こんにちは
今日はタイトルの通り、TRNから発売されたTRN Tips、またはT-EARというイヤーピースがじわじわと人気を博しており、購入して使って測定してみたのでその雑記です。
TRN T-EAR TIPSとは
TRNから発売した3ペア1280円という価格で最近のイヤーピースとしてはかなり安い部類です。詳しいスペックなどは下記購入リンクからどうぞ。
Amazonの商品説明ではTRN Tipsとなっており最初は名前が無いのかと思いましたが商品名「T-EAR」はパッケージ写真に載ってますので一旦そちらで統一しようと思います。
メーカーの説明と帯域の変化特性はさておき、このイヤーピースの音色の特徴は中域~高域までの解像度が上がり音の描写が細かくなることと、ハイハットシンバルなどの楽器の響きが自然かつリアルになるとの噂です。さらに驚くことに3000円ほどするW1やSpiralDot++などと遜色ない程の完成度とのことです。
また、ややサイズが小さく一般的なMSサイズイヤーピースがフィットする人であればSサイズ、MLサイズの方はMサイズと1サイズ小さ目がフィットすることが多い様です。説明のサイズ表をみてもLサイズで外径12.8mmとかなり細いです。とはいえシリコンの装着感が抜群に良く、結果的にコストよし、性能よし、装着感よし、隙が無いとの噂です。
イヤーピース自体は興味があったものの私は外径が14mmなければほぼフィットしないことが多いのでスルーする方向だったのですが、あまりにも評判が良く、実際に周波数特性がどのような変化をするのか測ってみたくなり購入してみることにしました。
購入したサイズは一番大きいLサイズで、intimeやfinal Eシリーズなどのタイプであれば装着できることが多いことと、測定の際にMサイズでは小さすぎて測れないことが無い様にこのサイズを選択しました。
音の変化
実際届いてみて使ってみたのですが、確かにLサイズでも小さく、現在はレビュー用にS12Proなどを使うことが多いのですが、やはりすっぽ抜けて装着できません。しかしながらIntimeやfinal Eシリーズなどの筒状タイプだけでなくCadenzaやT3Plus、HOLAなどはステムの角度などが良いのか装着でき、音を確認することができました。結果的に手持ちのイヤホンの7割は装着できませんでしたが3割程度は使えそうで、これは嬉しい誤算です。
肝心の音ですが、噂通り、高音のチャイム系の楽器やシンバルなどがどのイヤホンでもリアリティが出る他、音色が近くなり中域の解像度が上がったような感覚があります。音色は生々しく、安いイヤホンのめちゃくちゃな高域特性が改善される傾向があるように思います。
低域はやや奥まった位置で鳴るので主張が弱くなり、低域が強すぎると感じていた場合にも良い変化が得られるイヤーピースだと思います。特徴的なのは空間表現で、前後の音場感は良くなる傾向がありますが左右と上下については普通の表現になります。
多くのイヤホンを聴けたわけではないのですが総じて、安いチープすぎて聴けなかったイヤホンがT-EARを装着することで聴けるようになるなどの声も聴感上の変化として納得できるレベルです。1280円3ペアでこの値段は音質基準としてはかなり格安と感じます。
もちろん高級イヤーピースの定番であるW1やSpiralDot++より良いとまでは言うと難しいのですが、高域をここまで良く鳴らせるイヤーピースがあるかと言われると無いのである意味では超えており、好みの範囲と言えるかもしれません。その上で価格も一般的で安いとなればコストパフォーマンスも高く、人気も頷けます。とはいえ私はSpiralDot++ぐらいしかまともに装着できないのでSpiralDot++の値下げを渇望しているのですが(笑)。
周波数特性の変化
全てのイヤホンの音を確認できてはいないのですがTRNと相性が良いと言われているイヤホンなどを含めて幅広く、測定で標準としているfinal TypeEと比較してみました。
TinHiFi T3Plus
6kHzのdipが浅くなりますが9~12KHzはDipが深くなり、逆に13~18KHzにピークができる変化がありました。
CCA NRA
かなり高相性で良いバランスになると言われているNRAですが大きな変化はありませんでしたが、強いて言えば15KHz付近がピークになる変化があります。
CCZ coffee Bean
驚くほど音が変わって、ものすごく音が良くなるという噂のCoffeeBeanです。12KHzのピークが無くなり、代わりに15kHzのピークができています。
Truthear HOLA (HALO?)
