ゆるふわオーディオ日記

日常の気になった事や思う事、気に入ったオーディオ機材のレビューを思うままに書いています。ゆるキャラ、モフモフ、ポフポフ、ふわふわが大好きです。

レビュー:TANCHJIM ZERO 結論:破綻が少なく優しい音色に特化した低価格イヤホン A3K Tier3

こんにちは

 

今日は今話題のTANCHJIM ZEROのレビューです。

結論(Abstract):A3K Tier3 参考価格:3300円

ZEROは低価格向けではありそうで無かった音色の破綻の少なく不快音もないことを特徴にもつ優しい音色の低価格イヤホンです。左右の音場が極端に狭い弱点を除けば前後と上下の音場に音の立体感を上手に表現できるというこの価格帯にはほぼ無い特徴も持ちます。この価格帯としてはビルドクオリティも高く付属品のイヤーピースも7ペア付属している点は評価できますが鳴らしにくく断線しやすいことなど、良い点と悪い点のチューニングが振り切れているのでピーキーなイヤホンです。嵌まれば強いという機種なのでイヤホンを複数もつ中級者に強くおすすめできます。

初心者などで音場が広く無難な良い音を手に入れたい場合には水月雨Moondropの竹CHUが3800円ほどで購入できるのでそちらをオススメします。この2つは低価格ナチュラル系イヤホンではありますが正反対のチューニングなので2つ持つのも良いかもしれませんね。

 

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■動機付けなど

先に言いますが私はこのZEROの「音楽」ではなく「音」を聴くためのようなイヤホンの音は明確に好きではありませんし音場という明確かつ致命的な弱点もあるので微妙と今でも思っています。

当然ながらイヤホンの感じ方は人それぞれで私の一個人が決める価値観が全てではないですし素晴らしいと思っている方を否定するものでもありません。注意として以前まとめた記事をリンクしておきます。

el-snow.hatenablog.com

特に今回の件でも感じたのは上記だけではなく音の評価項目が全く異なるというタイプの方もいるという点も実感しました。

el-snow.hatenablog.com

上記の音の言語化についてはPart2やPart1の修正をしないといけませんね。

 

いずれにししても一部界隈で絶賛されているイヤホンですので試聴して確認ということで買ってみました。

 

■SPECとか

こちらについては公式サイトをご覧くださいと言いたかったのですがまだ地球世界のページにはできていないのでeイヤホンへのリンクを貼っておきます。

e-earphone.blog

特筆すべきは2点で周波数特性が良い(DFカーブ、ハーマンカーブ)ライクなこと、そしてこの価格ながらドライバにベリリウムコートかつ10mmサイズのものを使っていることです。

日本のページでは割愛されていますが海外の販促ページには上記のような表記が追加されています。14KHz付近のDIP以外は滑らかで綺麗なグラフです。

そして格安ベリリウムコートドライバと言えばHINHiFiのT1S等が思い浮かびますがT1Sでも20$台で約3000円以上しますので16$という価格は破格です。

 

■付属品とか本体とか

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〇筐体、ケーブル

この価格帯では一般的な一体型です。リケーブルはできませんがこの価格では十分でしょう。本体のクオリティは高く樹脂筐体でありながら透明で、その樹脂の透明度も高いです。同じ価格帯のquarksが曇った樹脂なのでかなりがんばているといえるのではないでしょうか。ベリリウムコートの真偽は確認できませんが10㎜のドライバは肉眼で確認できるところは良いですね。f:id:el_snow:20220928014517j:image

また、樹脂の内部薄く青いラインが入っているのですがなかなか良い色合いで美しいです。竹CHUでも驚きましたが16$でこれを作るという技術力には脱帽ですね。尚、本体のステムは若干太いのでイヤーピースは選ぶようです。

また竹CHUと異なり本体が軽いこと、ケーブルの癖が付きにくいところは使い勝手が良く素晴らしいです。

追記:2022.09.30

ケーブルが断線し易いとの情報があり、確認しましたので追記です。写真ではわかりにくいですが、確かに構造を確認すると筐体内部の配線から外部のケーブルまでにテンションを逃がす機構が無くケーブルを引っ張ると内部の配線が動く構造になっていました。外出時の使用や寝フォンなどは避けたほうが無難かもしれません。f:id:el_snow:20220930161252j:image

