こんにちは
今回はHAA FEEという会社のポータブルDAC兼アンプHA11です。結論を先に書けば音質、サイズ、使い勝手を考えればかなり強力です。入手性の悪さと多少の使いにくさを割り切れて予算2万円という人は一番オススメできます。
購入したのは半年ほど前でしょうか。Q5sの入れ替えのつもりで購入したHifimanのHM1000がどうしても合わずAliexpressで色々と物色していたときに見つけた機種です。なので全くもってメーカーの来歴や製品の成り立ちや思想について知っているわけではないのですが、サイズの大きさとスペック、見た目のデザインがしっかりしていそうだったのでFiioやiRiverも昔はこんな感じだったかもなぁと逡巡し、当時約22,000円という手頃な価格もあり、勢いで購入してみました。今回はその後にxDUOOのXD05 balを入手したことで使用機会がなくなり、気に入っていたにも関わらずFFさんに手放すことにしたので記念にレビューすることにしました。
■仕様など
ざっと探した感じでは全くもって公式サイトを見つけられないのでAliexpressの説明欄が一番商品仕様がわかりやすいです。
簡単に抜粋すると
・本体はCNC切削加工
・ES9038Q2M×2
・デコード32ビット/384khz、dsd256
・OLEDディスプレイ採用
・CSR8675 Bluetooth 5.0
・プロトコル、APTX-LL、APTX-L、aac、sbc、Aptx-hd、ldac
・OPA1612×2
・ヘッドフォンアンプIC:Tpa6120×2
・xmos u208
・容量: 4100mah、充電電圧: 5v
・バランス:1000mw/32オーム、150mw/300オーム
・アンバランス: 600mw/32オーム、100mw/300オーム
・THD 0.0008%
・SN 118db
・出力: 2v rms/アンバランス、4v rms/バランス
・プラグ:4.4mmバランス、3.5mmアンバランス
・サイズ:150x85x18mm(突起含まず)
・重さ:250g
とかなりスペックだけ見ればこのサイズから考えるとモンスターでQ5sを上回っています。パーツだけ見れば先日紹介しましたxDUOO XD05Balとほぼ同じで遜色ありません。実際どうもHA11というのはこのHaafeeのアンプの中ではフラグシップモデルの様でリストを見ると小型のHA6,HA7,HA9,HA10とHA11を含めて5サイズ展開されており、概ね数字が大きいほど大きく強力なDAC・アンプ回路を積んでいるようです。さらにUSBの端子がTypeCのものはこのHA11だけで、スペックからみても最新のもののようです。
ちなみに裏側を見ると「SaoMai」という会社がデザインしているようで、SaoMaiの方で検索をするとSaoMai AudioというHPが出てきまして中国のオーディオメーカーで、SaoMai,HAA FEE,MAYEVER,LEAF AUDIO,PHOENIXというブランドでいくつか商品を展開しているそこそこの大手?っぽいです。据え置き向けは真空管アンプなども手掛けているようでスペックだけなのかと思いきやアナログ電子回路の設計にもノウハウがありそうです。
■使い勝手とか
〇SPEC上のDAC「ES9038Q2Mx2」「OPA1612Ax2」が強い
上記の通りです。旭化成のDACは入手困難ですので事実上のポータブルとしては最上級のDACが乗っています。OPAMPも交換こそできませんが、標準でかなり強いものを使っています。音質は後述しますが、この値段と大きさを考えればかなり強いです。
〇BTチップQualcomm「CSR8675」が強い
Bluetooth 5.0、LDAC/aptX HD/aptX LL/AAC/SBCに対応。aptX Adaptiveには対応しませんがLDACでの接続が可能です。通信も比較的安定しており室内や少し持ち出す程度では問題ありませんでした。
○駆動力が高く、最大出力1Wなのにローノイズなのが強い
ポータブルDACとしてはパワーがあります。これだけ大出力でありながらホワイトノイズも少なく通常のIEMであれば問題ありません。またデジタルボリュームのためか左右CHの音量差であるギャングエラーもありません。
〇大きな有機EL画面が見やすい
ボリュームやフィルター設定、サンプリングレート、接続方法などが明るく見やすく大きいディスプレイに表示されているので非常にわかりやすいです。このようなDACではディスプレイがないことが多いのでこのわかりやすさは嬉しいです。
〇持ち歩けるギリギリ最大の大きさ
