こんにちは
今日は今日はSIVGA様より依頼いただきましたヘッドホン「SIVGA SV023」のレビューです。提供ではありますが趣味でやっていることもあり普段のレビューと変わらず書いていますのでよろしくお願いいたします。
結論(Abstract):6万円付近 Tier1 参考価格:62,000円
SV023は同価格帯ヘッドホンで最高峰の解像度から緻密な音の表現しながら明瞭で開放的なサウンドを併せ持つコストパフォーマンス最高峰のヘッドホンです。ヘッドホン本体の細部まで丁寧に仕上げられており、その上でケーブルやケースなど付属品の細部まで気を配らせたサウンドはSIVGAのフラグシップに相応しい芸術品と言えるでしょう。競合と比べて頭一つ抜けた解像度は数年前のヘッドホンのフラグシップクラスに迫り、サウンドはサブベース域の深さから高域まで自然でフラットな帯域バランスを併せ持ちます。
さらに音色は暖かみのある低音と煌びやかな高域を併せ持ち、この価格帯で求められがちな基本スペックを十分に満たしています。インピーダンスが300Ωと高いため、据え置きヘッドホンアンプなどが推奨とはなりますが、ゼンハイザーやSONYと言った超大手の新製品と比べても明確なアドバンテージがあり、万人に勧められる完成度のリスニングヘッドホンです。
Pros(優秀な点)
◎ 同価格帯で最高峰の解像度と明瞭感を持ち上位クラスに迫る音質
◎ 全体的に音質レベルが高くコストパフォーマンスが高い
〇 フラット~やや中高音重視傾向のサウンドバランス
〇 イヤーパッドの可動域が広く、良質なビルドクオリティ
〇 基本的に不要だが、リケーブルによる上級者向のサウンド調整余地もある
〇 アラウンドイヤーで長時間でも快適な付け心地
〇 ノイズの影響を受けにくい高インピーダンス
〇 ケーブル、ケース等、付属品の質が高く実用的
○ 本国では約7万円と日本国内販売価格はやや安め
ー 標準ケーブルが4.4mmバランスプラグ(3.5mm, 6.3mmは変換で対応)
Cons(微妙な点)
ー 若干中高域寄りのサウンドバランスのため低音の量感は価格なり
ー 両側出しコード仕様
ー 音漏れは開放型級
△ 300Ωのスペック通り据え置きの駆動環境を推奨
△ SONY MDR-MV1などと比べると空間表現、広さは価格なり
- 結論(Abstract):6万円付近 Tier1 参考価格:62,000円
- 動機付けなど
- SIVGAとは
- SPECとか
- 付属品とか本体とか
- ■音質について
- ■相性について
- ■競合機種との簡単な比較
- ■所感
動機付けなど
SIVGA様からレビュー依頼が直接の動機ですが、細かく言えば3つありまして、前回レビューしましたSV021 Robinがかなり気に入ったことが一つ目、そしてこのRobinがオフ会などでも大変好評でユーザーからのレビュー要望が多いであろうということが二つ目、SV023がSIVGAブランドのフラグシップヘッドホンであることで、このブランドが出す音作りの方向性がどのようなものか気になったのが3つ目の理由です。
そしてこのSV023ですが予価が大体6万円と、SENHEISERのHD600シリーズ、AustrianAudioのHi-X65シリーズ、そして先日SONYから発売になったMDR-MV1がライバルにいる競合揃いの価格帯です。またもう少し価格を伸ばすとMoondropなどから平面駆動型のVinusなどが販売開始され久しぶりの激戦区状態になっています。この猛者たちがひしめく価格帯でどのような存在感を示してくれるのか気になって止みませんでした。
SIVGAとは
いままでの紹介と同じになるのですがハイエンドヘッドホンメーカーのSendy Audioの手頃な価格向けのブランドがSIVGAの様です。私が無知だっただけで現在まで20年以上ヘッドホンの設計に携わっているエンジニアによるブランドで、最近できたような新興メーカーではないようです。
実際にヘッドホンをレビューしてみても細部にわたるヘッドホンの仕様が考え抜かれており、使い手としてコストとサウンドのバランスの果てにたどり着いたと考えるとほぼ非の打ちどころがありません。
