こんにちは
今日はNOBUNAGA Labsから発売されているイヤホン用ケーブル「Matador NEXUS (マタドール ネクサス) 2pin 4.4mm」をGiitaさんからお借りしたのでその簡易レビューです。
〇ケーブルレビューの注意
注意:ケーブルについては科学的に見れば音質の変化に対する決定的な証拠はありませんので、オカルト的な要素を過分に含みます。幸いながら私はイヤホンではケーブルによる音質の変化を強く感じられるのですが、個人差がありますので万人におすすめするものではありません。
気になる方は読み進めるのを中断いただければ幸いです。
■音以外の要素
〇動機とか
Gilgameš-Omega、CERESと同様にGiitaさんからの依頼になります。Gilgameš-OmegaとCERESの記事はこちらです。
このような機会をいただきましたGittaさんには感謝申し上げます。
〇スペックとか
毎度、ケーブルの線材とかそういうものにはあまり興味が無いので気になる方は販売ページなどを確認してもらえると嬉しいです。
〇重さ 「30.2g」
ケーブル単体の重さを測ってみましたが実測で30.2gでした。
銀月が46g、FOURMIXが39g、KBX4937が38g、NX7 MK4デフォルトが23g、S12デフォルトが30g、白龍が53g、KATOデフォルトが33g、AriaSnowデフォルトが13gですので一般的な重さになるかと思います。
〇コネクタ 埋め込み2pin 「0.78mm」
プラグは外側に溝がある埋め込み2pin対応タイプでした。ノギスでピンの外径を測ると0.78mm±0.01程度で若干細めですがほぼ仕様通りでした。左右はRLの表記は赤いラインがあるかどうかで見分けるようです。
〇プラグ
幾つかDAP等にプラグを指してみましたが接触不良なども無く挿し心地も良好でした。
尚、プラグ部はネジ式になっていますので外してハンダの状態などを確認できます。細部の処理までは確認できませんが、しっかりと接続されていることがわかりますね。
〇導体
導体をマクロ撮影してみました。
こちらが分岐後で、ノギスで直径を測ると2.84mmでした。
こちらが分岐前で、太さは直径3.7mm程度です。
CERESよりほんの少し太いのですが被膜は柔らかく、手触りもよい上に程よいしなりがあります。細いと逆に弱すぎると取り回しが悪くなりがちなのですが、程よい太さがあり丈夫そうな雰囲気があります。また、丁度良い柔らかさもあり取り回しが良く、使い勝手としてはバランスが絶妙だと感じます。また、上に落ち着いた色合いも好印象です。
〇スプリッタ&スライダ
スライダは摩擦で止まっているだけのものですが、被膜の適度な摩擦でホールドできるようです。室内利用でざっと使った感じは滑り落ちてくることはありませんでした。
○抵抗値(直流インピーダンス) 「0.1Ω」
テスタ―*1で実測したところ直流インピーダンスは0.1〜0.2Ωでした。
〇その他、まとめ
落ち着いたオレンジ色のケーブルで、見た目としてもCERESと色違いという感じですね。24800円と良いイヤホンが変えてしまう値段のケーブルではあるのですが、値段相応の作り込みはされているのかと思います。
■音について
合わせるイヤホンについては迷ったのですが写真のチョイスにしました。
リケーブルが不要な機種の代表として64Audio Nio、BQEYZ Winter、Lofty、リケーブル推奨機種としてLETSHOURE S12 Pro、Truthear HEXA、CCA HM20(Sタイプ)、KZ ZARを選定しています。
〇環境
M17(DC AppleMusic) -> 「Matador NEXUS」 -> イヤホン ->SpiralDot++
評価基準は5段階で、細かく決めてはいないのですがなんとなく以下のい感じです。
◎:標準ケーブルと比べて高相性かつ魅力的な音
〇:標準ケーブルと比べて高相性又は、良相性かつ魅力的な音
ー:標準ケーブルと比べて良相性又は魅力的な音、
△:標準ケーブルと比べて魅力を引き出さない組み合わせ、又はコスパが悪い
✖:標準ケーブルと比べて魅力を引き出さない組み合わせかつコスパが悪い
〇CCA HM20 ⇒ 結果:〇~◎
リケーブル推奨のHM20 Sタイプに合わせてみましたがまずまずの相性です。
方向性としては中域のボーカル域が目立つタイプのボーカルイヤホンに変わりますので、ドンシャリのHM20と合わせて考えるとケーブルとしてはカマボコタイプという印象です。解像度は相応に高く、ボーカルは1歩前に描写されるので迫力があります。
中域のボリュームはグッと上がった感じがありますし、音場は横は少し狭めですが上下と前後で作る音の立体感は素晴らしいです。
