こんにちは
今日も雑記です。
Campfire Audio SOLARIS【CAM-5270】の魅力
本Blogの読者の方であればご存知かもしれませんが少し前からCampfire Audio SOLARIS【CAM-5270】をFFのMutiwoさんよりお借りして長期的に試聴させていただいておりました。今回は返却に辺り聴き込んで思ったことなんかを徒然に書きたいと思います。
簡単な紹介とか
ご存知SOLARIS【CAM-5270】は米、Campfire Audio(以後CA)の絶頂期2018年頃に作られた名作フラグシップIEMですね。現在のCAを見ればこの当時の勢いは想像できませんが当時のCAは次々と新たなIEMの価値を提案し、そしてどれもが市場に受け入れられるある種神格化されたメーカーだったように思います。特にSOLARISの前に発売していたANDROMEDAというIEMは10万円越える価格でありながらその独特な高音のきらめきを持つキラキラした音色で熱狂的なファンを多数生み出したことで知られています。そんなCAがANDROMEDAを超える集大成のフラグシップとしてこのSOLARISを20万円台で発売し、そのエネルギッシュで広大な音場の音色でオーディオマニアたちの耳を唸らせるだけのプレゼンスを実現し、市場に受け入れられた機種です。当時のCAに対するユーザーの期待感は大きく、ANDROMEDAやSOLARISを作ったCAが提案する機種は話題にもなりましたし、皆がこぞって話題にするほどのメーカーだった様に思います。
発売当初こそSOLARISは高い評価であり、市場に受け入れられていたと聞いていますが、その絶頂期は長くは続かなかったと言われています。大きな理由はSOLARISのBAドライバにBellsing製のドライバが使われており、製造しているShenzhen Bellsing Acoustic 社がKnowles社から知的財産の侵害で訴えられているという疑惑が報じられたことがきっかけと言われています。この訴訟は続報が無いため現在どのようなステータスになっているのか不明な為、実際にBellsing製のBAドライバに知的財産の侵害があったのかも不明です。ただ、有志による分解などからSOLARIS【CAM-5270】にはBellsing製のBAドライバは使われていたことは間違い無い様です。尚、今となっては真偽は不明ですがSOLARISのスペックにはKnowles社のドライバに似たようなドライバを採用と謳っており商慣習としては限りなく黒に近いグレーではあるが嘘は言っていないという状態だったと聞いています(この辺りは16芯や純銀と全く異なる情報を明記していたSTEケーブルとは異なりますね)。この件が報じられた後、(当然かもしれませんが)SOLARISはIEMの音色が全く変わっていないにも関わらず評価が落ちてしまいます。
補足すれば時代背景が違い、今でこそKnowles製のBAドライバは2,3千円の中華イヤホンにも採用されていますがその当時はIEMの価格は1BAあたり1万円と言われていましたし、逆にBellsing製のBAドライバは今よりもっと低品質でKZやTRNだけが採用する安かろう悪かろうの代名詞で、Bellsing製のドライバに信頼が無かったのは事実です。その後のCAについては今のCAの人気を見ればある程度想像がつくかとは思います。今でもその栄光に縋っているのかドライバをKnowles社に戻し、これらの名機に模した様々な似た名前のANDROMEDAやSOLARISが販売されたのですが、目指すべき音の方向性が違うのか少しづつ少しづつファンが離れているのは事実かと思います。一部の人からはBellsing製のドライバを採用しなければ…っと揶揄されたりしていますが、私としてはこのSOLARIS【CAM-5270】に限ってはBellsing製のドライバでなければ実現できなかった音なのだろうと感じています。
特にSOLARIS2020ではSOLARIS【CAM-5270】の音をより小さな筐体で実現したと銘打って発売されましたが、残念ながらオーディオユーザーの支持が得られる音質には至らなかった様です。そしてあれだけBellsing製のBAドライバと揶揄され騒がれたSOLARIS【CAM-5270】は逆に唯一無二の音色に神格化されつつあり、今でも状態の良い中古の価格は未だ10万円を超えており非常に価格が安定しています。もちろん中古価格が高く安定しているからと言って音が良いと直結できる話でも無いのですが、このこのSOLARISについては音質以外の需要があまりない機種な上に中古価格というのは需要と供給のバランスで決定されるものですのでそれだけSOLARISの価値あることを示している様に思います。
