el_snowの日記

日常の気になった事や思う事、気に入ったオーディオ機材のレビューを思うままに書いています。

絶対王者?NICE HCK. フラグシップIEM lofty のその後:エージングの持論・・・

タイトルの通りです

loftyについてはNiceHCKさん公式が100時間のエージングを推奨したり謝罪文を出したりとなかなか最近は話題に事欠きませんね

いろいろと遊んでみて追加で記事を書いてみようと思っていたのですけどなんか話題が豊富すぎて全部まとめてというよりすこし今の状況を整理してみたいと思って書き始めました

特に今回は「エージング」に的を絞って話をしたいと思います

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まず、エージングについてなのですが結論から言えば「私の感覚では音は変わりました」

内容としては高音~超高音域の量感が増して女性ボーカルなども伸びるようになりました、有体に言えばバランスが良くなったと言ってよいでしょう。Twitterなどを除いてみると人によっては低音が落ち着いたという表現をしている人もいますがどちらにしてもバランスが良くなったという表現をしています。エージングという言葉自体に抵抗感がある方はこの言葉だけで「そんな都合のいいことあるかよ!」っという拒否感がでる方も多いことかと思います。そのあたりも私なりの持論を書きたいと思います。

ちなみにエージングした時間にして100時間~150時間ほどでしょうか、環境は通常の音楽再生を想定しました。つまり使った音源は私が試聴用に使ってるプレイリストの曲をひたすら通常使う音量程度でループ再生させ、使用したアンプはL1000で80時間、PC直で30時間、Q5sで20時間、ADI2DACfsで20時間程度という配分です。

 

まずはloftyに具体的にどのような音の変化が表れたのかを書いていきたいと思います。今回の評価に当たってイヤーピースを付属の物からCP100+に変更しています。これによって前回不満に上げたIEMの形状の突起による耳への負荷が減りかなりリスニング環境が改善しました(うれしい)

 

iPhone12PM → Q5s→ lofty → CP100+

 

音について

最初に上げた通り、様々な曲を聞き比べてもやはり良くなったのは各音の帯域バランスがよりフラットに近づいたことです。

もともと箱出しの時点でもかなりロック音楽に合う音作りでギター、ベース、ドラム、男性ボーカルの各帯域がとても力強くそして高解像度で鳴らしてくれるところが特徴でした。しかしながら、女性ボーカルの声の艶めかしさや、かぼそいながら伸びやかな声の量感が少なく質の高さをかき消すような残念さも合わせ持っていました。このため、アニソンなど女性ボーカルものを聴くような方にはなかなかおすすめしにくいイヤホンであり、転じてオールラウンドな1本として活躍するイヤホンの鳴り方ではありませんでした。

しかしながら、鳴らしこむことで上記の欠点は徐々に解消されていったように思います。ただし、改善傾向であるというだけでさすがに高域がバランスとして強くなるというレベルまで良くなるのかはもう少しエージングしてみなければわかりません。メーカーとしては100時間と言っているので150時間前後というのは概ね変化はもうないと言って良いのではないかと思います。高音域は低音の量感にやっと並び立てるという印象で一般的なフラットから言われれば確実にドンシャリ、具体的にはベースライン以下の低音が支配的なことには変わりないかと思います。また全体的な印象としては暖色系という言葉を前回使いましたがわかりやすい暖色系ではあるもののやや寒色よりにシフトし、このカテゴリーの言葉をあえて使わなくても良いバランスになったような気もしています。

こう書いてみると悪い変化はほぼ無いように思います。ただ一方で絶対王者と名乗るにはふさわしいと評されない最大の弱点と感じたところは残っているように思います。具体的にはアンプの低音の再生能力に依存するところは変わらない所でしょうか。Q5sTCではやはり低音は良質ではあるものの低音の再生能力を発揮できておらず、ボワつく印象があります。このあたりのloftyの良さを楽しむには相変わらずADI2DACfsなど低音の再生能力が高いアンプが必要なのだと思います。勿論この良さに気づけるかが絶対王者と自称したloftyの評価の分かれ目になる気がしています。

まとめると良い部分を残しつつも一般的に使うための弱点の部分がエージングにより改善したという印象です。良いところが更に伸びていない以上、結果として目標とする絶対王者には一歩近づいたとは思いますが、残念ながら高価格帯のほかのフラグシップと比べるとまだまだ実力は不足していると言えると思います。ただ、特に前回の記事を読まれた方はアニソンには向かないという感想を持たれたかたが多かったように思いますが、エージングによりアニソンにも十分に使える一本に変化したと感じています。(勿論アニソン向け「だけ」と言われると同価格帯でこれよりも良い機種はあると思いますが)ただ、ロック向け等としてこの価格帯で強いっという表現からロックだけでなくオールラウンダーとしても進められる強い1本に進化した(エージングされた)と言って過言ではないと思います。マーケッティングを抜きにすれば素晴らしい一本であるという確信を深めました。

 

さて、ここまで読まれて「うさんくせー」っと思われた方も多いと思います。特にそう思っている方々の疑問は2つあるのではないかと思っています。

 

エージングで音が変わるってことがあるの?

②音が変わるとして「良くなる方向にだけ変わる」のはなぜ?都合良すぎない?