〇イヤーピース

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イヤーピースは標準を含めると7タイプ付いていますが2種類3サイズで1つのサイズについては2ペアついているようです。他の16$クラスは碌なイヤーピースがついていないことを考えると悪くありません。また少し上の価格帯の竹CHUでは単体でも1000円以上する清泉イヤーピースが3種類付属しており話題になりましたが、3サイズはフィットする人が少なく初心者には勧めにくい付属品でしたがZEROは7種類ついていますのでフィットする確率がやや高いです。できれば1種類7サイズが良かったですが無いよりはマシですね。

私も例外なく普通の低コストイヤホンの付属品イヤーピースはフィットしなかったのですがZEROは7種類ある為かフィットするものが1つありました。

〇寝フォン

形状から寝フォンに向きそうと勘違いしそうですがいわゆるintimeの碧シリーズと同じで、finalのEシリーズやQuarksを太くした形状で、かつそれらと比べてもほぼ長さは同じなので寝フォンにはあまり向きません。ただ、音色に刺激が少ないので就寝前に静かにメロディを聴きたいという場合などにはピッタリです。

〇遮音性、音漏れ

一般的なレベルです。密閉度が高そうに見えるのですが前方にベントが空いているタイプのためそこそこは音漏れします。また、遮音性も同じであまり高くはありません。

〇付属品

f:id:el_snow:20220925225734j:imageその他の付属品としては写真の通りイヤホンを入れるためのポーチがついています。スウェードの手触りが良く付属品は少ないですが好感色です。竹CHUほどは充実してはいないのですがケースの使い勝手が実用的なレベルになっているので遜色ありません。Quarksやワンちゃんなどと比べても充実しているのでかなり良いですね。

またパッケージの自体の品質も良く、開封体験としても16$のそれを超えて竹CHUと遜色ないレベルになっています。

〇その他、総評

全般的に音以外のクオリティについては16$としては圧倒的なレベルに達していると思います。日本での販売価格は約2倍の3000円ですのでまぁこんなもんかなっという雰囲気になっていますが為替の影響は無視できないので仕方が無いかもしれませんね。

■音質について

このZEROの素晴らしい点は16$(3000円)という価格でありながら楽器の音色がとてつもなく優しく破綻が少なく不快な音が少ないという所だと思います。全体として音色に関しては減点が極力無いような音作りをしたという形跡を感じます。

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〇ファーストインプレッション

購入して聴きなおして思ったのは梅田の音フェスで聴いた感想は間違いではないということで、この後で褒めるのでその前座として試聴時の感想を書いておきます。

 

とにかくファーストインプレッションで思ったのは圧倒的な「音場の狭さ」でした。特に安いイヤホンやヘッドホンで共通する項目なのですが、ステレオの音像を全て否定するような音が頭の中央付近で鳴る特徴です。このためオーケストラを含む生録音曲のリスニングは絶望的です。音色は良いのですが臨場感が皆無でOLAは横には広いのでその良さを削ってしまった衝撃は大きかったです。事前の期待では素晴らしい形の周波数特性をしていたので拍子抜けも良いところでした。

 

そして次に思ったのはボーカルを中心とする耳に中域の張り出しの強さが次に印象的でした。普段は様々な曲を聴いて感想をまとめるのですがどうしても展示会などは視聴時間が限られるのでボーカルを含む多くの帯域が含まれる生録以外はPOPS曲を試聴に選ぶことが多いのですがそれが仇となったようです。ボーカル域が耳に付かない適正音量にボリュームを合わせると他の楽器の音色が本当に目立ちません。

そのボーカルも無味乾燥としていながらもつんざくようなハスキーライクで音で耳に付く感じです。かといってQuarksの様な特徴ある美音でもなく、あくまで淡白な音色です。このあたりの音色の雰囲気は同じTANCHJIMのOLAに似ていると感じたのを覚えています。

 

ということで3分ほどの時間でPOPSやオケの曲を数曲聴いてその印象は変わらず、明確に横が広いOLAと比べても残念な気持ちになったのを覚えています。そのためBlogは元よりTwitterでは感想を封印して居た次第です。

〇環境とか

M17DC(つよねこCD217) --> ZERO -> 標準イヤーピース

11T Pro -> BTR7 -> ZERO -> 標準イヤーピース

エージング

購入した箱出し、そして+40時間ほどエージングしました。ベリリウムコート素材はエージングに時間がかかることが知られているので一旦40時間の段階でレビューを書くことにしました。

