こんにちは
こんにちは今日はTRNのST5の簡易レビューです。
インプレ結論:A7K Tier3 参考価格:8380円
ST5は暖色傾向で音の厚みがあり、キラキラとした高音を持つ微ドンシャリに纏め上げられた中華ハイブリットイヤホンです。寒色と暖色の傾向を併せ持つ音色の傾向は特徴的でやや人を選ぶ傾向はあるかと思いますが、イヤホンの性能は平均的ですしアルミで作られた本体のビルドクオリティは高く、2.5mm~4.4mmバランスまで対応するケーブルが付属するなど、使いやすく卒なく纏めてあります。
音色の評価だけを考えると現在の価格ではやや割高感はありますが、セールなどで値段が下がればよい選択肢になるのではないかと思います。
Pros(優秀な点)
〇 全体的にレベルの高い微ドンシャリチューニング
〇 暖色系で音の厚みがある低音~中音、キラキラした高音が得意
〇 筐体のビルドクオリティが高い
〇 2.5㎜, 3.5mm, 4.4mmの変更が可能なケーブル
Cons(微妙な点)
ー 強いて言えば、ケース無し
△ 暖色系+寒色系の金属系の音を合わせた変わったチューニング
△ プラグ部が長い、抜けやすい
△ 価格を考えると定位、解像度、高域の表現力がもう一声欲しい
- インプレ結論:A7K Tier3 参考価格:8380円
- 動機付けなど
- 箱とか付属品とか本体
- 音質について
- SPL周波数特性測定とか
- 相性について
- 音質の総評、所感
- Appendix
動機付けなど
モチベーション
ケーブルと共にGiitaさんよりお借りして少し聴き込んだのでそのついで的な感じです。
販路、購入先(サポート)
Amazonで購入できます
SPEC
上記の販売サイト等を御覧ください。ポイントとしてはベリリウムコートDDと4BAのドライバ構成でしょう。
箱とか付属品とか本体
開封体験
普通のTRNの箱です。
それ以外は全く同じです。
付属品はTRNにありがちな安いケーブルではなくプラグ交換式かつ、ケーブルも普通より太く良さそうなものが付いています。TRNでは付きがちな6.3mm変換も無くイヤーピースも3種類入っています。
筐体
筐体のサイズ感もちょうど良く、ビルドクオリティも高いですね。
コネクタ 「QDC2pin」
ステム形状 「5.84[mm]」
競合機種との比較
競合というよりは同じTRNのVX pro, BA15と比べてみました。
重さ 「15.2[g]」
TRN VX proが12.3g、BA15が14.4gなのでやや重めでしょうか。
ケーブル
この価格帯のTRNのケーブルとしてはかなり上質なものが付いているように思います。
プラグの先は交換式になっています。
これはよくあるプラグを差し込むだけのタイプなので引っ張れば抜けてしまいます。
プラグの先を交換できるのは良いですが、少しプラグは長めになってしまいます。
付属イヤーピース「◎」
3種類、7ペア付属しています。
私はフィットしないので使用していません。
使い勝手の評価
寝ホン 「△」
本体の厚みがそこそこありますので寝フォンにはあまり向きません。内側にベントがあるタイプなので鼓膜へのダメージは少ないですがあまりオススメできません。
外使い(音漏れ、遮音性、タッチノイズ) 「〇」
指でステム側を抑えて遮音してみましたが2~3割ほど音漏れしており、優秀なレベルです。
音質以外の総評(付属品、ビルドクオリティ等) 「〇」
約8000円クラスのイヤホンとしては2.5mm, 3.5mm, 4.4mm 3つのプラグに対応したケーブルが付属しており、総合的には十分なクオリティの付属品です。ケースなどが付属しない点はやや残念ではありますが問題ないレベルかと思います。
音質について
ファーストインプレッション
普通に良いというものです。想像以上に音色が分厚く、上下のバランスも良く鳴っており、寒色でピーキーなイメージを覆すほどニュートラルな音色で驚きました。
競合機種との比較について
価格的にKZ ZASやVX pro、CCA HM 20になろうかと思います。
エージング(バーンイン)
お借りしたものなので不明です。
試聴環境
今回はお借りした簡易的なレビューなのでM17 DCを主体に聴きました。イヤーピースはSpiralDot++、プラグは4.4mmを使っています。
