こんにちは
今回はマイク付きのTanchjim ZERO iSを購入して少し聴き込んだのでそのインプレ(簡易レビュー)です。
インプレ結論:A3K Tier2 参考価格:3300円
ZERO iSは音色の破綻の少なく不快音もないことを特徴にもつ優しい音色の低価格イヤホンです。マイク無しのZERO無印と比べて左右の音場が極端に狭い弱点が無く、前後と上下の音場に音の立体感を上手に表現できるというこの価格帯にはほぼ無い特徴も持ちます。
この価格帯としてはビルドクオリティも高く付属品のイヤーピースも7ペア付属している点は評価できますが鳴らしにくく断線しやすいことなどは注意が必要なイヤホンです。
水月雨Moondropの竹CHU同様に海外価格と相違無い2000円程度の価格であればTier1レベルの素晴らしいイヤホンです。
Pros(優秀な点)
◎音色の破綻の少なく不快音もない優しい音色
◎綺麗で自然な高域表現
〇良質な空間表現
Cons(微妙な点)
✗筐体とケーブル間が断線しやすい
△やや音量が取りづらい
- インプレ結論:A3K Tier2 参考価格:3300円
- 動機付けなど
- 箱とか付属品とか本体
- 音質について
- SPL周波数特性測定とか
- 相性について
- 音質の総評、所感
- インプレ結論:A3K Tier2 参考価格:3300円
- Appendix
動機付けなど
モチベーション
注意:
リケーブルについては科学的に見ればごく低品質なものを除いて音質の変化に対する定量性のある決定的な証拠はありません。
このためリケーブルは貼り付けなどと変わらないオカルト的な要素を過分に含みます。
幸いながら私はイヤホンケーブルによる音質の変化を強く感じられるのですが、個人差がありますので気になる方はこの項目は読み飛ばしてください。
過去にマイク無しのZERO無印はレビューして評価も確定いたのですが「マイク有りは音場が広い」という情報を多方から頂きまして今回購入してみました。ちなみにマイク無しは合計3台購入しましたが結論として「付属ケーブルの特性で狭くなっている」という結論を持っています。ケーブルについてはオカルト要素を含むので受け入れがたい内容でもあるのは理解できます。
そのため、疑り深い人を含めてZEROのケーブルを切ってMMCX、2pin化したケーブルを複数人に聴いていただいたのですが、「狭くなった」が7割程度の方が、「変わらない、わからない」が3割、「広くなった」と感じた方はいないという結果でした。
その結果を踏まえるとマイク付きは基本的にマイク用のラインが足されているので芯数が増えるマイク付きの音場は異なるという可能性は十分にあります。また、品質の良いケーブルでの音の変化はオカルト要素なのですが、ZEROiSは17$の商品なのでケーブルの品質面は危惧されるイヤホンです。
ということで実際に購入してみました。
計4本になってしまいました(笑)
過去のレビューなどはこちらから
販路、購入先(サポート)
日本の代理店から購入すると3300円ほどです。海外では16.9$なので今でも少し高いですが昨今のレート変化を考えればもしかすると余裕を見た適正だったのではないか?と思わされる値段ですね。
SPEC
下記公式サイトを御覧ください。と書きたかったのですが公式サイトが酷く重いのでAmazonの商品ページを御覧ください
ちなみにこのZEROのケーブルはOLAのものと同じではないか?と思ったりもしたのですがどうやら構造が違う様で、OLAは同軸ケーブル、ZEROはリッツ線になっています。
ZEROのケーブルの記載
「ZERO」のケーブルは4N OFC銅・銀メッキワイヤとケブラーを使用したリッツ耐酸化構造で作られています。
OLAのケーブルの記載
「OLA」のケーブルは、ケブラーファイバで挟まれた 2 芯 OFC が捻られ、銀メッキ 4N OFC 線と編まれた同軸ケーブルです。静電容量が小さいため、外側の銀メッキ線は伝導に関与せず、遮断層の役割を果たしています。
ケーブル全体の靭性が強く、ある程度引っ張られにくいです。
