こんにちは
今回はLinsoul様より依頼いただきましたTripowinのRhombusというイヤホンのレビューです。提供レビューにはなりますがいつもと同じ基準で記載しております。
結論:A10K Tier2 参考価格:11,180円
Rhombusは優しく繊細で上品な音色と特異な音場表現を持つ音質に特化した中級者向けイヤホンです。箱出しではいかにも中華らしく荒々しいドンシャリイヤホンですがバーンインで鳴らし込むと高い解像度と優雅で独特の空間表現を味わうことができます。ビルドクオリティや付属品は質素なので初心者にはやや不向きかもしれませんが、バーンイン後はその分のコストを音質に振ったことを十分に説得させられるだけの音色を持っています。好みに合わない場合はリケーブルで音色変えるなど中級者向けの遊びにも向いています。付属品などのマイナス点を差し引いても素晴らしい音色で、音色重視かつ中華イヤホン中級者以上の方には強く勧められるイヤホンです。
Pros(優秀な点)
◎優しく繊細で上品な音色とフラットなサウンドバランス
◎高い位置に音像を作る軽やかな音場による良質かつ優雅で特異な空間表現
◎高い解像度
〇本体が軽く、リケーブル可能
Cons(微妙な点)
△国内正規代理店が不在
△1万円越えのイヤホンにしては付属品やビルドがやや貧素で説明が不親切
△バーンインで鳴らし込む前の解像度や表現力は並
△鳴らし込むと中華イヤホンらしい派手な音色ではない
いつもの通りそこそこ文量がありますので気になる部分だけ読んでいただければ幸いです。
- 結論:A10K Tier2 参考価格:11,180円
- 動機付けなど
- 箱とか付属品とか本体
- 音質について
- SPL周波数特性測定
- 相性について
- 対、競合イヤホン
- 音質の総評、所感
- 結論:A10K Tier2 参考価格:11,180円
- Appendix
動機付けなど
モチベーション
上記の通りLinsoul様からのレビュー依頼がきっかけになります。Tripowinはレビュー記事にこそしていませんがA5K Tier2に設定しているTC-01や低価格帯のLeaなどを現在所有しています。どちらも素晴らしいイヤホンなのですが、特徴としてはこれらはボーカルのあるPOPS等の曲に合うイヤホンで、最近評価が高いコラボイヤホンではその様な噂は聞かないので、このRhombusについてはどうなのか気になり依頼を受けました。
販路、購入先(サポート)
Tripowin Rhombuswww.linsoul.com
現状は国内代理店が付いていませんので購入先となるLinsoulが対応することになるかと思います。
SPEC
Tripowin Rhombuswww.linsoul.com
例の如く詳しくはLinsoul様などのサイトなどを見ていただければと思います。私はKZ以外スペックで音質を決めつけることは(あまり)しないので特筆すべきことは無いかと思いますが、海外価格の定価としては79$に設定されており、これは水月雨のAriaSnowやBQEYZのTOPAZ、HzSoundの心鏡Proなどと同じです。
箱とか付属品とか本体
開封体験
箱は79$(A10K)の製品としてのパッケージは見るからに質素です。
開けるとパッケージを開けたて中身を確認しましたが布製のポーチとイヤーピースなど標準的なものが入っています。
マニュアルは英語のみですが大きく図解でイヤホンの装着方法が載っています。標準ではイヤホンに付いてないこともあり、初めて使うための最低限の情報は乗っているように思います。
筐体
筐体は金属製ですが軽く装着感は良好です。
後方用のベントが3つ、前方用のベントが1つ開いている以外は一般的な金属シェルの筐体です。フェイスプレートこそポリゴンの様な無骨な形状をしていますが内側は流線形になっており装着感の良さにつながっているのだと思います。
