ねPHOENIXと同じ様な動機付けで名作ヘッドホンがある中でのNEWチャレンジャー(?)がどのような音作りをするのかが気になった為です。

el-snow.hatenablog.com

 

SV021 Robin(以下Robin)は23000円の密閉型なのでこのコンセプトのライバルヘッドホンはこれらでしょうか。

 

値段は少しだけ異なりますが錚々たるヘッドホンたちですね。正直見ただけで大丈夫かと不安になります。当然ながら木のデザインという部分のコンセプトも加えると同じヘッドホンは見当らないように思います。

ちなみにPHOENIX同様に結果としてRobinを選ぶ理由もRobinの素晴らしさも十分以上に理解できたので今回のレビュー機会は幸甚の至りでした。

■SIVGAとは

PHOENIXでの紹介と同じになるのですがハイエンドヘッドホンメーカーのSendy Audioの手頃な価格向けのブランドがSIVGAの様です。私が無知だっただけで現在まで20年以上ヘッドホンの設計に携わっているエンジニアによるブランドで、最近できたような新興メーカーではないようです。

www.sendyaudio.com

実際にヘッドホンをレビューしてみても細部にわたるヘッドホンの仕様が考え抜かれており、使い手としてコストとサウンドのバランスの果てにたどり着いたと考えるとほぼ非の打ちどころがありません。

■SPECとか

公式サイトを見ていただくのが確実ではあるのですが英語のサイトになりますので気になった点をピックアップしておきます。

www.sivgaaudio.com

まずドライバサイズですがPHOENIXなどと同じ φ 50mmです。PHOENIXの筐体の方が大きいのでてっきりドライバサイズは違うと思っていたのですが同一の様です。感度は105dB +/- 3dB で抵抗値 32 Ohm +/-15%となっており、PHOENIX同様にイヤホンと同等でスマートフォン直刺しも可能なレベルです。重さは275gでこの価格帯のヘッドホンとしては一般的です。

実際に仕様してみた感触として、PHOENIX同様にM17やBTR7などの専用アンプは全く不要でPCのヘッドホンジャックに直刺ししても十分な音量と音場感が得られます・・・っと言うつもりでしたが少々状況が違いました。良いアンプを使っても大きく変化しないPHOENIXに対してRobinはヘッドホンに対応できる大出量の良いアンプを使うほどに良くなっていきます。スマートフォン直刺しなどでも音量などが不足するということが無く十分に使えはするのですが、ぜひ良いアンプに繋いで使うこともおすすめしたい機種です。

■付属品とか本体とか

開封体験


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PHOENIX同様に23000円の機種としては圧倒的に素晴らしい開封体験に驚きを隠せませんでした。

第一にヘッドホンの箱です。一般的なヘッドホンの大きさのケースですがこのクラスとしてはかなり高級感がある上質な紙材をつかった箱です。厚みがあり強度があり湿度や輸送での衝撃からしっかり守られていることがわかります。


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箱にコストをかけるなら本体や音質にかけて欲しいという気持ちもわからないでも無いですが、2万円クラスとヘッドホンのケースはチープな事が多いため良好です。実際に業務用ではない高級ヘッドホンに関しては箱を残す人も多くその点、Robinはサイズ感や質感などかなり優秀です。

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次に開封時ですが箱を開けると同時に箱の隙間から木材の心地よい香りが溢れ出てきます。部屋に広がる木の薫りがしっかりと防湿されているということを理解させられます。

〇筐体(ハウジング)

筐体は目に見える部分は全て実際の木を使っている様です。木ではあるのですキッチリと塗装がしてあり触った感じでも強度が高く。Gradoなど競合の木を使ったヘッドホンのハウジングは脆いため気になったのでわざとぶつけたり傷がつくような行為をしてみたのですが、かなり丈夫なようでちょっとやそっとでは傷がつきません。塗装面はつるつるとしており手触りも良い上に指紋が目立つという事もありませんし23Kのヘッドホンとしてはお値段以上の高級感がある様に思います。f:id:el_snow:20221027182611j:image

