こんにちは。ゆるふわのオーディオやってるすのーです。
今日はLINSOULから依頼でイヤホン用ケーブル「TRIPOWIN Seraph 2pin4.4mm」のレビューです。提供品ではありますが、中身についてはいつも通り記載しております。
プラグは4.4mm, 3.5mm、コネクタはmmcx、埋め込み2pin、QDCが選べます
ケーブルレビューの注意
注意:ケーブルによる音の変化はオカルト的な要素を過分に含み、科学的に見れば音質の変化に対する決定的な証拠はありません。幸いながら私はイヤホンではケーブルによる音質の変化を強く感じられるのですが、個人差がありますので万人におすすめするものではありません。尚、ケーブル個別の測定の取り組みについてはこちらの記事などを参考にしていただければ幸いです。
本記事はケーブルによる音質が感じられない事を否定するものでもありませんが、それでも気になる方は読み進めるのを中断いただければ幸いです。
結論:イヤホンの特徴を損なわずに伸ばすハイグレードケーブル
非常にバランスの良いハイグレードケーブルで、中価格帯のイヤホンまでの標準ケーブルの印象を損なわず、そのままの特徴を活かしたままその方向性でグレードアップしてくれます。高級ケーブルにありがちな上品な表現はあまり得意ではないのですが元気なまま高解像度にしてくれ、中華イヤホンなどではお気に入りのイヤホンが更に1ランク2ランク音が良くなる感覚です。
高級イヤホンの様な音色の方向性にしたい場合は別ですが、良さをそのまま活かすという点ではかなりレベルの高い音色です。
また、線材はしなやかで柔軟性が高く手触りも良いため、奇抜な色の見た目に反して素晴らしい使い心地に驚かされます。特に反発力が少ない点は優秀で高級ケーブルを使っていても使い勝手を全く損なわない点では特異な存在だと思えます。個人的に想像以上にHM20 Sと相性が良く、基礎能力の高いイヤホンの性能を遺憾なく発揮できる素晴らしいケーブルだと感じています。
中華イヤホンらしい傾向で癖の無いため廉価なアップグレードケーブルとしては最高級のハイグレード帯としてオススメできる一本です。
Pros(優秀な点)
◎ イヤホンそのもの傾向を変えないバランスで相性が出にくい
◎ 高い解像度、綺麗な高域、素早い低音
〇 個性ある鮮やかな色味のデザイン
〇 しなやかで癖が付きにくく、使い勝手が良い
〇 プラグやコネクタの精度は十分
ー TRIPOWINによるブランド力
Cons(微妙な点)
ー ややドライで寒色傾向で高解像度と強い個性は感じにくい
△ 色味が鮮やかなので人を選ぶ
△ 保証期間などが不明
音の特徴
A7Kのケーブルとして次の項目で様々なイヤホンと合わせた傾向を記載します。ケーブルは相性が強く出やすいこともあり、絶対的な指標ではないことをご留意願います。
バランス:弱ドンシャリ~フラット
寒暖:やや寒色傾向
明度:やや明るい
響き:ニュートラル
余韻:ニュートラル
粘度:ソリッド
湿度:ドライ
厚み:ニュートラル
音場 左右:広め
音場 上下:やや広め
音場 前後:やや広め
音像高さ:標準的
音像近さ:標準的
解像度:高い(フラグシップ艦隊とほぼ遜色なし)
解像感:良い
分離:良い
定位:良い
高域:良い
中域:良い
低域:良い
イヤホンとの音の相性
環境
基本的には
M17(DC) -> Seraph -> イヤホン ->SpiralDot++
評価基準は9段階で、細かく決めてはいないのですがなんとなく以下の感じです。
S:標準ケーブルと比べて高相性かつ魅力的な音
A+
A:標準ケーブルと比べて高相性又は、良相性かつ魅力的な音
B+
B:標準ケーブルと比べても良相性又は魅力的な音、互角
C+
C:標準ケーブルと比べて魅力を引き出さない組み合わせ、又はコスパが悪い
D+
D:標準ケーブルと比べて魅力を引き出さない組み合わせかつコスパが悪い
Tanchjim ONE DSP 結果:C+