実際にZEROがリッツ線であることはMMCXや2pinケーブルを作ったので間違いないことを確認しています。
箱とか付属品とか本体
開封体験
ZEROと全く同じなので割愛します。外観での違いもバーコード部分にZERO iSと上貼りシールがあるだけです。
筐体
マイク有無での違いは見受けられませんでした。マイク無しでも初期ロッドはドライバ周囲の接着剤部分に青色のラインがあったのですが最近のロッドではラインが無くなっています。
競合機種との比較
マイク無しのレビューを参照ください
ステム形状 6.4[mm]
重さ4.0[g]
ケーブル付きなので正確ではないことをご承知ください
抵抗値(直流インピーダンス)31Ω
個体差レベルかもしれませんがマイク無しは32Ωでした。
ケーブル
左側がイヤホン側、右側がジャック側で、上の線がLeft側、下の線がマイクのあるRight側です。マイク部分の前後で3芯⇢2芯になっていることがわかります。
付属イヤーピース
マイク無しと同じですね。
マイク
Discordで通話に使ってみましたが問題なく使えました。
付属品
マイク無しと同じですね。
使い勝手の評価
寝ホン
形状から寝フォンに向きそうと勘違いしそうですがいわゆるintimeの碧シリーズと同じで、finalのEシリーズやQuarksを太くした形状で、かつそれらと比べてもほぼ長さは同じなので寝フォンにはあまり向きません。ただ、音色に刺激が少ないので就寝前に静かにメロディを聴きたいという場合などにはピッタリです。
外使い(音漏れ、遮音性、ノイズキャンセル)
指でステム側を抑えて遮音してみましたが一般的なレベルです。密閉度が高そうに見えるのですが前方にベントが空いているタイプのためそこそこは音漏れします。また、遮音性も同じであまり高くはありません。
音質以外の総評(付属品、ビルドクオリティ等) ○
全般的に音以外のクオリティについては17$としては圧倒的なレベルに達していると思います。日本での販売価格は約2倍の3000円ですのでまぁこんなもんかなっという雰囲気になっています。
音質について
ファーストインプレッション
「横普通に広い」という感想です。無印ZERO(マイク無し)の時に感じた横の音が狭くるしく鳴るという感覚が全くありません。横に極めて広いというわけではないのですが普通の横の広さが担保されています。これならばピーキーさが無いと感じます。また、音量も若干取りやすいと感じました。
ちなみにマイク無しのZEROは3本買って3本ともに横に狭かったので個体差という可能性は低いと思っています。
競合機種との比較について
水月雨moondrop 竹CHU、TANCHJIM ZERO(マイク無し)がライバルになるかと思います。
エージング(バーンイン)
箱出しから1時間ほど使って、その後5時間ほど使いましたのであまりエージングはしていません。この間での変化はあまり感じませんでした。
試聴環境
標準環境*1を使っていますが。今回は特にM17、Xperia10ivを主体に聴きました。また、標準のイヤーピースも使えましたが他のレビューとの公平性の観点からSpiralDot++を使っています。
帯域バランス 弱カマボコ
マイク無しのZEROとほぼ同じです。ボーカルの一部の帯域が一般的な帯域よりも強く、楽曲によってはボーカルに音量を合わせるとボーカル以外の音色がほぼ目立たないぐらいのバランスです。この辺りは慣れもあるかと思いますが低音の量感についてはやや少なめなのは共通した特徴かとは思います。
音色(寒暖、明暗、響き、粘度、厚み) ◎
こちらもマイク無しのZEROとほぼ同じです。
やや寒色よりで、やや暗めですが優しい音色の音です。響きと粘度はこのイヤホンの特徴で完全にニュートラルに近いと言って良いかと思います。
自然な音色の残響感が付与されており全体に渡って音色がサラッとしてはいるのですがソリッドな硬い感じもなくとにかく現実に「実際耳で聴いた時ってこんな感じの音色」と思えるほど強調感がありません。
不快な音色が少ないことから音が破綻しにくくどの帯域も強調されたような音も無いのでかなり淡白な印象の音色です。
