el_snowの日記

日常の気になった事や思う事、気に入ったオーディオ機材のレビューを思うままに書いています。

final A8000 買いました。結論:最高傑作のイヤホンの一つであり、一つの到達点

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A8000の魅力を独断と偏見で伝えるスライド4枚を先に公開していますのでご存知かと思いますがfinal A8000を先日購入いたしました。実は視聴をしに行っただけだったつもりなのですが、あまりにも特異なサウンドと使いやすい形状から一目惚れならぬ一聴惚れをしてしまい、その日にお持ち帰りをしてしまいました。買った時に惚れたポイント、そしてその感動の熱意をスライドに込めたのですが、さらに様々なジャンル聴き込んだり試聴したときの環境(Q5s+AM3D)以外で使い込んだりした感想を徒然なるままに書きたいと思います。内容的にスライドと被る部分も多いですし、内容が込み入っているので拙文になるかと思いますがご容赦ください。また、プロではないので至らぬ点もあるかと思いますが何かあればコメントなどいただけると幸いです。

 

メインの環境:MacBookAir ->usb -> Acro L1000 -> A8000

 

また、今回ハイエンドイヤホンについて書くというところで注意点があります。私自身の信条として10万円を超えるオーディオ機器は音質というただ一言だけでは表現できず、そのメーカーの目指す音楽性にどれだけ寄り添えるか、理解できるかがポイントになると考えています。様々な音源がある以上、音楽の表現性に普遍性はなく、個人の好みによって最適解は異なる。つまり絶対に万人受けする答えにはならないという事です。あくまで糞耳な私が思った感想ですのでその点をご了承ください。

 

良い点

まず音質面ですが、タイトルに書いた通りです。この音はイヤホンの音で実現できる音という表現の1つの完成形です。非の打ちどころが無いというより、謳い文句としてメーカーが掲げているトランスペアレントな音という表現をイヤホンに落としこんだらこうなるのだと指し示した製品だと思いました。

トランスペアレントを分解した時のポイントはやはり3つ①音場の再現、②美しい音の響き、③マルチプレイヤーになると思います。ただ、ここで大事なのはfinalの考えるトランスペアレントな音に対する考え方を理解する必要があります。これを理解せずにこのイヤホンを聴いても普通の音にしか思えない可能性があると思うからです。ですのでくどいですがまずはそこについて私個人の想像の域はありますが青字の部分で簡単に述べたいと思います。

 

イヤホンという機器は耳の穴に直接再生機器を据え付ける以上、現実ではありえない頭の中で音が鳴っている、いわゆる頭内定位の状態になります。例えば部屋の中にいて場所を移動しながら楽器を鳴らせば目を瞑っていても耳に入る音の変化から部屋のなかで楽器がどこから鳴っているかを大体判別することができると思います。人間は左右の耳に入ってくる少しの音の変化を聴き比べることとで楽器の場所、音場を想像できる生き物なのです。イヤホンをつけたとき人間はそのわずかなステレオの音の違いを聞き分け、頭の中に音場を作るというテクニックを学習してきました。音場の広さなんて言葉でよく表されますがスピーカーオーディオの時代から使われている言葉です。

一般にこの音場の広さをイヤフォン言う場合は頭の中でどのあたりの範囲で楽器が鳴るのかという意味を指します。例えばボーカルの音声を様々なイヤフォンで聴くと、頭の中の扁桃腺のあたりで音がするものや、鼻の先で音がするものや目頭の奥で音がするものなど様々です。では実物やスピーカーと比べるとどうでしょうか?スピーカーや実物は実際に目の前に音が鳴っている感覚を覚えると思います。左右のスピーカーの感覚の間でステレオに再現されますしピュアオーデォオなんて呼ばれる世界では部屋のセッティングまですることでスピーカーの間だけでなく部屋いっぱいにその場で演奏しているかの様な音場が再生されます。つまりイヤフォンをスピーカーと比べると頭の中の定位に止まっている以上どうやってもスピーカーの様な音像を作ることはできません。けれどもイヤフォンでもスピーカーの様な、生音の様な定位を実現したい。これはイヤフォンが発明されてから言われ続けている難課題です。そこにこのA8000はfinalとしての解答を詰め込んだと考えます。

 