ちなみに変化としては耳が慣れたのかエージングで変わったのかわかりませんが、若干横の狭さが緩和されたような気はします。もちろんそれでも一般的なイヤホンよりは横の音場は狭いです。

帯域バランス

中域が強いカマボコバランスです。特に人の声の帯域が強いのでボーカル向けイヤホンにはなるのですがボーカルの一部の帯域が一般的な帯域よりも強く、楽曲によってはボーカルに音量を合わせるとボーカル以外の音色がほぼ目立たないぐらいのバランスです。この辺りは慣れもあるかと思いますが低音の量感についてはやや少なめなのは共通した特徴かとは思います。

音色(寒暖、明暗、響き、粘度)

このイヤホンについての表現は難しいのですが寒色よりで、やや暗めですが優しい音色の音です。響きと粘度はこのイヤホンの特徴で完全にニュートラルに近いと言って良いかと思います。とにかく自然な音色の残響感が付与されています。全体に渡って音色がサラッとしてはいるのですがソリッドな硬い感じもなくとにかく現実に「実際耳で聴いた時ってこんな感じの音色」と思えるほど強調感が無く個性がありません。逆にその個性の無さがこのイヤホンの特徴になっているというのは面白いです。

また、このイヤホンの特徴にイヤホンにありがちな楽器本来には含まれていないような不快な音色が少ないことから音色が破綻しにくい特徴を持っています。またどの帯域も強調された強みのような音色も無いのでかなり淡白な印象の音色です。もちろんどのような音楽を聴きたいかという目的次第ではあるのですが、モニターサウンドの様な悪い音はそのまま悪く出すというイヤホンではなくどのような楽曲も棘のない無味無臭の音色にしてくれるような変化を持つのでその特徴が少ない音色をどう捉えるかでも評価が分かれるイヤホンです。

 

言い換えれば破綻が無いだけで、明確に良いわけではないというのがポイントです。これはどの帯域でも言えて良い音色と思えるサウンドではなく「悪くない」という音色です。完全にモニター用であればそれもありだと思うのですが個人的にはリスニング向けイヤホンとしてはかなり淡白であまりにも面白みがありません。まるでおいしい料理を期待して料理屋に食べに行ったら延々と美味しい水がでてきたような感覚です。

またこの特徴は同じTANCHJIMの上位機種のOLAでも持っており、似た系統の音作りということなのかと思います。加点も無く減点も無いようなサウンドなので正に名前の通りだなとも思いました。

音場(広狭、重心、遠近)

音場は横に極端に狭いです。わかりやすく左右に音量が偏るような楽曲で無い限りほぼ頭の中央付近に音が集中します。上下については価格なりで、前後は価格帯を考えるとかなり広めかと思います。

特に前後感に関しては平面駆動イヤホンが流行ってきたことで奥行きを感じる低価格イヤホンが増えてきましたが16$クラスで前後感を感じられるイヤホンは数少なく明確な強みだと言えます。それと引き換えに捨てている横の音場の広さは100均のイヤホンレベルでかなり極端なチューニングです。重心についてはほぼ中央で音の近さも一般的です。全ての音色が頭の中央付近から聴こえ、イメージとしてはSHUREなどのイヤホンを酷くしたかんじやセリホン以外の100均のイヤホンという感じでしょうか。

このためこの横の狭さと前後の広さをどう捉えるかでこのイヤホンの評価は大きく変わる様に思います。折角Twitterで竹CHUとの比較画像を作ったのでここでも記載しておきます。

ZERO vs 竹CHU 横、前後の音場比較

定位、音像

定位も評価が難しく、縦横の平均を取るとこのクラスでは並です。具体的には前後の定位は圧倒的に良く、横の定位はかなり緩いです。音場の狭さを考慮すれば定位は悪くはないのですが横の音場が狭いことと、横に広い曲が多い事を踏まえると狭い空間での位置関係は曖昧になりがちです。

音像についても同様で横の狭さを、奥行き方向の音の広がりで補っていおり、奥行きの音像については価格帯の一般的なイヤホンより明確に良いと言えます。その分横方向の立体感が欠如しているので評価がかなり難しいです。