筐体の上部には大きなダクトが2つあり完全密閉ではなく半密閉型の設計のようです。ダクトの側面からハウジングは5mmほどの肉厚があることがわかり、見た目だけでなく木の筐体を十分に使った筐体になっていることを窺わせます。内部には1mmほど隙間がありその内側には紙素材っぽいフィルターが見えます。1mmほどの隙間があるので断言できないのですがこのような掃除できないゴミが入り得るフィルター設計は最初は良いのですがゴミが入ってメッシュが詰まると音が変わってしまう可能性があるので少し気になります(後述しますが大丈夫そうです)。

また、この穴があるためか密閉型としては音漏れは大きめな部類かと思います。実際に聴いてみると大体内側に対して2割ぐらいの音量が漏れているイメージです。

 

〇ヘッドバンド


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ヘッドバンドは柔らかめの合皮素材になっており、触った感じは内部に固めのスポンジ素材があり芯に金属のフレームがあるイメージです。ヘッドバンドの円弧は調整できないのですが10歳程度の子供から私の様な成人男性まで装着できましたので問題ないレベルだと思います。

側圧は金属のしなりだけで与える設計の様ですがPHONIX比べても弱めなので自分はPHONIXと異なりそのままつかっています。f:id:el_snow:20221027182708j:image

ヘッドバンドの長さについてはヒンジ部分との付け根にスライダが付いておりそれを調整するタイプです。

 

〇ヒンジ


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ヒンジと接触する部分、ヒンジはステンレス製っぽくさらに表面処理に高級感があります。3次元に滑らかに立体加工された金属表面やその曲げ方までもが美しく綺麗です。木筐体と金属のヒンジ共に質感も極めて高く良質なビルドクオリティです。特に手触りは素晴らしくバリ一つない金属と高級感のある木の手触りは良いヘッドホンを持っているという所有欲を満たしてくれます。

横方向に45度程度の自由度はあるのですが前後は調整できないので自由度は一般的なヘッドホンですね。またRL表記についてこの部分に記載があり、筐体には記載がないのでその点は少しわかりにくいなと思いました。

イヤーパッド

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パッドは2.5mm程度ある肉厚タイプで素材はなんとなく台所用スポンジとウレタンの中間っぽい押し心地です。最近は内側のメッシュにRLの表記が分かりやすく書いてあるタイプがありますがこちらは違うようです。恐らくイヤーパッドの形状がRとLで同じなのでコストダウンの為かと思います。この点はPHONIXは分かりやすい表記があったのです少し残念です。

イヤーパッドの外周はやわらかい合皮素材のようです。気になるのは内部外部共にイヤーパッドの耐久性ですがここばかりは使い込んでみないとわからない点だとは思いますが1か月ほど使った感じではへたりなどは無く長持ちしそうな雰囲気があります。また、交換パーツがあるかをメーカーのサイトを調べてみたのですが不明でしたのでSIVGAに問い合わせてみると、Amazonなどでは取り扱いは無いのですがAliExpressの公式ストアでの取り扱いがあるとのことです。

https://s.click.aliexpress.com/e/_DEmjYrF

価格も3000円程度+送料1000円(2022.10.26現在)とある程度リーズナブルです。ヘッドパットの交換の仕方についてはCW方向(時計回り)にイヤーパッドを回すと簡単に取り外せました。
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取り外すとドライバなども見えるようになりますね。

〇ケーブル

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ケーブルは黒色の布製1.5mでコネクタは2.5mmの2極左右両側、ジャックは3.5mmの3極タイプです。長さは2mで6.3mmは3.5mmからの変換ジャックが付いており、見た目としては十分高級感があります。ケーブルが断線しやすい3.5mmジャック側は細かな心遣いとしてバネの保護材が付けてあり耐久性に安心感があります。ヘッドホン側のコネクタ部は左右のドライバから線が繫がる両出しタイプです。とここまでは良いのですが付属するケーブルの品質はお世辞にも良くは無くこの価格帯のクラスとしては最低限度の物が付いていると考えた方が良さそうです。