音色のはほんの少し明るく暖かめでかつドライです。個人的にはボーカルに艶感と色気がのるような音色なのでボーカルケーブルとしては良質だと感じます。特に合うと感じたのは男性ボーカルで、男らしい色気、力強さを兼ね備えた魅力を感じさせる音色です。
HM20(Sタイプ)は相性の良いケーブルはいくつもあるのですが、ボーカル域を強調するケーブルとしては例えばYongse Ag8やJSHiFiの銀月などと比べるとややコストパフォーマンスは悪いかもしれません。とは言え、どちらかと言えばAg8や銀月は女性ボーカルに向いていることを考えればMatador NEXUSと別分野と考えても良いかもしれません。
一方でHM20自体がボーカルイヤホンとして向いているかという話になれば中々に議論の余地があります。
誤解を恐れずに書けばケーブルの価格は高額なのですが、合計金額を考えても同価格の市販イヤホンと十分以上に勝負できる音色です。人によっては金メッキケーブルの色が濃くでるので好き嫌いはわかれてしまうのですが、いずれにしてもHM20(Sタイプ)に対してトップクラスのリケーブル候補の一つになり得るケーブルです。
〇TRUHEAR HEXA ⇒ 結果:◎
HEXAの標準ケーブルも色付けが少なく個人的にはつまらなく感じてしまうのでリケーブル推奨機種です。
個人的にボーカルイヤホンとしてかなり好きな音色でした。Matador NEXUSもHEXAの音色をやや暖色傾向にしてくれた上で鮮やかさと高い解像度で総合的な音の完成度を上げてくれます。音場は横には狭いのですが、前後と上下が適度に広く、音色が近くなることでHEXAの秀逸な音場表現を活かした上でボーカルを際立たせてくれます。
ボーカルが目立つからといって楽器の表現がおろそかになったりせず、ボーカル裏側でしっかりと定位と分離良く演奏を聴かせてくれます。個人的に音の太さもちょうど良く万人受けするサウンドなのではないかと思います。
ケーブルがHEXAより高額ということは気にはなりますがボーカルケーブルとして素晴らしいバランスなので是非どこかで一聴してもらいたいと思うところです。
また機能面ではHEXAが埋め込み2pinなので相性は良好です。
〇LETSHOURE S12 Pro ⇒ 結果:◯〜◎
S12 Proは標準ケーブルも良いのですができればリケーブルさせたい機種です。元々完成度が極めて高く素晴らしい基本性能をもつ機種ですがとても素晴らしい相性です。
解像度の高さ、音場を描写する空間の広さ、どれもが素晴らしいの一言です。やや音色が暖かくなるのですが、元々ソリッドで寒色よりだったのでニュートラルに近づくイメージです。S12Proはもともと横と上下の音場が広い代わりに前後の音の表現はノーマルのS12に劣りますが、Matador NEXUSによって前後の音の立体表現が加わり、高い解像度や音色の細やかな表現を引き立てています。
中域などのボーカルが一歩前に来てくれることで、中域の表現の主張が強くなり無印のS12に比べると気になりがちなボーカルなども立体感良く鳴らしてくれます。
全体の音色のバランスも良く、大きな弱点が無いように感じます。ケーブルの価格を踏まえても良い組み合わせだと感じます。
音色には文句ないのですが課題があるとすればどうしてもMatador NEXUSの3万円近い値段でしょうか。もちろん、ケーブルを持っておくことで色々と組み合わせを楽しめるという意味では良い選択肢なるのではないかと思います。
〇BQEYZ Winter ⇒ 結果:△〜ー
WinterはRimeケーブルの品質が素晴らしいこともあり、基本的にリケーブルは不要な機種ではあるのですがそれでも尚、効果があるかを検証するために試してみました。尚、この機種のみイヤーピースをSednaEarfit Maxに変更しています。
解像度は少し上がり、音場は横の展開が狭くなり、音像がやや上になります。低音の表現がブーミーかつ軽くなる感覚があり、音全体が中高域に寄ってしまう感覚があります。音は明るめになり高温が主張することもあって、華やかさはあるのですがすこしやりすぎな気もします。
バランスは悪くないので好きな人もいるかもしれないという気もします。Winterの音色が暗すぎたり、低音が多すぎると感じる場合は味変としてありだとは思いますが、個人的には好き人なれず、これであれば標準のケーブルで十分かと思いました。
〇NICEHCK Lofty ⇒ 結果:ー
Loftyはここまでエージングした個体は標準ケーブルの強烈な個性と相まってリケーブルが不要という認識を持っています。で結果ですが、元々の方向性とは大きく異なりますが素晴らしく良かったです。