ただRLの刻印が無く、代わりにR側にはRhombusの刻印、L側にはTRIPOWINの刻印があります。初心者はマニュアルに記載が無いので図を頼りにケーブルを装着することになるのでかなり不親切に思いました。形状でRLを覚える他にRhombusの頭文字が付いている方をRight側と覚えるなどの方法があるでしょうか。一方で、このイヤホンはそれぐらいはもちろん知っているユーザー向けという風にも思えます。
競合機種との比較
左から順番にTRIPOWIN Rhombus、BQEYZ TOPAZ、 HzSound 心鏡Pro、TRI Meteor、水月雨Moondrop Aria Snow Edtionです。心鏡Proの小ささが目立ちますがRhombusもかなり小さい方に入りますね。
ステム形状 5.97[mm]
ノギスでステムの最大径を測ったところ約6mmでした。AriaSnowなどと違ってステムに返しが付いていますので一般的なイヤーピースであれば問題なく装着できるかと思います。
重さ11.3[g]
本体の重量は両方合わせて11.3gと軽量です。TOPAZの10.5gに比べれば重くはあるのですが心鏡Proの16.3g、AriaSnowの19.5gなどとくらべればかなり軽く、1万円越えのIEMとしては標準かやや軽めです。
リケーブル端子 2pin
一般的な2pin端子なのです。気になるのはレビューにあたり10回ほどのリケーブルしかしていないのですが2pin端子にヒビが入ってしまいました。実用上は全く問題ないのですが見た目としては少し気になります。後述するのですがリケーブルは不要なレベルでサウンドチューニングされていますのでリケーブルが大好きという方以外では断線等のトラブルが無ければリケーブルなどはしない方が良いかもしれません。
ケーブル
A10Kクラスのケーブルとしては一般的な絡みにくく扱いやすいしなやかなケーブルです。ケーブルのタイが付いているのですがケーブルに備え付けられるタイプではないので使いにくいかと思います。
重さ14.2[g]*タイ含まず
一般的な重さです。
抵抗値(直流インピーダンス)0.5Ω
このクラスの付属品のケーブルとしては標準的です。
クロストークチェック 無し
手順*1に従って確認しました。
聴感上気になるクロストークはありませんでした。
付属イヤーピース
残念ながらフィットしなかったので使用していませんが、この価格としては2種類3サイズ付いてきますのでフィットする方も多いかと思います。
付属ケース(充電、電池持ち)
写真のタイプのポーチが付いてきます。本体の軽さも相まってどこでも使えるイメージで付属するのだろうと思います。必要十分ではあるのですが最近の79$グレードのイヤホンではケースが付くことが多くやや寂しい印象です。
使い勝手の評価
寝ホン
厚みも少なくステムも長くないこともあって音像の乱れが少ないので向いている方です。また音色が上品で小音量でも高音質なこともあり寝ホンには向いています。
外使い(音漏れ、遮音性、ノイズキャンセル)
指でステム側を抑えて遮音してみました。ベントが空いているのでそこそこ漏れそうだと思ったのですが実際には3割程度漏れているだけでした。あまり漏れる方では無いですが0では無いです。
ホワイトノイズ
ホワイトノイズが出やすいWindowsノートPC GV301Qに繋いでみましたが問題ありませんでした。
音質以外の総評(付属品、ビルドクオリティ等)
全体として79$のラインのイヤホンとしてはかなり簡素な部類かと思います。どちらかというと中華イヤホンを知っている中級者向けに敢えて簡素にしているイメージにも受け取れます。
音質について
ファーストインプレッション
M17DC(PL50) "AppleMusic" -> 標準ケーブル-> イヤホン -> SpairalDot++
下記リンクの通り典型的な中華イヤホンらしいファーストインプレッションだったのですが、エージングの項目でもふれますがバーンインが終わると全くの別のイヤホンになったかのような音色になりました。
競合機種との比較について
競合で言えば価格帯が近いBQEYZ TOPAZ、 HzSound 心鏡Pro、水月雨Moondrop Aria Snow Edtionなどや、構成が近いTRI Meteorなどもライバルになるかと思います。
