ゆるふわオーディオ日記(blog)

気に入ったイヤホン、ヘッドホン、アンプ等のオーディオ体験を日記ブログとして思うままに書いています。ゆるキャラ、モフモフ、ポフポフ、ふわふわが大好きです。2年で400本ぐらい機材が増えてレビューBlogになりつつあります💦。アフィリエイトはレビューとかプレゼント企画の資金にさせてもらっていますニャ。

レビュー:SENNHEISER IE100 PRO 9800円セール中 結論:A10K Tier2 定位と高域に高い表現力を持つ定番モニターイヤホン(簡易レビュー)

こんにちは

 

今日は、あらゆるものが値上げしている最中、2023年3月31日までセールで9800円になっている天下のSENNHEISERの定番エントリーIEMのIE100 PROを買ってみたので、リスニングイヤホン(重要)として簡単なレビューです。f:id:el_snow:20230301193837j:image

インプレ結論A15K Tier3 A10K Tier2 参考価格:9800円

IE100Proはゼンハイザー社が最も数多く販売する普及価格帯に作ったモニター用途のPRO系統イヤホンです。細かい音のボリュームや音の位置、音程を把握することに長けており、特にドラムやシンバルやチャイムといった高域の楽器の音色を容易に把握することができます。オーディオのリスニング用途となると、癖の強い高域寄りのチューニングバランスなので人を選び易いですが、IE100Pro独特の個性を持った音色を持っています。IE40Proから5年近く定番で売っていることもあり愛用して絶賛する方も出るのも頷ける音色です。

音以外の要素でも軽く薄い筐体による最高峰の装着感なことに加えて、2年保証やPentaconn異形プラグによるリケーブルが可能な構造など、通常のリスニング用途としても高い完成度を誇ります。リスニング用としてはTier2にはなりますが、中上級者であればリケーブルをして音質向上の余地があるなどモニター用途以外でも十分以上に選択する価値のあるサウンドです。また、私はProではないのでゼンハイザーが想定するモニターイヤホンとしてのTierを付けられませんが10K、15K価格帯でモニターイヤホンとしてはおそらくTier1にあるイヤホンであろうかと思います。現在は9800円とセールとなっておりモニター用途しても、リスニングイヤホンとしても高いレベルとなっているIE100Proは素晴らしい選択肢になるかと思います。

Pros(優秀な点)

◎ IE40PROから5年近く販売している定番のゼンハイザーサウンド 

◎ 安心のゼンハイザー2年保証

◎ 本体が軽く、薄く、装着感が抜群

〇 金属音(高域〜超高域)の量感があり、解像度の高いチューニング

 →音の位置の把握が容易なのでASMRやゲーム用途にも向く

〇 断線に強いリケーブル対応

○ リスニングにも利用可能なモニターサウンド

*1

Cons(微妙な点)

△ ボーカルの歯擦音、金属音などが刺さりやすい

△ ケーブルや本体のビルドクオリティは少し安っぽい

△ ケーブル端子がPentaconn異形と実質メーカー専用端子、ぶよぶよで癖が付きやすい

△ 価格を考えると音の表現力や自然さがもう少し欲しい

動機付けなど

モチベーション

IE100ProはIE40ProのPentaconnコネクタリファイン版と言われており、実際にチューニングなども同じという声が多いイヤホンです。そのIE40Proは2018年に11月発売されたものなので約5年近く同じ音のイヤホンが売られていることになります。

個人的なゼンハイザーイヤホンとの出会いは最初に購入したIE8というゼンハイザーのイヤホンです。ヘッドホンのファンであった私は無視聴で購入したのですがあまりにも趣味に合わない音色で落胆が大きかったのを覚えています。それからIE300、900シリーズがでて再評価するまではゼンハイザーのイヤホンは基本的に忌避していました。

IE8は低音がどうしてもブーミーと感じさせる音色な上に解像度などの様々な要素を鑑みた際のイヤホンの割高感が目立ったためです。個人的にIE300が出るまではIE800sやIE500Proぐらいしか視聴していませんがイヤホンに対するゼンハイザーの考え「必要な要素」は自分とはかけ離れているのだろうと感じていました。

