ゆるふわオーディオ日記(blog)

気に入ったイヤホン、ヘッドホン、アンプ等のオーディオ体験を日記ブログとして思うままに書いています。ゆるキャラ、モフモフ、ポフポフ、ふわふわが大好きです。2年で400本ぐらい機材が増えてレビューBlogになりつつあります💦。アフィリエイトはレビューとかプレゼント企画の資金にさせてもらっていますニャ。

レビュー:Letshuoer S12 結論:Tier1 比類ない立体表現のA20Kクラス最強格(提供:Letshuoer様)

こんにちは

 

今回はLetshuoer様より提供いただきました平面駆動型イヤホン「S12」のレビューです。毎度ながら断りとして、提供いただいたレビューではありますが忖度なしで思ったことをそのまま書いていますので動機が異なるだけで基本的に通常のレビューと内容は変わりません。

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さて、まず結論ですがLetshuoer S12は、実売17,000円前後とA20K(アラウンド2万円)を下回る価格でありながら正確かつ気持ちの良いリスニングにも適した極めて優秀なイヤホンです。ハイエンドイヤホンにも無い広く立体的な音場表現と適度なドンシャリ帯域バランス、そして優れた表現力を併せ持つソリッドな音色のイヤホンです。ドライバが平面駆動型である為か多少は上流を選ぶ傾向はありますが、解像度や定位などイヤホンとしての基本的な性能も高く目立った欠点もありません。中級者向けに準備された付属品は必要十分で、ケーブルを含めてビルドクオリティも高く、さらにリケーブル等での伸び代も期待できる遊び心もあります。価格に縛られず捉えても私の手持ちの中でもかなり強く、好みとしてTier1に入りするほど素晴らしく、A20Kで最も気に入ったイヤホンです。自分と好みが近い方には強くおすすめできるイヤホンです。

目次

 

■動機付けなど

正直を言うとLetshuoerとうブランドは今回のイヤホンS12のレビュー依頼があるまでは知りませんでした。しかしながらS12について調べますと自分が気に入ったTinfihiのPシリーズと同じ平面駆動型タイプのイヤホンであること、そして尊敬できるレビュアーからS12を勧めてくださったこともあって今回の依頼をお受けすることにしました。

特にこのA20KはLofty、碧Ti3、BA15、Aurora等々、そして同じ平面駆動のP1plusなど自身の手持ちイヤホンでも最も層が厚いこともありそれらとも比較しながらレビューできればと思っています。

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■付属品とか本体とか

〇筐体

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筐体はシルバーとメタリックガングレーの2種類のカラーを選ぶことができますが私はメタリックガングレーを選びました。実物が届き確認してみると確かにグレーではありますがどちらかというとシルバーに近い色合いで、落ち着きがあって気に入りました。明るい色合いが好きなのであればシルバーも良いかもしれませんね。

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イヤホン筐体はオール金属でしっかりしておりつなぎ目も無いばかりか表面の加工も美しくシンプルであり癖の無いデザインです。オール金属と言われると重そうに思えるかもしれませんがアルミ合金の様な質感で重量は片側実測5gと、スペックの6gより軽く、逆に持つと軽く感じるほどであり重量感はありません。

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本体に関してはそこまで小さい訳ではないのですが厚みはあまりない上に突起が少ないので装着感は良好です。この辺りは同じ平面のP1plusやP2plusと比べると大きめではありますが一般的な多ドライバイヤホンと比べると小さく、良いサイズ感かと思います。

〇ケーブル

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付属するケーブルは購入時にプラグのタイプを4.4mmか3.5㎜かを選択することが出来き、平面駆動と聴いていたので駆動力が必要になることも想定して4.4mmプラグを選びました。届いたケーブルは想像よりもはるかに太くずっしりとしているタイプで見た目には取り回しが悪そうで重そうと思ったのですが、実際に触ってみると柔らかく、癖が付きにくいタイプで表面も適度な摩擦と滑らかさがあって絡みにくく好感色です。耳掛けする装着を想定していますのでこの太さがあれば耳が痛くなることも無いので個人的にはこれぐらいの太さであれば断線もしにくかろうと思われます。装着してみるとタッチノイズも殆ど無く、付属品ケーブルとしてはこれ以上望むべくもない品質かと思います。敢えて欠点を言えば私はあまり気にならなかったのですが、ケーブルが目立つの避けたい人や、細いケーブルを好む人には合わない可能性はあります。

