el_snowの日記

日常の気になった事や思う事、気に入ったオーディオ機材のレビューを思うままに書いています。

雑記:最近のニュース、今回の騒動についてのお気持ち

こんばんは

 

今日も雑記ですが、KZが声明を出しましたね。個人的には取り合わないのかと思っていたのですが、やはり海外の有名レビューアーが関わっているという点で無視できないと判断したのでしょう。幸い中国語では無く、英語だったのでもう読まれた方も多いかと思います。内容は想像の範囲内というかまぁそう答えるだろうなぁというものでした。個人的には分解していただける人が出てきて興味津々なので嬉しい反面、多くの人がギスギスしている雰囲気に疲れており、少しだけお気持ちを言った方が良いのかなぁと思い書き始めました。

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まぁ原文と自分のつぶやきですが参照するとこんな感じです。

The CRN-KZ Situation – In-Ear Fidelity

https://www.instagram.com/p/Ca2gtHAM71f/?utm_medium=copy_link

 

個人的に本件を整理するとこの件の争点は大きく2つあって

 

 ①特定ドライバの音がF特性に影響しないほどの音響チューニングがある

 ②F特性の酷似など、他社の音響技術とコンタミがある疑惑

 

①音響チューニングについて

Twitter等での複数のイヤホンの分解報告などを参考にすると私の見解では1つ目は完全にKZに分があります。

イヤホンの音質はF特性だけでは決まらないのは残念ながら音響工学などに詳しければ詳しいほど言われていることで、F特性は重要な指標ではありますがそれ以外の要素も大きく占め、特に有名なのはリケーブルです。ケーブルはeイヤホンなどの大手のオーディオ販売店でも大手を振って売られていますが、工学的に定量化できるTHDやF特性や抵抗などの指標はほぼ変化はありません。Twitterではオカルトと言って嫌われている貼り付けものとさほど変わらないどころかむしろそちらのほうが共振周波数的な変化が現れるかもしれません。不具合と認めたDQ6の音導管や配線が切れていたものを除いて、今回解体して検証されていたイヤホンのBAやMSTはF特性的に高域を減衰させる音響チューニングがされていました。実質的に物理的チューニングと言って良いアクロバティックなもので、自分も感覚的に理解し難い手法ではあるのですが正直に言えば理解できなくは無いです。

 

詳しく見ていくと

ZEX Pro(CRN)の100Ω抵抗はデバイスの耐圧の問題と音圧レベルを下げる目的に使われていると思われます。音に関してはまだ使ったのが数回のレベルなので自分はこのイヤホンの評価はできていないのですが悪くない印象は持っています。

続いてZEX, NRAのMSTが逆相の可能性があるのはただその帯域の位相が180反転しているだけだと思われます。一般的なデバイスで特性の異なる複数のデバイスを同期して動かす(纏めて鳴らす)場合はこの位相の管理が基本的にキモとなりますが実際のチューニングは見事なものでESTを思わせる繊細さがある高域の伸びが出ています。特に今回音圧が低いと言われていたのは可聴域内、特に10KHz以下であってNRAとBAは10KHz以上を担当しています。10KHz以上はF特性を測るカプラでは誤差が出やすい領域でイヤーピースの取り付け方などで大きく変わることが知られています。特にMSTがスーパーツィーターの役割を担っているのであれば人間の耳で直接音を聞くことは困難です。スーパーツィーターの役割は割愛しますが、日本のイヤホンメーカーで有名なのはIntime社のVSTでクロスオーバーは16KHzと言われています(おそらくIntimeのイヤホンもVSTだけ分解して音を聴けば音楽に鳴らない音量と感じると思います)。

DQ6については幸い自分の個体は音導管が潰れているわけではなかったこともあり、かなり素晴らしい音色です。不良個体については販売店に言えば良品との交換などができるのかと思いますが期間的に難しいので、ここは何らかのKZのアクションがあっても良かったかもしれません。ただ、明らかに音がおかしいものは販売店に相談してみるべきでしょう。これはKZに限った話ではなく、先日音がおかしい日本メーカーのイヤホンに当たりまして今、まさに相談中です。正直なところ数々のイヤホンを買ってきましたが匂いや輸送時のパッケージ損傷、ビルドクオリティはさておき、中華イヤホン自体の不良はほぼありません。むしろ残念な話ですがよくよく振り返ってみると、日本メーカー中国製、韓国メーカー中国製、Aliexpressでのみ存在する偽ブランド品では動作異常、音異常がある個体がありましたがKZやCCZやTRNなどではイヤホンの不良はありません、不良率で言えばKZはかなり優秀で驚いています。

ASXについては正直言うとほっこり半分、苦悩半分という印象です。状況証拠的にはおそらくは初期の設計段階では音導管があったのでしょう。それが設計ミスで物理的に配置できなかったのか、それとも想像よりも音の出力が強すぎて音圧を下げる調整が必要になったのか、音圧を下げる調整を抵抗などの電子部品でやるよりも物理的に穴を作らないことで低コストで目的の音を達成する特許的な発想なのかもわかりません。もしくは、設計と製造の意思疎通のミスなどで有るべき穴がなくなって急造で音圧で調整した結果、あのように外に音漏れする構造になったのかもしれません。最終的なASXの販売用の3Dイメージにも音導管は無い様で、どちらにせよ意図どおりのチューニングということなのだと思います。

ASXについては先程、状態を見たので間違いはあるかもしれませんがすべての音は鳴っていたが、5BA分の音は小さかったとのことで、これもKZの主張を裏付けるものです。