しかしながら、一昨年発売になったIE300は見事に価格と音質のバランスを融合させており、その後に発売されたIE600、IE900も見事なサウンドチューニングで大好きになり、勝手に新世代のポータブルオーディオ機材のデファクトスタンダードになると確信するほどの出来でした。当然、その後IE900は購入しています(;・∀・)。

一方でIE500ProなどのProシリーズは今も併売されていますが視聴で聴いた時の感想はどうしてもピーキーで、プロのステージ等向けの特定の楽器をターゲットに作られていると今でも感じます。ステージでは全ての音が大きいのですが、IEMで遮断されるのが中高域ばかりカットされるため、IEMをつけていてもステージの低音だけが貫通してくる形になります。このため、SHUREのSE215やAcoustune RS ONEなども通勤などの騒音対策に加えてステージの低音にも負けない低音量を稼ぐチューニングになっていると言われています。

ではIE100Proはどうかと言うと、視聴して感じたのはシンバル等の金属音が圧倒的に強く鋭い高音域表現です。どのようなターゲットに向けて作られたのか想像できないのですが、特定の楽器という方向性は感じず、静かなDTMなどのミキシング環境などが考えられるかもと感じます。高域の感度が落ちた方向けなども考えられます。

実際にモニター用なのでリスニング用途として使っている自分には預かり知らぬレベルの話ではあるのかもしれませんが、IE100Proの巷の評価に対して実際にどの程度リスニングにつかえるのかを自分なりに回答を出したいと思い、購入してみることにしました。

また、とある経緯からIE40Proの偽物(逆相)を所持しているので偽物との聴き比べもしたく購入してみました。

販路、購入先(サポート)

Amazonで購入できますので、私もAmazonで購入しました。

注意して欲しいのは販売元、及び出荷元がAmazonになっているかです。ゼンハイザーは偽物も多いので正規販売店からの購入を心がけてください。

SPEC

上記の販売サイト等を御覧ください。ポイントとしては10mmの1DD、Pentaconnの異形端子を採用していることでしょうか。

箱とか付属品とか本体

開封体験

あまりにも有名なので割愛と言いたいですが、いつ偽物の流通が始まるかわからないのがゼンハイザーの怖いところですので一応ざっと写真を乗せておきます。


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良くある偽物の特徴としては付属品などの品質がチープなものに置き換わっていることが多いです。

筐体

筐体のサイズ感は小さく、ビルドクオリティもまずまずですね。f:id:el_snow:20230301194033j:image

R側はペンタコンのメス端子が赤くなっており、透けて見えます。本体には固定のフィルターは無いのですが、スポンジのフィルターが詰められています。
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ステムには切り込みが入っており空気を逃がす構造になっています。その代わりにフロント側に良くあるベントが有りません。

IE40 PROの偽物との比較

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左が偽物です

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パット見は似ていますが、比べてみるとクオリティが1段階低いですね。

競合機種との比較

競合というよりは同じゼンハイザーのIE900等と比べてみました。f:id:el_snow:20230301194313j:image

コネクタ 「Pentaconn異形(埋込)」

普通のPentaconn 端子に見えて、実際にはそこに段差を加えた特殊タイプになっています。IE400Pro、IE500Proと共通なのは安心ですが、ご注意ください。f:id:el_snow:20230301194145j:image

tweetの通り、IE300, 600, 900のMMCXのコネクターの段差の様に日本ディックスがゼンハイザーの為に準備したものの様です。ゼンハイザー規模になると一般のリケーブルが刺さってしまうと故障の原因になりサポートコストも増加してしまうのでこのような対処をしていると思われます。

Pentaconn 異形は採用されているケーブルは少ないですが、MMCXよりは不良が少ないと言われているPentaconn 端子ですので多少は安心してリケーブルなどができるかと思います。非保証ですが、私は下記のOKCSCの変換プラグを使ってリケーブルを試してみています。

ステム形状 「5.58[mm]」

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重さ 「4.6[g]」

TRN VX proが12.3g、HM20が11.4gなので圧倒的に軽いです。

直流インピーダンス 「14.1[Ω]」

テスタ―*2で実測したところ直流インピーダンスは両側平均14.1Ωでした。

ケーブル

耳掛け部分の使いやすさは良質なのですが、ケーブル本体に癖がつきやすく、摩擦も多いブヨブヨの質感です。この価格帯のケーブルとしては少々使いに難いものが付いているように思います。

