こんにちは
今日はNOBUNAGA Labsから発売されているイヤホン用ケーブル「Gilgameš-Omega (ギルガメシュ-オメガ 2pin 4.4mm、以後ギルガメッシュ)」をGiitaさんからお借りしたのでその簡易レビューです。
〇ケーブルレビューの注意
注意:ケーブルについては科学的に見れば音質の変化に対する決定的な証拠はありませんので、オカルト的な要素を過分に含みます。幸いながら私はイヤホンではケーブルによる音質の変化を強く感じられるのですが、個人差がありますので万人におすすめするものではありません。
気になる方は読み進めるのを中断いただければ幸いです。
■音以外の要素
〇動機とか
Giitaさんからの依頼になります。個人的に良く見かけるメーカーのためNOBNAGA Labsは気になるメーカーの一つではあったのですが、有名が故にSNS上ではアンチの方も見かけたことがあり強いて手に取る機会はなかったのが本音です。今回、NOBNAGA Labsの大ファンと公言されているGittaさんのご厚意でレビューさせていただく機会をいただけました。
今回ギルガメッシュ以外にも3本同時にNOBUNAGA Labsのケーブルはお借りしていますので別途記事にしたいと思っています。このような機会をいただきましたGittaさんには感謝申し上げます。
〇スペックとか
毎度、ケーブルの線材とかそういうものにはあまり興味が無いので気になる方は販売ページなどを確認してもらえると嬉しいです。
〇重さ 「46.8g」
ケーブル単体の重さを測ってみましたが、Gittaさんが後付されたイヤーフック込の実測で46.8gでした。
銀月が46g、FOURMIXが39g、KBX4937が38g、NX7 MK4デフォルトが23g、S12デフォルトが30g、白龍が53g、KATOデフォルトが33g、AriaSnowデフォルトが13gですのである程度は重めになるかと思います。
〇コネクタ 埋め込み2pin 「0.76mm」
プラグは外側に溝がある埋め込み2pin対応タイプでした。ノギスでピンの外径を測ると0.76mm±0.01程度で、若干細めですがほぼ仕様通りでした。Giitaさんは中古購入されたとのことなのでもしかすると前のオーナーがすり減るほどに酷使した可能性もあります。
イヤーフックについては100均で売っているマスクなどにも使えるシリコンイヤーハンガーに熱収縮チューブを付けられているとのことでした。これが無い状態では使ったことが無いのですが、Giitaさんによれば太過ぎて耳にフィットしにくいとのことです。
標準の状態は見ていませんがRLの表記は赤いラインがあるかどうかで見分けるようです。
〇プラグ
幾つかDAP等にプラグを指してみましたが接触不良なども無く挿し心地も良好でした。
尚、プラグ部はネジ式になっていますので外してハンダの状態などを確認できます。細部の処理までは確認できませんが、しっかりと接続されていることがわかりますね。
〇導体
導体をマクロ撮影してみました。
こちらが分岐後で、ノギスで直径を測ると3.2mmでした。
こちらが分岐前で、太さは直径5mm程度です。
被膜は柔らかく手触りもよい上にしなりがあり太いのにしなやかで低反発です。太いですが取り回しは良い部類になるかと思います。
〇スプリッタ&スライダ
スライダは摩擦で止まっているだけのものですが、被膜の適度な摩擦でホールドできるようです。室内利用でざっと使った感じは滑り落ちてくることはありませんでした。
〇抵抗値(直流インピーダンス) 「0.1Ω」
テスタ―*1で実測したところ直流インピーダンスは0.1〜0.2Ωでした。高級ケーブルだけあってほぼ測定限界です。
〇その他、まとめ
目立つ金色ということで、金色のイヤホンに良く合うケーブルだと感じますが、目立つの中々使いにくいかもしれません。JSHiFiの雷神などに比べればややくすんだ黄色なのでやや落ち着きはありますがそれでも目立ちますね。
値段は約5万円なので相応の作り込みはされているのかと思いますが個人的にはそれを判断できるほど高額なケーブルを持っていないので判断が難しいです。
■音について