具体的にはまず使い勝手的な面でタッチノイズが大きいことです。ケーブルに触れるだけで「ガサガサッ」という大きな音がヘッドホンを伝って耳に聴こえてきます。リラックスしてリスニングしているときにこのタッチノイズは興が削がれる方も多いかもしれません。もちろんこのタッチノイズ大きさは競合製品と比べても大きく気にならないという方以外は交換を前提とした方が良いかもしれません。

音色についても数千円クラスの社外ケーブルに変えるだけでも音質の変化を感じやすいかと思います。この辺りは競合クラスのSENNHEISERAKG製品も標準ケーブルでは音色としての品質が酷いことは有名ですので同等と言って良いかもしれません。この点についてはケーブルの違いについての音の違いを感じる敏感なタイプの人とあまり変化を感じない人もいますのである種合理的な判断なのかもしれません。

同様にSIVGAに問い合わせてみたところアップグレードケーブルなども取り扱いがあるようです。ただ値段は16000円(2022.10.21現在)からとかなり高額なラインナップです。

https://s.click.aliexpress.com/e/_DD8lmDX

私は2.5mmMonoオス端子toMMCXメス端子のコネクタを自作してmmcxケーブルを色々と試聴してみましたが、このタイプのケーブルは他社でも採用が多いので比較的社外品も手に入りやすいと思います。特に音質目的でなくとものでケーブルを交換したりすることも容易です。

〇モバイルポーチ

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ポーチは布製のデザインや質感の良いものが付いています。保管用の簡易的なものであまり実用性は無いと感じました。というのも何回か使ってみると閉じるための紐の2本の内1本が外に出てしまいました。道具を使えばもとに戻せるのですが、面倒ですし使う機会も無いのでそのままにしています。長期的な保管であれば湿度の管理などをした方が良いでしょうし、布袋ではそれはできません。これについては無いよりはマシ程度のものだと理解したほうが良さそうです。

〇そのほか付属品

6.3mm用の変換プラグなどが付いています。

〇装着感

個人的には良好です。特に私の耳は客観的にかなり大きいサイズなのでアラウンドイヤータイプでもPHOENIXの様に深さが無いと当たることがあるのですが、これは大丈夫でかなり良好です。

気になる点としては若干蒸れやすい点は少し気になりました。イヤーパッド内の体積が大きくないことに加えてイヤーパッドの周囲が革で封鎖されているため空気が籠りやすいのかと思います。音色は聴き疲れしにくいのにこの点は勿体ない設計だと感じますが、ただ一般的にここを変更すると大きく音響設計が変わるので難しいところです。

〇内部構造

内部のアクセスがネジ4本で止まっているだけでしたのでドライバを取り外して内部構造を確認してみました。
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内部を見ると木でできているハウジングの形状や内部配線ケーブルを確認することができます。想像以上にシンプルかつ高品位な構成で驚きました。というのも大体のA20Kぐらいのヘッドホンの内部配線がか細い安そうなケーブルが使われていることが多いのですが、かなり太くて丈夫そうな配線です。振動などで断線することも可能性としてはあるのですがこの造りであればメンテナンスなどもしやすいですし信頼性も高そうです。

本体の上部を見るとダクトの逆側が見ることができます。メンテナンスしにくいかもと言ったのですがこれであれば問題なくお手入れできます。
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いざとなればメッシュも粗いため外してしまっても大きな影響は少ないかもしれませんね。

〇その他、総評

レビューの為に自身の持つヘッドホンのコレクションを再確認したり、店頭などに競合と言えるものがあれば購入も視野に確認しに行ったのですが23Kという価格でSV021以上に完成度が高いと言える造りの競合ヘッドホンは無いと言えるほど高品質です。