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Pentaconnプラグではありますが、異形タイプの為、一般的なPentaconn プラグのイヤホンには使えないケーブルです。

直流インピーダンス 「0.7[Ω]」

テスタ―*3で実測したところ直流インピーダンスは両側平均0.7Ωでした。

付属イヤーピース「◎」

2種類3サイズ、計4ペア付属しています。

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付属イヤーピース(左)とSpiralDot++(右)の比較してみました。
f:id:el_snow:20230301194238j:image本体側にダストフィルターが無い代わりにイヤーピース側にスポンジフィルターが付いていますね。

使い勝手の評価

クロストークチェック 「無し」

手順*4に従って確認しました。

現実的なボリュームでは気になるレベルのクロストークはありませんでした。

ホワイトノイズ 「なし」

ややホワイトノイズが出やすいLotooのPaw PICOに繋いで最小ボリュームで聴いてみましたが聴感上記になるレベルのホワイトノイズはありませんでした。

寝ホン 「◎」

本体の厚みが薄いためかなり向いている構造です。内側にはベントが無く、ステムの溝で空気を逃がすタイプなのでイヤーピースの選択次第によっては鼓膜へのダメージありますので注意が必要です。

外使い(音漏れ、遮音性、タッチノイズ) 「〇」

指でステム側を抑えて遮音してみましたが3割ほど音漏れしており、概ね優秀なレベルですが少し気をつけたほうがよいかもしれません。

ポーチ

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音質以外の総評(付属品、ビルドクオリティ等) 「〇」

約10000円クラスのイヤホンとしてはPentaconn 採用プラグケーブルが付属しており、総合的には十分なクオリティの付属品です。ポーチなどの付属品はおまけ程度ですが問題ないレベルかと思います。

 

音質について

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ファーストインプレッション

価格帯を大きく超える高い解像度が魅力という前評判と、xperia10IIを使った試聴レベルでは強烈に刺さった高域のイメージがあったのですが、色々な意味で裏切られた感じがします。

解像度は今の時代であれば普通に良いレベルですし、高域の刺さり具合は想像よりは少ない一方で、超高域にかけての金属音がやたらと目立つチューニングであるという点です。

IE900を聴きながら着弾を待っていたこともあってかなり残念に思った部分もありましたが、流石に価格帯が違うと後から反省しました。

競合機種との比較について

モニター用途のイヤホンであればSHURE SE215やAcoustune RE ONEですが、 リスニング用であればダイナミックならEA500、ハイブリッドならCCA HM 20やTruthear HEXA等になろうかと思います。

エージング(バーンイン)

箱出しから30時間ほど使用したでしょうか。この感で大きな変化は無かった様に思います。

試聴環境

標準環境*5を使っています。

で色々と使ってみましたが、やはりXperia10ivなどよりもM17 DCの方が格段に音が世おいです。いったんはBTR7をメインに聴き込みました。イヤーピースはSpiralDot++を使っています。

帯域バランス 「高域重視」

シンバルやチャイムなどの楽器が目立つ高域~超高域が強め、かつ低域はサブベース弱めのチューニングで、全体としては高域が目立ち易いバランスです。

音色(寒暖、明暗、響き、粘度、厚み) 「〇」

寒暖はニュートラル傾向、やや暗めのサウンドで、ややソリッドかつ金属的な抜け感ある響きのあるタイプで、音像はやや細く厚みも薄めかと思います。

音色の特徴は兎にも角にも高域の鋭い金属的な響きが乗る点で、楽曲全体の中でハイハットシンバルやチャイムなどの楽器が目立つ点はもとより、ボーカルの高域の強さを引き立ててきます。

10KHzを超える鋭い高域は楽曲全体を支配しているようで、様々な楽器の付帯音として乗ることで解像感を高めてくれており、その鋭い音色の芯が音の細さと解像感の高さを演出しています。

全ての音色に乗る高音の表現としては「リアル」さというよりは金属音の演出感が強く音自体は捉えやすい一方で、全ての音色がキンキンした自然さとは異なる感覚があります。モニターイヤホンとして出ている音の音程の確認という意味では良いのですが、リスニングイヤホンとして使う分にはかなり癖のある音色だとも感じます。