合わせるイヤホンについては迷ったのですが写真のチョイスにしました。
リケーブルが不要な機種の代表として64Audio Nio、BQEYZ Winter、Lofty、リケーブル推奨機種としてLETSHOURE S12 Pro、Truthear HEXA、CCA HM20(Sタイプ)、Blessing2を選定しています。
〇環境
M17(DC) -> ギルガメッシュ -> イヤホン ->SpiralDot++
評価基準は5段階で、細かく決めてはいないのですがなんとなく以下のい感じです。
◎:標準ケーブルと比べて高相性かつ魅力的な音
〇:標準ケーブルと比べて高相性又は、良相性かつ魅力的な音
ー:標準ケーブルと比べて良相性又は魅力的な音、
△:標準ケーブルと比べて魅力を引き出さない組み合わせ、又はコスパが悪い
✖:標準ケーブルと比べて魅力を引き出さない組み合わせかつコスパが悪い
〇CCA HM20 ⇒ 結果:◎
言わずもがな、リケーブル推奨のHM20(タイプS)です。
最初から吹き出すかと思いました。目の覚めるような圧倒的な解像度で描写されるシャープかつ明瞭な音像に、ふわっとした抜群の空気感を持つ広い音場は文句ありません。HM20 SタイプはJSHiFiの雷神やMoondropの秋月などの金メッキケーブルが合っていたのですが、ギルガメッシュも良好です。HM20自体がかなり解像度が高い上に解像感も高くキツいと感じ易いイヤホンではあるのですが、それをふわっとした音色にしてくれることで全体のバランスが取れる印象です。
超高域はやや強いのですが全体の音色の明るさを考えると個人的にはちょうど良いバランスに感じます。特に雷神などで感じた音場の狭さが無く音色が開放的でヌケ感が良好なことも好印象です。
他にもHM20のスピード感を存分に引き出している感覚は強く、その上で滑らかさや淑やかさを融合させて雷神以上に音色の芯を通してくれる感覚があります。
HM20(Sタイプ)は相性の良いケーブルはいくつもあるのですが、例えばYongse AgMax8などと比べると、勝っているのは上下と前後の音場の広さ、音像の近さによる音色の迫力です。解像度はほぼ互角ですが明瞭さも相まってより鮮明に捉えやすいのはギルガメッシュです。、音の広がりによる空気感、空間から出る雰囲気もギルガメッシュの方が良さそうです。
一方で定位の良さ分離の良さといった点は空気感と音の広がりからやや苦手に感じます。また、音一つ一つの繊細さや音場のリアリティといった面もAgMax8に分があるように感じます。どちらもケーブルの音の印象が強く、HM20を色濃く味付けしてくれるのですが方向性が違うのでこれはこれで良いという感覚です。
誤解を恐れずに書けばケーブルの価格は高額なのですが、合計金額を考えても同価格の市販イヤホンと十分以上に勝負できる音色です。人によっては金メッキケーブルの色が濃くでるので好き嫌いはわかれてしまうのですが、いずれにしてもHM20(Sタイプ)に対してトップクラスのリケーブル候補の一つになり得るケーブルです。
〇TRUHEAR HEXA ⇒ 結果:○
HEXAの標準ケーブルも色付けが少なく個人的にはつまらなく感じてしまうのでリケーブル推奨機種です。
ギルガメッシュは足りないHEXAの音色の鮮やかさを付加した上で、解像度を引き立ててくれます。音場も適度に広く上品な音色でHEXAの秀逸な音場表現も活かせています。楽器の表現、ボーカルの表現どれも長所をしっかりと残して纏まった音色を聴かせてくれます。HM20の様にギルガメッシュの色が濃く出てくるようなこともなく、これと言った弱点も感じられないので良い相性だと思えます。
然しながら問題点としては、このケーブルがHEXAよりかなり高額ということです。素晴らしいバランスで素晴らしい音色ではあるのですがイヤホン本体と合わせた合計金額が同じ市販価格のイヤホンと比べて勝っているかと言われると良い勝負ぐらいだと感じます。
また機能面ではHEXAが埋め込み2pinなので相性は良好に思えたのですが若干ピンがゆるく抜けやすかった点も気になりますし、デザインもあまり合っていない様にも思えます。もちろん、ケーブルを持っておくことで組み合わせを楽しめるという意味では良い選択肢なるのではないかと思います。