いずれにせよ、これはKZだけではなくすべてのイヤホンメーカーがそうだと思いますが、搭載しているBAの役割分担は非公開です。イメージ映像みたいなものはありますが実際の商品のスペックを語るものではありません。今回の件でオーディオの製造設計に詳しい人ほどこそ、F特性だけでイヤホンの音が決まるわけではないし、そうだとしてもこの特性を望んだユーザーに合わせているがゆえのチューニングっというKZ側の主張を理解しやすいものだと思います。

 

②技術のコンタミ疑惑

そして2つ目についてはKZ側はやや分が悪いですが今回の件でことさら取り上げるものではないという理解です。

今回QKZのVK4(旧型)というイヤホンとZEX ProのF特性が似ているという指摘でしたが、そもそもこのQKZのVK4というイヤホンはオリジナルのイヤホンなのか?っという疑惑があります。私もこの件に詳しいわけではないのですが、QKZのイヤホンにはTFZのMyLoveの技術を流用している疑惑など良い噂を聴きません。実際にKZがDドライバを製造しているのかわからないことと、QKZの外注先と同じ部品を使っているだけという可能性もありますし、正統に権利を買った可能性もあります。そして何よりF特性が酷似したからと言って同じ音になるとは限らないという事情もあります。

とはいえKZが疑惑0かと言われればそんなことは無くCAと酷似した意匠のイヤホンを販売していたり、そのCAとセットでKnowlesから特許侵害で訴えられ、現在も係争中だったりします。その他にも中華メーカーではイヤホンの意匠を模倣したものが多数売られており、それが白か黒かは誰にも判断がまだつかない状況です。他にもESTなのかMSTなのかという議論ももちろんあります。ただ、今回の件とは全く別の次元での話でKZだけでなく、これは中華イヤホンメーカーすべてに投げかけられた課題で意匠や特許の侵害についてはユーザー自体は被害者ではありますが、主体は当事者同士で係争していくべきものです。この点については中華イヤホンやKZやBellsingを採用しているメーカー自体を忌避するという意見も合って然るべきだと思います。
もちろん悪意を持った積極的な盗用という可能性ももちろんありますが、一般的な工業部品では意図せず同じ様な特性の部品ができることも普通にあり得ます。例えば有名メーカーのOEMをやっていた会社が契約を打ち切られて、その製造技術で別の中華メーカーの下請け担ったら特許こそ侵害していないが同じ様な特性のドライバが出来上がったってなことも十分に考えられます。もしくは工場の立ち上げ時に製造機械のメーカーが最新の装置を売りたいが故に大手と同じパラメータで機械を売り込むなんてこともありえるかもしれません。これらはグレーゾーンであり、当事者しか判断ができないレベルだからこそ裁判などで争われることが多いのは言うまでもありません。実際の中華イヤホンメーカーの製造現場を知っているわけではありませんので一般的にコストが安く似ているから黒とも言い切れません。

今回の件に関してはグレーではありますが、争点にしたくないという意図がKZ側の声明から透けて見えます。とは言え、コロナが開けた時に工場を見せたいとまで言えるKZ側には「侵害などない」っという自信が伺えます。

 

■まとめ

っというところで普通にDQ6など音に異常があるものは交換などを申し出るのが良いかと思います。これはKZだけに限らずすべてのメーカーに言えることですね。

今回の件では人々が目の前のイヤホンのBAやDDの数というスペックで音を聴いていたかということを思い知らされたように感じます。そしてF特性はイヤホンの音質を語るには完璧な指標ではないという基本を再認識させてくれたようにも思います。

イヤホンでの音質の追究はまだまだ発展途上でわからないことだらけで、技術者はF特性以外の様々なチューニングをやっていますが定量性が無いためユーザーにはあまり語りません(語ると炎上するかもですね)。今回の件では数値化できないそういう技術領域で″今の業界″は成り立っているという認識を持つことができた事件だと思います。ただ、それに甘んじて定量性を追究することを完全に諦め、定性的なこと…極端に言えば怪しげなツボを売りつける様なオーディオメーカーがあることも事実で、私は新たな時代に向けてその様な悪しき風習は駆逐されて欲しいと願ってやみません。それにはまずF特性だけでもなんとかする、そして次はF特性以上に有用で定量性のある新たな指標が今後必要なのだと思います。この文章を読んでその必要性を認識させることができたのならば非常に良い事例だったと思っています。さらに余談ですがこの様な騒動を通していくつかイヤホンが解体されてテストされ動いていることを確認されることで逆に「え?ちゃんと全部動いてたんだ……」っと個人的にKZの株が上がったように思います(笑)。

もちろん「音量がごく小さいチューニングなんて許せない」、「知財侵害の疑惑がひっかかる」という方の気持ちも理解できます。もしそうであれば激安多BAの中華メーカーを購入するのは辞めて、FinalやIntimeやSony、ZeroAudioなど特に国内のオーディオメーカーを応援してあげて欲しいと思います。上記の様な立地や時勢やコンプライアンスなどの不利からくる逆風の中、少しでも良い音をと頑張っているメーカー達だと思います。もちろん真摯に技術に取り組んでいるならば海外のメーカーでも構いません。

 

最後になりますが、昨日も言った通り私のスタンスとしてはドライバ数などのスペックなどはどちらかというとどうでもよく「実際に聴いた音、使い勝手、見た目」が重要だと考えています。その上で今回の件で言いたいことは一つで

「目の前にもしKZのイヤホンがあって、その音が気に入っているなら自分の耳を信じてください。スペックを知ったからと言って目の前のイヤホンの音が良くなったり悪くなったりすることはありません。」

 

ではまた明日