こんにちは、ゆるふわオーディオのすのーです。
今日はGiitaさんからお借りしたNICEHCK の定番フラグシップケーブルSpaceCloudの改良版とも銘打って発売されている「SpaceCloud Ultra」についてお借りてノーマル版との聴き比べをさせてもらったので、その簡易レビューです。
結論を言えばSpaceCloud Ultraは音質的に尖った魅力が無く微妙でした。個体差かもしれませんが、特に理由が無く同じ値段ならば圧倒的に無印のノーマル版が個性的でオススメです。
とはいえ、上記の通りAmazonでは無印版の方が高かったりするのですが、音を聴くと納得といえば納得です。
〇ケーブルレビューの注意
注意:ケーブルによる音の変化はオカルト的な要素を過分に含み、科学的に見れば音質の変化に対する決定的な証拠はありません。幸いながら私はイヤホンではケーブルによる音質の変化を強く感じられるのですが、個人差がありますので万人におすすめするものではありません。
気になる方は読み進めるのを中断いただければ幸いです。
■音以外の要素
〇動機とか
かなり前になりますがケーブルランキングに登場させ合計4本購入したほど素晴らしいケーブルと認識しているNiceHCKのSpaceCloudの改良版として登場したUltraですが、ほぼ完成せいているその音色にどのような手をいれるのか疑問でした。このときはハンダの変更だけでそこまで大きくレベルアップしないだろうという思い込みもあり、まぁ急ぎでもないしいつか聴いてみようと考えていました。
出た当初、縁あってOFF会で購入したFFさんに数分ごど聴かせていただいた限り、そこまで大きな変化はないかも?なんて思っていました。まぁ今にして思えば手持ちのイヤホンでも無いし、直接聴き比べしたわけでも無かったので浅はかな思い込みだったと思います。
そう思って暫くして、先日Giitaさんからぜひ無印版と聴き比べしてみてほしいと意味深にお願いされてTiger Concertと一緒に送られてきましたのでせっかく出し聴き比べさせてもらおうとなりました。
このような機会をいただきましたGittaさんには感謝申し上げます。
〇スペックとか
毎度、ケーブルの線材とかそういうものにはあまり興味が無いので気になる方は販売ページなどを確認してもらえると嬉しいです。と言いたいですが、こちらについてはNiceHCK公式としてハンダを変更、コネクタとプラグを変更とありました。
確かに実物を見るとコネクタとプラグが変更されています。しかしながら気になるのは変更したと言及が無い線材の色が明らかに違います。Ultraの方がやや濃い色になっています。
〇重さ 「35.9g」
Normal版が41.3gでしたのでやや軽くなったことになるかと思います。ちなみに線材が3cmほど短くなっていたのでその影響もあるかもしれません。
〇コネクタ 埋め込み2pin 「0.78mm」
プラグは外側に溝がある埋め込み2pin対応タイプでした。ノギスでピンの外径を測るとノーマル版同様に0.78mm±0.01程度でほぼ仕様通りでした。
RLの表記は埋め込み樹脂の色で見分ける方式から、樹脂部分は共通でプラグ部の赤いラインがあるかどうかで見分けるタイプに変更になったようです。
また、ケーブルの構造として耳掛け部分だけ4芯の編みからツイストに変更になっています。この部分は変更点として挙げられていないのでマイナーチェンジでしょうか。
〇プラグ
幾つかDAP等にプラグを指してみましたが接触不良なども無く挿し心地も良好でした。
尚、今回のプラグ部はネジ式になおり、取り外して内部を確認することができました。
とはいえ、黒いベトベトした素材で覆われておりハンダなどは確認できませんでした。ベトベトはもしかしてUVレジンかも?と思いUVライトを30秒ほど当ててみましたがベトベトは変化ありませんでした。
〇導体
1年ほど前に買ったノーマル版と明らかに色が違うのですが、経年劣化なのか別の素材になったのかはわかりません。少なくとも自分自身が時期を変えて買った4本はすべて同じ胴体の色でした。
写真の左側がUltra、右側がNormal版です。Ultraの方が編みが均一で色も濃いので美しいです。
マクロで導体を撮影するとこんな感じです。さっきとは逆で右側がUltra、左がNormal版でUltraの方が太く均一に編まれており色が濃いのもわかるかと思います。
ちなみにノギスで直径を図るとUltraが4.5mm、Normal版が4.3mmで明確に違いがありました。
ちなみに分岐後であれば両方ともに3.5mmで不思議に思ったのですが良く比べてみると編み込みのピッチが1.5倍ほど違います。
左側がUltra、右側がNormal版です。
実際の使い心地はNormal版同様に編み方が良いのか適度に柔らかく、手触りもよいです。太いのですが、反発力も小さく使い勝手は悪くありません。さわり心地も均一な編み込みのおかげか素晴らしく、そのうえ硬い被膜を感じるので丈夫さと使い心地を兼ね備えた良いバランスだと感じます。
Normal版に比べて編み込みが均一なのか癖がつきにくい点も好感触です。
〇スプリッタ&スライダ
スライダは摩擦で止まっているだけのものですが、被膜の適度な摩擦でホールドできるようです。室内利用でざっと使った感じは滑り落ちてくることはありませんでした。Normal版より高級感があるように思います。
○抵抗値(直流インピーダンス) 「0.1Ω」
テスタ―*1で実測したところ直流インピーダンスは測定限界の0.1Ω以下でした。これはNormalと同等です。
〇その他、まとめ