SPECとか
販売サイトや公式サイトを見ていただくのが確実ではあるのですが英語のサイトになりますので気になった点をピックアップしておきます。
インピーダンスが300Ωという点でしょう。感度も105dBと、単位が最後まで書いてない点は気になりますが、他のヘッドホンの事を考えるとVrms@1KHzでしょう。その他のSIVGAのPHOENIXやSV021 Robinと比べるとかなり音量は取りにくい部類にはなるかと思います。
ただし実際につかってみると爆音で聴きたいということでなければ競合のHD600シリーズなどよりは音量自体は取りやすい様に感じました。
販路、購入先(サポート)
現状は正式な国内代理店は無い様ですが現在国内への上陸などを検討されているような気がします。現状はAmazonで取り扱いになります。
↓eイヤホンでの取り扱いが開始されました。
付属品とか本体とか
開封体験
サイズ感はいつもイヤホンと一緒においているぬいぐるみなどを参考にしてもらえると嬉しいです。
裏側にはスペックが書いています。「巧心菅造」と書いてありますね。ぱっと調べて出てこないあたり、熟語ではなく中国語でしょうか。文字のニュアンス的に英語と同じで職人魂を込めて作ったという意味を感じますね(全然違ったりして)。
箱を開けると革のケースがドンっと出てきます。
PHOENIXと同じようなケースで色がブラウンになっています。ほぼ同じ構造なので直立しますね。
中を開けるとヘッドホンと付属品が入っています。無駄の一切ないパッケージは好感が持てます。
付属品はこんな感じ、4.4mmバランスプラグのケーブル、4.4mm→3.5mm変換、3.5mm→6.3mm変換、付属品用ポーチが入っています。
マニュアルなどはありませんが、直感的に使えるようになっています。
筐体(ハウジング)「木製」
本体フレームや開放部のグリルなどの要所に金属が使われており、音響的な共振をするハウジングは木製です。ヘッドバンドはPHOENIXと同じ構造ですね。
PHOENIXと比較下画像がこちらです。配色など色合いはPHOENIXと比べて暗めなこともあり、上位機種らしい落ち着きがあるように思います。
イヤーカップの内側にはLRの文字があり見やすいほか、写真のように柔軟性もありますね。
構造的には40KのPHOENIXと似ている部分も多いですが、全体的に60Kのヘッドホンとして価格を満足させるほどの高級感がある様に思います。
ヘッドバンド「革+金属」
PHOENIXと同じ構成ですね、ヘッドバンドの長さについてはヒンジ部分との付け根にスライダが付いておりそれを無段階に調整するタイプです。
内側は滑り止めのコブがありますが柔らかいスポンジが入っています。
ヒンジ「金属」
金属で作られたヒンジ部は縦横の2軸調整ができるタイプです。
見た目こそ違いますが機構はPHOENIXとほぼ同じでです。
RLの表記はこのヒンジの部分にアルファベットで小さく記載があり、角度的に真横や下側からは少し見ずらいです。ただ、無いよりはわかりやすいので問題があるほどではありません。
イヤーパッド「アラウンドイヤータイプ、交換可能」
イヤーパッドはPHOENIXと異なる上位グレードの物がつよているようです。まず、肉厚で大きめの容積になっており、肌に直接あたる部分は柔らかい布か不織布かは定かではありませんが触り心地も柔らかく蒸れにくい刺激が少な目の素材で作られています。ここまではPHOENIX用と同じなのですが、その上で肌に当たらない部分は革性になっており、その革には空気孔が等ピッチで開けられています。
立体的な作りになっていることで耳が一切ヘッドホンと触れないため、長時間使っても耳が痛くなりにくく、さらには蒸れにくくなったことでSIVGAのヘッドホンの中で最も使い心地は良好でした。
尚、イヤーパッドの形は長方形になっており、人間の頭の形にフィットしやすいように凹凸に若干の起伏が付いています。内側には大きくRLが記載されているのでその点も使いやすさに繋がっています。