帯域バランス 「微ドンシャリ」
万人受けしやすいすこし低音強め、少し高音つよめのチューニングで、全体としては微ドンシャリです。
音色(寒暖、明暗、響き、粘度、厚み) 「ー~〇」
やや暖色傾向、やや明るめ、ソリッドで少な目の響き、分厚い音像を持つ音色です。繊細さよりも音色の魅力で押すタイプと言え、全体のバランスとしてもTRNらしい寒色よりになり過ぎないチューニングにしてあるように感じます。特に低音~中音にかけての音色には暖かみがあるのですが、高域に行くにしたがって鋭さのある音が混じり、音色の混濁を意識させられるのですが、不思議とバランスよくまとめられています。
悪く言えば砂糖と塩を同時に混ぜたような寒色と暖色の音色の混ぜ方ですし、良く言えば両者の良いところを強調するような鳴らし方で、そこまで癖は強くないのですがイヤホンの個性としても変わった音色だと思います。最初からこういうものだという雰囲気で音色を聞けば違和感はありませんが、1DDなどの統一感のある音色が好きな方ほどアンバランスさが気になるかもしれません。
全体としてこの解像感の高さと音色の方向性のアンバランスさを楽しむ様なチューニングなので、玄人ほど人を選ぶかもしれません。私は長時間聴くと辛くなるバランスだと感じましたが、短時間でスカッと聴くのであれば気に入りました。
競合と比較すれば寒色よりで明るいVX proとは方向性が異なり、TA2のような暖色寄りのサウンドを混ぜてきている方向性ですね。
音場(広狭、重心、遠近) 「ー」
価格帯を踏まえると概ね広めの平均的なサウンドステージです。頭の中で横も上下も前後も一般的な広さです。適度な近さ、重心の高さで特徴的な部分よりも平均的でなじみ深い音色の出し方だと感じます。
尚、音場や空間表現を求めるのであればVX pro やHM20といった競合イヤホンの方が良い様に思います。
定位、音像 「ー」
価格帯を踏まえると概ね平均的な定位と音像です。価格帯を考えるともう少しはっきりとした音像が欲しいと思いますが、音が混濁して音像が乱れてしまうほどでも無く概ね良いとも言えます。
尚、定位や音像を求めるのであればVX pro やHM20といった競合イヤホンの方が良い様に思います。
解像度、分離 「ー~〇」
価格帯を踏まえるとまずまず良いと感じました。
ただ、やや音色の表現が独特で、ストリングスなどの音の立ち上がりはキッチリとして音色のディティールは細かく表現されているのですが、その音の広がりや残響などがややぼやける印象です。画像で言えば圧縮をミスった動画のようなイメージで、特定の物だけが高解像度だけれども周囲の物体のエッジがぼやけているような感覚です。
このあたりは好き嫌いがでてしまうかもしれません。尚、解像度や分離を求めるのであればVX pro やHM20といった競合イヤホンの方が良い様に思います。
低域の質について 「〇」
低音の質については十分な量感と音色だと感じます。深みと暖かみがあって広がりがあるのでウッドベースなどの情緒たっぷり奏でるような楽曲に合う低音です。その上である程度はスピード感もあるのでオールマイティ感もあります。
個人的にはVXProのカーボンらしい音色の低音も悪くないのですが、ST5のふくよかな表現力の低音の方が万人に好まれるようにも思います。
中域の質について 「〇」
やや暖色よりで厚めの音色の中域は適度な迫力とパワー感があります。中域の音のエッジには所々BAで付加されたかのような音色の混じりを感じます。イメージとしては写真の要所をスタンプなどで装飾するイメージでしょうか。このためボーカルが適度に映えさせてくれている感覚があります。この表現を本質を欠いた不自然な派手で過剰な演出と取るか、音楽を楽しく聴くための絶妙な装飾と取るかで多きく評価が変わりそうです。個人的には嫌いではないのですが、長時間聴いてしまうとVX ProやHM20の様な音の方向性が1つに纏まった表現の方が好ましく思ってしまいます。
高域の質について 「ー」
高域は煌びやかで量感は十分です。キラキラした高音に鋭さもある金属音があることで賑やかです。少し歯擦音は刺さることがある点は注意が必要かもしれませんが音量を下げれば許容範囲かと思います。