正直に言ってここまでの異端な音色がゼンハイザーのエントリークラスのイヤホンとして存在したことは驚きなのですが、約5年の歳月を経て個性として市民権を得ているという点では逆に唯一無二の個性となっているように感じます。

つまりは下手に似たチューニングの音色を作ってもまず受け入れられないバランスになってしまい、市場に受け入れられないのだろうと思います。

つまりは、あまり真似されていないようにも思えますし、IE100Proのこの音色が気に入ったのであれば上位互換的な音色はほぼ無いのかもしれません。

音場(広狭、重心、遠近) 「ー」

価格帯を踏まえると概ね平均的なサウンドステージです。頭の中で横も上下も前後も一般的な広さです。適度な近さ、重心の高さで特徴的な部分よりも平均的でなじみ深い音色の出し方だと感じます。

モニターイヤホンらしく過剰な演出も無く、かといって音色の混濁があり極端な音像表現もない音になります。モニターイヤホンとしては素晴らしいかと思いますが、一介の素人が評するリスニングイヤホンとしては一般的なかと思います。

音場の広さや空間表現の巧みさを求めるのであればEA500やHM20といったリスニング用の競合イヤホンの方が良い様に思います。

定位、音像 「ー〜◎」

価格帯を踏まえると素晴らしい定位表現です。ただし気になるのは音像表現で、高域の周波数帯に代表される過剰と思えるような音像演出はやはり違和感があります。

全体として音の立ち上がりに高域成分が強く、アタックの立ち上がりをブーストして強調している感覚があります。このため低域から高域に行くに従って定位表現が良くなる傾向があり、特に中域~高域の楽器の位置関係やその音像は明瞭で価格を超えて素晴らしいと言えます。

モニターイヤホンとして価格帯を考えると中高域にかけての楽器の聴き取りに特化しているように感じます。低域に行くに従い、音が混濁して音像が乱れてしまうのですが、高域のエッジが音の芯として作用することで音像の掴みやすさを補助してくれます。

モニターイヤホンとしては「◎」かと思いますが、リスニング用や原音に近いかという観点で見た表現としては好き嫌いが出やすいと感じます。個人的には個性的で味があるとは思うのですが、好きな音色かと言われるとモニターイヤホンとしての味付けが濃すぎると感じてしまいます。

もちろん好き嫌いは出てしまうかと思いますが、音色だけで言えばHEXAやHM20のような機種の方が表現が面白い様に思います。

解像度、分離 「〇」

価格帯を踏まえるとまずまず良いと感じました。

高域の音色の強調による解像感の補助があるので解像度が高い様にも思えるのですが良く聴きこむと粗さが目立ち、価格帯の限界を感じさせます。

鋭い高域の補助によって音像は捉えやすいのですが、特に細かい音のディティールは高域の陰で省略されやすく、リスニングとして聴きこむほどに細部の表現が恋しくなってしいました。この辺りは高い解像感、素晴らしい高域表現からなるない物ねだりなのかもしれません。

このあたりは好き嫌いもあるかもしれませんが、より高い解像度や分離を求めるのであればリスニングイヤホンでもCCA HM20やHEXAといった競合イヤホンの方が良い様に思います。

低域の質について 「ー」

低音の質についてはサブベースの量感を除けば十分な量感と音色だと感じます。決して悪い訳ではないのですが、量感を主体として深さや広がりが少なく、音色の厚みが無いので低音の圧が不足する感覚があります。高域の音量を主体に音量を調整してしまうとどうしても音量が不足してしまうのですが、アタック感とある程度のスピード感はあるので量感にさえ満足できれば十分と言えば十分かと思います。

 

中域の質について 「ー」

音色が高域に寄りがちなためやや寒色よりと感じやすい人もいる音色です。特にボーカルの音色は薄く細目で音の中芯に鋭い高域が混じるので苦手と感じる人も多いかと思います。音全体の表現力としては並みですし音は冷淡でボーカルの熱気や迫力とは無縁の音というイメージです。