解像度、解像感が向上し、音像はやや遠めになるでしょうか。全体にスッキリとした音の傾向です。音は明瞭ですが、あくまでONEの限界はあるなと感じる音色です。音場は横の広がりは維持したまま上下が広くなり前後もやや深さを増す感覚がありますね。
音の解像度も解像感も高く分離感もあるので間違いなく良い音ではあるのですが、本体が足を引っ張っている感覚は強いです。ONEの音がとても気に入った方であれば価値はありますが、ケーブルの方が高いこともあり、コスパ的にあまりおすすめできません。
Kinera Celest PhoenixCall 結果:A+
解像度、解像感が向上し、音像はやや遠めになるでしょうか。全体にスッキリとした音の傾向がでてくれ、明瞭で音像の掴みやすさが向上します。4.4mmの影響かやや高域の音の存在感は減るでしょうか。
音場は横の広がりは維持したまま上下が広くなり前後もやや深さを増す感覚がありますね。一方で中域の音像は少し遠くなる傾向があるのでボーカルの近さを重視する方は注意が必要かもしれません。
音の解像度も解像感も高く分離感もあるので間違いなく良い音ではあるのですが、良い音過ぎるためか何か物足りない感覚もあります。少なくとも悪い相性ではないです。
7Hz SOUNS 結果:A
解像度、解像感が向上し、音像の位置はほんの少し近づくものの音場の傾向は大きく変わりません。
目立つのは低音の質と量感で、傾向が大きく変わるわけではないのですが低音の存在感がやや増す傾向があります。高域の音色は少し音色が整理された印象でスッキリとした音になりますね。
今までのケーブルは概ね味変更という感覚でしたがやっとリケーブルによる音質の向上効果を実感できます。音の傾向を変えずにアップグレードできる点は良い相性だと思うのですが、イヤホン本体の値段とほぼ変わらないためオススメするかと言われると難しいですね。
CVJ Freedom 結果:S
解像度、解像感が大きく向上します。音像がやや近めなのは変わらず大きく傾向が変わるわけではないのですが音の明瞭度やキレが大きく向上していることを実感します。
音場も横の広がりが増し悠々と鳴らしている感覚が強くなります。いままで同様に明らかにここまでの3本とはケーブルの格の違いを感じます。
音の分離感がありつつも音の一体感も両立しており、どの帯域の音色も聴き取り易いのも特徴です。
高域が刺さる点は大きく変わるわけではないのですが高域の表現の粗が大きく少なくなるので高域の不快感が大きく減ります。
TRN BA15 結果 結果:A+
価格の価値を感じさせる解像度、解像感の高さです。音場は横と上下に広がるタイプで音場は広く音像も高めです。明るく明瞭さがあり、音の分離感も良いのでどの音も聴き取り易いですね。大体のケーブルは小音量にすると変化が分かりにくくなりますが、Seraphは小さな音量でも明瞭で聴き取りやすい音色を維持している点も素晴らしいですね。BA15は小音量でも聴きたくなるイヤホンなので相性も良いと感じます。
SeeAudio Rinko 結果:A+
価格の価値を感じさせる解像度、解像感の高さはRinkoでも健在です。音場は横と上下に広がるタイプで音場は広大です。やや前後の立体感は少なめなのは4.4mmの宿命でしょうか。
やや明るく明瞭さがあり、音の分離感も良いのでどの音も聴き取り易いのですが、SolstceやMirageがWバランスのRinkoの中域をしっかりと持ち上げてくれていた事に対してSeraphは上下が持ち上がる部分が大きくややボーカルは後ろに下がる感覚があります。楽器を中心に聴くのであればSeraphが良いのですがボーカルを含むとやや表現に物足りなさを感じるかもしれません。
個人的には単体であればSにしても良い音ではあるのですがSolstceのコストと音色を踏まえるとA+評価となりました。
CCA HM20 結果:S
