こんにちは
今日は雑記です。ここ数日更新をお休みして申し訳ありませんでした。今日は取り直して最近購入していたイヤホンなどを測定していたのでそれについて簡単に書きたいと思います。
水月雨Moondrop4機種 KATO, Aria SNOW EDITION, 竹CHUの聴感差
まぁタイトルの通りなのですが まずKATOやAria SNOW EDITIONなど水月雨Moondropのでの聴感上の比較を感想の形で書きたいと思います。
先ず言いたいのはKATOと竹CHUの完成度の高さです。もちろんAria SNOW EDITIONも素晴らしいのですが音と価格、使い勝手、意匠などで上手くグレード分けされています。
KATO
Moondorpの独自の目指すサウンド=性癖や、最高音質という意味ではIllumination光が一歩も二歩も抜けて出ていることは間違いないと感じます。一方で、一般的で普遍性のある良いサウンドという意味ではKATOで妥協なき完成の域に達していると感じました。周波数特性に現れないケーブルや鏡面書加工の美しいボディまで所有欲を満たしてくれる意匠です。またKXXSからあった音の暗さなどの弱点を潰し透明感がある美しい音色に仕上げてくれています。総合して激戦区である20k価格帯で高く評価されていることがよく分かります。
Aria SNOW EDITION
Aria SNOW EDITIONはその技術や音のエッセンスの中でも筐体の加工や付属品など重要でないものをコストダウンしています。ケーブルも利便性を重視しつつリケーブル可能な構成は残してギリギリまで品質を落とし、バランスを考えてチューニングを変えた印象を強く受けます。特にKATOの付属ケーブルをAria SNOW EDITIONに付けると(その差は確かに有るのですが)かなり音色が近くなります。差が何かと言われると音色の透明感と滑らかさそしてサブベース帯の量感です。KATOの素晴らしさを実感している人には物足りないという感想になるかと思いますが値段が約3倍違いますのでその純然たる差をどこまで許容できるかということになるかと思います。
竹CHU
そしてそのサウンドシグネチャを極限までコストダウンし、サウンドバランスを少しだけドンシャリぎみに調整したエントリー帯で楽しめる音色にしたのが竹CHUだと感じました。付属品も最低限度までコストダウンしており、リケーブル機能も断念しています。けれどそのサウンドバランスは確かなものでエントリーレベルキラーの名は伊達ではないという認識を強めました。Aria SNOW EDITIONとKATO同様に価格差は約3倍(海外では4倍)もありますがその音色の差は余り大きく無いと感じます。音色の美しさ滑らかさなどの要素はさらに後退はするのですがそれはあくまでも趣味のレベルの差だと感じます。つまり荒く激しいロックや音色の雑さが魅力に感じられる楽曲ではAria SNOW EDITIONよりむしろ竹CHUの方が合うということも十分にありえると思いました。
Quarks
そしてQuarksですがこればかりは完全に別の音色だと感じます。ボーカル重視なのは理解できるのですが、3機種と比べると音場が狭く、高音の刺さりが無いため自然な音の広がりを実現しているある意味でハイエンド価格帯でもなかなか実現出来ていないサウンドを実現している稀有な機種だと感じています。ピアノの高音やボーカルの音色の伸び方が現実の雰囲気に近いのも素晴らしくエントリー機種ではあるのですが装着感なども耳掛けしないタイプですので方向性がかなり違うと言ってよいかもしれませんね。ということで値段が安いこともあり別途1本あっても良い機種だと思います。
聴感上のまとめ
こうして考えるとQuarksを覗いた3機種を聴き比べると実に同じ方向性に向けて一貫したサウンドシグネチャに向けて上手く作られたエントリーからミドルクラスへのステップアップが実感できる3機種だと感じます。この水月雨Moondorpの音色の傾向が好きな方にはどれも満足できる良機種で予算に応じてどれを選んでも満足ができると思います。こういう音作りの一貫性が見えると目指す音色が何なのかをハッキリと認識できるのでユーザーとしては嬉しくなりますね。
水月雨Moondrop4機種 KATO, Aria SNOW EDITION, 竹CHUの周波数特性
ということで聴感上の違いとは別にそれらの4機種の周波数特性です。都合QuarksだけADがMOTU M2ではなくScarlet Soloになっていますがグラフの概形はほぼ変わらないことを確認しています。