モニターサウンドの様な悪い音はそのまま悪く出すというイヤホンではなくどのような楽曲も棘のない無味無臭の音色にしてくれるような変化を持つのでその特徴が少ない音色をどう捉えるかでも評価が分かれるイヤホンです。
音場(広狭、重心、遠近) ◎
マイク無しのZEROと大きく異なるのがこの音場表現です。横も上下も価格なりで一般的な広さを持っています。そのうえで前後は広い表現力を持っています。
特に前後感に関しては平面駆動イヤホンが流行ってきたことで奥行きを感じる低価格イヤホンが増えてきましたが16$クラスで前後感を感じられるイヤホンは数少なく明確な強みだと言えます。とは言え前後についてはややマイク無しのZEROの方が広いです。重心についてもほぼ中央で音の近さも一般的です。
定位、音像 〇
横が大きく広がったことで前後の定位が良い上に横の定位も一般レベルになったことです全体として大きく改善しています。
尚、ボーカルものなど中域が強めの楽曲等によってはボリュームバランスが難しく、音像をつかむような音量では爆音に感じたり、中音が適切な音量ではメインの音像はつかめても周囲の音像は掴みづらい・・・聞き取りづらいと感じた曲も多くありました。
解像度、分離 〇
解像度については価格帯としては概ね良いかと思います。一聴すると解像感が低いために緩く感じるのですが良く耳を澄ませば価格なりの実力を持っています。分離についても一般的です。一方で前後の立体感は優秀なのでそこを頼りにすれば分離も悪くなく、総じて概ね良いです。
低域の質について 〇
マイク無しのZEROと同じです。
低域の量感についてはやや少ないのですが、低音の質についてはこの価格帯を考えれば十分な音色です。スピード感やアタック感は価格なり緩いですが値段なりで悪いというレベルまではいきません。音色の項目でも書きましたが、粗さや雑味みたいなものをそぎ落とすような音色に変化させてしまうのでハードな曲などでは面白味には欠けてしまうかもしれません。あくまで小音量でBGM的に聴くような曲に合う低音だと思います。
中域の質について 〇
マイク無しのZEROと同じです。
明確に中高音の量感が多いです。全体の音色の雰囲気は統一されているのであくまでも滑らかで淡白な音色です。ただ気になるのは5KHz前後でしょうか?女性、男性ボーカルのハスキーな部分で歯擦音とは異なる部分が強調されてここだけやや不自然さを感じます。そのボーカル音が不快にならないようにボリュームを下げてしまうとかなり音量が小さくバランスが悪いです。このあたりは上位機種のOLAの方が上手くまとめており全体の帯域バランスが優秀です。
高域の質について ◎
マイク無しのZEROと同じです。
チャイムや弦楽器、シンバルなどこの辺りの楽器の高音の響きはこのイヤホンの得意とするところです。この価格帯でなくとも多くのイヤホンが苦手とする中域から超高域の表現は自然な音色です。ピアノや弦楽器、チャイムなどでイヤホンで感じやすい雑味のある付帯音が少なく、優しい音色にしてくれます。
ただ、自然ではあるのですがモニターサウンドとは異なるどちらかというと作られた自然さで正確な音色ではありません。特に同価格帯の竹CHUなどはこの辺りの表現には少し粗があるので竹CHUの苦手なところをピンポイントで強みにもってきているのは面白みを感じます。
SPL周波数特性測定とか
vs ZERO(マイク無し)
個体差かもですが明確にマイク有のほうが鳴らしやすい(音量が大きい)ようです。
ZERO MMCX
折角なので以前作ったMMCX版の左右別の周波数特性を載せておきます。内部の空気の容積が変わるので周波数特性が変わったり加工により左右の音量差が出たのでは?という問いあわせがありましたがデータ上ではほぼ差はありません。もちろん装着感なども変わりますし聴感では違いはでるかもしれません。
相性について
ジャンルの得意不得意
音場が広くなったことで幅広いジャンルに対応できるようになったと思います。
刺激が少ないことから勉強しながら、家事をしながらなど、他事に集中することがある時などの「ながら聞き」などにも良いかと思います。
アンプ(上流)による印象の違いについて