一方でもちろんその点はモニタリングとしては優秀さになり、ボーカルの線の細さや音色の芯の捉えやすさから各楽器の位置や定位感の良さに変わります。私自身はやったことは無いのですが楽曲のミックスの際などにも音毎の信号の有無を含んだ様々な確認や、全体のバランス感を整えるという意味で役立つのであろうと推察できます。

モニターイヤホンとしての優秀さとリスニングイヤホンとしての欠点を併せ持つ機種ではあるのですが、リスニングとして様々な楽器の音を再発見できるような特性もありますのでこの価格として個人的にはアリだろうとは思います。このあたりはEA500やHM20の様なリスニングイヤホンとの選択の分かれ目になるかと思います。

高域の質について 「△~◎」

高域の量感は強めで金属的なキンキンしたような煌びやかさもある音色です。表現力が極めて高いわけではないのですが、強く目立つ高域を含んだ楽器は素晴らしい定位と存在感を持ち、音色の捉えやすさ、位置関係を瞬時に把握しやすいという特徴があります。自然な音色とは無縁とも思える金属的な高域は女性ボーカルを始めとした歯擦音にも鋭さを与えているのでこの高域表現を気に入るかどうかがこのイヤホンの分かれ目になるかと思います。

高域のイメージとしてはキラキラではなくキンキンとしている音色で、平易な言葉で言えばトライアングルの金属音が近いかもしれません。当然強調される音色としては不自然ではあるのですが、慣れると高域~中域の楽器の芯を捉える補助となって見事な定位感を手に入れることができます。ゼンハイザーのイヤホンで自然な高域の音色を求めるのであればもう少し上位のイヤホンを狙う方が良いかと思います。

購入したけれど強烈に高域が刺さって困るという方に個人的なアドバイスとして高域が刺さると感じた場合は音量を2,3段階下げることを検討すると良いかもしれません。外使いなどの騒音に負けてしまう場合はこの技は使えないのですが、静かな室内などでは有効な場合が多いです。

SPL周波数特性測定とか

*6

 

vs IE900

風の噂でIE100とIE900の波形が似ているのではないか?という話があったので比べてみたのですが別物でした。実際の聴感でも音はかなり別物なので当然と言えば当然でしょうか。

ちなみにこうしてみるとIE100Proは10KHzに全体帯域で最も高い音圧レベルを誇る鋭めのピークがあることがわかります。もちろん個人差はあろうかと思いますがこのピークが刺さりやすいのかと思います。

 

相性について

ジャンルの得意不得意

楽曲の得意不得意というよりどうしても聴き方に向き不向きがあるイヤホンかと思います。つまりはボーカルに熱気や迫力を求めるような楽曲と聞き方にはとことん合わないように思います。また、生録音系の楽曲でも自然な音色を楽しむ様な楽曲も合わないよです。一方で、楽曲の音程の確認や収録の有無、耳コピーなどまさにモニタリングに使う用途では様々な楽曲に使うことができるかと思います。

また、ジャンルだけで言えばボーカルや音色の音の正解が無いEDMや打ち込みなどの楽曲には無条件に合うかと思います。

アンプ(上流)による印象の違いについて

M17以外ではFIIO BTR7、Ttruthear SHIO、Xperia10iv、AiyimaH1などを繋いでみましたが上流にそれほど依存せず概ね同じ印象でした。当然ながら良い上流ほど良くなる傾向はあるのですが100Proに限ってはそれほど上流の要求は強くありません。

イヤーピースによる印象の違いについて

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JVC SpiralDot++(音場、高域、低域重視) 

今回のインプレでのデフォルトイヤーピースです。

標準イヤーピース 「〇」

やや横の音場が狭くなることに加えて高域と低域のレンジが狭くなる印象です。スポンジのおかげかほんの少し金属的な音色が少なくなる点は優秀です。ゴミの侵入が無い点は優秀ですが個人的には交換した方がより音楽的な楽しみが出るように思います。

一方でこのイヤーピースは入手性が悪いこともあり、あまりオススメできないというジレンマもあります。

TRN TIps T-EAR(超高域重視) 「〇」

装着感が良く、音場を少し犠牲にする代わりに低コストなイヤホンの高域特性を改善してくれる傾向のあるT-EARです。私はサイズが小さすぎるのでSymbioのオレンジ色のスポンジのみを中に詰めて評価してみました。

