ゆるふわオーディオ日記(blog)

気に入ったイヤホン、ヘッドホン、アンプ等のオーディオ体験を日記ブログとして思うままに書いています。ゆるキャラ、モフモフ、ポフポフ、ふわふわが大好きです。2年で400本ぐらい機材が増えてレビューBlogになりつつあります💦。アフィリエイトはレビューとかプレゼント企画の資金にさせてもらっていますニャ。

レビュー:HarmonicDyne Athena 結論:クラス最高峰の抜け感と深い低音を持つ自然な帯域バランスの現代的リスニングヘッドホン(提供:LINSOUL様、簡易レビュー)

こんにちは

今日は今日はLINSOUL様よりレビュー依頼いただきましたヘッドホンHarmonicDyne Athenaのレビューです。レビュー記事は長いので短く結論を知りたい方は結論のみご覧いただければ幸いです。提供ではありますが普通のレビューと変わらず書いていますのでよろしくお願いいたします。

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結論(Abstract):A20K Tier1 参考価格:23,000円

HarmonicDyne Athenaは同価格帯ヘッドホンでも最高峰の抜け感を持ちながらサブベース域の深い低音と自然な帯域バランスを併せ持つ現代的なリスニングヘッドホンです。

良質なビルドクオリティ、斬新なデザイン、サブベースまで伸びる深い低域、煌びやかな高音、と現代のヘッドホンに求められがちな基本的な要素をバランスよく詰め込んでいます。中域を重視する方にはあまり合わないかもしれませんが、それでもアラウンドイヤー半開放型ではクラス最高峰の抜け感を持つ音色は個性的で一聴の価値があります。

音漏れが開放型と変わらない点と筐体が大きい点は注意が必要ですがスマートフォン直刺しにも対応できる高感度、低インピーダンスでソフトな装着感、という使いやさとデザインにも優れたヘッドホンな為、初めての高価格ヘッドホンとして初心者にも勧められる完成度です。

総じてAthenaは同価格帯の名作ヘッドホンと比べても遜色無い音質の上に個性も兼ね備えた一線級の素晴らしいヘッドホンです。

 

Pros(優秀な点)

◎ 同価格帯で最高峰の抜け感を持つ開放的かつ個性的な音

◎ 全体的にレベルが高くコストパフォーマンスが高い

〇 現代的なサブベース域の低音も出るフラット傾向のサウンドバランス

〇 可動域が広く、良質なビルドクオリティ

〇 リケーブルによる中級者向のサウンド調整余地がある

〇 アラウンドイヤーで長時間でも快適な付け心地

〇 スマートフォン直刺しでも鳴らせる高感度、低インピーダンス

〇 ケーブル、ポーチ等、質が高く実用的な付属品

Cons(微妙な点)

ー 強いて言えば、全体のサウンドバランスからさらに解像度が欲しくなる

ー ヘッドホンらしく、スペックは鳴らしやすいが、据え置き駆動環境を推奨

△ 見た目は半開放型だが音漏れは開放型級

△ バンド角度が調整できず、筐体が大きめ

△ 本体320g、ケーブル60gと全体的に重め

△ 明瞭さに欠ける籠りがちな中域表現

△ 生録音などソースでは定位、音場表現がイマイチ

 

■動機付けなど

LINSOUL様からレビュー依頼が直接の動機になりますが、元々HarmonicDyneというメーカーはPoseidonやZeusといった中二っぽい奇抜かつカッコよいデザイン印象的なデザインのヘッドホンを出していることで有名で、このメーカーの音がどのようなものか気になっていたという下地があります。

尚、Athenaは23000円の半開放なのですが、実際に触って使った音漏れなどは開放型に近い印象です。このためこのコンセプトのライバルヘッドホンはこれらでしょうか。

目に付くのは、最近発売されたMoondrop voidでしょうか、こちらは試聴のみですが、作り直しになったVoidはまずまずの出来栄えになっています。

個人的な手持ちで言えばゼンハイザーのHD595などになるかと思います。

 