4.4mmのプラグについては精度やメッキなども良好です。一昔前の4.4mmプラグは加工精度がいまいちだったりすることで接触が悪いなどの不具合もあったのですが、手持ちのどの4.4mm機材に挿しても安定して動作しました。3.5mmについては実物が無いのでわかりかねるところはあるのですが、4.4mmを選んだからと言って一昔前のように苦労をするということは無さそうです。

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気になったのは本体R側2pinプラグの硬さ、そしてRLの判別のしずらさです。R側のみかなり刺さりにくく、他のケーブルでもそうなので少しだけクリアランスが少ないのだろうと思います。ただ実用上は全く問題なく、レビューの為に10回以上リケーブルしましたが少し固めというだけで問題はありませんでした。mmcxタイプのイヤホンではこのような不具合があると大体は暫くすると壊れてしまうのでこのあたりは2pinタイプ方が信頼性があるように思います。

 

〇イヤーピース

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ステムについてはある程度細いのですが一般的な返しもついているいタイプなので特にイヤーピースの選択について困ることはありませんでした。標準付属イヤーピース以外にもSednaEarfitやFinal TypeEシリーズなど特に問題無く装着できました。SpiralDotシリーズは若干緩いのでイヤーピースは取れやすいですが音質について問題ありませんでした。

付属してくるのはシリコンタイプの形状の色違が違う2種類とフォームタイプについてSMLの3種類形9セットが付属してきます。残念ながら自分に完全にフィットするイヤピースは無かったのですが、緩いフィットでも音圧が殆変わらず何となく使えたのは驚きでした。もちろん完全密着していなければ低音は逃げてしまうのですが、他のイヤホンなら音像が変わるなというフィット感でもあまり変化がありません。というのも平面駆動タイプの特徴なのかこのイヤホンに関してはイヤーピースの密閉が緩くても音像の乱れが少ない様に感じますので装着に対する難易度は低いように感じます。

個人的には違うタイプのイヤーピースを付けるよりサイズ展開をSMLより増やして5サイズ展開にするなどはしてほしいかと思いました。これは複数の種類のイヤーピースを付けて貰うより、一つのイヤーピースの方が音作りにかける自信の強さを表しているようにも感じるところです。気持ちとしてはイヤーピースもケーブルと同じく、オーディオメーカーとして高額なイヤホンを販売するのであれば、標準イヤーピースがそのイヤホンの最高の選択肢の一つだと思わせるモノを付属させて欲しいと思ってしまいます。

〇寝フォン

筐体の薄さと形状が良好なこと、イヤーピースのフィットによる音像の変化が少ないことからかなり寝フォンにかなり向いています。横になって枕などに耳を押し付けてもほぼ音像が乱れず音質の変化は少ないです。ただ若干の厚みからくる圧迫感はありますのでそこが気になるのであれば別のイヤホンの方が良いかもしれません。

〇付属品

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他の付属品はレザータイプのケースが付属しています。大きすぎずケーブルと本体を収納するにはちょうど良い大きさで収納後に中で動く感じはありません。さらにレザーの質感が良く適度な硬さがあるので潰れたりせずしっかりイヤホンを守ってくれる感じがあります。また、他社が採用していないタイプなのも特別感があって良い様に思います。

〇その他、総評

全体として豪華すぎない必要十分な付属品で、商品パッケージも大きすぎず、イヤホン以外にコストをかけ過ぎていない点が好感触です。

最近は増えていますが個人的には購入時に最初から3.5mmと4.4mmを選べるのは嬉しいチョイスです。特に最近のプラグ事情としては4.4mmがデイファクトスタンダードになり、プレイヤー側も4.4mmのみなども増えてきたので最初から4.4mmが選べるのも時代なのだろうと思います。