〇LETSHOURE S12 Pro ⇒ 結果:○〜◎
S12 Proもできればリケーブルさせたい機種です。元々完成度が極めて高く素晴らしい基本性能をもつ機種ですがとても素晴らしい相性です。
解像度の高さ、音場を描写する空間の広さ、どれもが素晴らしいの一言です。全体を通してフワッとした音の広がりがあり、独特の残響感も相まってS12Proの音の立体表現の上手さを引き立てています。標準ケーブルでは前後に平面的だった音は正確さを保つほか、高域の音色の表現力が上がり、より自然な音色になったように感じます。
中域などのボーカルが一歩前に来てくれることで、中域の表現の主張が強くなり無印のS12に比べると気になりがちなボーカルなどもより鮮明で生生しく鳴らしてくれます。
全体の音色のバランスも良く、こちらも大きな弱点が無いように感じます。ケーブルの価格を度外視すればかなり良い組み合わせだと感じます。
音色には文句ないのですが課題があるとすればどうしてもギルガメッシュの5万円近い値段で、イヤホン本体と合わせた合計金額が同じ市販価格のイヤホンと比べて勝っているかと言われると良い勝負ぐらいだと感じます。もちろん、ケーブルを持っておくことで色々と組み合わせを楽しめるという意味では良い選択肢なるのではないかと思います。
〇BQEYZ Winter ⇒ 結果:△〜○
WinterはRimeケーブルの品質が素晴らしいこともあり、基本的にリケーブルは不要な機種ではあるのですがそれでも尚、効果があるかを検証するために試してみました。尚、この機種のみイヤーピースをSednaEarfit Maxに変更しています。
解像度は一段上がり、音場はやや下方になるのですが横方向の音像の展開が広くなります。空間の広さほぼ同じなのですが音の起点が散らばった印象です。中域の太さが特徴のWinterではあるのですが若干細くなることで良い意味で自然な音色になったように感じます。
全体の音色やや華やかになるので、より楽しい音色と言えるかと思います。こちらも大きな弱点が無いと感じ、さすが高級ケーブルと実感するところです。Rimeケーブルも素晴らしいのですが、Rimeに戻すと華やかさが消えてやや寂しい印象は残るのでケーブルの価格を度外視すればかなり良い組み合わせだと感じます。
とは言え、Rimeケーブルは単品で1万円程度の金額で、金額だけが音質を決める要素ではないのですが、Rimeから明確なアップグレードとなると同等以上の金額は出す必要があるかと思いますので一つの参考として良いかと思います。
〇NICEHCK Lofty ⇒ 結果:◎
続いてGiitaさんの依頼よりLoftyとの組み合わせも試してみました。Loftyはここまでエージングした個体は標準ケーブルの強烈な個性と相まってリケーブルが不要という認識を持っています。で結果ですが、元々の方向性とは大きく異なりますが素晴らしく良かったです。
音像がやや上がって音場が軽やかになり、横上下ともに大きく広がる感覚があります。低音の量感は驚くほど減り、高域が増えることで驚くほどフラットなバランスに近づきます。ボーカルなどの伸びが良く、抜け感がでるのか音色は開放的です。特に女性ボーカルの音色は晴れやさがあり、元のバランスが男性ボーカルなどが映えるバランスだったので別のイヤホンになったかのようです。解像度も高く、低音の量感の変化からより定位感がはっきりとするので過去に試聴レベルでLoftyにネガティブな感想を持った人ほど好きな方向の音色の変化だと感じます。
現在FFさんから同じベリリウムドライバのFiiOのFD7を長期的にお借りして聴き込んでいるのですが同時にオススメケーブルとしてお借りしたFIIO FIO-LCREという金と銀、銅のミックス線は実際高域が華やかになりその変化の感覚と似ています。また同様にLoftyの音を一般受けする良い音色にするにはJSHiFiのSasoriがオススメと言われていますが低音の量感を除けばその上位互換的な振る舞いにも思えます。