■SPECとか

LINSOULの販売サイトや公式サイトを見ていただくのが確実ではあるのですが英語のサイトになりますので気になった点をピックアップしておきます。

HarmonicDyne Athenawww.linsoul.com

感度は116.5dB/Vrms@1KHzとなっており、SIVGAのPHOENIX同様にイヤホンと同等でスマートフォン直刺しも可能なレベルです。重さは320gでこの価格帯のヘッドホンとしてはやや重いですが一般的は範囲です。

実際に仕様してみた感触として、音質は別にして普通に音量を取るにはM17やBTR7などの専用アンプは全く不要でPCのヘッドホンジャックに直刺ししても十分です。

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ちなみにパッケージの後ろにスペックや付属品が書いてあります。

販路、購入先(サポート)

現状は正式な国内代理店は無い様ですがLinsoul様のサイト及びAmazonで取り扱いしています。

HarmonicDyne Athenawww.linsoul.com

■付属品とか本体とか

開封体験

青く明るめの化粧箱が印象的ですね。サイズ感はいつもイヤホンと一緒においているぬいぐるみなどを参考にしてもらえると嬉しいです。

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左側に一枚

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右側に一枚開くとアクセサリー入れとヘッドホンが出てきます。
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中央に見えるのはコインです。

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23000円の機種としては素晴らしい開封体験ですね。特にゼンハイザー等の大手メーカーは10万円未満では簡素なパッケージに移行しているのでその差が顕著に感じます。

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中央にあるコインの使いみちはわかりませんが、質感が良く後ろ側にはシリアルナンバーが刻まれています。2枚あれば貼り付けなどもできると残念に思いました。

英語と中国語のみですがマニュアルもありました。

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付属品や一般的な使い方が書いてある他、1年保証もあると書いてあります。試したことはありませんが、普通に考えれば購入代理店のLinsoul様を通じて保証が受けられると思います。
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〇筐体(ハウジング)

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筐体はフレームなどの要所に金属が使われており、プレート部などは樹脂製になっています。本体の周囲に楕円のグリルが見えますがこの部分がパンチメタルになっており半開放になっています。パット見はSIVGAのRobin同様に密閉型に見えますね。樹脂筐体と聞くと安っぽいイメージを持つ人もいるかもしれませんが、基本的にはベイヤーのDTシリーズやゼンハイザーのHDシリーズなどと同じで高級感のある樹脂なのでチープさは微塵もありません。特にメーカーロゴをあしらった背面プレート部は光沢もあり品質の良さを実感します。

大きさに見合った適度な重量感があることと手触りも良いので使い心地は良い感じです。ただ、プレート部は指紋が目立つのは気になる人はいるかもしれませんね。

全体的に23Kのヘッドホンとしてはお値段以上の高級感がある様に思います。

サイズ感をわかりやすくするためにHD599とPHOENIXと並べてみました。
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こうやってみるとAthenaのハウジングが大きめなことがわかりますね。このおかげかこれらの中で一番耳がすっぽりと覆われることで装着感は一番良好なように感じます。

筐体を横からみるとこんな感じです。

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ケーブルの用の端子がついており、ヘッドホン側の規格は3.5mmでTRS型、いわゆるステレオミニプラグが使われています。ピンアサインを確認すると先端Tが+極、Rが未アサイン、Sがー極になっていました。

本体の周囲には先程説明した周囲を覆うようにグリルが大小7箇所空いておりほぼ開放されているということがわかります。このため半開放型としては音漏れは大きめな部類で、実際に聴いてみると大体内側に対して7〜8割ぐらいの音量が漏れているイメージです。

この音漏れ量だけを取れば開放型と言っても差し支えないかと思います。

〇ヘッドバンド

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ヘッドバンドの長さについてはヒンジ部分との付け根にスライダが付いておりそれをカチカチと調整するタイプです。