6kHzのdipが浅くなりますが8KHzにピークができ、9~12KHzはDipが深くなり、逆に13KHzにピークができ、15KHzは大きく増加しました。
ちなみにこの変化は太ノズルのHOLA純正とほぼ同じ波形です。
MoonDrop 竹CHU
6kHzのdipが浅くなりますが9KHzのピークが8KHzに移動して9~12KHzはDipが深くなり、逆に15KHzを中心とした13~18KHzにピークができる変化がありました。
BQEYZ Autumn
6kHzのdipが浅くなりますが9KHzのピークが8KHzに移動して9~12KHzはDipが深くなり、逆に15KHzを中心としたピークはややゲインが上がる変化がありました。
64 Audio Nio
Nioに関しては中域に大きな変化がありました。逆に高域についてはほぼ変化がありませんでした。
Truthear HEXA
10~14KHz付近に大きなDIPができ、15KHzにピークができました。
8つのイヤホンのグラフを平均したもの
ここまでのイヤホンのイヤピの違いを全て平均して傾向を見てみました。
結果として6Khzはやや持ち上がり、9Khzは維持、12Khzは下がり、15Khzは上がるという傾向があるようです。また、軸の長さとサイズの関係からか4~5kHzのピークは高域側に、8~9kHzのピークはやや低域側にシフトしています。
8イヤホンだけの傾向なので仮説の範囲でしかありませんが、この結果を踏まえるとCofffBeanなどの高域が大きく改善して高いイヤホンになったような錯覚を覚えるというのはうなずける変化だと思います。
具体的な理由として一般的に外耳道の開管共鳴が閉管共鳴に変わるイヤホンの場合に、6Khz、12KhzはDipに、9、15Khzはピークにになると良いと言われています。このイヤーピースはfinal TypeEと比べると6KHは逆効果ですが、高域の12と15Khzの変化に効果があると言えます。実際安いイヤホンほど6と9kHzは沿っていることが多いのですが、10Khz以上の高域特性はひどいことが多いので、このイヤーピースをつけることで特性を大きく改善でき、不快or違和感のある音が減って聴ける音になるというのは頷ける話です。
逆にNioなどは高域特性が最初からしっかりしているためか、高域はほぼ変化がありません(残念ながらサイズが合わないため実際の音は聴けていません)。このTRN T-EAR Tipsは高いイヤホンと相性がイマイチなんていう噂もありますが、それを踏まえるとこれも頷ける話です。
まとめ
1280円と普通のイヤーピースの値段の範囲といえるイヤホンですし、かなりおすすめできるイヤーピースなのではないでしょうか。
正直、イヤーピースの開発はだいぶ進んでシリコン系でらこれ以上大きなイノベーションは無いかもしれないと思っていたのですが、TRNが価格破壊を仕掛けてきた印象です。残念ながら私はサイズが合わないので衝撃はあまりないのですが、サイズが合う人は「低価格のイヤホンとこのイヤピでこの音がだせるのか」というCCA HM20のような衝撃があるかもしれませんね。
個人的にはサイズが合わないために装着できるイヤホンがかなり限られるので使う場面は限られ買い足す意味が無いのですが、TRNには一刻も早く更に大きいLLLサイズぐらいの開発と販売を初めて欲しいところです。
*1:
〇測定環境
ハードウェア:Apple Macbook pro 15 Late2013 BigSur11.6.4
ソフトウェア:REW V5.20.13
INPUT:MOTU M2 IN1 XLR (VXLR+)192KHz24bit
OUTPUT:MOTU M2 192KHz24bit 3.5mm変換
カプラ:IEC711クローン 刻印( IEC60318-4 Type E610A)※100〜10KHz用
イヤーピース:Final TypeE Black Mサイズ
〇測定パラメータ
入出力バッファ512K、Acoustic Reference
出力音圧レベル:−12dB
Length:2M(10.9sec) 、192kHz、0〜20,000Hz