イヤーパッドの耐久性については使い込んでみないとわからない点だとは思いますが、アリエクスプレスの販売店では5000円ほどで販売されているので長期使用の点でも安心できるかと思います。
ケーブル「交換可能2.5mm3.5mm両出しー4.4mmバランスプラグ + 3.5mm変換+6.3mm変換」
20240809追記:現在はヘッドホン側の端子が2.5mm→3.5mmに変更になったという情報を入手しましたが私自身は未確認です
2024.8.25追記 国内流通に合わせて3.5mmに仕様変更になったようです、情報の提供ありがとうございました
ケーブルの仕様はSIVGAの機種の統一規格の様ですが、付属する物の質はPHOENIX付属から大きくグレードアップしているようです。せっかくなので右側にPHOENIX付属のケーブルを並べてみました。
ケーブルは透明な被膜に覆われており、中の線材が見えるタイプで2mあります。ヘッドホン側のコネクタは2.5mm3.5mmのTS 2極左右両側出し、ジャックは4.4mmの4極バランスタイプです。バランスを持っていない方などは変換が煩わしい場合は、同じ仕様のケーブルでプラグ違いは14000円ほどで購入できる様です。(2024.8.25追記 国内流通に合わせて3.5mmに仕様変更になったようです)
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PHOENIXのケーブルの方が細いので使いやすそうに見えますが実際は真逆で、見た目に反してかなりしなやかでタッチノイズも少なく、反発も少ないのでとても取り回しが良いです。重さを実測すると32gでPHOENIX付属ケーブルの29gとほぼ変わりません。
3.5mm変換については中々市場にあるものではないのでうれしい付属品で、見た目にも高級感があり、使用してみた感じ変換部のケーブルも同等の素材で作られていそうで高級感があります。ただし、どうも編み方は違う様でその点は少しきになりました。
ちなみにこちらの変換ケーブルも個別で7~8000円ほどで販売されており、ケーブルの値段を合わせると2万円となりPHOENIXの差額と変わりませんね。
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折角なのでそれぞれの導体をマクロで撮影してみました。ヘッドホン用ケーブルの方がこちら。
変換ケーブルの方がこちらです。
いずれにしても総じてフラグシップの名に恥じない品質で、リケーブルなどの必要性は無いかと思います。
〇ケース「ハードタイプ革」
PHOENIX付属のものと色だけ違うのかと思いましたが、形状も少し変化が付けてあります。それ以外はほぼ同じです。PHOENIX付属は価格帯を超えた上等なケースでしたが、SV023についてもさらに高級感がでた素晴らしい付属品です。実際にOFF会で試聴用に持ち運びましたが衝撃にも強く安心でき非常に有用でした。。
〇装着感「◎」
SIVGAの中で最も良好です。特に私の耳は客観的にかなり大きいサイズなのでアラウンドイヤータイプでも深さが無いと耳たぶが当たり痛くなることがあるですが、PHOENIXと異なりRobin同様に良好でした。
重量はケーブルと合わせて約332gです。クラスでは標準的な重さかと思います。
〇内部構造「◎」
メンテナンス性などを確認するため中を確認してみました。内部のアクセスはイヤーパッドは内側に引っ張れば取れるタイプです。
取ると、斜めに配置されたドライバやその周囲に不織布が見えて音響的なチューニングがほどこされていることがわかります。内部構造としてはその中身になるのですが、+ネジ4本で止まっているだけなのでネジを取って内部構造を確認していきます。
開けるとこんな感じで、木製のハウジング、内部ケーブル、ドライバ、ジャックが見え、とても簡単な構造になっています。これであれば修理なども容易かと思います。
内部配線については見た感じPHOENIXと同じ、そしてケーブルと同じ見た目の線材が使われている様です。