内側は柔らかめの布地の中にスポンジが入っているタイプで外側のフレームは樹脂製で、この部分ややや価格を感じます。バンド部分のつけ心地はまずまずで長時間使用しましたがケーブルこそ気になることはありましたがバンドによって本体の重さが気になるということはありませんでした。

尚、見ての通りアジャスターをスライドさせると片側にはメーカー名とシリアルナンバーが刻印されています。こういうギミックはオタク心をくすぐる気がします。

 

側圧は金属のしなりだけで与える設計の様ですがアーチ形状が固定されているので調整はできません。ただ、絶妙な調整がしてあるようで、長時間つけても側圧が気になるということはありませんでした。

一方で全体的にサイズが大きめなこともあり、小さい子供では装着に難があるかもしれません。また、このヘッドホンのデザインで唯一高級感が無いのはヘッドバンド部のシボ加工風味の樹脂フレームですが、注視しなければ気づかない程度かと思います。

〇ヒンジ

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ヒンジと接触する部分、ヒンジは金属製で表面処理も高級感があります。振れる角度も広く柔軟な角度調整ができます。競合ヘッドホンの水月雨のVoidではこの部分が当たる音がチープと有名レビューアーに指摘されて、販売版ではテーブで保護されていましたがAthenaでも対策済みの様です。

RLの表記はこのヒンジの部分にアルファベットで大きめに記載があります。何度か使いましたが左右対称な設計なこともあり、思った以上にRLがわかりにくかったです。このあたりはデザイン性などともトレードオフですし、後述するイヤーパッドの角度で見分けるという方法もあります。

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こんな感じに斜めにすることや、平たくして収納することなどもできます。

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イヤーパッド

イヤーパッドですが肉厚で大きめの容積になっています。スウェード調のさわり心地の良い素材で高級感もあり、この価格帯ではかなり上質なものだと思います。立体的な作りになっていることで耳が一切ヘッドホンと触れないため、長時間使っても耳が痛くなりにくく使い心地は良好でした。

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内側は合皮にになっているのですが通気用の穴も空いており、蒸れにくいようにしてあることも快適さにつながっているように思います。

更にイヤーパッド自体は長方形のポケットが空いているのですが、360度自由に回すことができます。耳の形に合わせて決められるのでよりよい装着にカスタマイズすることができる点は秀逸です。先程RLがわかりにくいと書いたのですが、RLの表記は決して目立たないのですがこの機構を逆手にとってイヤーパッドの角度でRLを見分けるということも可能だと思います。

イヤーパッドの耐久性については使い込んでみないとわからない点だとは思いますが使った感じではへたりなどは無く長持ちしそうな雰囲気があります。

〇ケーブル

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ケーブルは茶色の布製2mでコネクタは3.5mmのTRS 3極(T,Sの2極のみ使用)左右両側出し、ジャックは3.5mmの3極タイプです。6.3変換プラグと、ケーブルタイも付属します。重さを実測すると60gでやや重めでした。

見た目としてはこの価格帯随一の高級感があります。少々太い印象はあるのですが編み方のおかげかしなやかで取り回しは抜群です。他にもケーブルが断線しやすい3.5mmジャック側は細かな心遣いとしてバネの保護材が付けてあり耐久性に安心感があります。

総じてかなり品質が良くリケーブルなどの必要性は無いかと思います。

〇モバイルポーチ

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ポーチはスウェード調のデザインや質感の良いものが付いています。保管用の簡易的なものですが必要十分のものという認識です。