低域全体の量感が減ってさらに細いタイトな音色になるほか、意外と高域のシンバルなどの楽器の主張はやや弱くなる印象を持ちます。金属的な音色もやや少なくなり、刺さりも減ったように感じます。楽曲全体がスッキリとして明瞭になっているのですが、やや定位感が失われており、全体的に普通のイヤホンに近づいた印象です。音場についてもやや狭くなるので特徴が失われる方向性だと感じます。。

T-EARはコストが安いこともあり、個人的にはかなり良い変化だとも言えるのですが、サイズの問題もあり、他の感想以上に参考程度に捉えてもらえればと思います。

Spinfit W1(中域、低域、解像度重視) 「〇」

 

SpiralDot++と比べると横と上下の音場は狭く、高域の量感が大きく減る印象です。一般的にW1は音像重心が一歩前方にくて迫力が増す傾向があるのですが、あまり変化が無いように思います。低音の深さ自体もSpiralDot++に比べて少なくなっていますし、解像度が上がっているのですが、高域の金属音の低下が著しく、音像の掴みやすさや定位感が失われてしまいます。IE100Proの欠点も無くなる印象なのですが、逆に良さも殺している印象で、この方向に音色を変化させたいのであればアリだと感じました。

 

SednaEarfit Max(ボーカル重視、低刺激)「◎」

音場はSpiralDot++までは行きませんが左右上下に広いです。音色がやや暖色傾向になり、温かめの音色になります。低音の量感も若干増える印象で、中域の厚みも出るのでボーカル用としてはかなり秀逸なのではないかと思います。また高域の金属音もキンキンからシャンシャンの音色にややシフトするので好ましいと感じる人も多そうです。個人的にはリスニング用途でつかうのであればかなり好印象に思いました。

final TypeE soft(ボーカル艶重視)「◎」

finalストアでイヤピガチャを引くか、final製品(Study1かVR1000か糸竹管弦)を購入することでしか手に入らないTypeE softですが、入手性も上がってきていますので試してみました。

このイヤーピースは基本的には普通のTypeEと同じではあるのですが、普通のTypeEよりも低音が控えめでやや音場が広めで中域のボーカルなどに艶が乗るボーカル重視イヤーピースです。

結果としては低音は少し量感が減って質感が悪くなった印象はあるのですが、中域のボーカルが少し主張が強くなる点とほんのすこし艶感が出ます。

音場はSpiralDot++から比べると少し狭くなる印象はあるのですが、個人的には強すぎる高域の補助による定位感はリスニングにはキツイと感じる部分もあって、かなり良いバランスに仕上げてくれているように感じます。

 

Moondrop水月雨 清泉(ボーカル重視、刺さり防止)「〇」

女性ボーカルの音色がクリアで透明感は出るのですが、刺さり防止についてはあまり効果がありませんでした。左右の音場はある程度広いですし、低音も普通の量感があります。相性などもあるかと思いますが、音の立体感などの表現もそれほど特筆する部分も無く強いて試すほどの価値は感じませんでした。

まとめ

結論としてイヤーピースでも音は変わるイヤホンではあるのですが、イヤホンの個性としてモニター用ということもあってかあまり大きな差は感じませんでした。個人的に一番気になったのは前方のチャンバーにベントが無い点で、ステム部分の溝が完全にふさがれてしまうイヤーピースを装着すると鼓膜にダメージが入りやすいです。

SednaEarfitなども密閉性が高く付け外しの際に鼓膜に対して力が加わっている嫌な感覚がありました。

ケーブルによる印象の違いについて(注意)

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注意:

リケーブルについては科学的に見ればごく低品質なものを除いて音質の変化に対する定量性のある決定的な証拠はありません。

このためリケーブルは貼り付けなどと変わらないオカルト的な要素を過分に含みます。

幸いながら私はイヤホンケーブルによる音質の変化を強く感じられるのですが、個人差がありますので万人におすすめするものではありません。

M17 "AppleMusic" -> 「    」-> イヤホン -> SpairalDot++

 