 

ということでしょうか、ここに関してもちろん音響関係者ではないのですが、一人の技術者だった立場からほぼ妄想ではありますが、自分なりの持論を書きたいと思います。

まず、1つ目なのです

オーディオ機器の「エージング、バーンイン」と聞くとうさんくささ満載だと思われますが、工業的な技術的常識ではバスタブ曲線等という言葉であれば聞いたことがある方もいると思います。これは製品ががあったとき、横軸に時間、縦軸に故障率を取ったときに使い始めのころに壊れやすいことと製品の寿命を迎えたころに故障率が上がることでバスタブの様な形のグラフになることです。つまり製品があったときに使い始めは極めて壊れやすいことが統計的に知られています。

さらにミクロに見れば様々な材料で構成されているイヤホンは初期の稼働による「疲労」や「摩耗」といった変化が極端に起こりやすいです。つまり一部の樹脂や金属材料が破断したり本来不要な接着剤が軟化することにより故障であったり、本来の動作に近づくことになります。「いやいや動かしたからといって変化なんてしないでしょ?」っと思うかもしれませんがこれは実際に可動部のある製品の設計をした技術者であれば常識で、それぞれの製品の設計では「疲労」「摩耗」「製造ばらつき」等というファクターを製品の寿命から見積もります。要は使い込むことで様々な部分が徐々に「疲労」「摩耗」していくことを見込んでいます。そしてそれに十分な製造のばらつき誤差を吸収できるように作るのです。勿論疲労、摩耗により物性は変化していきますのでこれによって音が変わるということは「量」は別として常に変化し続けています。勿論それが総合的なイヤホンとしてf特性などで測定できるかということも別の話ですが、各パーツ単位での物性であれば定量的なデータはいくらでも取ることができます。これは、物性は変化するという事実と音の感性とイヤホンなどの音質の測定技術がまだ完全に結びついていないことも示しています。

どちらにせよイヤホンの初期は音楽的な特性の変化は測定は難しいが、材料物性的、マクロ的には変化していると断言できるだけの情報がそろっています。

 

さて次に2つ目です。またこれは逆に裏を返せばイヤホンにエージングが必要かどうかは本当に設計次第ということになります、製造ばらつきを大きめに取ると、部材のばらつきなどで音が変わるような設計ではダメですし、疲労や摩耗がしやすい部材はその稼働量を制限することや、負荷がかかりにくい構造にする必要があります。また、開発試作段階と商品の量産段階でももちろん状態が違うなんてことは当然に起こり得ます。どちらにせよ、一般的な技術常識からいえば通常イヤホンとして使う寿命と言える期間まで安定して鳴らすことができる期間をターゲットに音作りをすることになると思われます。となると試作段階では実験を繰り返すことでドライバがこなれているけれど量産品の初期状態は音が違うなんてことは普通にあり得ることになります。となるとどうなるかというともちろん試作品としての完成形はすでにあるのですから、量産時のエージングによる変化が終われば試作品で目指していた音作りのイヤホンに漸近していく可能性が高いということになります。通常、音質が良いバランスというものは芸術作品や薄氷の上に立つようなもので何かのバランスが崩れればたいていは悪い方向に行くことになります。このため、製造時の初期状態からエージングしていくことで本来設計者が意図した音作りに近づくことで、良い方向に変化したっということが多くなり、結果的に都合よく②の変化が起こることになります。

 

ここまで書いてお分かりだと思いますが、であれば本来の音を出せるようにしてから出荷するのが普通ではないのか?っという点ですが、これについては全くもってその通りでもしエージングをしなければ満足できないようなイヤホンまたは製品を作ったのならばエージングをしてから出荷するのが大手メーカー(ガレージメーカーは別として)としての責務だと思います。そういう意味でJVCなど一部オーディオメーカーでのハイエンド商品はエージング済みで出荷するなどの措置を取っているという話も聞いています。勿論、技術的にはエージングが不要なモノづくりをすることが理想です。実際に車なんかも40年ほど前は慣らし運転は必須と言われていましたが、現在の日本のメーカーは表向きは慣らし運転は不要として車を販売しているかと思います。

 

また、エージングを購入者にさせることには2つのポイントというか問題があります。

まず、1つめは本来設計した音作りの音を超えることが無いということです。前回も書いた通りloftyの高音は質は良いけれど量感が無いという帯域バランスの問題で、あったため改善し得たのだと思いますが、もともとの設計で質の良い高音が出ていなければこれが改善する余地はありません。

そして2つめ、購入者が本来意図した音作りの音とコンペアすることができないことです。どんなに素晴らしい音作りであろうとも、購入者は手元にある1台しかありません。もし故障品が届いていたとしてもそれがエージング必須ですと言われてしまうと本来の音を知ることが永遠にできません。メーカーでさえもその製品が正常なのか異常なのかを判別できていないことにもなります。実際に中華メーカーや悪質なメーカーではそれを逆手にとってどんなイヤホンであろうとも200時間エージングすることで劇的に改善しますと宣い、それにより人間側の方がその音に慣れたり、これだけ使ったのだから不満があっても返品しにくい・・・っという心理的な障壁を作らせています。

一方でコストパフォーマンスが売りである中華業者側の理論もあります。それはエージング作業だけでもやはりコストがかかるということです。実際100時間、200時間のエージングが必要だとするとそれだけの在庫が自社内に滞留し、所謂キャッシュコンバージョンサイクルが悪化し、最終的にはイヤホンの販売価格に転嫁されることになります。またエージングするための機材の投資ももちろん必要ですし、それを管理する人件費も必要です。まぁ安いイヤホンには安いなりの理由があるということです。

 

今回NiceHCKは謝罪文とともに100時間エージングした商品の出荷を決めました。これは安いだけが売りだった中華メーカーからの脱却を意味する重大なことであり、自信の表れでもあるかと思います。もちろん、事実かは実際の時期ロッドの評価などを見てみなければわかりませんが今回、非常に良いイヤホンに出会えたことは素直にうれしいですしNiceHCKの今後に期待したいです。