お借りした構成
今回お借りしたSOLARIS【CAM-5270】は標準で付属するケーブルとは異なるPure Silver Litz IEM Cable 4.4mm(バランスプラグ仕様)のものです。イヤーピースについては装着感重視でSpiralDot++を使用しました。
音とか使い勝手とか
正直なところ古い機種ですし今更ながら改めて私が付け足すようなコメントは殆どないと言って良いかと思いますが、あるとすれば最近のDAPやアンプなどの機種との相性についてでしょうか。尚、音質の評価については中古価格10万円強を参考にしています。
音について
お借りしていた期間のほとんどはM17DCモードやK9 Pro LTDでの試聴がメインでしたが素晴らしいの一言でした。あまり沢山のイヤホンを聴いたことがあるわけではないのですが私の経験上では未だこの音色の上位互換と思えるような音色には出会ったことが無い様に思います。詐称したSPECで釣っていたSTEケーブルなどと異なり、部品にこだわらず音が良ければ良いじゃないかというの言葉はこのSOLARISの音色の為にあるのだろうと思えるほどです。
価格に説得力を持たせる音というのはこういうものだと言わんばかりの上下前後に広大な音場に躍動感あるエネルギッシュな音色が素晴らしい定位の元に浮かび上がるような鳴り方をしてくれます。特にボーカルなどに焦点を当てれば躍動感がありパワフルな楽器の音色と対極にあるような繊細な声色を両立して奏でているのは見事です。聴感上のバランスとしては全域に渡って概ねフラットです。ほんの少しだけ中高域が強い雰囲気がありますが女性ボーカルのサ行などの歯擦音はあまり刺さるということはありません。このバランスのせいか空間に浮かぶ多くの音は厚みがあって見通しが良い上に、適度な金属的な響きと透明感を感じさせます。
音像はやや高い位置から適度な距離感で、音色が周囲に抜けて行く表現は開放的で優雅です。中華のイヤホンにありがちな音像が近すぎて圧を感じるということは皆無です。解像度や分離は価格相応に高く、音は細部にわたるまで聴き分けることが容易です。
ということで、何度聴いてもレンタルした試聴ではありますがSOLARISがどんどん欲しくなるほどの音質であることは間違いありませんでした。音質について強いて弱点らしきものを上げるとするならば横の広さそして低音の質でしょうか。価格帯を考えれば上下前後の表現に比べるとやや左右の表現や定位は平凡で窮屈に感じる楽曲があります。次に低音ですが、価格を考えるとアタックとリリースのスピード感を欲しがる人も多いかもしれません。一方で低音の質と量感については見事なバランスで十分かと思いますのでそのあたりは求めすぎかもしれませんね。
ホワイトノイズについて
特にこの時代のCAの名機と呼ばれるANDROMEDAやSOLARISなどのIEMは高感度低インピーダンスの特性を持ち、ホワイトノイズが発生して耳に付きやすいやすいことで有名で、様々なレビューでホワイトノイズが気になるという評価が記載されています。この点については現代のDAP事情としてはかなり改善されているように感じています。私がお借りしたのはバランスプラグなのですが、ToppingのL50、FiiOのM17、K9 Pro LTDに繋いでホワイトノイズについて確認してみましたがどれもLow Gainにすればホワイトノイズはほぼ皆無です。L50についてはほのかに低音域にハムノイズ由来の雑音があるように思いますが許容範囲かと思いますし、ハムノイズ対策で改善の余地はあるかもしれません。何れにせよこれらはどのアンプもHi GainにすればP2Plusやヘッドホンなども駆動できるパワーがあるアンプで、両立し辛い高感度低インピーダンスから低感度高インピーダンスまで対応できるように各社アンプを作りこんできているように実感します。
周波数特性について
お借りしたFFさんから許可をもらい周波数特性を取得してみました。
正直そこまで沢山のグラフを見てきたわけではないのですが、個人的にはハーマンターゲットカーブとは異なりますが、高域に強い落ち込みが少なくかなりきれいな形状だと感じています。強いて上げれば一般的なIEMと比べると4〜5KHzが少なめでしょうか。聴感上の感想についてはいつも通りグラフを見ないで書いているので相関性はまだ良くわかりません(すみません)。