尚、余談ですが最近は高価格帯を中心にケーブルのプラグ先の前に汎用コネクタを設けて3.5mmと4.4mmのプラグを交換できるタイプのケーブルが付属することが増えてきています。S12はそこまで望む価格帯でも無いかとは思いますが、このタイプは変換が一度挟まって接点が増えているので音質について考慮すればあまり望ましくないと考えています。実際に質の低いプラグ先を採用したと思われる激安中華のリケーブル商品では、同じ導体を採用している固定プラグのケーブルと比べて音質が大きく劣化したなどの報告も良く聞きます。それも踏まえるとこのS12など購入時にプラグ選択する売り方は広まってほしい様に思います。

 

■音質とか

〇ファーストインプレッション

いつもの環境が良いと思いましたのでまずFiiO M17 DCモード、標準ケーブル、標準イヤーピースで試聴しました。結果、平面駆動の圧倒的な音の立体感と分厚い音色と高い解像度、そして心地の良いドンシャリバランスを併せ持った規格外の大物が来たと実感しました。P2 Plusが現在修理中なので直接比較することは困難なのが惜しい感じたほどです。特にサブベースから出る強い低音はソリッド感があり、その上でグルーブ感も高く、高域は平面駆動らしく伸びるため全体としても圧倒的に華のある音色だと感じました。

エージングとか

箱出しでこの状態なので圧倒的な力を見せつけられた気がしましたが、この記事を書くまで大体100時間程ならしたでしょうか。基本的に大きな変化は無かった様に感じますが、敢えて変化を述べれば初期に比べてやや音の艶やかさ、美しさの様な雰囲気が洗練された感じはしました。特に最初の状態ではK9 pro LTDとの相性が悪いかと感じたのですが現在では艶やかな音色を奏でてくれてこれはこれで良いという変化がありました。

〇環境とか

価格的には2万円クラスなので基本的にはXADOO XD05BALやFiiO M17を主体に試聴しました。低価格帯としてはAGPTEKの激安DAPも3.5mmに変換して試したのですが、流石にAGPTEKについては元々低音が弱いこともあり全体的に貧弱な音色がしましたので除外致しました。

 

M17 -LDAC-> XD05BAL(OPA828) -標準ケーブル-> S12 -> SpairalDot++

M17DC(TankS4) -標準ケーブル-> S12 -> SpairalDot++

iPad -usbc-> K9 Pro LTD-標準ケーブル-> S12 -> SpairalDot++

 

○帯域バランス

 気持ちの良いドンシャリバランスです。特にサブベース帯まで綺麗に伸びる分厚い低音は心地良く音楽の下地をキッチリと作っています。

 一般的に平面駆動ドライバは能率が低く、低域になるほど振幅を稼ぐことが難しい事から低音表現が難しいと言われています。このため平面駆動型はそれを克服できる技術を投入した機種だけが極上の低音を奏でられる傾向がありますが、このS12の低域は17000円程度にも関わらずその域に至る勢いを感じ、微ドンシャリに纏めた高域から低域までの帯域バランスは見事としか言いようが無いです。逆にこれを聴いてしまうとP1plusではフラット過ぎて面白味の無いバランスという気さえしてきます。またドンシャリで知られるIntimeの碧Ti3と比べるとTi3の方が若干低音が強いバランスかと思います。

○音色(寒暖、明暗、響き、固液)

 やや寒色よりで、艶や美音とは対極と言ってよいソリッドで響きのある弾むような音色です。明るい暗いで言えば概ね中間です。このため手持ちのアンプではAKMのK9 pro LTDよりESSのM17や05balの方が合う音色です。もちろんDACによって音の傾向が決まるわけではありませんが、メーカーの音作りとしてDACに合わせる傾向がある為かとは思います。また全体の音色としてとても纏まりのあるものになっているのに音色の高低での寒暖の感じ方が一般的なイヤホンと異なるので平面駆動らしい音色とはこういう雰囲気なのかと唸らされます。