個人的にはあまりピンと来なかった組み合わせです。決して悪くないのですが、音のバランスがやや不自然な感覚を覚えました。中域〜高域は異様にスッキリしたさっぱりサウンドなのですが、中〜低域にかけてはボンボン膨らむ印象でLoftyの良さを殺しているかのような鳴り方にも思えます。
〇KZ ZAR ⇒ 結果:〇
続いて先日購入して届いたばかりのZARも試してみました。ZARは付属のケーブル品質はイマイチでリケーブル推奨です。
リケーブルでは音の解像度が大きく向上します。音場は左右は同等かやや狭くなる感覚はありますが上下は同等、前後は立体感が出ます。音色はやや暖色系で中域のボーカルなどの主張が強くなります。ZARの初期ケーブルもある程度ボーカルにフォーカスが当たる音場が狭め傾向なのでそのままアップグレードしている感覚です。
ZARの魅力的なベース帯域はそのままに中域までをすっきりとさせる感覚があり、特に男性ボーカルのパワー感を引き出してくれます。一方でオーケストラなどの大編成の楽器ではやや位置関係に不自然さが出てしまう傾向があるのでPOPSやROCKなどに良く合うケーブルだと感じます。
音色は良いですが課題があるとすれば約2万円という価格で、イヤホン本体と合わせた合計金額が、同じ市販価格のイヤホンと比べて勝っているかと言われると難しい気もします。もちろん、ZARのボーカル域の良さを引き出すという意味では良い選択肢ケーブルではないかと思います。
〇64Audio Nio ⇒ 結果:ー~〇
Nioは付属する新しいPremium Cableとの相性が素晴らしく、これをを明確に超えるリケーブルは探し続けています。こちらもイヤーピースをSednaEarfit Maxに変更しています。Matador NEXUSも期待がかかるリケーブル候補です。こちらもイヤーピースをSednaEarfit Maxに変更しています。
結果としてはボーカルイヤホンとしてまずまずの良相性です、元の空間表現の良さを犠牲にした方向性のため好き嫌いは分かれるかと思いますが味変としてかなり良い組み合わせだと感じます。
一聴して驚くのは圧倒的なボーカルイヤホンへの変化です。空間表現として中域のボーカル帯の音像が2歩ほど前に来る他、中域の音は大きく広がります。然しながら音場全体としては横縦共に標準から比べると少し狭くなり、オーケストラなどの楽器が空間に並ぶような楽曲ではやや不自然になります。
音色は透明感と明瞭感があり、抜け感が良く、軽やかな音像で、ある程度の近い音像になったにもかかわらず圧迫感がありません。元のデフォルトケーブルではどうしてもPOPSやROCKを聴くとボーカルは一歩下がった位置にあり、楽器との調和の中での存在になるため目立ちにくいのですが、Matador NEXUSでは完全にボーカルが主役になります。
欠点を上げれば、楽器の位置関係の正確さわかりやすさになりますが、特にシンバルやチャイムと言った超高域の楽器類の場所はPOPSでもやや気になります。
また、解像度や定位感はほぼ互角でほぼ落ちない点も評価できます。Nioの価格を考えればある程度順当な価格帯でありますし、ボーカルをより際立たせたい場合には良い相性かと思います。
〇音の変化まとめ
全体の傾向をまとめると
・ボーカルが得意なケーブル
・解像度が高め
・分離と解像感も高め
・明暗はニュートラル~やや明るめ
・寒暖は暖色より
・高域、中域、低域どれも良質だが、特に中域に特徴がある
・音場は横は狭め、上下は普通、前後は広め
・音像は近め
・帯域バランスは中域〜高域がやや強め
・やや癖あり
■まとめ
Nobnaga Labsのケーブルは3本目ですが、全体の傾向をまとめるとMatador NEXUSはボーカルケーブルというイメージです。個人的には女性ボーカルも悪くないのですが特に良いのは男性ボーカルで男性らしい色っぽさと力強さをを兼ね備えている点は魅力だと感じました。
やや癖のあるケーブルではあるのですが、中域を中心とした音の変化が分かりやすいです。暖色傾向で解像度が高いケーブルは珍しい傾向もあるので、約2万円と相応に高額ですがコストパフォーマンスは悪くないように思います。音だけでなく上位のケーブルと作りも同じで、クオリティも高く、所有欲を満たしてくれる良いケーブルだと感じました。
今回試したイヤホンの音色の相性としてはHEXAやS12Proなどが高相性だと感じました。
Giitaさんからは他にも、CASSINI (カッシーニ) をお借りしておりまして、引き続き簡易レビューをさせていただく予定です。最後にGiitaさん、このような機会をいただきありがとうございました。
*1:KYORITSU KEW MATE MODEL 2000 オフセット除去