また、誤解を恐れずに書けばケーブルの価格は高額なのですが、合計金額を考えても同価格の市販イヤホンと十分以上に勝負できる音色です。当然元のLoftyの音色からは大きく変わるので万人に勧められるわけではないのですが、味変としてもアップグレートとしても価格に見合うリケーブル候補の一つになり得るケーブルです。
〇水月雨Moondrop Blessing2 ⇒ 結果:〇
続いてGiitaさんの依頼よりBlessing2との組み合わせも試してみました。Blessing2は付属のケーブル品質はイマイチでリケーブル推奨という認識を持っており、実際に安くても有名だったり定評のあるケーブルであればアップグレード感があります。
で、実際の試したところこのギルガメッシュとの相性もかなり良いようです。ケーブル後は全体の音が鮮烈になる他、音場も大きく広がります。縦の音場の広さはそのままに、横の音場が大きく広がり、全体の解放感がでます。
HEXAと比べた際の長所として音色の華やかさや中域のボーカルの表現力が魅力になるのですが、ギルガメッシュに合わせた時にそれらの良さも引き継いでいます。HEXAも勿論良かったのですが、Blessing2と比べると若干詰まった音色にも思えてしまいます。全体的に華やかささや空間表現の良さなどが秀逸なので良いリケーブル候補になるのではないかと思います。
音色には文句ないのですが課題があるとすればどうしてもギルガメッシュの5万円近い値段で、イヤホン本体と合わせた合計金額が同じ市販価格のイヤホンと比べて勝っているかと言われると良い勝負ぐらいだと感じます。もちろん、ケーブルを持っておくことで色々と組み合わせを楽しめるという意味では良い選択肢なるのではないかと思います。
〇64Audio Nio ⇒ 結果:△~〇
Nioは付属する新しいPremium Cableとの相性が素晴らしく、これをを明確に超えるリケーブルは探し続けています。こちらもイヤーピースをSednaEarfit Maxに変更しています。
結果としては音の表現としての良さはあるものの、NIOの良さを生かしているのかというと難しい印象です。悪くない相性の一つではあるものの、音場の表現は一般的な横に広いタイプで標準ケーブルの素晴らしい前後の表現力が失われてしまいます。解像度は互角かややギルガメッシュが高いでしょうか。ふんわりした楽器同士の音のつながり良いのでバンドなどで一体感を感じるには良いケーブルだと感じます。
音の定位の良さや正確さなどはNioの素晴らしさを引き継いでいるので文句ありません。音色がややふわっとした上品のある音色になる点は味変と言って良いかと思います。Nioの価格を考えればある程度順当な価格帯ではあるのですが個人的に明確に良いと言える部分は少ないので気に入ったら購入の候補になるというぐらいだと思います。
〇音の変化まとめ
全体の傾向をまとめると
・解像度が高い
・分離と解像感が高い
・明るい音色
・寒暖はやや暖かめ
・高域、中域、低域どれも良質
・音場は広大、特に横の広さは随一
・帯域バランスはやや低音少な目のフラット
・価格に相応しく癖が強い
この価格帯のケーブルの基本的な性質を理解していないところがあり評価は難しいですが、あまり金属の希少性による価値が高い印象です。。
■まとめ
全体の傾向をまとめるとギルガメッシュ・オメガという名前に相応しい派手かつ金の力を感じさせる音色です。癖のあるケーブルではあるのですが音の変化が分かりやすい方ですし素材の金属による付加価値が強いので値段も下がりにくいケーブルなのだろうと思います。
音色の相性としてはHM20(Sタイプ)は抜けて素晴らしく、ケーブルによってリニアに伸びる性能は基本性能の高さを感じさせます。また次に高相性だと感じたのはLoftyでこの組み合わせですね。これは持っている方も多いので機会あれば試してみて欲しいです。
Giitaさんからは他にも、Matador (マタドール)、CERES (ケレス)、CASSINI (カッシーニ) もお借りしておりまして、引き続き簡易レビューをさせていただく予定です。最後にGiitaさん、このような機会をいただきありがとうございました。
*1:KYORITSU KEW MATE MODEL 2000 オフセット除去