然しながらチャイムや弦楽器、シンバルなどこの辺りの楽器の高音の響きはやや不自然な音色で、最近のイヤホンのトレンドや価格帯を踏まえるともう少しという気持ちは出てしまいます。
SPL周波数特性測定とか
vs VX Pro
波形はかなり似ていますが、音色は別物なのが面白いですね。
vs BA15
相性について
ジャンルの得意不得意
特段得意なジャンルは無い様に感じましたが、特性上生録音系の楽曲は合わないように感じました。
アンプ(上流)による印象の違いについて
M17以外ではFIIO BTR7、Ttruthear SHIOなどを繋いでみましたが概ね同じ印象でした。
イヤーピースによる印象の違いについて
JVC SpiralDot++(音場、高域、低域重視) 「◎」
今回のインプレでのデフォルトイヤーピース
TRN TIps T-EAR(超高域重視) 「◎」
装着感が良く、音場を少し犠牲にする代わりに低コストなイヤホンの高域特性を改善してくれる傾向のあるT-EARです。私はサイズが小さすぎるのでSymbioのオレンジ色のスポンジのみを中に詰めて評価してみました。
低域全体の量感が減ってタイトな音色になるほか、超高域のシンバルなどの楽器の主張がやや強くなります。このことで楽曲全体もスッキリとして明瞭になったことで全体的に迫力が出たように感じます。音場についてはやや狭くなります。
T-EARはコストが安いこともあり、個人的にはかなり良い変化だと感じました。
Spinfit W1(中域、低域、解像度重視) 「◎」
SpiralDot++と比べると横と上下の音場は狭くなるのですが、T-EARよりは少し広めでしょうか。低音の量感はそのままに切れが良く音像重心が一歩前方にくるためより迫力が増すように思います。低音の深さ自体はSpiralDot++に比べて少なくなっているように思いますが全体がシャキっとした解像感が足されることもあり、ベース帯域はメリハリがあり、中域はやや艶っぽい雰囲気が出ます。
高域は量感が減って不自然な鳴り方が強くなります。ST5の良さを引き出す方向性なのでこれも有りだと感じました。
SednaEarfit Max(ボーカル重視、低刺激)「○」
音場はSpiralDot++までは行きませんが左右上下に広いです。音色がさらに暖色傾向になり、かなり温かい音色になります。低音の締りは少なめなので広がる低音が好きであれば良い変化とも言えます。
中域の質感の細やかさや、量感、太さが増すのでSpiralDot++よりボーカル等の音が目立ち、ボーカルに焦点を当てたい場合は良い相性だと感じます。
final TypeE soft(ボーカル艶重視)「ー」
finalストアでイヤピガチャを引くか、final製品(Study1かVR1000か糸竹管弦)を購入することでしか手に入らないTypeE softですが、入手性も上がってきていますので試してみました。このイヤーピースは基本的には普通のTypeEと同じではあるのですが、普通のTypeEよりも低音が控えめでやや音場が広めで中域のボーカルなどに艶が乗るボーカル重視イヤーピースです。
結果としては低音は少し量感が減って質感が悪くなった印象はあるのですが、Sednaと異なり暖色系にならず、中域のボーカルの艶がのるイメージです。
音場はSpiralDot++から比べると少し狭く、若干分離の悪さや定位の甘さは気になるのですが個人的には悪くない表現ですがおすすめするほどでもないと感じます。
Moondrop水月雨 清泉(ボーカル重視、刺さり防止)「◎」
女性ボーカルの音色がクリアで透明感が出て個人的には気に入りました。ボーカルが際立つ上に左右の音場はある程度広いです。上下はSpiralDot++から狭くなってしまうのですが音色に不思議な透明感と抜け感があります。音の厚みが減ることで全体の音のバランスはニュートラルに近づく点も悪く無いように感じました。
まとめ
結論としてイヤーピースでも音が変わりやすいイヤホンですが、個人的には清泉のクリアな音色が気に入りました。
ケーブルによる印象の違いについて(注意)
注意:
リケーブルについては科学的に見ればごく低品質なものを除いて音質の変化に対する定量性のある決定的な証拠はありません。