〇その他、総評「◎」
レビューの為に自身のヘッドホンのコレクションを再確認したり、店頭で競合機種を購入も視野に確認したのですが60Kという価格でもトップクラスの完成度です。特にケーブル、変換などの付属品についてはPHOENIXとの価格差2万円とほぼ同じため、音の差だけで無く納得感やお得感もあります。
デザインも上質であり、ケーブルからイヤーパッドまでどこを取っても手抜き感が見当たらず、姉妹ブランドで高級ヘッドホンを作っている実績も踏まえ、SIVGAのフラグシップに恥じないな作りは好感が持てます。
■音質について
〇想定競合機種
開放型として考えると手持ちではAustrianAudio Hi-X65、同社 PHOENIXでしょう。それ以外であればSONY MDR-MV1、SENHEISER HD600シリーズでしょうか。ダイナミックに限定しなければMoondrop 水月雨のVenusなども競合になるかもしれません。
〇ファーストインプレッション
事前に300Ωで強い上流を準備するように言われていたためM17DCモードで聴いたのですが、PHOENIX同様に高いビルドクオリティに加えて圧倒的に高い解像度に度肝を抜かれました。煌めく高音、解放感がある抜け感ある音色、繊細でありながらやや近い音像定位が作り出すパワフルな音像と先ほど挙げた同価格帯の猛者を蹴散らさんばかりの音色です。
イメージとしてはSV021 Robinの解像度を更に高め、PHOENIXの空間表現を手に入れた感じでしょうか。個人的にはどえらい物(方言)を送ってきたなと感じました。
〇エージングとか
基本的には実際に使用しながらのべ20時間ほど、AGPTEKなどを使ったプレイリストの無限ループにて100時間程度鳴らし込みました。モバイルケースを使ってOFF会などに持ち込んだりとできるかぎり木が日本の機構になじみやすい様に1か月ほど使い続けてきた形になります。
その間では大きな変化はなかったように思いますがこころなしかより音場は悠々と広がる様になった様な気がします。
〇環境とか
標準環境*1を使っています。
スペック300Ωと鳴らし難いのですが、通常のリスニングぐらいではXperia10ivなどでも8割程度で十分に音量は取れました。ライブなどに近い爆音となると据え置き機材が必要かと思います。
もちろん駆動力はあるほどよく、上流による音色の影響を受けやすく、特に音場感や解像度に大きく影響します。このため、一般的な据え置き環境としてTopping L50、A90やM17DCを基準としていおり、上流が整っていることが前提となっています。当然標準プラグとなっている4.4mmのバランス接続である点もご注意ください。
〇帯域バランス
一般的なヘッドホンと比べれば少しだけ中高域が強めのすっきりとしたフラットバランスです。
〇音色(寒暖、明暗、響き、粘度、厚み) 「◎」
同価格帯でも圧倒的に高い高解像度で細かな表現が特徴のシャキとしたサウンドです。寒暖はやや寒色で明瞭感があり、響きは少しソリッド感がありますが艶やかでドライさはありません。音の厚みはやや太めで悠々とした音場にしっかりとした音を聴かせてくれます。高域はキラキラ低域は弾むような暖かみもあります。
圧倒的に明瞭な音色という強みの中に個性的な派手さもあり見事なバランスに仕上げているかと思います。個人的に同価格帯でもトップクラスのリスニングヘッドホンの音色だと感じます。
〇解像度、分離 「◎」
解像度は正直を言って度肝を抜かれたほど高いです。今の6万円クラスの競合では太刀打ちできずMoondropのVinusやK812やHD800sなど少し古いフラグシップクラスのヘッドホンレベルの解像度を出して来ます。実際にH800sやK812などと何度も比べたのですが解像度だけで言えば同等クラスと言って過言ではありません(当然それ以外の空間表現などの部分は及ばないのですが)。
音の細部まで表現するSV023は解像度重視でのコストパフォーマンスはイカレています。
〇音場(広狭、重心、遠近) 「○」