エージング(バーンイン)
AGPTEKを使い400時間程度標準的な音量で試聴プレイリストの曲を無限ループさせました。ファーストインプレッションで書いた通り、箱出しでは典型的な中華イヤホンらしい音色だったのですがエージング後は繊細で上品な音色に様変わりしました。
あまりにも変化しすぎている気がしたので日付やタイミングやアンプを替えたりと何度も確認してみたのですが初期の中華イヤホンらしい音はどうしても出ませんでした。
ファーストインプレレッションでは同時に聴いたWan’er S.G と大差無いかもしれないと感じたのですが、バーンインを終えた今では価格帯なり以上の差を感じます。バーンインをしてそこそこ変わるイヤホンがあるのですが、どうやらこのRhombusは鳴らし込むことで音が変わったと感じやすいイヤホンであることは間違い無さそうです。
試聴環境
標準環境*2を使っていますが。今回は特にBTR7やM17を主体に聴きました。
帯域バランス フラット
弱ドンシャリと感じる人やカマボコと感じる人もいるぐらいのニュートラルさをもつフラットバランスです。低域から高域まで過不足無く適度に出ています。曲と人によっては低音が若干強いと感じる人もいるかもしれません。
音色(寒暖、明暗、響き、粘度、厚み) ◎
暖かさは概ねニュートラルですが明暗はやや暗めで、上品な静かさを感じられる適度な響きがあるサウンドです。粘度もニュートラルで音の厚みは薄いのですがとにかく解像度が高く繊細で細やかな音色です。さらに刺激音が少ないことに加えて、独特の全ての音が高めの位置で音像を持つ音場による空間表現が秀逸です。全体にとしてもTORIPOWINのチューニングの上手さを実感します。
特にこの音色表現は中華イヤホンであることを忘れさせてくれる上品さです。音色の立体表現も上手く、箱だしの最初期に感じた典型的な中華イヤホンらしい荒々しさは見る影もありません。音色の好みは置いておいて完成度としては非常に高いレベルに纏まっています。
音場(広狭、重心、遠近) 〇
上下に関しては狭めではあるのですが横はこのクラスでは一般的、前後の音場はこのクラスでは最大級の広さを持ちます。上下は狭めではあるのですが音像の重心が非常に高く、全ての音色が耳の位置より上で鳴っている感覚があります。もちろんその高さより上では上下の空間表現があるので音像重心が高く下側が無いという表現の方が合っているかもしれません。
前後は音像が高いのでどちらかというと適度な距離感があるはずなのですが、前後は適度な近さがあります。このため迫力は十分でありながら解放感と調和しておりこの塩梅が絶妙に上手いです。表現がが難しいのですが例えるならちょうど脳漿の位置にできる箱庭的なライブ会場的な音場感といったら良いでしょうか。比較競合のイヤホンや、前後の価格帯のイヤホンも踏まえてもこの音場の表現は特殊でユニークさがあります。マイナスに取ればややスケール感が不足し、こじんまりしてしまったと捉える人もいるかもしれませんが、個人的には素晴らしい加点ポイントであり、非常に心地よい音楽体験ができました。
定位、音像 〇
前後左右の広い音場に十分な定位で音像を描きます。上下の定位は若干緩い感覚がありますが、音像ははっきりとしており、このクラスのイヤホンとしては異様に高い解像度と音色の繊細さから音像は明瞭です。繊細な音色を補強しているのは付帯音の少ない上品な音像にもあるように思います。特にエントリーからミドルクラスの中華イヤホンでは高解像度かつ寒色で硬い響きを乗せる傾向があるのですがそれらが少なく、鳴らす音と鳴らさない音の切り分けが上手いです。それによって引き立てられている音像のシルエットの美しさは価格帯を引き離しており、見事です。音場が上にあることで表現が限られてややマイナス面はあるので評価は難しいのですが総合的には素晴らしいと感じました。
解像度、分離 ◎
価格帯以上の解像度と分離性能です。音色の厚みは無いのですが中域から高域にかけての解像度は素晴らしく音像の描写力の泉源になっていると思います。解像度の高さ故にDAP等の音量を上げると共に、煩くならずに新しい音が聴こえる感覚があるタイプです。当然ながら性能の高さから小音量でも十分に楽しめるイヤホンです。