〇装着感

個人的には良好です。特に私の耳は客観的にかなり大きいサイズなのでアラウンドイヤータイプでも深さが無いと耳たぶが当たり痛くなることがあるですが、良好でした。

強いて気になった点を言えばケーブルと合わせた重量が380gと言う点で、自分はあまり気になりませんでしたが気になる人はいるかも知れません。

〇内部構造

メンテナンス性などを確認するため中を確認してみました。

内部のアクセスはイヤーパッドを取り外すとネジ4本で止まっているだけでドライバを取り外して内部構造を確認していきます。

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シールしてある部分を外せばネジがあります。一般的に外すと保証などがなくなりますのでご注意ください。
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内部を見るとハウジングの形状や内部配線ケーブルを確認することができます。想像以上にシンプルかつ高品位な構成で驚きました。というのも大体のA20Kぐらいのヘッドホンの内部配線がか細い安そうなケーブルが使われていることが多いのですが、かなり太くて丈夫そうな配線です。振動などで断線することも可能性としてはあるのですがこの造りであればメンテナンスなどもしやすいですし信頼性も高そうです。

また、ドライバーの自体がRLで異なる傾斜配置をしていることがわかります。

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〇その他、総評

レビューの為に自身の持つヘッドホンのコレクションを再確認したり、店頭などに競合と言えるものがあれば、購入も視野に確認したのですが23Kという価格でトップクラスの完成度です。

筐体が大きめかつ重めなことは注意が必要ですが、デザインも上質であり、ケーブルからイヤーパッドまでどこを取っても手抜き感が見当たらず、ヘッドホンを作っている実績も踏まえた質実剛健な作りは交換が持てます。特にデザインを重視して白いフレームなどを使ってしまうと、長期的にはくすんで黄変してしまったりすることも多い上に、汚れなども目立ちやすいです。Athenaはそのあたりの知見を十分に活かしつつ高いレベルでまとめ上げられている印象です。

■音質について

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〇想定競合機種

開放型、半開放型として考えると手持ちではSV021 Robin PHOENIXゼンハイザーHD595になります。手持ち以外では水月雨のVoidなどが競合になるかと思います。

〇ファーストインプレッション

最初はスペックも値段も秘匿された状態で届いたのですが、高いビルドクオリティに加えて密閉型を思わさせるデザインから、最高峰のヌケ感の広々とした音色が出ていることには驚きを禁じえませんでした。後に半開放(開放)型とわかるのですが、そうだったとしてもヘッドホンでも最高峰のヌケ感を持っていると確信したほどです。

また、ヘッドホンとしてはサブベース域が想像以上に出ていること、そして全域にかけて音色のバランスが秀逸で音に不自然な強調感が少ないという点も驚きました。気になる点としてはやや中域に明瞭さが無かった点ぐらいでしょうか。

 

エージングとか

基本的には実際に使用しながら10時間ほど使った後、AGPTEKなどを使ったプレイリストの無限ループにて100時間程度鳴らし込みました。その後20時間ほど使用しています。その間では大きな変化はなかったように思いますがこころなしか中域の生々しさが上がったように感じます。

〇環境とか

標準環境*1を使っています。

感度などのスペックはDAPなどでも十分に音量が取れるものなのですが、駆動力はあるほどよく、上流による音色の影響を受けやすいです。このため、一般的な据え置き環境としてL50やM17DCを基準としています。

帯域バランス

一般的なヘッドホンと比べればややサブベースが強めのフラットバランスです。

測定環境は持っていないので、販促サイトを確認すると周波数特性が載っていました。どれぐらい信じて良いかはわからないのですが、中高域がやや異なる感じがある以外は概ね帳感上と一致します。

音色(寒暖、明暗、響き、粘度、厚み) 「◎」

驚くほどに抜け感がある開放的なサウンドです。寒暖はやや暖かめで、やや明瞭感があるサウンドです。響きはほんの少し中域がデッドで密閉型があるのですが、音場の周囲は本当に開放的で広く音が広がる感覚はほぼ開放型、半密閉型なことを疑ってしまうほどです。

粘度はすこし高めではあるのですが音がややドライでバランスとして不思議な感覚です。音の厚みは価格帯やや太めで骨太な音色なので、頭の中央で骨太に鳴っている音が響きよく自然に広がる感覚も特徴的です。

また、アンプで変わりやすいのは音の明瞭度でL50やM17の様な出力が高めの機種では明るくはっきりとした音色に鳴りやすいですが、スマートフォン直指しなど出力が弱い環境では中域にかけてこもった音になりやすいです。