音場はこの価格帯の開放型としては前後上下左右共にやや広めの音色です。開放感もしっかりとあり抜けて行くサウンドに密閉感は皆無です。音像は近めでやや高めの位置に音像を作りやすく一般的な6万円クラスとして良質な表現力で特筆すべき点は平均的に高いレベルを持っています。
とはいえ競合のMDR-MV1と比べると凡庸な表現力になります(これと比べるとほぼ全てのヘッドホンがそうなりますが)。当然ながらHD800sやK812といった空間表現に優れる機種と同じ土台に立つような機種ではないということです。
〇定位、音像 「○」
定位や音像はこのクラスとしては十分な正確さと音像の掴みやすさです。K812など上位のクラスと比べれば音色が太めなため大編成のクラシックや音数の多い楽曲では不鮮明にもなりがちですが、同等クラスのヘッドホン音像が広がり易いこともあってやや音像は掴みづらい傾向はありますがこの価格帯では上位に入るレベルかと思います。
〇低域の質について 「〇」
量感はそれほどではありますが、サブベース帯域からしっかりと音楽を支える質の音を出してくれます。低音の反響に頼らない設計が良いのか残響感が少なく、少し弾む様な質感で楽しく聴ける音色です。
立ち上がりのアタックはそれほど早くはないですが十分で、スピード感とグルーブ感もあり、競合製品と比べてもこの価格帯では十分な品質です。
〇中域の質について 「◎」
非常に高い解像度に裏打ちされた中域は繊細かつ骨太で、適度な近さもある表現は情緒的な表現です。量感もしっかりしており、女性ボーカルは艶やかかつ透き通るような音色は伸びやかで美しく、ギターなどの弦楽器は適度な響きがあり、分離感や定位も抜群です。
競合と比べたアドバンテージはやはり圧倒的に高い解像度で、1枚ベールを脱いだかのような音で、隅々まで解像するレンズで見ているような感覚があります。SV023を聴いた後に他の同価格帯の競合ヘッドホンを聞くと一段解像度が落ちる感覚があり、眠たいとまでは言いませんが、1ランク上の表現力だと実感します。
〇高域の質について 「◎」
量感も十分ながらキラキラとしたとても煌びやかな高域表現を持つヘッドホンです。金属的でもあり、チャイム系の楽器が華やかで明るく印象的に響き、いつまでも聴き入ってしまいたくなる魅力があります。
それでいて女性ボーカルのサ行などの歯擦音の刺さりについてもしっかりとコントロールされています。いずれにしても存在感がある印象的な高域の楽器が綺麗に浮かび上がり、個人的に空間表現を除けば音色はこの価格帯随一の表現力だと感じます。
〇ジャンルの得意不得意 「リスニング用途なら概ね◎」
ボーカルを主体とした中域を重視する楽曲、高域が主体で聴くような楽曲ではGiantキリングがあり得るほど素晴らしい相性で聴かせてくれます。解像度が高いため、少々苦手なジャンルも素晴らしい表現力で圧倒してしまう感じもあります。
比較的どのジャンルも合うヘッドホンですね。迫力があって密閉的で深く重い低音が欲しい楽曲には合いません。また、強いて言えばリスニングヘッドホンのため、モニター用途のような使い方は若干方向性が違う様に感じます。
また、楽器の位置関係を重視するようなオーケストラなども苦手ではありますが、これはK812やHD800sクラスのヘッドホンが得意とする領域なので気にする必要もないかもしれません。
■相性について
〇アンプ(上流)による印象の違いについて「できる限り強い上流が必要」
300Ωはやはり伊達では無く、普通のアンプでも音量こそ取れますが解像度と音場が死んでしまいます。
SV023の実力を発揮させるには最低でもヘッドホンアンプを使って鳴らす方が良いかと思います。例えばポータブルアンプのAiyima H1やSOUNDTIGER Concertoなども音場感が悪くイマイチ鳴らしきれていないと実感するところでした。
ToppingのL50やA90、ADI2DAC fs 6.3mmジャック、やFIIO M17のDCモードにするとこのヘッドホンの醍醐味を感じさせます。
〇ケーブルによる印象の違いについて(注意)「基本不要」