比較競合のイヤホンと比べても特筆すべき点の一つはこの解像度で、価格帯を上回るMeteorよりも優れている部分が多いです。
低域の質について 〇
質感の良いしっとりとしつつ量感もあるタイプの低音です。アタックの速さや余韻なども秀でた部分もそれほど無いのですが、適度なバランス感覚を持っており解像度も高く楽曲の邪魔をせずしっかりと支えます。サブベース帯の深いところからきっちり鳴っており、個人的には十分な低音ですが、中華イヤホン的な低音を求める人に取ればやや物足りない量感かもしれません。
中域の質について ◎
量感は適度で強調感が少なく解像度が高い良質な中音域です。前後と横の音場に表情豊かに中域の楽器やボーカールが定位します。量感では低域や高域に押され気味ではあるのですが中域は明瞭に聴き取ることができるチューニングです。音色全体がニュートラルからやや暗めの音でありながら響きと艶と余韻が絶妙にあるチューニングはこの価格帯の中華では稀なこともあり、個人的には音色の素晴らしさに脱帽です。
上下や左右の音場は狭めですが特に前後に広がる中域の音色の立体感が素晴らしくこの価格帯では随一だと思います。また、ボーカルの域の表現力も素晴らしく、艶感とライブ感と躍動感と上手く両立していると思います。音像が高い点を加点と取ればこの価格帯では文句がありません。
高域の質について 〇
高域の量感は一般的ですが、解像度が高く表現は素晴らしいです。女性ボーカルのサ行などの歯擦音がほぼ刺さらないばかりか弦楽器の倍音やチャイムやシンバルなどの高域を多く含む楽器の表現は煌びやかです。音色も明るすぎずやや暖かみがあって良く伸びるます。残念なのは上下の空間が狭いことで、定位や方位がはっきりしやすい高音域はやや窮屈な鳴り方になってしまいます。
SPL周波数特性測定
エージング前後でかなり聴感が変化したので再度グラフを取り直してみたのですが5〜10Khzがわずかに変化しましたが、カプラなどが完全に校正できていないので参考データぐらいに思っておいてください。
どちらかというとバーンイン前の方がこのグラフの量感に近い印象がありました。バーンイン後はグラフよりも若干フラット寄りに感じます。
vs HzSound HeartMirrorPro 心鏡Pro
vs 水月雨Moondrop AriaSnow
vs BQEYZ TOPAZ
vs TRI Meteor
相性について
ジャンルの得意不得意
あまりジャンルを問わないイヤホンですが、激しい曲調の曲は競合イヤホンの方が合うように思います。また、オーケストラでも室内楽などであればよいのですがスケール感が欲しい曲であれば小さくまとまりがちではあるので苦手な部類かと思います。
アンプ(上流)による印象の違いについて
上流を標準環境で聴き比べたりしたのですが大きく傾向は変わりませんでした。良いアンプほど解像度は上がる傾向があるのでできればアンプを使う方がより楽しめるチューニングだと思います。
ケーブルによる印象の違いについて(注意)
注意:
リケーブルについては科学的に見ればごく低品質なものを除いて音質の変化に対する定量性のある決定的な証拠はありません。
このためリケーブルは貼り付けなどと変わらないオカルト的な要素を過分に含みます。
幸いながら私はイヤホンケーブルによる音質の変化を強く感じられるのですが、個人差がありますので万人におすすめするものではありません。
せっかくなので幾つかリケーブルしてみました。
デフォルトケーブルについての補足
リケーブルで遊びたいという用途以外で使い勝手などに不満がなければリケーブルは不要かと思います。
NICEHCK SpaceCloud 4.4mm