気になった点について
音質については何度聴いても素晴らしくこの方向性の音色では文句の付けようが無いと感じる一方で、やはり今聴いていても気になったのは筐体のサイズです。ユニバーサルIEMとしてはかなり大きめの筐体は今装着しても大きいと感じてしまいます。サイズの問題から寝ホンができないのは当然の事ながら、筐体の大きさから装着感に難がある方が多いと感じさせる圧迫感を感じるほどです。
また、私はあまり気になりませんでしたがサイズに加えて金色の配色とそれが大きく目立つ意匠についても気になる人はいるかもしれませんね。
後、他の方は気にならないかもしれませんが私個人としてはMMCXプラグ端子は相次ぐ端子不良事故から個人的に信頼性が皆無です。2~3年ほど前には2pinの方が信頼性が低いなどと良く言われていたのを耳にしたのですが、実際自分が使ってみると圧倒的に2pin端子の方が壊れにくい実績があるのでどうも最近はMMCX端子は好きになれません。まぁ偶々運が悪かったのかもしれませんが、悪いイメージがあることと、信頼性が高い訳ではないことは明白ではあるので避けたい所です。まぁなぜこんなことを書くかというとMMCXの事故が起こるまで本気で良品中古の購入を検討していたからですね(笑)。
まとめ
何れにしましても噂に名高いSOLARISをじっくり聴かせて頂いたのですが聴けば聴くほどに素晴らしい名機だと感じました。当然ながら今お店に並んでいる新しい機種にこのSOLARIS【CAM-5270】が全て勝っているわけでは無く、さらに現実的には新品は手に入らない訳で中古価格は相応なところに落ち着いているという言葉が正しいかと思います。何れにしてもSOLARIS【CAM-5270】にしか奏でられない音があることをじっくりと試聴させていただき感動と共に再度実感した次第です。本当にMMCX端子でなければ購入していた所でした(笑)。危なかったです。
本当に素晴らしい時間でした、Mutiwoさんありがとうございました。重ねてお礼申し上げます。
NiceHCKのMesh IEM Bagに似たアレが届いたので比較した件
まぁここまでの流れからすれば完全におまけの話なのですが、NiceHCK の謎袋が届きましたので、SOLARISと共にお借りしたCAの純正Mesh IEM Bag(1100円)と比べてみました。CAのものの方が1まわりほど小さいですがCAのMesh IEM Bagは実は2サイズあることは有名です。このためこのSOLARIS【CAM-5270】に付属していますMesh IEM Bagがどちらのサイズなのかは不明でして、もしかすると小さいサイズの方かもしれません。尚、見ての通りケーブルやタグに至るまで素材については全く持ってそっくりです。触った質感や内部構造もほぼ同じで、同じ工場で生産しているのではないかと疑いたくなる出来栄えです。
この構造のポーチの良いところはイヤホン同士が接触しないため、IEMの表面が傷つきやすい金属筐体のイヤホンをしっかり守ることができるところです。大きめのポーチやケースに入れていても内部でイヤホン同士が接触して結局傷だらけというイヤホンも多くありますがそれを防ぐことができ、その効果や実績はCAのユーザーが立証済みです。
尚、このNiceHCK の謎袋ですが20袋で大体5000~6000円なので一袋300円弱になります。
っということで、文量も長くなってしまいましたので今日はこのあたりにしたいと思います。ではまた明日。
■Appendix
〇測定環境
ハードウェア:Apple Macbook pro 15 Late2013 BigSur11.6.4
ソフトウェア:REW V5.20.8
INPUT:MOTU M2 IN1 XLR (VXLR+)192KHz24bit
OUTPUT:MOTU M2 192KHz24bit 3.5mm変換
カプラ:IEC711クローン 刻印( IEC60318-4 Type E610A)※100〜10KHz用
イヤーピース:Final TypeE Black Mサイズ
〇測定パラメータ
入出力バッファ512K、Acoustic Reference
出力音圧レベル:−12dB
Length:2M(10.9sec) 、192kHz、0〜20,000Hz