注意:ケーブルについては科学的に見れば音質の変化に対する決定的な証拠はありませんので、オカルト的な要素を過分に含みます。幸いながら私はイヤホンではケーブルによる音質の変化を強く感じられるのですが、個人差がありますので万人におすすめするものではありません。
自作MMCX変換プラグは同じコネクタのケーブルは基本的に存在しないと思いますがリケーブルをしたときに音色の変化の効果があるかどうか?という視点でみていただければと思います。
〇SV021 PHOENIX 用ケーブル 3.5mm
いやはや驚くほどに微妙でした。やや音色がドライな方向になりボーカルなどの音色が掠れているかのような錯覚すら覚えます。音場は天井の高さが低くなってしまいます。正直このケーブルがSV023に付属していたらこのような良い評価になならなかった様に思います。
じゃあ逆にPHOENIXにこの6N単結晶銅OCCケーブルを指したらSV023レベルになるかというとそういう言う事はなく、解像度はやや向上し、高域が目立ち音色は晴れやかになりますがSV023の方が上のクラスだと実感できます。PHOENIXとの音色の違いとしては少し余裕のある横に広い音場でゆったりとした音色です。音色の分離が良い意味で悪く音色が繫がる感じです。
〇変換プラグ + SpaceCloud 4.4mm
標準ケーブルに対して変化は大きくはありません。低域の量感が増し曇りが晴れて音がつかみやすくなって、中域がやや近くなり少しウェット感がでるでしょうか。音色の方向性はそれほど大きく変化しません。分離感はやや向上するのですが音場は上下が少し狭くなった気がします。
基本的にSpaceCloudは寒色でドライな方向性に変化することが多いのですが変換の影響かどちらかというとウェット感が出たのは驚きでした。
Phonix用のケーブルでは解像度が大きく上がったSpaceCloudですが、概ね変わらない為標準ケーブルの出来の良さを実感します。
〇変換プラグ + Altea 4.4mm
標準ケーブルに対してやや低域が強くなったでしょうか。中域~低域はウェット感がでて滑らかな表現になります。やや解像度や解像感は下がるでしょうか、分離感は不満はありません。こころなしか音全体に一体感が出てやや暖色傾向に音色がシフトします。やや低音は立ち上がりが遅くなった感覚があるのでスピード感が必要な楽曲には合わないでしょうか。
解像度ベースで言えば初期ケーブルから交換する必要はないかもしれませんが寒色寄りの音色から変更したい場合は変更の価値があるかと思います。
〇標準ケーブル
ja.aliexpress.comリケーブルを試してみた後に標準に戻した感想としては解像度高め、寒色、ドライ、音場広めの優秀なケーブルだと感じました。さすが別売で1万オーバーで売られているだけあるなというところでしょうか。PHONIXにつけたときも大きくアップグレードできるケーブルですので、音色が気に入らなかった場合を除いて交換の必要は無いと思います。
■競合機種との簡単な比較
〇vs 水月雨Moondrop Vinus
個人的に所有していないので細かいことは書けないのですが、本国の販売価格が7万円と近いこともあり、性能も近いと感じます。評価のポイントとしてはVinusは水月雨らしい女性ボーカルに焦点をあてた艶やかかつ美麗なサウンドです。
SV023は、低音が弾み、高音がキラキラする万能感のある個性でやや値段がSV023の方が安い点はポイントになります。
またVinusは重く、髪の毛を嚙みやすい点もマイナスポイントになります。デザインは前衛的でカッコよいので最初は良いのですがヘッドホンを道具としてしてみた時にはSV023の設計には合理性と耐久性があるように感じます。個人的にMoondropへの思い入れがなければSV023の方をお勧めします。
〇vs AustrianAudio Hi-X65