250gで昨今のハイエンドDAPよりは軽いです。横幅と縦幅があるので見た目のサイズのインパクトが凄いのですが、厚みはそれほどないのと、丁度Iphone12ProMaxと似たサイズ感なので慣れると問題ありません。ただ賛否あるかもしれませんが、これ以上大きいと持ち歩くのは困難かもしれません。ポケットに入れるのは難しいかもしれませんが、LDAC等で繋げばスマホからハイレゾ相当で繋ぐことができますのでバックなどに入れておけば操作も快適でかなり使勝手が良いです。
〇androidを搭載しないので陳腐化しにくい
androidDAPが沢山発売されていますが、セキュリティの問題などが発生すると使用が難しくなります。一方でこのDACはandroidを搭載していないので時代の流れに対して陳腐化しにくいです。また、今持っているDAPをそのまま使うこともできます。
〇非常に安い
これだけの機能と音質を誇りながら約22,000円はかなり強いです。
もちろん使ってみての弱点もあります
△充放電仕様が悪い、電池残量が不明
6〜8時間とのことですが、体感としてはだいたいその程度なのですが、本体にバッテリー残量を知るすべがありません。でかい有機ELディスプレイがあるのに無駄この上ない仕様で不便です。また、本体下部の主電源スイッチを切らなければ待機時にバッテリーを消費する仕様の様で切り忘れると電池がなくなっていることがあります。なのでいざ使い始めたいと思ったとき、思いの外電池残量少ないなんてことが良くありました。TWSなどでよくあるやつですね。Q5sTCなどが無入力状態だとオートスタンバイに入って電池消費を抑えてくれるのとは対象的でその様な便利な機能は付いていません。
逆にいえば物理スイッチでOFFにすればある程度は待機時間は長くなりそうです。準、据え置き利用であれば問題ありませんが、充電器によってはBT接続などでは消費電力が上回る場合がある様なので、充電が空の状態になった場合は一度少し充電してから使うほうが良さそうです。
△着弾が遅い
中国発送の為、着弾に時間がかかります。現時点ではAliexpressなどの中国発送以外の方法がありませんので実質購入しようとすると最速であることは変わらないと思います。
△技適の審査が不明
現在日本の代理店が付いていませんので技適の状況が不明です。発売してしばらくたちますので動向をみていたのですが動きがありません。
△保障関係が不明
現状購入店、例えばAliexpressの保証に準じる形ではないかと思います。
△重くエッジが痛い
やはりポータブルDAC・アンプとしては実用上最大サイズ、最大重量に近いです。XD05Balに比べれば厚みは薄いですが、本体の四隅の角がやや鋭利で持っていると少し痛いです。XD05Balあたりはボタン類の使いにくさをケースでカバーできるのですが、残念ながらマイナーすぎるのかHA11のものはAliexpressでも見当たりません。先ほど説明した通り、昨今はDAPもかなり大型化しておりM17など化け物級のDAPも出てきていますので個人的には許容範囲ではないかと思います。
■音質とか
価格を考えれば素晴らしいの一言です。ただパーツとしてはほぼ同スペックのXD05 balと比べれば一歩劣るところです。一方でQ5sTCなどと比べても同レベルの土台まで乗っていると思います。
〇ヘッドフォンを聴いて
折角なので最近購入したHD800sを標準付属4.4mmバランスケーブルを使って聴いてみました。曲にもよるのですがボリュームは最大100中60程度の音量設定で適正音量が取れました。音はHD800sの特徴である非常に広い音場を概ね損なうことなく奏でてくれました。音色も素晴らしいので十分だと感じた一方で低音の質感の表現は据え置きアンプと比べると劣っておりその点はやや物足りなさも感じました。スペックとしては最大出力1W、パワーの面では十分なはずではあるのです実力値としてはいま一歩なのかもしれません。ただ少し小さいですが同様のコンセプトQ5sなどと比べても空間は広く音像の高さがあり開放的です。音色としてはQ5sのほうがやや艷やかで繊細ではあるのですがHA11の方が寒色よりで迫力と解像度に振っており、方向性が違うため甲乙つけがたいです。
個人的にはやはりポータブルサイズなのでヘッドホンを鳴らすことがなかったのであまり試せていませんが、HD800sは300Ωありますのでもう少し鳴らしやすいヘッドホンであれば十分に鳴らせる実力はあると思います。
〇イヤホンを聴いて
ベンチマークとしてNiceHCK Lofty、TRN VX pro、KZ ZASを、リスニングとしてFinal A8000、JVC FW10000などを試してみましたがどれも卒なく鳴らしてくれ、Q5sなどと比較しても目立った欠点が見当たりません。