デフォルトケーブルについての補足

一般的な標準ケーブル程度の認識で良いかと思います。ゼンハイザーなどの大手のケーブルはあまり良いケーブルが付いていない事が多いのですが、そのケーブル込みの音作りになっている事が多いです。IE100Proでは無くHD600シリーズやHD800シリーズ、HD25等に言える事ですが、リケーブルしてみると変化が大きく、良い様に感じるものの、元もバランスから崩れてしまい、結局は純正に戻るという方も多くいると聞きます。

IE100Proに限ってはそこまでケーブルの癖が強いようには感じないものの変化はするので、このバランスが気に入った方はこのままでも良いと思います。もちろん普通に使えますが癖が付きやすく絡まりやすいこともあり、音質の向上も目的とするのであれば変更は良い選択肢になるかと思います。

Tripowin Altea4.4㎜ mmcx + okcsc IE400 to mmcx adpter 「〇」

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Tripowinの定番ケーブルAlteaにMMCXアダプタを使って接続して聴いてみました。変化の傾向として強く感じるのは中域~高域の音色の滑らかさが上がったこと、そして高域のキンキンした響き方がより高い周波数帯に変わったかのような感覚になる点でしょうか。全体的に音像が少し高めの位置になり、上下の音場感が広くなって表現が良くなったように思います。一方で若干ボーカルなどは高い位置の分、少し遠ざかる印象で、俯瞰性が強くなった印象がでます。音色としては解像度や定位感が良くなり、前後の音像表現も良くなることで音は鮮烈で派手な方向となることで、より一層モニターイヤホンとしての方向性が強くなったように思います。一方で音色の質は確実に上がっており、標準ケーブルに戻すとザラザラしたような音の粗さが気になってしまいます。

悪い相性では無いですし、個人的には好きな音色ではあるので変更の価値があると思うのですが、標準のケーブルの個性からは確実に遠ざかるので標準ケーブルで慣れ親しんだ人が強いて変更する価値があるかと言われると難しい様にも思います。

Yongse Expert AgMax8 4.4㎜ 2pin+ okcsc IE400 to 2pin adpter 「△~◎」
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約10Kという価格ながら超高解像度かつ広大な音場表現を持つ純銀ケーブルとして有名になりつつあるAgMax8を付けてみました。

結論から言えば素晴らしい音なのですが相性としては人を選ぶ音です。解像度は高いのであろうかと思いますが、ドライバーの限界なのかやや音の粗が見えてしまいますし、音色のコントラスト(解像感)も高く人によっては聴き疲れするであろう音色の感覚です。音色は明るくなり、音像はやや近くなったうえで音場も広いのですが、バランスとして中高域寄りの音色なこともあり、中域~高域がかなり煩めの音色になってしまいます。特にサブベースに近い低音は浅い表現なので間違いなく人を選ぶ感覚がありますが、アタックはしっかりとしていますし高域のキンキンしていた音色は煌びやかさを纏い、華やかで艶やかです。

決して中域は主体とならないのでモニターイヤホン的な立ち位置からは離れない感覚がありますが、定位も良く音像も明瞭で個人的には素晴らしいサウンドだと感じます。

NICEHCK DragonScale 4.4㎜ 2pin+ okcsc IE400 to 2pin adpter 「◎」
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日本Amazonにも遂に登場した龍麟ケーブル、折角なのでどこまで伸びしろがあるのか気になって繋いでみました。

音色の変化としてはしっとりとした暗めの音色に変化すること、ザラザラとした中域から高域の音色の粗が無くなるほか、キンキンしていた高音と中音域の音色が調和したことで音像の表現が豊になったような感覚があります。帯域バランスとしては低音、及び高音がややほんの少し強くなることでやや微ドンシャリになる傾向があります。

音場感としては左右については若干狭くなった感覚はありますがほぼ同じで、上下も同等です。前後の音色の立体感が出ることで前後としては半歩近づいたかのような迫力がでます。ほんの少しですが、歯擦音が刺さりづらくなることや、高域のキンキンした音色はやや常識的かつ一般的な音色に近づくように思います。ただ、これは個性が薄くなっているとも取れるので難しいところでしょうか。

ケーブルの価格を考えるとこれぐらいは当然という感じもありますが、十分に素晴らしい音色です。

 