競合と比較すれば、Voidが正攻法でHD600を再発明し、そこに水月サウンドを足した音色に感じたことに対して、Athenaは自然なヌケ感とサブベース域の再現性という意味で新しい挑戦をしたサウンドだと感じます。半開放でありながらこのヌケ感は非常に素晴らしい個性だと感じます。

音場(広狭、重心、遠近) 「○」

音場はこの価格帯の密閉型としては前後上下左右共にやや広めなぐらいなのですが、音のヌケ感が異常に広いので開放感が突出しています。注意してほしいのは空間表現としての音場表現の広さや描写能力は一般的ということです。ヌケていく音が広いからと言ってHD800sやK812といった空間表現に優れる機種と同じ土台に立つような機種ではないということです。

音像は一歩引いた位置に重心を持ち、やや高めの位置に音像を作りやすいです。

ただ、半開放型でこのような音場感のものはあまり聴いたことが無く、評価は難しいです。似た機種を挙げろと言われれば、音の方向性が異なりますがGradoなどの機種が思い浮かびます。

定位、音像 「○」

定位や音像はこのクラスとしては十分な正確さと音像の掴みやすさです。音色が太めなことと音像が広がり易いこともあってやや音像は掴みづらい傾向はありますがこの価格帯では一般的な範囲です。

解像度、分離 「ー」

上流のアンプの影響を受けやすい様で評価や好みが分かれやすい部分だと感じますが、解像度はまずまずのレベルです。特に音像が広がって響く点などの音の特徴も影響するのですが分離感は高くありません。179$の機種なので仕方ありませんが全体のバランスからもう少し解像度が欲しいと言う気持ちにはなりました。

低域の質について 「〇」

半密閉ということもありますが想像以上にサブベース帯域の量感があります。決して量感たっぷりというよりは少しだけ量感があり十分な品質があるという感じです。

立ち上がりのアタックやリリースも十分でスピード感とグルーブ感もあり、価格を考えれば十分な品質です。

気になるのは中低域の音色の広がり方と強調帯域のバランスで、全体として他の帯域にかぶりやすい鳴り方をしてしまいます。この傾向アンプを変えるとてもある程度は残ることや生録音の楽曲ではやや不自然な鳴り方をしてしまいます。

中域の質について 「ー」

ほぼフラットなので量感は十分にあり開放的な音色で優等生的です。解像度は必要十分に高いですが、競合機種と比べて解像感が低く凡庸と感じやすいです。

強いて気になる点を挙げれば、ほんの少しだけ音色が奥まった位置から鳴り、詰まった雰囲気を感じさせる鳴り方です。やや暖色系という言葉で言ってしまえばそれまでなのですが華が無いと感じる人もいるかもしれません。

また中低域のブーミーな響きがやや被りやすいことと俯瞰性がある太い音色の雰囲気があることも原因かもしれません。個人的にはこの中域表現はくぐもった雰囲気があり、あまり好きになれませんでした。

高域の質について 「〇」

量感も十分ながらサ行などの歯擦音が刺さりも少なくその上で超高域のシンバルやチャイムといった楽器も自然な音色で鳴らしてくれます。音場の広さが相まって開放型の様に広い空間にしっかりと存在感がある楽器が綺麗に浮かび上がり、軽やかに抜けていきます。個人的にこのタイプ価格帯を考えれば素晴らしい表現力だと感じます。

ジャンルの得意不得意

比較的どのジャンルも合うヘッドホンのようにも思えますが、ボーカルを主体とした中域を重視する楽曲ではやや表現力に不満を覚えやすいかもしれません。

抜け感が良好なことと自然な音色な点は素晴らしい一方でスピード感あるパワフルな楽曲は焦点がぼやけ易く不満を持ちやすいかもしれません。

また、楽器の位置関係を重視するようなオーケストラなども苦手ではありますが、これはK812やHD800sクラスのヘッドホンが得意とする領域なので気にする必要もないかもしれません。