これはヘッドホン市場が定番商品がの音質が安定して良いことに加えてユーザーの変化などで長期的な市場のダンピングが続いているからと考えられ、実際に長期商品でも使われている部材やパッケージなどの品質は右肩下がりだと感じます。それにたいして久しぶりにRobinは価格以上の品質を持ったヘッドホンだと感じます。もちろん音質が付いてきているというのは当然ではあるのですがそちらは次の項目に譲るとしてそれ以外の品質は素晴らしいです。

新興メーカーであれば音作りはちゃんとできても細部のパーツの選定や耐久性などのヘッドホン全体として理念みたいなものが一貫していないことが多いのですが、長年ヘッドホン開発に携わっていたSIVGAの開発者がユーザー支店の細かい点も見越した一貫したモノづくりをしたのだと理解させられました。

■音質について


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〇想定競合機種

SV021 Robinコンセプトは「密閉型、低インピーダンス、リスニング」と捉えると直接市販の競合機種は見当たりませんでしたが、MDR-1AM2やT3-03、HD595やHD300Pro、K553、DT770Pro32Ωなどが該当し、特にDT770Pro32Ωは実際に所持して愛用していることもありそれを競合機種として年頭に置いて記述したいと考えています。

〇ファーストインプレッション

2万円が販売価格の開放型ヘッドホンの音色してはまずまずという印象でした。とは言え、上記の定番の名機ヘッドホンなどと比べると解像度や音場感、音色どれをとっても優れる部分も見当たらなず、中高音よりでデザイン重視の中庸機という印象でした。

ファーストインプレッションについては過去の記事の方が詳しくので詳しくはこちらをご覧ください。当然その後に音漏れの少なさから密閉型などとも比べるべきだと認識を改め、PHOENIX以上に良い意味で裏切られることになるのですが(笑)。

el-snow.hatenablog.com

エージングとか

基本的には実際に使用しながら100時間ほど、AGPTEKなどを使ったプレイリストの無限ループにて1000時間程度鳴らし込みました。また、無限ループでは音量を大きめ、小さ目と日によって音量は変更していますし、湿度の多い環境や少ない環境など場所も変更するようにしています。購入してから鳴らし込んでいない時間は部屋の中の大気に曝露させています。というのもヘッドホンは温度や湿度などの変化になじむとも言われているのでその点も意識しています。

肝心の音の変化ですがエージングを肯定したいわけでは無いのですが、500時間を超えた頃には中高音は伸びやかに、音場感は開放的に、解像度も上流に応じてかなり上昇しました。そのため前述した定番機と比べても良いかもしれないという気持ちになり、少し時間がかかりましたが今回のレビューの記事になりました。

〇環境とか

M17 -LDAC-> XD05BAL(OPA828) -標準ケーブル-> SV021 Robin 

M17DC(TankS4) -標準ケーブル-> SV021 Robin

11Tpro -LDAC->BTR7-標準ケーブル-> SV021 Robin

GV301Q -標準ケーブル-> SV021 Robin

iPhone12 ->A1749 -> 標準ケーブル-> SV021 Robin

後述しますが上流による音色の影響もある程度は受けやすいのですが、一旦は一般的なDAPと一番近いであろうBTR7のHゲイン環境、標準ケーブルを基準としています。

帯域バランス

一般的なヘッドホンと比べればやや中高域寄りではありますが弱ドンシャリの聴き心地が良い帯域バランスです。いわゆる聴き心地としては弱ドンシャリですがハーマンターゲット的にフラットに近いともと言われるK812やHD800などの帯域バランスに近いのでかなり個人的に好みのバランスです。

その上で中高域が伸びやかなのでこのヘッドホンならではの個性も感じます。

音色(寒暖、明暗、響き、粘度、厚み)

ほぼニュートラルな暖かさで、明るく明瞭なサウンドです。密閉型ではあるのですが上部に空いた半密閉型なためか、密閉型とは思えないほどの抜け感があり音色の傾向としては開放型に近いと感じます。出力の高いアンプを使うと筐体による反響感と、適度な抜け感が絶妙に合わさり心地よいです。