音場については横に大きく広がることに加えて天井の高さの上限が上がることでスケール感が出ます。音色の解像度は1段上がり音色が明るく鮮やかさを持ちます。派手になって良くなったと捉えることもできるのですが、やや暗くしっとりとした中華イヤホンらしくない部分もこのイヤホンの良さでもあったと感じているので一概に喜べません。解像度の高さは素晴らしいのですが大きく傾向を変えてしまうので買ったけれども音色の方向が気に入らなかった場合などに良いケーブルかと思います。NICEHCKは他のフラグシップケーブルも沢山あるので合うものが在りそうですが、量が多すぎてキリがないので今回は割愛します。解像度については向上の余地があると考えていただければよいかと思います。
BINGMANGO Zebra 4.4mm
全体的に透明感と彩度が上がり、音色がタイトでになります。明瞭さや解像度や分離がほんの少し上がり、全体としてキラキラとした音色の傾向になるように思います。音場の広さは上下や横の広がりが出る代わりに前後が若干平面的になります。スケール感は出るのですが箱庭感は薄れるので個人的にそこはマイナスのように感じます。低音の量感はより目立たなくなるので個人的にはよりな好きな傾向の音色になるように感じます。価格的にも味変として良好な相性だと感じます。
JSHiFi 銀月 4.4mm
ボーカルが主張を強めて音がやや丸くなるのですが音色の鮮度があがったような生々しさが出る傾向あります。音場は標準と大差なく広くはないのですが音色の広がりや解像度、抜け感があるので音場が広がったかのような錯覚すら覚えます。シンバルや鈴の音がはっきりとする点も銀月らしさがでています。銀月と言うケーブルの何でも女性ボーカルに合うイヤホンにしてしまうような癖の強さは特殊な音場感を持つRhombusと掛け合われて高相性だと感じます。
Tripowin Jelly 4.4mm
横の音場は広がるのですが縦の音場の天井が低くなった印象が強いです。音色全体に艶がでて高域の金属楽器はツヤツヤなのですが不自然に押さえつけられたような天井があるような音場でやや窮屈な印象です。一方でボーカルなどの音像定位は手前に移動し迫力が増します。本当にJellyと言うケーブルは想像していない変化があり、聴くたびに面白い感覚を味わえます。味変には素晴らしい変化なのですが相性はあまり良く無い様に感じます。
Tripowin Altea 4.4mm
Jellyとは対照的に横と上下に音場が大きく広がり開放される感覚がでます。音の立体感は若干下がりますがほぼ遜色なく、音色の抜け感と余韻が絶妙で広大な音場に定位良く音像ができるので非常に高相性に感じます。音色に若干の艶がでる他、ボーカルなど繊細さを保ったまま音像がはっきりとするので空間表現の素晴らしさが活きます。また音場が広いにも関わらず俯瞰的なりずぎず、ボーカルなども適度な近さがあり隙のない音場になります。高域の楽器も煌びやかで定位と音像がはっきりとするので見事です。一方で低域だけは一部の楽曲で解像度は上がるもののややスピード感が落ちてゆったりとしがちです。これはAlteaの弱点になりやすい項目ではあるのですが他が良いだけに気になる人もいるかもしれません。その点以外は価格を踏まえても最高の相性ではないかと思います。
イヤーピースによる印象の違いについて
JVC SpiralDot++(音場、高域、低域重視)
今回のデフォルトイヤーピース
Spinfit W1(中域、低域、解像度重視)
相性はそこまで良くないように思います。中域と低域の解像度と質感が向上するともいえるのですがやや強調しすぎる感があります。画像処理で言うシャープネスフィルタをかけ過ぎたような感じでしょうか。上品さが少しなくなり音色としては1ランク上のイヤホンの音色と感じることができるかどうかは悩ましいです。
音場についてもSpiralDot++から比べるとが狭くなり天井も若干狭くなります。元々特殊な音場なのでそこまでのデメリットだとは感じるかは難しいところですが音色と引き換えにさらにスケール感が悪くなってしまうので音色重視であればアリと言えなくもないうところかと思います。
Moondrop 清泉 Spring Tips(中域重視)
やや音像が下がりますが中域の音色の透明感が上がり女性ボーカルなどの音色は滑らかで立体感が更に上がり美しくかつ生々しい音色になります。ボーカルの存在感が出ることで音場がやや狭くなりますが楽器の音像の分離や解像度は良く、ボーカルホンとしてのイヤーピースはかなり高相性だと感じました。