音質の総評、所感

当然ケーブルは標準構成となりますが、個人の主観的な好みで言えば80点、私が客観的だと思う好みの点数としては84±5点です。価格帯と音のレアリティ、付属品等ユーザビリティを考慮した総合的なランクはA10K Tierでは2としました。

個人的にセール価格前のA15K値段帯でリスニングという方向性で、かつ音だけで評価すると癖が強すぎてTier3ぐらいでも良いのですが、ゼンハイザーという普及率とブランド力とリケーブル後の実力という点等も鑑みるとTier2が妥当だと感じています。

噂ではIE100Proは価格帯を超える化け物レベルの解像度を誇るとのことで今回はわかるのでは?と今回リケーブルなどをして聴き込んだわけなのですが、その片鱗は見えたように思います。もちろん私はどうしてもリスニング用のイヤホンがメインになりますので判断できませんが、収録などプロ用の現場などでは間違いなく音、実用性、共にTier1レベルのイヤホンだろうと思います。その上でリケーブルをしたあとのIE100Proの実力はかなり高く、これ一本に絞ってつ使うという用途として考えると、装着感も踏まえて十分に有りだと思えまう完成度です。

とはいえゼンハイザーのProシリーズ用のPentaconnケーブルは選択肢が少なく高いのでリスニング用に高いリケーブルを購入するのであれば最初からIE300などのイヤホンも視野に入って来るかと思いますので難しいところです。

先日IE200シリーズが発表されていますので、今後機会があればIE200なども聴き込んでレビューなどできたら嬉しいです。価格差はあるので当然ではあるが音色の自然さなどは通常のPROなし型番のIE300や900などと大きな差があるので一番価格が近い200はどのような音になっているのか気になるところです。

いずれにせよ、IE100Proは衝動買い的な感じでは合ったのですが、とても個性的な音色とモニター用途としては素晴らしい実力を持ったイヤホンだと認識でき、良い経験になりました。特に現在はセール中で10K以下なのは魅力的で、モニターとしてもリスニングとしても両方の用途に考えている方には最高の選択肢の一つになるイヤホンだと感じます。

Appendix

購入リンク

 

el-snow.hatenablog.com





*1:SHURE SE215等のステージモニターとは異なるマスタリング等のモニター用と思われる高域重視のチューニング

*2:KYORITSU KEW MATE MODEL 2000 オフセット除去

*3:KYORITSU KEW MATE MODEL 2000 オフセット除去

*4:

ホワイトノイズが少ないADI2DAC fsとMacBook 15 Late2013 Rewにて左のみなど片方CHのみからリスニングボリュームのホワイトノイズ又は1KHzSin派を出力します。出力先CHでホワイトノイズやSin波を確認したのち、取り外して遮音し、もう片側を装着して出音をチェックします

*5:

M17DC(PL50) "AppleMusic" -> 標準ケーブル-> イヤホン -> SpairalDot++

M17"AppleMusic" -LDAC-> XD05BAL -標準ケーブル-> イヤホン -> SpairalDot++

iphone12"AppleMusic" -A1749->  -> 標準ケーブル-> イヤホン -> SpairalDot++

Xaomi 11T Pro"AppleMusic" -LDAC-> BTR7 ->標準ケーブル-> イヤホン -> SpairalDot++

GV301"AppleMusic" -標準ケーブル-> Aiyima H1 ->標準ケーブル-> イヤホン -> SpairalDot++

Xperia10iv"AppleMusic" -標準ケーブル->  イヤホン -> SpairalDot++

*6:

〇測定環境 

ハードウェア:Apple Macbook pro 15 Late2013 BigSur11.6.4

ソフトウェア:REW V5.20.13

INPUT:MOTU M2 IN1 XLR (VXLR+)192KHz24bit

OUTPUT:USB2.0A to C変換 → ZERO DSP

カプラ:IEC711クローン 刻印( IEC60318-4 Type E610A)※100〜10KHz用


イヤーピース:Final TypeE Black Mサイズ

〇測定パラメータ

 入出力バッファ512K、Acoustic Reference

 出力音圧レベル:−12dB

 Length:2M(10.9sec) 、192kHz、0〜20,000Hz

 カプラキャリブレーションファイル適用、SoundCardキャリブレーション実施済み