一応説明すると一番目立つ明るい緑色のラインが今回購入したAria SNOW EDITIONです。そして同じ濃い緑色のラインがKATOです。それらの2本のグラフと混じり合っている濃い紫色のラインが竹CHUです。グラフの下部に離れて1本だけ形状が違うやや暗い紫色のラインがQuarksです。
KATO vs Aria SNOW EDITION vs 竹CHU
面白いのはAria SNOW EDITIONはKATOとサブベース帯域の10Hz以下と4〜5Khz付近をのぞいてほぼ同じ形状をしています。全体的に音圧レベルが3dBほど違うので音量も異なるのですが同じDLCドライバを使ってここまでそっくりだと似たサウンドだと感じた理由が頷けます。ボーカル帯の超低域の数dBが先程伝えた滑らかさや透明感につながるのかは疑問が残ってしまうのでその解釈は難しいところです。
そして竹CHUもかなりKATOに近い形状をしているということです。KATOとの違いはまた面白く100Hz以下を数dB上げてあり、さらに4〜5Khz付近がAria SNOW EDITION以上に数dB上がっています。
100Hz以下の差
まず低域側の差について言及すれば音響のチューニングをしたことがある人であれば有名な話ですが周波数特性グラフで言う100Hz以下の低域の量感、形状はかなり自由が効きます。例えば64AudioのAPEXモジュールやBQEYZのAutumnの記事でも書きましたがドライバと鼓膜の間の気密性や本体リア側の気密性で低域の量感は調整が簡単にできるということです。
少し前の記事で竹CHUを分解しましたが、音色がほぼ変化しなかったので気になっていたのですが調べてみるとリア側に大きな穴が空いており気密性が全く無い状態になっていました。何が言いたいかというと竹CHUの低域は限界まで敢えて盛ってあるということで、Aria SNOW EDITIONも同じく低音の量感調整は容易なのですが敢えてKATOより低域の量を少なくしているチューニングなのです。
4〜5KHz付近
一方で4〜5KHzは、竹CHU、Aria SNOW EDITION、KATOと価格帯が高くなるほどこの山が小さくなっています。ここについては低域ほど調整が容易ではないというのが通説です。Moondorpはこのカーブについて目指すべき形状を決めていることが有名で、その形状に近づけるためにコストがつかわれているのかと思われます。
ということで恐らくはこの3機種について低域についてはこの4〜5Hzや音色の特徴に合わせて低域について調整しているように思います。特に分かりやすいのは竹CHUは一般受けしやすいようにややドンシャリ傾向にしてあるなどでしょうか。
Quarks vs Aria SNOW EDITION
最後にQuarksですが音圧レベルがかなり低いのが面白い特徴ですね。そして大きく異るのは8KHzのピークで、先程の3機種については鋭くピークが発生していることがわかりますがこのQuarksは一番ピークが低いです。この周波数帯は耳の形状による開管共鳴と言われており、実際の聞こえ方にはあり得無いピークと言われています。まぁこのあたりは現実の実際の会話で女性のサ行、歯擦音が刺さることが無いことからもわかるかと思います。
そして面白いのはAria SNOW EDITIONとQuarksの低音の量感がかなり近いということでしょうか。Aria SNOW EDITIONが低音が控えめということですがQuarksの低音をイメージしてもらえば量感をイメージしやすいかもしれませんね。
にしてもAmazonのKATOが安い状況が続いていますね。S12も値上がりしてしまいましたし海外では25000円前後になっています。その他の海外よ機種も準じた価格に変わりつつあるので欲しい人は急いたほうが良いかもしれませんね。
っということで分量もかなり増えてきましたので今日はこのあたりにしたいと思います。ではまた明日。
■Appendix
〇測定環境
ハードウェア:Apple Macbook pro 15 Late2013 BigSur11.6.4
ソフトウェア:REW V5.20.8
INPUT:MOTU M2 IN1 XLR (VXLR+)192KHz24bit
OUTPUT:MOTU M2 192KHz24bit 3.5mm変換
カプラ:IEC711クローン 刻印( IEC60318-4 Type E610A)※100〜10KHz用
イヤーピース:Final TypeE Black Mサイズ
〇測定パラメータ
入出力バッファ512K、Acoustic Reference
出力音圧レベル:−12dB
Length:2M(10.9sec) 、192kHz、0〜20,000Hz