粘度はやや乾燥したサッパリめのサウンドですが低音は想像以上に深いところまで出るので全体のバランス感覚が絶妙です。全体としてはよく言えば軽快ですが、悪く言えば重み不足を感じるかもしれません。音の厚みは標準的で価格帯を考えれば一般的です。

音場(広狭、重心、遠近)

音場はこの価格帯の密閉型としては前後上下左右共に広めです。実際には半開放(半密閉型)なのでこのあたりの評価は難しいですが、音色の傾向が近いと感じたHD300ProやDT770Pro32Ωなどの密閉型と比べれば確実に広いです。特に左右に関してはかなり広い部類に入るかと思います。

音像の重心は耳の位置の高さよりやや上で音色はやや近いです。半密閉の機種があまりないため競合機種と比べにくいのですが一般的な音場よりやや高めで解放感がある音色かと思います。

定位、音像

後述しますが上流のアンプの影響を受けやすい様で評価や好みが分かれやすい部分だと感じています。

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定位や音像はこのクラスとしては十分な正確さと音像の掴みやすさです。競合の名機達と比べる際には貧弱な出力環境では定位は緩く感じるかもしれません。しかしながらM17やXD05balなどの高出力環境で鳴らすと、音像が締まると共に定位がしっかりとするので競合の名機達と比べても遜色ないどころか上回る素晴らしさを持ち合わせています。上流に左右されるのは残念ではある一方で、伸びしろが大きいことは歓迎すべきですし、当然AGPTEKなど貧弱な上流と言っても良い環境でも最低限度の性能が発揮できているのは素晴らしいチューニングです。

解像度、分離

こちらも後述しますが上流のアンプの影響を受けやすい様で評価や好みが分かれやすい部分だと感じています。

まず、概ね出力が貧弱と言える環境では解像度、分離共に競合と比べても値段なりかやや悪いという印象です。特に低域にかけての性能が気になります。それがBTR7になると値段なりかやや良い、そしてM17やXD05balと言った高出力の上流と組み合わせる素晴らしい解像度と分離性能に様変わりします。

特に素晴らしいのは中域から高域にかけての解像度で価格帯を大きく上回る性能を郵政ていると感じます。エージングが少ないタイミングでは解像度もイマイチでしたが一か月ほど使った今では倍程度の価格帯でも渡り合えるほどの解像度であったり、同価格帯でも圧倒的に鳴らしずらいヘッドホンとも渡り合える能力を有しています。

低域の質について

半密閉ということもありますが見かけ以上にサブベース帯域の量感はしっかりとしています。ハウジングの響きが乗っている傾向はあるのですが密閉らしさはあまり大きくありません。立ち上がりやリリースも十分でスピード感もあって価格を考えれば十分な品質です。若干ベース帯域のチューニングは一般的な競合ヘッドホンと比べて控えめではありますが十分ではあると感じます。

DT770Proに対しては量感やパワー、質感共に一歩劣ります。悪くないもののウッドベースの暖かい響きやティンパニーのエネルギー感など低音の表現について比べてしまうとやや軽く感じるためこのヘッドホンに求めるものでは無いのだと思えます。とはいえ中高音寄りのAKG K553と比べるとこちらほど低音の量感を割り切っておらず十分な質と量を持った適度なバランスと感じます。

中域の質について

量感は十分で素晴らしいのは解像度とその音の解放感です。前述したように勿論上流のアンプ性能にもよるのですが、明瞭かつ元気の良い中域表現に音の隅々まで表現しようとしてると言わんばかりの緻密な表現は価格帯の競合ヘッドホンを軽く凌駕します。

若干乾いた音色で近め音像ですがややボーカルの重心は高く迫力も十分で半密閉とは思えないほど中音の響きは籠らず抜けて行くので軽やかです。ただし密閉型のエネルギー感を期待すると肩透かしかもしれません。その点はここは好み次第だと感じますが個人的にはちょうど良い塩梅で見事なバランスだと感じます。