ではその解答がなにかと言うと、私の解釈では無闇やたらに広い音場を作るのではなく実際の演奏やスピーカーで聞いた時の様な音場、響きを頭の中の小さなサウンドステージで実現することだと理解しました。ちょうどスピーカーで聞いている時にできている音像を頭の中に縮小コピーする感覚です。その配置は目頭の奥あたりに矛盾なく整然と並び、もともとそこにあるものが当たり前にそこにあり音を奏でる安心する定位感、決して広かったり派手だったりせず、ミニステージに繰り広げられる音はちょうどよいホールで鳴らした反響音が柔らかな座席のクッションや緞帳などにスゥッと吸い込まれる様にただただ美しく消えます。この程よい残響感と音場は自分だけのミニチュアコンサートホールが頭の中に作られる感覚です。これはまさに透明感を持ったトランスペアレントな響きであり、この感覚はこのA8000でしか味わうことができません。

注意して欲しいのは決してスピーカーや実物の聴こえ方をそのまま再現するイヤフォンでは無い事です。おそらくそれを実現できるとすれば外耳の伝達関数に即した何かをイヤフォン内部に音響チャンバーとして内蔵できる時だと考えられますが、今の技術ではASMRに代表されるような録音方法と一体となった技術でしか実現できていません。finalの目指した音が私の解釈で合っているかは定かではありませんが、私の糞耳の解釈ではイヤフォン独特の定位感を廃し、頭の中にミニチュアのスピーカーや実際のホールを作るイヤフォン、A8000が初めて成し得た金字塔なのだと確信しています。

 

 

この概念が伝わればあとは先ほどの3つの特性は付帯要素に過ぎません。結果として出来上がった音の特性です。

①音場の再現はまさに先ほど伝えたホールの概念です。特に定位感が素晴らしいであったり、頭の真ん中から音が聴こえるであったりなど言われる感覚はこの目指した音の副産物です。同じ音源をスピーカーで再生したときにできる音像を頭の中に小さくコピーするこれがA8000の恐ろしくも素晴らしい音場です。

②美しい音の響きはホールで消えゆく音そのものです。高い解像度から奏でられる音は他の音と濁り混じる事なくその場所からスゥと消えゆきます。元の音に含まれている響きも若干A8000の消える残響感に着色されるところがポイントです。あまり良く無い録音で響きが悪いソースでもこのA8000の固有の響きによりA8000らしい音になってしまいます。これはもちろん欠点でもあるのですが、この音色が気に入れば様々なソースでA8000ではどの様に音を料理してくれるのかと期待してしまいます。さらにソースだけでなく再生機器が正確な駆動ができなくてもA8000固有の残響特性はその再生機器の荒を隠してくれます。様々な人がA8000による再生機器の持ち上げがある、アンプに左右されにくいと口を揃えていますがまさにそれというところだと思っています。特にこの特性が生きるのはTRNのBT20sやFiioのUTWS1などのMMCXイヤフォンをTWS化するキットでも本領を発揮します。私が試したのはBT20sですが他のどのTWSイヤフォンよりも良い音で音楽を楽しむことができました。現行のTWS機器で音質に満足できない方は是非試してみていただきたい構成です。

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マルチプレイヤーな点も同様ですね、様々なソースをホールで鳴らしたらどんな音になるのだろうか?そんな好奇心を擽るA8000はクラシックやジャズ、POPS、EDM、ロックといった様々なソースをA8000のステージに置いて鳴らしてくれます。聴けば聴くほどにA8000だとこんな音になるのかと嬉しくなってくる様な感覚です。

これらの特徴以外で嬉しいポイントも上げておきたいと思います。まず本体が小さいことが挙げられます。A8000は厚みが10mm程度と一般的なハイエンドイヤフォンの半分の厚みしかありません。何が嬉しいかというと正面から見た時にイヤフォンがはみ出さないので格好が良い他に、寝転んで使った時に荷重がかからないので寝フォンができるというメリットがあります。特に先ほど挙げたTWSと組み合わせると寝ながら聴くというポイントにおいてケーブルから解放されるメリットが大きいです。大体のTWSが電池を内蔵しているので大きく寝フォンができないことを考えるとこれも大きなメリットだと思います。ただし重さは金属製故に一般的なIEM程度はあるので装着感という意味では普通クラスです。また、角ばったデザインは見た目に耳に当たって痛そうにも思えるのですが私が装着した限りでは想像以上にすっぽりと耳に収まりいたくなる様なことはありません。

付属品のイヤーピースはEタイプサイズ別5種類のケース入りです。E500以降の左右の軸色が異なるタイプが入っており、左右を見分けること容易になっています。しかしながら使っている時はイヤーピースの傘の部分で隠れてしまうのでそこまで左右を見分ける視野性が高いわけではありません。嬉しいのはmmcxケーブルとイヤフォン装脱をアシストしてくれるmmcx assistが付属する点でしょうか、私はいつか欲しいと思いつつ持っていなかったのとこのクラスのイヤフォンの付け外しで端子が壊れるなんて話もよく聞く話なので高級イヤフォンでこの様なアイテムが付属するのは安心感が持てて素直に嬉しいです。ケーブルは3.5mmジャックmmcxタイプが一本付いています。ケーブルについてはあまり知見がないので記述を避けますが、良いケーブルとの噂です。イヤフォンケースについては表面がアルミ金属、逆側がシリコンになったハイブリットタイプになっています。個人的にはE4000に付属していたようなオールシリコン性の方がイヤフォンとぶつかった時に傷がつきにくいのでそちらの方が嬉しかったです。