M17、Xperia10ivを比べて使いましたがあまり違いはありませんでした。
イヤーピースによる印象の違いについて
JVC SpiralDot++(音場、高域、低域重視)
今回のインプレでのデフォルトイヤーピース
Spinfit CP100+
横の音場がやや狭くなり楽器の音像が中央に寄ってしまうのですが楽器の音色はより自然で刺激音が更に少ないソフトな方向になります。前後の音のの立体感はより感じられるのでこれも悪くないなと感じます。
音質の総評、所感
マイク無しZEROの明確な弱点が改善された完全な上位互換だと感じます。価格が価格なので4台購入1台試聴でも個体差という可能性もあるのですが、今のところマイク有のZEROiSは界隈で絶賛され、一時期盛り上がった理由がはっきりとわかる素晴らしい音色のイヤホンだと感じます。
購入してみて音色は気に入ったけれども横の音場の狭さが気になったと言う方はマイク有のZEROiSを購入すると幸せになれるかもしれません。逆に横の音場の広さ以外の変化は殆どないので、マイク無しでも音色が気に入らなかった場合はマイク有でもあまり好きになれないかもしれません。個人的にはZERO iSも良い音のイヤホンではあると思いますが、好みとしてはやはり竹CHUの音色の方がオールラウンドに使え、好みのイヤホンだと感じます。
また、ZEROの購入を検討されている方はマイクが不要でもマイク有のZEROiSを購入されることをオススメします。
インプレ結論:A3K Tier2 参考価格:3300円
ZERO iSは音色の破綻の少なく不快音もないことを特徴にもつ優しい音色の低価格イヤホンです。マイク無しのZERO無印と比べて左右の音場が極端に狭い弱点が無く、前後と上下の音場に音の立体感を上手に表現できるというこの価格帯にはほぼ無い特徴も持ちます。
この価格帯としてはビルドクオリティも高く付属品のイヤーピースも7ペア付属している点は評価できますが鳴らしにくく断線しやすいことなどは注意が必要なイヤホンです。
水月雨Moondropの竹CHU同様に海外価格と相違無い2000円程度の価格であればTier1レベルの素晴らしいイヤホンです。
Pros(優秀な点)
◎音色の破綻の少なく不快音もない優しい音色
◎綺麗で自然な高域表現
〇良質な空間表現
Cons(微妙な点)
✗筐体とケーブル間が断線しやすい
△やや音量が取りづらい
Appendix
購入リンク
*1:
M17DC(PL50) "AppleMusic" -> 標準ケーブル-> イヤホン -> SpairalDot++
M17"AppleMusic" -LDAC-> XD05BAL -標準ケーブル-> イヤホン -> SpairalDot++
iphone12"AppleMusic" -A1749-> -> 標準ケーブル-> イヤホン -> SpairalDot++
Xaomi 11T Pro"AppleMusic" -LDAC-> BTR7 ->標準ケーブル-> イヤホン -> SpairalDot++
GV301"AppleMusic" -標準ケーブル-> Aiyima H1 ->標準ケーブル-> イヤホン -> SpairalDot++
Xperia10iv"AppleMusic" -標準ケーブル-> イヤホン -> SpairalDot++
*2:
〇測定環境
ハードウェア:Apple Macbook pro 15 Late2013 BigSur11.6.4
ソフトウェア:REW V5.20.13
INPUT:MOTU M2 IN1 XLR (VXLR+)192KHz24bit
OUTPUT:MOTU M2 192KHz24bit 3.5mm変換
カプラ:IEC711クローン 刻印( IEC60318-4 Type E610A)※100〜10KHz用
イヤーピース:Final TypeE Black Mサイズ
〇測定パラメータ
入出力バッファ512K、Acoustic Reference
出力音圧レベル:−12dB
Length:2M(10.9sec) 、192kHz、0〜20,000Hz