■相性について

アンプ(上流)による印象の違いについて

圧倒的に音量は取りやすくイヤホンレベルなのでiPhoneの純正Linghtning3.5mmアダプタA1749でも十分と言って差し支えありません。

然しながら音色と解像度については上流のアンプの実力を如実に表しておりFIIO BTR7でもやや不足する印象があります。

ToppingのL50ややFIIO M17のDCモードにすると中高音の解像度が飛躍的に伸びてこのヘッドホンの醍醐味を感じさせます。スペックは鳴らしやすいのですがぜひ駆動力のある環境で聴いて欲しいヘッドホンで、より良い環境の上流を準備するとより満足度があがるかと思います。

ケーブルによる印象の違いについて(注意)

注意:ケーブルについては科学的に見れば音質の変化に対する決定的な証拠はありませんので、オカルト的な要素を過分に含みます。幸いながら私はイヤホンではケーブルによる音質の変化を強く感じられるのですが、個人差がありますので万人におすすめするものではありません。

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2pinからの変換プラグを自作したのでいつも通り幾つかリケーブルを試してみた感想を書きます。性能のボトルネックの一つは標準ケーブルの様です。

もちろん同じコネクタのケーブルは基本的に存在しないと思いますのでリケーブルをしたときに音色の変化の効果があるのかという視点でみていただければと思います。

〇NiceHCK SpaceCloud 4.4mm

標準ケーブルに対して中域~低域の曇りが晴れて音色が鮮やかになりました。分離感の不満も解消方向に行くことに加えて音場の広さも左右と上下に1段階広がり、抜け感だけでなく実感としての広さを体感できます。音の重心が上がり、解像度も1段階上がった感覚があり、ヘッドホン本来の実力を引き出してくれている感覚になります。

とは言え欠点が無いかというと生録音の楽曲での定位の位置関係や音の広がりに違和感が出やすいです。特にオーケストラでの雰囲気は狭いステージで反響しているような鳴り方になったり、中心に向けて響く用な鳴りになったりと、やや不自然さが残りやすい形になります。

〇Yongse Expert AgMax8 4.4mm

SpaceCloud同様、標準ケーブルに対して中域~低域の曇りが晴れて音色が鮮やかになりました。分離感の不満も解消方向に行くことに加えて音色が明るくなったことに加えて音像の重心が上に行くので全体の音色が軽やかになります。音場の広さも左右と上下に1段階広がり、抜け感だけでなく実感としての広さを体感できます。解像度も1段階上がった感覚があり、ヘッドホン本来の実力を引き出してくれている感覚になります。

とは言え欠点が無いかというとSpaceCloud同様に生録音の楽曲での定位の位置関係が気になります。その点ではやや不自然さが残る形になります。

〇標準ケーブル

リケーブルを試してみた後に標準に戻した感想としては全体的に中央に寄った音場が狭めのケーブルと感じました。

音場は狭いのですが定位などの楽器の位置関係や音の協調感についての違和感が少ないことが特徴にもなるかと思います。また、それ程解像度に差が無いので解像度と音像定位とのバランスを重視したケーブルだとも感じます。

今回は試せてはいませんが、変化の傾向から中域表現や分離感などボトルネックと感じた部分の音質も改善させる方向に寄せることもできそうです。

結論として標準ケーブルは見た目や使い勝手に素晴らしいケーブルではありますが、1~2万円程度の定番の強豪ケーブルへ交換するとアップグレード感があります。但し生録音などを中心としたヘッドホンの弱点も露見しやすい感覚がありますので選択は難しいかもしれません。

総じて23000円のヘッドホンに付属するケーブルとしてはかなり上質なものではあるのですが音に不満がある場合は交換して好みの方向に寄せることができるかと思います。

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所感

今回HarmonicDyneのヘッドホンを始めて聴かせていただきましたが、2万円前後の価格でここまでの抜け感と自然な音を両立している技術力に驚きました。個人的にはあまり聴かない特徴的な鳴り方であり、恐らく大手のヘッドホンメーカーであれば自社の音作りという常識があるため、なかなかこのような音作りはしずらいのではないかと思えます。