低域の項目で述べたようにベース帯域が控えめなチューニングなこともあり付帯音が少な目で全体に中域がスッキリとした印象を持つことも個人的には好印象です。

さらに各楽器同士の分離と解像度も高いのでこの価格帯随一と言って良いほどの表現力を持っていると感じます。この中域~高域の表現はこのヘッドホンの醍醐味なので可能なのであれば上流を整えた音も聴いてみて欲しいと感じるほどです。

高域の質について

量感も十分ながらサ行などの歯擦音が刺さりも少なくその上で超高域のシンバルやチャイムといった楽器も自然な音色で鳴らしてくれます。音場の広さが相まって開放型の様に広い空間にしっかりと存在感がある楽器が綺麗に浮かび上がり、軽やかに抜けていきます。

特に高音は伸びが良く、特に女性ボーカルなどはの表現は解像度の高さも相まって23000円という価格を忘れてしまうほどに美しく、明瞭さも相まって晴れやかで素晴らしいです。

ただし、エージング前は量感はあるのですが詰まった印象があり抜けきらない音色という印象だったので、エージングに加えて上流の機材の準備などなかなかに使用者に要求を突きつけてくる点は気になりました。もちろんその状態ではDT770Proや他の開放型の同価格帯のヘッドホンと比べても正直微妙と言えるレベルでしたの注意は必要です。

ジャンルの得意不得意

比較的どのジャンルも合うヘッドホンです。ただやや明るく密度感が必要とされる低音の表現は控えめなこともあってベース帯を含む低音を主体に聴くような楽曲はあまり合わないかもしれません。もちろん低音も出てはいるのですが表現力を要する楽曲は他のヘッドホンの方が良いかと思います。また、クラシックなど一曲の長さが長い楽曲も本体が蒸れやすいこともあってあまり合わないように思いました。

■相性について

アンプ(上流)による印象の違いについて(重要)

圧倒的に音量は取りやすくイヤホンレベルなのでiPhoneの純正Linghtning3.5mmアダプタA1749でも十分と言って差し支えありません。

然しながら音色と解像度については上流のアンプの実力を如実に表しておりBTR7でもやや不足する印象があります。実際にBTR7に繋いだDT770Proと比較すると全体としてはSV021 RobinとDT770Proでは様々な項目で一長一短あることから甲乙つけがたいと感じます。

それをXD05BalやM17のDCモードに交換すると中高音の解像度が飛躍的に伸びてこのヘッドホンの醍醐味を感じさせます。このため、PHOENIXと異なりより良い環境の上流を準備するとより満足度があがります。

結果として環境が整った上でエージングをしっかりした人ほど評価が上がるのですが、上流が整った人はこの価格帯のヘッドホンで満足する人は少ないためなかなかに難しい要求だと感じます。ただ購入に際しては先にこのヘッドホンを買えば上流を整えるほど満足度を上げられるという点は良い点なのではないかと感じます。

ケーブルによる印象の違いについて(注意)

注意:ケーブルについては科学的に見れば音質の変化に対する決定的な証拠はありませんので、オカルト的な要素を過分に含みます。幸いながら私はイヤホンではケーブルによる音質の変化を強く感じられるのですが、個人差がありますので万人におすすめするものではありません。

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いつも通り幾つかリケーブルを試してみた感想を書きます。性能のボトルネックの一つは標準ケーブルの様です。PHOENIX同様に自作したmmcxから2.5mm2極プラグへの変換コネクタとMMCXケーブルを使って幾つか試聴してみました。もちろん同じコネクタはないと思いますのでリケーブルをしたときに音色の変化の効果があるのかという視点でみていただければと思います。

〇NiceHCK BlackJelly 4.4mm

標準ケーブルに対して中域の厚みが増して音色が鮮やかになりました。音の余韻も適度に付加されており軽いと感じたネガティブな感想がなくなりました。さらに若干音が前に来て迫力がました傾向があります。音の鮮度が上がった感覚によってより音像が捉えやすくなり、解像度も1段上がった感覚があります。BlackJellyはNICEHCKでもフラグシップクラスのケーブルですのでこのクラスのヘッドホンケーブルに交換することで音色のグレードアップを感じることができることが確認できました。