尚、寒色でソリッドと聞くと面白みのない音と思われるかもしれませんが真逆で、ボーカルを含めて音色に太さと芯があり、気持ち良いグルーブ感を感じるサウンドです。高域に至っては伸びやかな美しさも兼ね備えており、ダイナミックやBAには無いレンジの広さと統一感を兼ね備えた極めてレベルの高い音楽体験ができます。

○音場(広狭、重心、遠近)

 左右上下共に価格帯に見合う適度な広さを持つことに加えて、ダイナミックドライバやBAでも表現が難しい前後の立体表現は価格帯で随一です。完成度としても同価格帯のP1Plusと言うよりはP2plus と比較した方が良いと言って良いほどの豊かな音場表現で、ハイエンドの高価格帯に平面駆動のイヤホンが無いため、ハイエンドに迫ると言っても過言ではありません。この音の立体感に慣れてしまうと競合価格のイヤホンは前後にのっぺりした薄い音と感じるほどです。

音の重心は概ね中央かつ、前後はやや近めなので迫力は十分です。05balなどアンプによって音像はやや高く迫力と解放感を合わせ持ちます。

ソリッドな響きがぶ厚い低音とアタックに乗せて心地よく頭内音場を密度高く満たすので音のシャワーを浴びて包まれるかのような快感があります。気になる点を挙げればやはり音の密度と近さからくる圧迫感で、開放型ヘッドホンの音色の様な遠さを求める方には合わないかもしれません。

○定位、音像

 分厚い音が響くと聞くと定位や音像が乱れて音が混濁してしまうのではないかと懸念される方もいるかもしれませんが、広い前後表現を含めて定位は良く、音像もしっかりしています。補足すれば確かに音のエッジは響きのために捉えにくいのですが、音の芯ははっきりしているため密度の高い音像の空間が形成されているだけで音像自体は捉えやすいです。ここは特に音作りの巧みさを感じさせられました。

○解像度、分離

 価格帯、ライバル機種と比べても全体的に解像度は十分に高いです。強いて言えば音の分離は一聴しただけではやや悪いと感じるかもしれませんが、広い音場と解像度も相まってよく耳を傾けると分離も悪くありません。音を解像度や分離を頼りに分析的に聴きたい場合、音の太さも相まって聴き取り易いです。音源の荒も克明に描写する、、、っとまではいかないのですが解像度と聴き取りやすさからそれなりに荒も見つけやすいのでモニター用途にも十分使えると感じます。解像度の面ではTRNのBA15が競合機では最も優れていますが近いS12も勝ることは無いですが近いレベルまで高まっています。

○低域

 量感、アタック感、スピード共に価格以上の表現力を持っていると感じました。低音の広がりは前後を含めた立体感がのあるので他の帯域の音に被っているのに分離感があって両方の音共々聴き取りやすいという魔法の様な感覚です。S12は他の中音域や高音域が素晴らしいのですがそれを引き立てているのはやはりこの低音だと感じています。ティンパニやベースの音は厚みと響きによる量感は十分です。とは言え分離している為主張し過ぎず音楽の下支えとして音楽全体に華を持たせてくれます。

Loftyの様な暖かく艶と響きと立体感のある極上の低音っとまでは行きませんが、ソリッドかつ立体感があり別の方向性で近しい水準まで迫っている様に感じます。同じA20Kとは言え1万円程度安いこともありコストパフォーマンスではloftyに並ぶ飛び抜けた描写を持っています。

 

○中音

帯域バランスとしてはドンシャリになるにも関わらず音場の広さと立体感からボーカル等の中音域の音は全く埋もれず主張してきます。特に素晴らしいと感じたのは男性ボーカルで、中低域の野太く響いて厚みのある表現と繊細な抑揚を細かく表現が一体となって、男性ボーカルの魅力をありありと描写してくれます。ボーカルの音像は少し高めで近めなので迫力ががありつつも音場が広いためそれほど暑苦しさを感じません。特に人間が聞き取りやすい中音域だからこそだと思いますが、全ての音色が立体的でリアリティに富んでおり、それらの圧倒的な音の存在感が音楽への没入感を強めてくれます。イヤホンという頭内の箱庭でこの価格てこの音色が聴けるようになったというのはある種の革命に近い驚きを感じます。余談ですがASMRとも違う音源でもリアリティのあまり体がゾクゾクと反応してしまうことも何度もありました。