また、最初に聴いた時の音の抜けの良さには本当に驚かされ、一応HD800クラスとも聴き比べをして、音場が広いわけではないということを確認させられました(笑)。正直に言って中々に特徴的な音作りなので人を選ぶとも感じています。個人的には解像度や音場の面から面白みに欠け、絶対的な音はあまり好きではないのですが、この価格でこの音作りは非常に挑戦的で素晴らしいと感じています。Tier1とTier2は悩みましたが、広く抜け感がを重視する方にはかなり押せるヘッドホンですし、その点も踏まえるとTier1レベルとしました。ヘッドホンはイヤホンに比べて枯れた技術と思われがちではありますがこのような面白いヘッドホンがこれからもリリースされると嬉しいですね。

尚、Athenaの側面に空いたベントは使い勝手の面でもアドバンテージがあるように感じました。それは、開放型特有のハウジングの周囲にものが在ると音が変わってしまい易いという現象が起きないことです。ピンとこない方は、開放型のヘッドホンをお持ちでしたら音を鳴らしながらハウジングの外に手を当ててみてください。音色や音の響き方が変わっていくことを体感できると思います。Athenaはその現象が発生しにくく、指でベントを塞いでもほぼ影響がありません。

 

〇vs 水月雨Moondrop Void

個人的に所有していないので細かいことは書けないのですが、ほぼ互角の性能だと感じます。評価のポイントとしてはVoidはHD600の調整に水月サウンドの色付けをした際発明に近い位置付けの製品(音色)だと感じましたが、Athenaはさらに現代的なサブベース域の改善や横方向のベントなどチャレンジングでより現代的なサウンドバランスを目指して作られている様に感じます。

基本的な性能はさほど大きくは違わない印象ではあるのですが、やや値段がAthenaの方が安い点はポイントになります。

また、白基調のヘッドホンは(展示機もそうですが)汚れが目立つので最初は良いのですがヘッドホンを道具としてしてみた時にはAthenaの設計には合理性と耐久性があるように感じます。

 

〇vs ゼンハイザー HD595

解像度や音の広がりなどの基本的な性能はほぼ互角でしょうかあっさりとした音色のHD595に対して、音が太く、開放的な音色を聴かせてくれるという点でAthenaの個性が光ります。一方であっさりと音色を聴きたい場合や低域の量感をそれほど重視しない場合は好みでHD595を選択したくなります。このあたりの名機と互角にやり取りできるあたりがAthenaの強さだと思います。

 

〇vs SIVGA SV021 Robin 

先日Tier2→Tier1へ繰り上げしたRobinですが、解像度、正確な音場、分離、中域の質を重視するならばSV021 Robinで、抜け感とサブベース域まででる低音、ビルドクオリティを重視するならばAthenaです。両者は値段も近くかなりレベルが高いので好みで選んで良いレベルだと感じます。

 

el-snow.hatenablog.com

 

〇最後に

この様なレビューの機会をいただけましたLINSOUL様には改めて感謝申し上げます。

 

 

*1:

M17DC(PL50) "AppleMusic" -> 標準ケーブル-> イヤホン -> SpairalDot++

M17"AppleMusic" -LDAC-> XD05BAL -標準ケーブル-> イヤホン -> SpairalDot++

iphone12"AppleMusic" -A1749->  -> 標準ケーブル-> イヤホン -> SpairalDot++

Xaomi 11T Pro"AppleMusic" -LDAC-> BTR7 ->標準ケーブル-> イヤホン -> SpairalDot++

GV301"AppleMusic" -標準ケーブル-> Aiyima H1 ->標準ケーブル-> イヤホン -> SpairalDot++

Xperia10iv"AppleMusic" -標準ケーブル->  イヤホン -> SpairalDot++