〇標準ケーブル

他のケーブルも幾つか試してみた後に標準に戻した感想としては全体的に軽い音色で明るい音色を作る傾向です。解像度はほどほどに低く、極端に悪いということはないのですがアンプによっては乾いた印象を持ちやすい傾向があるかと思います。23000円のヘッドホンに付属するケーブルとしては標準的なのですが音に不満がある場合や、タッチノイズが気になる場合には交換を勧めたいと感じるケーブルです。

 

良い上流を使うという条件ではリケーブルの効果は大きくあり、PHOENIXに比べてその変化もわかりやすいように感じました。特に標準ケーブルはタッチノイズが大きいという欠点もあるため可能であればリケーブルすることを検討に入れると良いかと思います。

所感

PHOENIXは開放型モバイルというかなりニッチな市場に向けて発売しているヘッドホンであり、そのニッチさの中ではおすすめという範囲にとどまっていたのですが、このSV021 Robinはジャンルを問わず同等の価格帯のヘッドホンの中でも高い性能を持つ上にデザインとしても音としても個性があり極めて優秀なヘッドホンで驚きを隠せませんでした。当然名機DT770Pro32Ωと比べても遜色ないばかりか優劣をつけることも難しいです。

箱出しの評価としてはややPHOENIXの方が良い印象があっただけにエージング後の変化、中高域の解像度の高さと表現力、半密閉型としての音場の広さは筆舌に尽くしがたい素晴らしいチューニングです。価格帯としてもPHOENIXの約半値でありながら個人的にはRobinの方が音として好みと断言できるほどに素晴らしいです。

これらは当然ながらエージングを済ませたあとであること、そして上流を整えるという条件が付くのは残念ですが価格を考えれば少々致し方ないのかもしれないと感じます。内部構造は極めて簡単な構造に見えますが、そのサウンドは素晴らしく、部分によって厚みが異なっていたり加工の形状が違うのでこの形状とドライバの組み合わせがこの音色を作っているのであれば、CAEや試作など無数の試行錯誤とノウハウをこの簡単な作りに詰め込んでいるという技術力の高さを実感します。

姉妹ブランドであるSandyAudioの製品は残念ながら聴いたことがないのですがこの素晴らしいRobinを作ったメーカーがどの様なサウンドを目指して音作りをしているのか気になりますね。

尚、あまりやる人が多くないのでここに記載しますが寝ヘッドホンを私はするのですがダクトが上にあるおかげか、横向きや仰向けになった状態でも音の乱れがほぼ無い密閉型のような使い方ができた点も地味に素晴らしいです。

■結論

SV021 Robinは中域~高域にかけての伸びが美しく単純に高音質で高品質でありながら低価格という高いコストパフォーマンスを持つ木のヘッドホンです。加えてスマートフォン直刺しにも対応できる高感度低インピーダンスで音漏れが少な目な半密閉型、ソフトな装着感という使いやさとデザインにも優れたヘッドホンな為、初めての高価格ヘッドホンとして初心者にも勧められる完成度です。さらには出力の高いアンプに繋いだ時には価格帯を超えるほどの高い解像度と音場感と華やかな音色を奏でるため、玄人にも勧められる見事なバランスです。木材という素材を使用しているためか本領の発揮には数百時間ほどの長期間のバーンインが必要な点は注意が必要ですが、価格帯の名作ヘッドホンと比べても遜色無い音質の上に個性も兼ね備えた万人に勧められる素晴らしいヘッドホンです。

上流を揃えてリケーブルしてバーンインするという条件を満たせばTier1にも食い込める実力はあったと思いますが、さすがに敷居が高いためTier2に設定しました。しかしながらそれほどまでに素晴らしい実力を兼ね備えた素晴らしいヘッドホンですのでこの価格帯のヘッドホンを検討するのであれば少し価格が上の名機たちに混ぜて検討しても遜色ない完成度です。

〇最後に

この様なレビューの機会をいただけましたSIVGA様には改めて感謝申し上げます。ではまた明日。

 

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