また、ボーカルものなど中域が強めの楽曲等によってはボリュームバランスが難しく、音像をつかむような音量では爆音に感じたり、中音が適切な音量ではメインの音像はつかめても周囲の音像は掴みづらい・・・聞き取りづらいと感じた曲も多くありました。

解像度、分離

解像度については価格帯としては概ね良いかと思います。一聴すると緩く感じるのですが良く耳を澄ませば価格なりの実力を持っています。分離については左右の音場の狭さから混濁しやすくやや苦手な範疇かと思います。一方で前後の立体感は優秀なのでそこを頼りにすれば分離も悪くなく、総じて概ね良いという感じです。

低域の質について

低域の量感についてはやや少ないのですが、低音の質についてはこの価格帯を考えれば十分な音色です。スピード感やアタック感は価格なり緩いですが値段なりで悪いというレベルまではいきません。音色の項目でも書きましたが、粗さや雑味みたいなものをそぎ落とすような音色に変化させてしまうのでハードな曲などでは面白味には欠けてしまうかもしれません。あくまで小音量でBGM的に聴くような曲に合う低音だと思います。

中音の質について

明確に中高音の量感が多いです。全体の音色の雰囲気は統一されているのであくまでも滑らかで淡白な音色です。ただ気になるのは5KHz前後でしょうか?女性、男性ボーカルのハスキーな部分で歯擦音とは異なる部分が強調されてここだけやや不自然さを感じます。そのボーカル音が不快にならないようにボリュームを下げてしまうとかなり音量が小さくバランスが悪いです。このあたりは上位機種のOLAの方が上手くまとめており全体の帯域バランスが優秀です。

高音の質について

チャイムや弦楽器、シンバルなどこの辺りの楽器の高音の響きはこのイヤホンの得意とするところです。この価格帯でなくとも多くのイヤホンが苦手とする中域から超高域の表現は自然な音色です。ピアノや弦楽器、チャイムなどでイヤホンで感じやすい雑味のある付帯音が少なく、優しい音色にしてくれます。

ただ、自然ではあるのですがモニターサウンドとは異なるどちらかというと作られた自然さで正確な音色ではありません。特に同価格帯の竹CHUなどはこの辺りの表現には少し粗があるので竹CHUの苦手なところをピンポイントで強みにもってきているのは面白みを感じます。

ジャンルの得意不得意

この優しい粗を見せない低刺激の音色、かつ横音場が狭い音に向くのは生録音のモノラル音源ソース、正確な左右の定位が存在しない打ち込み系のサウンドです。これらのサウンドは逆に前後の立体感を優位に感じられるの価格を超える体験をすることができます。横のステレオ音像を作るのが致命的に苦手なのですが逆にそれらを意識しなくてよい様な楽曲には圧倒的にハマるイヤホンと言えるでしょう。

逆に音場が広い生録音の大編成オーケストラなどは音場広いイヤホンを知っていれば知っているほど聴くに堪えず、全ての音が狭く中央で定位するので面白みに欠けます。音楽を分解した「音そのもの」の要素としての立体感は前後感を含めて優秀なのですが、定位する位置と言う複数楽器とのハーモニーなどの音楽性を重視するサウンドにはとことん合いません。

また女性ボーカルを中心とする音数の多いPOPSやアニソンなども女性ボーカルの声が大きく感じあまり合わないように感じました。

また、刺激が少ないことから勉強しながら、家事をしながらなど、他事に集中することがある時などの「ながら聞き」などにも良いかと思います。人にもよるかと思いますが何かをしながら音楽を聴くと音色は聴けても音場、音の方向性はあまり注意が向きません。ながら聞きは小ボリュームでも十分なことと、Zeroの欠点である特殊な音場を覆い隠し、音色を聴くことができるのでまさに打ってつけかと思います。

 

少々厳しいことを書いてはいるのですが16$のイヤホンに何を言っているのか?っという意見もわかるのですがこの価格帯は中華でもすでに激戦区で、この価格のイヤホンはそれぞれ弱点もありますが音楽を聴くということに関しては何かしらの強みも持っていると考えています。一方でこのZEROは粗という減点こそ無いのですが強みとしての加点も無い点が特徴でなかなか音楽を聴いていて楽しい魅力的な音色と思わせてくるポイントがありませんでした。