いやはや素晴らしいです。SpaceCloudクラスの価格のケーブルですが、価格の価値を感じさせる解像度、解像感です。音場も横と上下に広く音場は広大です。SpaceCloudも広大なのですが違いは音の近さで、俯瞰性があるSpaceCloudに対して中域の楽器やボーカルが近く、迫力と解像度を両立してくれています。
やや明るく明瞭さがあり、音の分離感も良いのでどの音も聴き取り易く、下の帯域から上まで全域良くなりますね。個人的にHM20に関してはあまりSpaceCloudと良い相性とまでは言えないのですがSeraphはかなり良い様に感じます。同じ価格帯ではJsHifiの藍魔、Yongse ExpertAgMax8もありますが、これらとも概ね互角だと感じました。Seraphはあちらより音が太めで聴き取りやすく、ボーカル好きでオールラウンドなのはSeraph、楽器で暗めなら藍魔、明るめならAgMax8だと感じました。
SIVGA LUAN 結果:A
変換コネクタを使って無理やりリケーブルしています(笑)。
やや音が近いのですが低域は深みがあり質感が良いですがアタック感は少な目です。高域の音色は澄んでおり柔らかくソフトで余韻が素晴らしいです。女性ボーカルのサ行の刺さりが低減され、高域は煌びやかさと澄んだ音色とギラギラ感の全てを攻めているバランス感覚です。
横の音場はやや広がり解像度は1段以上向上でしょうか、正直に言って値段を考えればかなり良質で、AliExpressでしか買えない点は差し引いてもかなり良いケーブルですね。かなりギリギリまで攻めた超高域をとても上品で品のある音色にしてくれる点は秀逸です。
■ライバルケーブルとの比較
NICEHCK SpaceCloud 4.4mm
標準価格ではランクが違うのですがセール時は1万円を割るので一応比較です。解像度はややSpaceCloudの方が上になりますが、大きな差はありません。ドライでソリッドな方向性ではあるので似た傾向に思われがちですが、大きな違いはSeraphは元の音の音場感をほぼ変えずに少し広げることが多い事に対し、SpaceCloudは大きく音場を広げてしまいがちでオーケストラなど音場を重視するような場合には素晴らしいのですがボーカルの近さなどを重視する場合には合わない傾向があります。
また、ややドライさとソリッドさもSpaceCloudの方が強い傾向があり、寒色寄りになりがちです。このためランクとしてはSpaceCloudの方が上のケーブルではあると思うのですが、より万人受けしやすいサウンドになるのはSeraphだと感じます。
TRIPOWIN Altea 4.4mm
Alteaは同Tripowin社の元フラグシップケーブルですね。こちらも元の音から大きな変更を加えずにアップグレードする方向性のケーブルですが、音色の傾向は別物で少しウェットで音場が広く弱ドンシャリの傾向でややドライなSeraphとは違いますますね。また上位ケーブルとしての違いとして、解像度はSeraphの方が高く、比べるとAleteaは音のスピード感遅くなりがちな傾向があります。
このため、高解像度、ドライな音色、早いサウンドが好みの場合はSeraph、逆に予算を重視する場合やゆったりした音色、ウェットな音色が好みの場合はAlteaがお勧めです。
JSHiFi 藍魔 4.4mm
価格としても直接のライバルはやはりこのJSHiFiの藍魔でしょう。藍魔は現在手元にないのでやや記憶を頼りに書くのはご容赦ください。
解像度はほぼ互角ですがほんの少し藍魔の方が良いかもしれません。使い勝手としては細さは藍魔に分があり、しなやかさではSeraphですね。音場表現としては藍魔が横に広くやや音に俯瞰性がありSpaceCloudの方向性に近いです、Seraphの方がより一般的な音場表現に近い傾向がありより無難な表現です。藍魔は中域から高域にかけての表現力が上回るのですが低域の量感が少な目で低域にかけてSeraphの表現力が上回る感覚です。よりバランスが良いのがSeraphでより個性があるのが藍魔です。両方ともに価格に見合う素晴らしいケーブルなのでどちらでも後悔は少ないかと思います。
参考に藍魔のレビューはこちらです。