このためリケーブルは貼り付けなどと変わらないオカルト的な要素を過分に含みます。
幸いながら私はイヤホンケーブルによる音質の変化を強く感じられるのですが、個人差がありますので万人におすすめするものではありません。
M17 "AppleMusic" -> 「 」-> イヤホン -> SpairalDot++
今回はGiitaさんの希望もあり折角同時にお借りしているNOBUNAGA Labsのケーブル4種類を試させてもらいました。
デフォルトケーブルについての補足
他のメーカーの一般的な標準ケーブル程度の認識で良いかと思いまっす。そこそこ良いケーブルが付いていると思っていたのですが、リケーブルしてみると変化が大きく、そこまで良いものではないようです。経験的に安いケーブルに付属するプラグ交換式のものは音質に問題を抱えているものが多く、このST5も例外ではないように感じました。もちろん普通に使えますし丈夫で絡まりにくいなこともあり、音質の向上を目的としないのであればそのまま使ってもよいかと思います。
NOBUNAGA Labs CASSINI
価格が価格なこともありますが、全てがレベルアップすると言っても過言ではありません。まず音量が1割ぐらい上がった感覚があります。音色としてはやや暗くなりシックでウェットな傾向の音色になります。音像は少し低めで低音は深く、中高域はややすっきりとした方向性です。ボーカルはややつまらない方向性と感じやすいかもしれませんが、全体の音の締まりが良いので個人的には好きな傾向でした。
NOBUNAGA Labs Gilgameš-Omega
価格が価格なこともありますが、全てがレベルアップし、音量が1割ぐらい上がった感覚があります。音色としてはCASSINIと比べるとしっとりした傾向でやや暗めな音色になります。音の線がやや細くなる為か、あまり派手な方向に行かなかったのは不思議な感じがします。中高域の楽器の定位や明瞭度が高くなったほか、解像度は少し上がったかなという感じです。よく放っているのだろうと思うのですが、流石にギルガメッシュのちからを持て余している感じがします(笑)。
NOBUNAGA Labs CERES 4.4mm
価格が価格なこともありますが、こちらも全てがレベルアップし、音量が1割ぐらい上がった感覚があります。音色としてはやや明るくなるのですがやや中域の下側が張り出してくぐもった印象があります。その上で全体としてはスッキリとしているので全体としては悪く無いのですが表現が難しいです。決して悪くは無いのですが価格を考えるともうすこしパンチの聴いた音色の傾向になって欲しいという気持ちになりました。
NOBUNAGA Labs Matador NEXUS
音像の高さが上がり、中域の主張が一気に出てきます。音色は明るく明瞭でボーカルものはハキハキとして朗々としています。音場は決して狭くはないのですが広くもなく、悪くは無いのですが、CERES同様に価格を考えるともうすこしパンチの聴いた音色の傾向になって欲しいという気持ちになりました。
音質の総評、所感
ケーブルなど標準構成となりますが、個人の主観的な好みで言えば75点、私が客観的だと思う好みの点数としては81±6点です。価格帯と音のレアリティ、付属品等ユーザビリティを考慮した総合的なランクはTierは3としました。
ちなみに参考ですが、VX Proは86±4、BA15は90±5、ZASが82±5になっています。
Appendix
購入リンク
*1:
〇測定環境
ハードウェア:Apple Macbook pro 15 Late2013 BigSur11.6.4
ソフトウェア:REW V5.20.13
INPUT:MOTU M2 IN1 XLR (VXLR+)192KHz24bit
OUTPUT:USB2.0A to C変換 → ZERO DSP
カプラ:IEC711クローン 刻印( IEC60318-4 Type E610A)※100〜10KHz用
イヤーピース:Final TypeE Black Mサイズ
〇測定パラメータ
入出力バッファ512K、Acoustic Reference
出力音圧レベル:−12dB
Length:2M(10.9sec) 、192kHz、0〜20,000Hz