■測定とか

〇SPL周波数特性グラフ

この形状は今毛嫌いされているほぼハーマンターゲットカーブの形状に似ていますね。まぁ偏差も取った方が良いのでしょうがTANCHJIM的にはDFカーブを意識しているようにも見えますね。いずれにせよカーブ的にも減点が少ないというのが良い点になるかでしょうか。

vs NewHana vs 竹CHU

竹CHUやTANCHJIMの上位機種NewHANAとを800Hzで正規化して比較したグラフがこちらです。比較して3~7KHzあたりの帯域が5dBほど強いことがわかります。かまぼこを称されるところがここにあるのかもしれませんね。

余談ですがリアルな音場であるスピーカーと異なりイヤホンやヘッドホンでは頭内定位が長らく問題視されていましたが2010年代頃から頭内定位の中でもステレオ感を楽しむ動きが出てきました。これは頭の外でステレオで作られる音場の広い空間で音像定位の違いを楽しむ動きをミニチュアサイズにした頭の中で楽しむ行為です。人間はイヤホンやヘッドホンで本来あり得ない位置である頭の中の音の定位を楽しむことができるということが後天的にできるとわかってきた時代でもあります。

しかしSHUREなど1990、2000年代初期のイヤホンの周波数特性グラフがまさにDFカーブに近くなっていたとの事なのですが頭外定位したという話は誰からも聞かず、むしろ頭の中で鳴っていることに変わりはありませんでした。何が言いたいかと言うと私個人の感想としてはDFカーブやハーマンターゲットカーブに沿わせたからといって、頭の中で作られる音場が広いわけではなく、寧ろより頭の中央で鳴る可能性が高い様です(少なくとも私はそう感じます)。そいういう意味でこのZEROはあまりにも音色の雰囲気が古いので、原点と言う意味のZEROなのかもしれないと想像してしまうほどでした。

 

■相性について

アンプ(上流)による印象の違いについて

音場の広さに注目してFiiO BTR7、M17、Topping L50、ADI2DAC、ノートPC直刺し、AGPTEK 19Xなど複数のアンプに挿してみましたが、横の狭さについて大きな変化はありませんでした。

広かったのはADI2DACとAGPTEKで特にADI2DACはDAC性能が高いこともあり狭さを感じにくい音の鳴らしかたをしているように感じました。

音色についてはかなり変化があり、ADI2DACの音色のみ硬い音とZEROの緩い特徴の無い音が合わさってかなりシッカリとした硬い音になり価格以上の音色だと感じました。ヘッドホンアンプを盛っているならばMUSE02等のOPAMPを搭載しているものを選ぶと相性が良さそうです。

この3日間かなり苦痛ではあったのですがADI2DACのプレイヤーと後述するイヤーピースを変更してやっと聞いていられる音色に纏まりました。ここまでする価値が他の方にあるのかはわかりませんが今後このイヤホンも愛せそうでホッとしています。

イヤーピースによる印象の違いについて

〇デフォルトイヤーピース

今回のデフォルトイヤーピース、個人的には装着感が悪く長時間つけることで耳が痛くなった。あまり良いイメージは無いです。

JVC SpiralDot++(横の音場重視、高域、低域重視)

基本的には左右の音場が少しだけ広がり解放感が増します。音色の薄さや卒のなさに加えて装着感も改善されるため個人的にはやはりオススメしたいイヤーピースです。

○Spinfit CP100+(音色、縦の音場重視)

縦の音場が若干広がり音像が少し上がる。前後の音の立体感がより見やすくなるので確かに悪くはない。ただ音色がさらに粗が無く卒もない方向に行くので好みが分かれやすい。このイヤホンの音色が気に入ったのであればCP1100+はお勧めできるが気に入らなかったのであれば別のイヤピースに変更して音色の方向性を変えるほうが良さそうです。

○Spinfit W1(音色)

音色の繊細さに若干の解像感が追加されて音色のハリが出て鮮やかになる。縦の音場感も少し広がるが横の狭さはより際立つ印象。ただ、音色に華がでるので個人的には一番気に入りました。

○Sedna VividEdition(コストパフォーマンス)

音像の高さは標準と変わらずだが横が若干広がりやや弱ドンシャリ傾向に、標準のイヤーピースがハマらないという方にはかなり安いこともありオススメできると感じました。

  