AZLA SednaEarfit Vivid(コストパフォーマンス重視)
SpiralDot++と比べると上下の音場がやや狭くなり音像の重心が少し下がります。高域の表現の上手さや横の広さはそのままなのですSpiralDot++などで音像が高すぎると感じる場合はSednaEarfitの方が良いかと思います。また、音像が下がることで更に中域などのボーカルの迫力が増すのでこれはこれで悪くありません。俯瞰的かつ高解像度で上品なSpiralDot++、迫力のSednaEarfitという感じでしょうか。個人的にはSpiralDot++の方が好きですがこちらも好きと言う人は多いかもしれません。
対、競合イヤホン
ケースを並べるとやはりちょっと貧素です・・・
vs HzSound HeartMirrorPro 心鏡Pro
横と縦に展開する一般的な音場の心鏡Pro、頭上で前後左右に展開する特殊な音場のRhombusという違いがあります。音色に関してはシャキッとして解像感やパワー感が高い心鏡Pro、上品かつ繊細で密度感と艶感と解像度が高いRhombusという違いがあります。また心鏡Proは付属品が豪華だったりバーンインが不要で初心者に対してユーザービリティが高いですが音チューニングの完成度という面ではRhombusが上手に思います。
vs 水月雨Moondrop AriaSnow
横に展開する一般的な音場のAriaSnow、頭上で前後左右に展開する特殊なRhombusという違いがあり、ややRhombusが上手でしょうか。音色に関しても解像度や繊細さ上品さや艶感はRhombusが上手ですが代わりにAriaSnowは上下と横の定位の正確さや音色の透明感があります。またAriaSnowは付属品が一般的だったりバーンインが不要で初心者に対してユーザービリティが高いですが音チューニングの完成度という面ではRhombusが上手に思います。
vs BQEYZ TOPAZ
横と縦に展開する一般的な音場のTOPAZ、頭上で前後左右に展開する特殊な音場のRhombusという違いがあります。音色に関しては乾いてシャキッとして音色が明るく分厚いTOPAZ、上品かつ繊細で密度感と艶感があるRhombusという違いがあります。またTOPAZは付属品が一般的だったりバーンインが不要で初心者に対してユーザービリティが高いですが音チューニングの完成度という面ではRhombusがやや上手に思います。
vs TRI Meteor
横と縦に展開する一般的な音場のMeteor、頭上で前後左右に展開する特殊な音場のRhombusという違いがあります。音色は上品かつ繊細で密度感と艶感があるRhombusに対してMeteorは音色の厚みに解像感の高さ高域の煌びやかさなどが素晴らしいです。またMeteorは付属品が一般的だったりバーンインが不要で初心者に対してユーザービリティが高いですが音チューニングの完成度という面では甲乙つけ難く、Meteorの方が高価格ですが付属品を割り切れば迫る音色だと思います。
音質の総評、所感
箱出しからビルドクオリティまでファーストインプレッションではいかにも中華イヤホンという個性の無い音色でちょっとイマイチかもしれないと心配に思っていたのですが、バーンイン後には見事な音色に魅了されてしまいました。あまりに音色が違ったのでFFさんにお会いしたときに聴かせて音色の印象を確認してしまったレベルです(笑)。
まぁ恐らく箱出しのままの音ですとTier3~4程度にしていたかもしれません。更に言えばビルドクオリティや付属品がもっと良ければTier1も狙えるイヤホンでもありました。
もちろん正直に言えばこのレベルの中華イヤホンを購入する方にとって付属品などはあまり重要ではないことが多いことを理解していますが、イヤホンの価格にはこれらの費用もかかっているわけで無視できる要素ではありません。