イヤーフックはBタイプと呼ばれるロック機構が付いたものが付属しています。知らなかったのですが付け外しを想定した構造では無いそうで方向を間違えて付けてしまうと壊してしまう可能性があるそうです。私は間違えたのですがそっと取り外すことで幸いにも壊れなかったのですが説明がなかったので少し焦りました。後はダストフィルターの替えが10枚程度入っていました。あまりこのような掃除をしたことがないのでわからないのですがこれだけ替えが入っていると安心です。

 

 

いまいちな点

 まず、音質についてです。これだけ褒めちぎったイヤフォンでも欠点が無いかと言うとそれはありえません。先に述べた様にfinalの目指した音があるようにこの価格帯の競合のメーカーもそれぞれに各社の目指した特徴ある音を奏でます。つまりは各社の得意なフィールドと比べてA8000どうかという話になります。それがこの価格帯の商品の特徴かと思います(なのであまり深く聴けていない部分もあるので間違いなどあればご指摘いただければと思います)。

 まず解像度に関しては値段なりで特別に高くもなく、かと言って低くも無い平均点レベルです。音場の広さについてもDream XLSやLegend Xなどと比べるとやや狭苦しく詰まった印象を受けます。音色の美しさについても値段なりの実力だと思います、例えはFW10000などの弦楽器の艶、響きに比べればやや色あせた印象を持ちます。高音、低音のバランスはややドンシャリ気味でボーカルのサ行は刺さるか刺さらないかのぎりぎりをうまくチューニングしていますが気になる人は気になると思います。高音の伸びと低音の深さは一級品ではあり高いレベルで鳴らしますが、Z1Rなどの高音と低音やKhanの超高音などそれぞれが得意なメーカーの機種と比べればやはり一歩劣る印象はあります。もちろんバランスの良さで言えばA8000にやや軍配があるかと思いますが中低音の艶めき、グルーブ感、ノリの良さで比べてしまえばTZ700などに軍配が上がります。この様に良い部分だけを同レベルの各社フラグシップと比べてしまうとやはりその会社毎の強みには負けてしまいます。

使い勝手の部分ではやはり左右の判別がしにくいです。デザイン優先というところがあるかと思いますが手触り見た目どちらにしても左右の判別がしにくいです。mmcxのケーブルは回転抵抗が小さいタイプなのでくるくるとまわってしまう点も見分けにくい原因の一つです。もう少し接着部の回転抵抗は硬い方が好みでした。ケーブル自体にもRLの刻印と色分けがされているのですがデザイン優先なのか色がくすんでおりこれもまた見分けにくかったです。

ハウジングが金属素材である点も気になりました。鏡面加工されているので傷がつくとかなりめだつのだろうと思います。初代ipodのように使えば使うほど味がでるという見方もできますがそれなりの高級品ですので傷を嫌う人も多いかと思います。指紋が目立ちやすい点も気になりました。

また音漏れは少ないのですが、金属のためか遮音性はそれほどではありません。外で使う時にはコンプライなどを使ったとしても外音が気になるかもしれません。

 

では総合的にA8000をみた場合どうかですが、会社の目指す音作りもしくはイヤフォンの作り方に唯一無二の答えを出し、強みを作った上で、音実で他社と比べてどの要素を取っても圧倒的に負けている要素と言うものを感じさせない。。。これは完成度から言えば比類ありません。特にハイエンドイヤフォンのフラグシップ機は現在も高騰を続けていることが有名です。噂では60万円を超える商品も耳に入ってきました、その中でfinalが実売178,000円という価格をフラグシップに添えて出してきた音はコストバリューに優れた値付けだと衝動買いした後の今でも確信しています。なぜならば出した答えはイヤホン音作りの1つの最高傑作であり到達点として私も納得ができるところだからです。他社がこの音にたどり着くことができるのか、今後はたして真似をしたとしてこのA8000とどう差別化するのかという問いを考えれば今後A8000が道標となり最高傑作の形として歴史に残る名機であると確信を深めるのです。

 

以上、かなり徒然に書き殴ったので至らぬ部分があるかと思いますが何かありましたらTwitterまたはコメント欄で連絡いただければ幸いです。