フルートやバイオリンなどの楽器や女性ボーカルは競合のイヤホンと比べてもやや良く、中高域への伸びの良さと響きの良さが光ります。ただ音色の太さは出る方向性なのでその相性をどう捉えるかによっては悪くないと言えるかもしれません。

○高音

高域の伸びは美しく伸びやかです。帯域バランスを考えるともう少し高音は派手でも良いかもしれないと思いますがドンシャリと言えるほどは高音は適度に量感が出ています。女性ボーカルのサ行である歯擦音は超高域側の9KHz帯の領域がやや刺さる傾向を感じますがオペラなどの女性の歌声の伸びはS12でしか味わえない領域に達しているとさえ感じました。楽器についてもピアノやピッコロなどの高音を担当する楽器に加えてトライアングルやハイハットシンバルなどの超高音域を含む楽器をBAでもDDでもない音の傾向でリアリティたっぷりに奏でてくれます。どちらの音が生々しいか?っと言われると難しいところはありますが、BAの繊細ではあるがか細く金属質で画一的な音色と異なり、S12は金管打楽器の素材と構造からなる高音の伸びをよりリアリティを持って鳴らしてくれます。このあたりはヘッドホンの平面駆動型の音色に通じるところもあると感じました。逆に言えばDDやBAやESTとも違うこの鳴り方は若干の癖を感じる人もいるかもしれませんね。

 

●F特性グラフ

Letshour S12 vs Tinhifi P1Plus

比較のためにTinfihiのP1Plusのグラフを載せていますが、フラットな形状をしているP1Plusと比べてS12がいかにドンシャリバランスかがわかりますね。とはいえ5Khz、9KHz、16KHzの山の位置、3~4KHz、10KHz、12KHzの谷の位置は一致しており要所要所で同じ平面駆動型の特徴なのだろうか?と考えさせられるグラフです。

尚、一般的な同価格帯のイヤホンの特徴として複合多ドライバであれば解像度は高いが音のつながりや鳴り方変化が気になったり、多BAでは解像度は高いものの低音のアタックが不足したり、1DDでは解像度や高域の表現が一歩劣るという印象があります。ことこの平面駆動に関しては何が問題になるのか?っと疑問に思い、このレビューに向けて聴き込むことになりました。F特性のグラフからは1DDでも見られる12KHzの谷があることと、P2Pulsでも見られた16KHzの山(共振)があり、P1Plusの波形を見るに平面駆動としては後者の16KHz の共振は構造上避けにくいのかもしれないと考えられます。正直ある程度の年齢になっているのでP1Plusを聴いたときには「超高音がはっきり出ているので凄いな」ぐらいしか思わなかったのですがFFさんにP1Plusを聴かせてみたところ16KHz起因と思われるモスキート音が強すぎて気になるという方がいらっしゃりました。それを考えればS12はその弱点も克服しているのではないかと思われます。

 

○アンプによる印象の違いについて

感度102dB/mW、抵抗16Ωと一般的なスペック故でしょうか、05Bal、M17両方共に素晴らしい音色であり若干の解像度の差はあれどDAPの値段ほどの差を感じず、1DDの様な上流に寛容さを持っていると感じました。強いて違いを上げれば05Balでは音量を上げた時の高音域の張り出しと音の混濁があり、M17は綺麗に音が分離しているところになるかと思います。

一方で出力インピーダンスが高いと思われるAGPTEKでは、低音が出ないなど問題がありました。S12も平面駆動らしく、1DDのように鳴らしやすいとまでは行かないようです。今回は4.4mmのバランスが標準ケーブルであったので3.5mmのアンバランスケーブルではまた違う傾向にはなりやすいかもしれません。と言いつつも6000円前後のXADOO X2Sで3.5mmに変換して聴いてみたところ問題なく鳴らせたのでそれほど過敏になる必要も無いかと思います。