Loftyは中低音の表現にパワーと駆動力が必要になる非常にベンチマークに良いイヤホンなのですが、このサイズのアンプとは思えないほどの表現力でスケール感を持って鳴らしてくれます。特にオーケストラなどの楽器の音色が混ざりやすい場面でも定位感と解像度があるので持って籠もりがありません。音色の艶はアンプの特徴から言えば少なめではあるのですが、Loftyのキャラクターをうまう引き出してくれていると思います。サウンドステージも広めに表現してくれるのでこのクラスであれば文句がありません。Q5sTCなどでは艶感などは良いものの、低音の歪から音色は混ざり駆動しきれていない場面が多く見られるのでジャイアントキリングと言っても良いと思います。
VX Proは大量のBAを中高域に積んでいることからか、中高域の表現にパワーと駆動力が必要になるため、ベンチマークに良いイヤホンとして今回使ってみました。概ね悪くはないのですが、ややVX Proの良さを最大限に引き出すことは出来ていない印象です。Q5sなどと比べれば音の透明感と静寂さが不足しており、高音の綺羅びやかさと言った空気感の表現が今ひとつです。もちろん約3倍の価格差を考えれば十分すぎるレベルではあるのですが綺羅びやかな高音の音色の伸びを期待するのであれば別のイヤホンとの組み合わせなどが良いかもしれません。当然ですがアンプ自体は高音が伸びないという意味ではないでご注意ください。なお、VX Pro + Q5sTCでは3.5mmと4.4mmジャックでの駆動力の差が顕著に出ており、例えばQ5sTCでは4.4mmジャックの優秀さに比べて3.5mmジャックのパワー不足が気になりました。HA11でも同様な問題がないかを確認したのですがこちらについては問題なかったです。このあたりは両方を使いこなす人にとっては重要なポイントかと思います。
ZASは多ドライバで超低温から超高音までレンジが広く、音場が広く、感度がかなり高いためホワイトノイズが目立ちやすい機種ですが、ホワイトノイズほぼ皆無で明瞭でクリアな音質です。特にこのサイズで出しにくい超低音域も表現が弱いながらも音を出せている点は素晴らしかったです。尚、ボリューム40程度で他のイヤホンの5〜60と比べても2割ほど絞ってやる必要がありました。ZAS持ち前の音場も広々としていますし、味付けも少なく癖も無く飽きも来ない音ですが、艷やかさなどを求めるのであればQ5sの方が質のの良い音色だと思います。L1000やQ5sTCと比べると気になってしまうのはやはり音場で、天井の高さ、上下と前後の空間表現の弱さでボーカル曲では若干楽曲が平らになった雰囲気が顕著になります。
続いてリスニング目的での鑑賞でのA8000とFW10000ですが、今回は最近購入したゼルダの伝説のオーケストラを聴き込んでみました。
A8000は最大の特徴であるトランスペアレンシーな音をうまく活かせているようで帯域バランスの上から下までバランス良くならせている上に、スゥっと音の消え入る様の上品さがうまく表現できていると思います。FW10000でも広大な音場から生まれるホールかのようなスケールの大きさ、すざまじいまでの定位の良さをうまく表現出来ており、各楽器の音色が空間に生まれては消えてゆく様は圧巻です。両者を聴き比べてどちらかといえばFW10000の方が合っているように思いました。
■纏め:Tier2
それほどDAPを聴きこんでいるわけではないのですが、この音質は据え置きでもなかなか強く、2万円という低価格でありながらミドルクラスのDAPでもなかなかこの音質に明確に勝ると言えるものはないと言えると思います。音質、サイズ、使い勝手を考えればかなり強力です。特に価格差3倍のQ5sTCと比べても一長一短と肉薄しておりコストパフォーマンスとしてはかなりぶっこわれの域に達しています。使い勝手も癖はありますが怪しげな中華メーカーでありながらZ4の様な不具合も無く割り切れば使いこなせます。
ではなぜTier1ではないかというと第一に既に手持ちであるQ5sTCと比べた時の使い勝手の部分で、電池残量の確認とケースさえあれば自分もQ5sから乗り換えていたと思います。また、第二にXD05 Balが+2万円でさらに強力な音だということこの上ないです(もちろん金額が2倍だと言われればそうなのですが)。最後は入手性の問題で、XD05 Balが中国発送とはいえAmazonで入手できるのに比べてさすがにAliexpressでしか手に入らないとなると人にも勧めにくいというのが実情です。これらの部分が割り切れて予算として2万円という人ははっきりと一番オススメできます。
4万円という方は11月20日まで過去最安なのでこちらのXD05 Balがもっと良いです
レビュー記事はこちら↓
■所感
HA11はかなり強力で正直を言えばQ5sTCがなければ手放さず常用していたと思える機種でした。なかなか入手しずらい機種ですが、中華のコストパフォーマンスを実感できる機種なのでそういった趣味の方にはぜひおすすめしたい機種です。ではでは長文にはなりましたがご拝読いただきありがとうございました。