インピーダンスが25Ωと10分の1以下まで低いためHi-X65が競合とは言いずらいのですが、価格帯が近く自分が一つのリファレンスにしているため聴き比べてみました。レコーディング、ミキシング、マスタリングなどのモニター用途ではHi-X65の味付けの少ない音色と感じます。リスニング用途では音場はSV023の方が広く中域から高域に広いため見晴らしが良く開放的でアドバンテージがありますが、低音は弾力性が表現の邪魔をして正確な音が見えにくい傾向があります。音場は狭いのですが中高域の音が近いため迫力はHi-X65の方があるでしょうか。解像度はややSV023に分があるように思います。
当然ながら低インピーダンス環境では圧倒的にHi-X65にアドバンテージがあり、例えばMacbookなどに直指しでまともに使えるのはHi-X65ぐらいなのではないかと思えるほどです(SV023はスカスカな音色になります)。なので使用環境で選べる機種ですね。
〇vs ゼンハイザー HD600シリーズ
先日試聴してきたので詳しくはこちらの記事をご覧ください。
音の表現力、音の広がりなどはほぼ互角ですが、解像度に関してはSV023が圧倒的に上になりますね。レコーディング、ミキシング、マスタリングなどのモニター用途でゼンハイザーのHD600シリーズの音を聴く必要があったり、保証面が魅力でなければSV023の方が上手だと思います。
〇vs SHURE SRH1440
先日試聴してきたので詳しくはこちらの記事をご覧ください。
音の表現力ほぼ互角でしょうか、SRH1440はボーカルの表現力が秀逸ですが、音場や解像度に関してはSV023の方が一枚上手だと感じます。
〇vs SONY MDR-MV1
先日試聴してきたので詳しくはこちらの記事をご覧ください。
音場、空間表現、定位に関してはMDR-MV1が圧倒的に優位です、解像度に関してはSV023が圧倒的に優位です。方向性が全く違うので両方共に良い面があり素晴らしい完成度です。360用のレコーディング、ミキシング、マスタリングなどのモニター用途ではMV1が必要ですが、リスニング用途では値段も近くかなりレベルが高いので好みで選んで良いレベルだと感じます。
■所感
今回SV023とSIVGAのフラグシップヘッドホンを聴かせていただきましたが、自分が実用しているデスクトップクラスのスペックのヘッドホンでは初めて実用的に使えるレベルのヘッドホンだと感じました。どうしてもK812未満の価格では解像度が足りないと感じてしまいあまりチェックや気分で使うことはあっても実用性ではないことが足りないことが多かったためです。ここまで楽しいサウンドを日本国内販売価格約6万円で出せるというのは本当に驚きです。
何度も店頭に足を運んだりしたことも踏まえ、実売6万円クラスでは最高峰の解像度そして高い空間表現を持ち合わせているのは概ね間違いないかと思います。はっきり言ってインピーダンスが高い以外の文句の付けようがありません。
付属品の品質も最高峰で、革ケースに加えて時代の潮流を的確に捉えた4.4mm+3.5mm変換+6.3mm変換という構成は音質的にもこのヘッドホンの実力を発揮しやすいと感じます。個人的に評価が高いのはリケーブルが不要だと感じた点で、フラグシップリスニングヘッドホンとして非常に好感が持てる部分です。
またSV021 Robinと異なりエージングによる変化もそれほど大きくなかった点も嬉しかったポイントです。スペックではベリリウムコート+LCPとあったのでエージングが必要なのかもしれないと1ヶ月間使い続けてきたのですがそれほど印象は変わっていないのは嬉しい点です。もちろん、これ以降で変化があるかもしれませんが、流石に長期変化すぎるので、なにかあれば別途雑記にでもしようかと思います。
当然空間表現はK812やHD800sに全く及ばないのですが解像度は肉薄しており、差別化できているため常用レベルの音質と使い勝手を両立しています。このSV023は今後もお気に入りとして実用的に使って行きたいと思います。
〇最後に
この様なレビューの機会をいただけましたSIVGA様には改めて感謝申し上げます。
*1:
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