 

○ケーブルによる印象の違いについて(注意)

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幾つかリーケーブルをしてみて標準ケーブルの音を確認しましたがこのクラスにイヤホンに付属させているケーブルとして十分な品質を持っているようです。このため、標準ケーブルの音が気に入った場合や、ECサイトで2,3000円クラスで売られているエントリークラスのケーブルには変更する必要はないかと思います。

敢えて標準ケーブルの欠点を上げれば横の音場が狭い事が挙げられます。勿論イヤーピースなどでも変化はあるのですが、横の音場の広さが物足りないと感じた場合や、ドンシャリバランス故により中域の楽器やボーカルにフォーカスを当てたい場合はリケーブルをするのも悪くありません。

幾つかリケーブルを試してみた感想を書きますと

 

〇Tripowin Altea 4.4mm

4000円クラスとある程度リーズナブルですが横の音場の変化はわかりやすく広がります。縦も若干広がるため、広大な音場に立体感がある音色が鳴り響くような感覚があります。解像度もほんの少し向上する感覚があります。この構成の欠点を上げるとすればAltea独特のスピード感になってしまうことで、スローテンポな曲長にこそ合うケーブルだと言えるかと思います。

〇NiceHCK SpaceCloud 4.4mm

非常にspacecloudらしい高い解像度と左右と上下に広大な音場が広がる変化があります。音場の変化と共にやや音色の重心が上がり、ボーカルは遠ざかるのでより開放的な鳴り方に変化します。他にも音色はやや明るく変化し、解像度も一段上がるので聴こえにくかった音が聴こえる変化も感じられると思います。SpaceCloudは高額ですが価格に見合う変化は得られる代表的なケーブルで、S12も例外なくその恩恵が受けられます。この構成の欠点を上げれば、折角のS12のグルーブ感がやや失われてしまう事かと思います。

〇NiceHCK GreenJelly 4.4mm

Sub FlagShipらしく高い解像度と左右と上下に広大な音場が広がる変化があります。音場の変化と共にやや音色の艶感が出てややウェットな音色に変わります。ボーカルは遠ざかるのでより開放的な鳴り方に変化します。他にも残響感にウェットさが足されることで響きの質が大きく変化した上で、解像度も一段上がるのでS12の別の側面を見ているような感覚になり、これはこれで良いと思える音色です。SpaceCloudは高額ですがGreenJellyはある意味SpaceCloudの味変ケーブルな上に価格も9000円(現在セール中で8000円)とこなれているのでお勧めできる構成の一つです。

この構成の欠点を上げれば、元のS12のソリッドな音色とは異なるウェットな印象を持つ事かと思います。

尚、JsHifiの白龍がどうなるか気になったのですが太過ぎて入りませんでした(笑)また、SHADOWについては標準ケーブルの方と同等と感じました。

○イヤーピースによる印象の違いについて(注意)

基本は装着感の問題でJVC SpiralDot++を使っている私ですが、今回FFさんからAZLAのSedna EarFit Vivid Editionを頂きましたので比べてみました。また、S12がドンシャリバランスなのでボーカル域にフォーカスを当てられる清泉も試してみました。

○SpiralDot++(低域強化)

標準は完全にフィットしていないので比べずらいのですが標準よりは横の音場が広く高音と低音の量感が増えます。一般的な他のイヤホンに装着したほどは横の音場は広がらないが低音の量感、超高音の伸びはすばらしくS12の長所であるドンシャリのバランスを心行くまで楽しめます。少し気になるのは楽曲により感じた低音の濁りでやや量が出過ぎていることによる弊害かもしれないと感じました。比較すると楽器や音場感楽しむ限りは悪くないと思いますが、中域とボーカルの音色を考えるとコスト的にもEarfitのVivid Editionや清泉を選択する方が良いと感じました。

○Sedna EarFit Vivid Edition(バランス型)