繰り返しになりますが箱出しの段階ではそれなりなので注意が必要です、若干エージングに時間がかかるのかもしれませんが根気よくという抽象的な言しか言えずこればっかりは実施するしかありませんし。個体不良という可能性もありますので、できれば購入してすぐにエージング処理に相当する行為をしてしまうのも良いかと思います。特に中級者以上でないかぎり音がおかしい場合は不良品かどうかを見極めることが難しい場合が多いですのでその点も踏まえると中級者向けイヤホンだと言えます。
とは言えレビューページのリンクの様にAmazon倉庫発送の場合はAmazonの保証に準じるのでそこまで不安に思う必要はありませんのであしからず。
それにしても良い意味で裏切られた素晴らしいイヤホンでした。
結論:A10K Tier2 参考価格:11,180円
Rhombusは優しく繊細で上品な音色と特異な音場表現を持つ音質に特化した中級者向けイヤホンです。箱出しではいかにも中華らしく荒々しいドンシャリイヤホンですがバーンインで鳴らし込むと高い解像度と優雅で独特の空間表現を味わうことができます。ビルドクオリティや付属品は質素なので初心者にはやや不向きかもしれませんが、バーンイン後はその分のコストを音質に振ったことを十分に説得させられるだけの音色を持っています。好みに合わない場合はリケーブルで音色変えるなど中級者向けの遊びにも向いています。付属品などのマイナス点を差し引いても素晴らしい音色で、音色重視かつ中華イヤホン中級者以上の方には強く勧められるイヤホンです。
Pros(優秀な点)
◎優しく繊細で上品な音色とフラットなサウンドバランス
◎高い位置に音像を作る軽やかな音場による良質かつ優雅で特異な空間表現
◎高い解像度
〇本体が軽く、リケーブル可能
Cons(微妙な点)
△国内正規代理店が不在
△1万円越えのイヤホンにしては付属品やビルドがやや貧素で説明が不親切
△バーンインで鳴らし込む前の解像度や表現力は並
△鳴らし込むと中華イヤホンらしい派手な音色ではない
最後に
この様な機会をいただきましたLinsoul様には再度感謝申し上げます。
Appendix
購入リンク
Tripowin Rhombuswww.linsoul.com
*1:
ホワイトノイズが少ないADI2DAC fsとMacBook 15 Late2013 Rewにて左のみなど片方CHのみからリスニングボリュームのホワイトノイズ又は1KHzSin派を出力します。出力先CHでホワイトノイズやSin波を確認したのち、取り外して遮音し、もう片側を装着して出音をチェックします
*2:
M17DC(PL50) "AppleMusic" -> 標準ケーブル-> イヤホン -> SpairalDot++
M17"AppleMusic" -LDAC-> XD05BAL -標準ケーブル-> イヤホン -> SpairalDot++
iphone12"AppleMusic" -A1749-> -> 標準ケーブル-> イヤホン -> SpairalDot++
Xaomi 11T Pro"AppleMusic" -LDAC-> BTR7 ->標準ケーブル-> イヤホン -> SpairalDot++
GV301"AppleMusic" -標準ケーブル-> Aiyima H1 ->標準ケーブル-> イヤホン -> SpairalDot++
Xperia10iv"AppleMusic" -標準ケーブル-> イヤホン -> SpairalDot++
*3:
〇測定環境
ハードウェア:Apple Macbook pro 15 Late2013 BigSur11.6.4
ソフトウェア:REW V5.20.13
INPUT:MOTU M2 IN1 XLR (VXLR+)192KHz24bit
OUTPUT:MOTU M2 192KHz24bit 3.5mm変換
カプラ:IEC711クローン 刻印( IEC60318-4 Type E610A)※100〜10KHz用
イヤーピース:Final TypeE Black Mサイズ
〇測定パラメータ
入出力バッファ512K、Acoustic Reference
出力音圧レベル:−12dB
Length:2M(10.9sec) 、192kHz、0〜20,000Hz