所感

今回のZEROについては最終的に購入することになりましたが、視聴時には明確に嫌いな音だったのでここまで界隈で評価されるようになるとは驚きでした。

レビューにあたってできるだけ様々なジャンルは聞くようにしていますが、オーケストラなどの生録音では実際の録音した2chサウンドが全て中央付近から鳴るということは無いので、原曲を知っているほどに不自然さと自然な音がミックスされた不気味の谷の様な違和感を強く感じたのを覚えています(3日間聴き込んだら慣れてきましたがw)。

もちろん音場の狭さを感じないジャンルは確かにあったのでそういう方達にも評価されているイヤホンなのだろうと思います。時が経てばまた嗜好が変わるかもしれませんが個人的には狭い上にこの人工的に作られた自然の様なサウンドが絶賛サれるほどは好きになれませんでしたが、評価している人たちの気持ちも理解できました。

具体的には「横の音場を広い、狭いという感覚を持っていない人や、定位は中央にあるほどよいという感覚を持っている人もいること」結果的に音の評価項目が全く異なるというという点で、様々な考え方があることを勉強になった次第です。今回のレビュー前にクロストークの確認やボリュームによる音場感の変化など様々な実験をやってみていますがこちらについては別途記事にしたいとおもいます。

 

尚、誤解しないで欲しいのですが私はモニターサウンドは大好きです。RMEのADI2DACの音色もAustrian audioのHI-X55の音色も大好きです。所説ありますがSONYの900STなども今でも所有して稀に使っていますしSHUREのE2Cなどの機種も使っています。ただこれらはステレオという一般的で普通の音場を当たり前の様に持っています。もちろん5$の中華イヤホンですらあります。

しかし16$のZeroはかなり狭いです。中央に寄る音場になった理由は定かではありませんが、まじめ音楽を聴こうとすればするほど違和感が強くなるので個人的には音楽ではなく「主旋律のみ」もしくは「音」を聴くのがメインというイヤホンだと思います。その点、上位機種のOLAは音色は似ている上で横の音場も若干広いため明確な音場の弱点が消えていると考えています。もちろんさらにケーブルで調整ということも可能かもしれません。左右のステレオ感が少なくても許せると言う方にはZEROも良いのですがOLAも試聴して選ぶのが良いかと思います。

 

尚、このZEROですが海外では16ドルとQuarksと同じ値段で売られています竹CHUもそうなのですがこれが2000円程度であればTier2でも良かったかもしれません。もちろん好みとしてはTier4ぐらいなのですが、まぁ前後の音の立体感については他に表現できるイヤホンも無いことからそれぐらいの評価でも良いのだと思います。

イヤーピースやアンプを変更することでやっと好きになれたZEROですが日本価格3300円でも価格を考えれば悪いイヤホンではありませんので、気になる方は購入してみるのも悪くないと思います。

 

■結論

ZEROは低価格向けではありそうで無かった音色の破綻の少なく不快音もないことを特徴にもつ優しい音色の低価格イヤホンです。左右の音場が極端に狭い弱点を除けば前後と上下の音場に音の立体感を上手に表現できるというこの価格帯にはほぼ無い特徴も持ちます。この価格帯としてはビルドクオリティも高く付属品のイヤーピースも7ペア付属している点は評価できますが鳴らしにくく断線し易いことなど、良い点と悪い点のチューニングが振り切れているのでピーキーなイヤホンです。嵌まれば強いという機種なのでイヤホンを複数もつ中級者に強くおすすめできます。

初心者などで音場が広く無難な良い音を手に入れたい場合には水月雨Moondropの竹CHUが3800円ほどで購入できるのでそちらをオススメします。この2つは低価格ナチュラル系イヤホンではありますが正反対のチューニングなので2つ持つのも良いかもしれませんね。

 

では、また明日。

 

■Appendix

〇測定環境 

ハードウェア:Apple Macbook pro 15 Late2013 BigSur11.6.4

ソフトウェア:REW V5.20.9

INPUT:MOTU M2 IN1 XLR (VXLR+)192KHz24bit

OUTPUT:MOTU M2 192KHz24bit 3.5mm変換

カプラ:IEC711クローン 刻印( IEC60318-4 Type E610A)※100〜10KHz用


イヤーピース:Final TypeE Black Mサイズ

〇測定パラメータ

 入出力バッファ512K、Acoustic Reference

 出力音圧レベル:−12dB

 Length:2M(10.9sec) 、192kHz、0〜20,000Hz

 カプラキャリブレーションファイル適用、SoundCardキャリブレーション実施済み