日本Amazonの値段的にはNormal版よりもリーズナブルになっていますし作りや見た目などもグレードアップしているように思えます。価格もそれなりにするケーブルなので価格相応の見た目になったと考えて良いかもしれません。
■音について
基本的にNormal版とUltra版を交互に聴き比べてどちらが良かったかを調べました。
〇環境
M17(DC) -> 「」-> イヤホン ->SpiralDot++
評価基準は5段階で、細かく決めてはいないのですがなんとなく以下のい感じです。
◎:標準ケーブルと比べて高相性かつ魅力的な音
〇:標準ケーブルと比べて高相性又は、良相性かつ魅力的な音
ー:標準ケーブルと比べて良相性又は魅力的な音、
△:標準ケーブルと比べて魅力を引き出さない組み合わせ、又はコスパが悪い
✖:標準ケーブルと比べて魅力を引き出さない組み合わせかつコスパが悪い
〇CCA HM20 ⇒ 結果:Normal版が圧倒的に良い
BAとDDのハイブリットであるHM20です。リケーブル推奨のSタイプHM20との相性ですが、Normal版は素晴らしい相性です。Ultra版は音場が狭く、音の重心が低いので狭苦しさがあります。また、音色も少しウォームさを感じます。解像度はNormal版より少しだけ高く、音色の傾向としてどちらがフラットかと言えばUltra方がフラットさはありますが個性が少なく無難な音色で1万円以上払う価値があるのかは疑問に思ってしまいました。
どちらがHM20Sタイプに合っていてどちらを使いたいかと言われると個人的にはNormal版になります。
〇TRI iONE ⇒ 結果:個人的にはNormal版が良い
TRIのフラグシップ1DDイヤホンであるiONEはGiitaからお借りしているものなのですが、折角なので試してみました。
こちらも上手な空間表現と程よい定位の良さと程よい解像度で、しっとりと味のある音を聴かせてくれますが、Normal版の方が抜け感が良く空間が広いです。Normalではやや寒色寄りに振れて音色の輝きや解放感がありますが、Ultraはしっとりと暖色よりで解像度で攻めるイメージです。音の傾向が違いすぎるのでどちらが良いかと言われると分かれる音色ではあるのですが個人的にはNormal版の方が好きです。
〇LETSHOURE S12 Pro ⇒ 結果:Normal版が良い
平面駆動型のS12 Proもできればリケーブルさせたい機種です。元々完成度が極めて高く素晴らしい基本性能をもつ機種ですが、SpaceCloudと合わせても良い相性です。
然しながらUltraとNormal版を比べるとやはり音像の高さが低いことにくわえて、解放感(抜け感)が悪く、どうしても相性としても一歩劣ると感じます。
音の解像度はUltraが高く、高域の音色の良さもUltraが良いのですが、Normal版は空間表現のプレゼンテーションも広く、僅差でNormal版の方が一枚上手です。
ケーブルの価格も現実的ですし、一度試してみるのありだと思える組み合わせだと思います。他のイヤホンと比べて差は大きくありませんが、どちらがS12 Proに合っていてどちらを使いたいかと言われると個人的にはNormal版になります。
〇Simgot EA500 ⇒ 結果:Normal版が良い
こちらもEA500の透き通る音色を良く活かせているケーブルはNormal版でした。Ultraは解像度は高いのですが音色の解放感が少なく、どうしても抜け感が不足するイメージです。Ultraにすると音量もやや小さくなるような変化があり、どうもNormal版の方が相性が良い様に感じます。
残念ながらここまで聴いて、明らかにUltra版の音の傾向が見えてきましたのでここまでとしました。
音の変化まとめ
〇絶対的な傾向をまとめると
・解像度が高め、音色はきめ細かい
・分離と解像感も高め
・音像の重心はやや低め
・明暗は概ねニュートラル
・寒暖も概ねニュートラル
・癖は少ない
値段と考えると悪いケーブルではないと思います。
〇SpaceCloudノーマル版と比べると
・解像度が少しだけ高い
・音圧が低い(音量が少しだけ小さい)
・音がウォーム
・音が暗い
・高域が少しだけ煌めく
・分離と解像感は低め
・音場は狭い
・音像の重心は低い
・解放感や抜け感が少ない
Ultraも悪くはないのですが、どちらかというと個性が消える方向の変化だと感じます。
■まとめ
SpaceCloudの6割の価格設定は価格なりのケーブルだと感じました。とてもSpaceCloudのグレードアップ版とは思えません。正直故障などを疑って逆相になったりしていないか、変に導通してたりしないかなどを確認しましたが、問題ありませんでした。
Ultraが出た時期に購入したFFさんに確認すると自分が言うほど大きな差を感じないとの話もありましたが、それにしても個体差やマイナーチェンジの可能性を捨てきれません。
Ultraは解像度が高いのですが、よりケーブルの個性を消す方向性でNormal版ほど明確なグレードアップ感を感じにくい様にも思います。Normal版を4本購入して個体差が無いことも踏まえると、同じ価格でUltraの見た目が気に入っているので無いならばNormal版をオススメしたいと感じます。
SpaceCloud UltraについてはNormal版とほぼ同じだという声と、音が違うという意見があるようで、今回詳細に聴き比べさせてもらったことで後者の方の意見が良く理解できた次第です。個体差の可能性もありますし、機会があればまた別個体で聴き比べしてみたいと思います。
最後に
Giitaさん、このような機会をいただきありがとうございました。
*1:KYORITSU KEW MATE MODEL 2000 オフセット除去