標準は完全にフィットしていないので比べずらいのですが標準よりは横の音場がやや広く中高域にフォーカスが当たる変化があります。低音の量感はやや抑えられる一方で中域から超高域にかけての音の艶感のみずみずしさが強調される感覚があり、ソリッドな音色と響きのシャープさを引き立てくれるようにも思います。特にボーカルの声のハリや伸び、そして金管楽器の超高域の表現力は見事でS12の苦手な部分を埋め合わせる方向でSpiralDot++より優秀かつ高相性だと感じました。EarfitのVividエディションは安いこともあり良い選択肢なのではないでしょうか。

○清泉 Spring Tips(高域強化)

標準は完全にフィットしていないので比べずらいのですが音場としては概ね同じ広さで低音の量感が減った上で中高~超高域にフォーカスが当たる変化があります。低音の量感はかなり抑えられるので低音の量感が多すぎると感じる人には良い選択肢かと思います。中域から超高域にかけての音の透明感の音の伸びが強調される感覚があり、ソリッドな音色と響きに上品さを足してくれるようにも思います。特に低音の広がりが減ることで今まで以上にボーカルの声や高音の金管楽器にフォーカスが当たり分離が分かりやすく向上します。一方で女性ボーカルの高域より上の帯域ではわかりやすく量感が上がるのでこれもまた苦手な人はいるかもしれません。尚、S12の苦手な部分を埋め合わせる方向なのはVivid Editionと同じですが別のアプローチであり、これも高相性だと感じています。清泉も良い選択肢なのではないでしょうか。

○所感

総じてここまで読んでわかるかと思いますがかなりレベルの高い音色だと感じました。繰り返しになりますが特に平面駆動のハイエンドイヤホンがP2Plusぐらいと言う事でこの音場表現をできる他のイヤホンが無いという意味でもかなり非の打ちどころ無いともいえるほどのレベルの高さを誇っているかと思います。P2Plusが鳴らしずらいことを鑑みるとこのS12の素晴らしさが一層引き立つようにも思います。

 

■結論

Letshuoer S12は、実売17,000円前後とA20K(アラウンド2万円)を下回る価格でありながら正確かつ気持ちの良いリスニングにも適した極めて優秀なイヤホンです。ハイエンドイヤホンにも無い広く立体的な音場表現と適度なドンシャリ帯域バランス、そして優れた表現力を併せ持つソリッド音色のイヤホンです。ドライバが平面駆動型である為か多少は上流を選ぶ傾向はありますが、解像度や定位などイヤホンとしての基本的な性能も高く目立った欠点もありません。中級者向けに準備された付属品は必要十分で、ケーブルを含めてビルドクオリティも高く、さらにリケーブル等での伸び代も期待できる遊び心もあります。価格に縛られず捉えても私の手持ちの中でもかなり強く、好みとしてTier1に入りするほど素晴らしく、A20Kで最も気に入ったイヤホンです。自分と好みが近い方には強くおすすめできるイヤホンです。

 

〇最後に

正直ここまでべた褒めすることになるとは思わなかったほどに素晴らしいイヤホンでした。このレビューを書くまで標準ケーブルでかなり聴き込んだので、今後はGreenJellyで味変しつつこのS12をしゃぶりつくしてやろうと思っています。最後になりますが素晴らしいイヤホンを作られたたこと、今回レビューの機会をいただいたLetshuoer様に感謝いたします。

 

ではまた明日。

 

■Appendix

〇測定環境 

ハードウェア:Apple Macbook pro 15 Late2013 BigSur11.6.4

ソフトウェア:REW V5.20.7

INPUT:Scarlett Solo XLR (VXLR+)192KHz24bit

OUTPUT:ADI2DAC fs (3.5mm IEM端子、DJ44C併用)768KHz32bit 0dB

カプラ:IEC711クローン 刻印( IEC60318-4 Type E610A)※100〜10KHz用


イヤーピース:Final TypeE Black Mサイズ

〇測定パラメータ

 入出力バッファ512K、Acoustic Reference

 出力音圧レベル:−12dB

 Length:2M(10.9sec) 、192kHz、0〜20,000Hz

 カプラキャリブレーションファイル適用、SoundCardキャリブレーション実施済み