音以外の要素
スペックとか
あまり興味が無いのですが、販売サイトによれば280本の銀メッキ銅線を8芯で編み込んでいるそうです。
重さ 「34.6[g]」
JS Hifi 銀月が46g、白龍が53g、NICEHCK FOURMIXが39g、KBEAR KBX4937が38gなので音質重視のケーブルとしてはSeraphはやや軽めですね。
イヤホン標準ケーブルでは、NICEHCK NX7 MK4デフォルトが23g、LETSHUOER S12デフォルトが30g、水月雨Moondrop KATOデフォルトが33g、AriaSnowデフォルトが13gです。
コネクタ 「埋込2pin 0.78mm」
ノギスでピンの太さを測ってみましたが0.78±0.01mmでした。
RLの表記は樹脂部分の色で見分けるようです。
少し角度がキツめに癖が付けてありますのでイヤホンによっては再調整が必要かもしれません。ライターなどを使って焙ることで癖を付け直せるそうですが、危険性を感じる方は素直に被覆をカッターなどで外してしまうのも手です。
プラグ
幾つかDAP等にプラグを指してみましたが接触不良なども無く挿し心地も良好でした。
根元の断線防止もしっかりしています。
導体 太さ4.35 - 3.56[mm]
線材をマクロ撮影してみました。鮮やかなブルーですね。
こちらが分岐後です。
スプリッタ&スライダ
スライダは摩擦で止まっているだけのものですが、被膜の適度な摩擦で止まる設計です。
抵抗値(直流インピーダンス「HOT0.1[Ω], COLD0.1[Ω]」)
テスタ―*1で実測したところHOT, COLD共に直流インピーダンスは0.2Ωでした。
続いてインピーダンス測定環境*2で測ってみた結果がこちらです。
今回のTripowin4本分のグラフが載っていますがSeraphの1KHzではホットコールドの往復で401mΩでした。Sireneの方が抵抗値は低いですが高域にかけて位相の変化が少ないのはSeraphで測定値的には平均的に優秀です。
Tripowin既製2本を加えた6本分のグラフはこちらです。
その他、まとめ
鮮やかすぎる青かなと思ったのですが実施に使ってみると意外と悪くないと感じます。柔らかく取り回しも良いため使い勝手の良さも光りますね。
所感
最初にこのケーブルが届いた時は派手な色で値段も高く、少し心配になりました。一聴して使ったときも分かりやすい個性が感じられず少し心配をしたのですが、色々なイヤホンと合わせてみて、素直にイヤホンの特徴を変えずに音の鮮度を伸ばしてくれるさりげなさ、解像度の高さと基礎能力の高いケーブルということを実感しました。
高級ケーブルの様な被膜やはんだに拘った様な上品さはあまり感じない音色ではありますが、標準ケーブルに使われている線材と概ね変わらない構成でより良いものを使っている事がその特徴を色濃くしてくれているのかもしれません。
尚、写真のLETSHOURE S12 PROAlteaの方がニュートラルな方向に変えてくれるので好みではありましたが、S12そのままのドライな音色を伸ばすと言う意味では良い相性でです(*'▽')。
最後に
LINSOUL様、このような機会をいただきありがとうございました。
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*1:KYORITSU KEW MATE MODEL 2000 オフセット除去
*2:
〇測定環境
ハードウェア:Apple Macbook pro 15 Late2013 BigSur11.6.4
:DIGILENT Analog Discovery 3 + Impedance Analyzer
ソフトウェア:WaveForms 3.20.1
ケーブル:MIX16 4.4mm 2pin
出力:50mV
Resister:10Ω
カプラ:IEC711クローン 刻印( IEC60318-4 Type E610A)※100〜10KHz用