こんにちは。ゆるふわのオーディオやってるすのーです。
今日はLINSOULから依頼でイヤホン用ケーブル「TRIPOWIN Mirage 2pin 3.5mm」のレビューです。提供品ではありますが、中身についてはいつも通り記載しております。
プラグは3.5mmのみ、コネクタはmmcx、埋め込み2pin、QDCが選べます
ケーブルレビューの注意
注意:ケーブルによる音の変化はオカルト的な要素を過分に含み、科学的に見れば音質の変化に対する決定的な証拠はありません。幸いながら私はイヤホンではケーブルによる音質の変化を強く感じられるのですが、個人差がありますので万人におすすめするものではありません。尚、ケーブル個別の測定の取り組みについてはこちらの記事などを参考にしていただければ幸いです。
本記事はケーブルによる音質が感じられない事を否定するものでもありませんが、それでも気になる方は読み進めるのを中断いただければ幸いです。
結論:暖かさと低音が良い、使い勝手と音質を両立したケーブル
Mirageはしなやかで柔軟性に富んだ使い勝手の良い線材に3.5mmのプラグを採用した、見た目と音質を両立したケーブルです。同価格帯の太め重めの音質重視ケーブルの比べると音質的なコスパは高くありませんが、やや暖かみのある音色に低音の質感の良さに全体的に底上げする音質バランスとキッチリと基本的な部分を押さえたケーブルです。使い勝手を維持したまま低価格イヤホンの標準ケーブルからのグレードアップができるバランスが取れたケーブルです。
また同時発売されているケーブルでは中間の価格ですが、最も無難な音質のため、カジュアルに使う事を前提としたリケーブル入門としても良いかと思います。
Pros(優秀な点)
〇 サウンドのバランスが良く低音の質感が良い
〇 ブラウンの合わせやすい色味とデザイン
〇 しなやかで柔軟性があり、細く軽いため使い勝手が良い
ー 美しいデザイン
ー TRIPOWINによるブランド力
Cons(微妙な点)
ー ややプラグの品質が気になる
ー プラグラインナップが3.5mmのみ
△ 音質重視の極太ケーブルと比べると音質的なコスパはそこまで高くは無い
△ 保証期間などが不明
音の特徴
A30Kのケーブルとして次の項目で様々なイヤホンと合わせた傾向を記載します。ケーブルは相性が強く出やすいこともあり、絶対的な指標ではないことをご留意願います。
バランス:やや低音強め
寒暖:やや暖色傾向
明度:ニュートラル
響き:ニュートラル、ややあり
余韻:ニュートラル
粘度:ややソリッド
湿度:ややドライ
厚み:やや少な目
音場 左右:一般的
音場 上下:標準的~やや広め
音場 前後:標準的~やや広め
音像高さ:標準的~やや高め
音像近さ:やや近め
解像度:一般的
解像感:一般的
分離:普通
定位:普通
高域:普通
中域:普通
低域:やや良い
イヤホンとの音の相性
環境
基本的には
M17(DC) -> Mirage-> イヤホン ->SpiralDot++
評価基準は9段階で、細かく決めてはいないのですがなんとなく以下の感じです。
S:標準ケーブルと比べて高相性かつ魅力的な音
A+
A:標準ケーブルと比べて高相性又は、良相性かつ魅力的な音
B+
B:標準ケーブルと比べても良相性又は魅力的な音、互角
C+
C:標準ケーブルと比べて魅力を引き出さない組み合わせ、又はコスパが悪い
D+
D:標準ケーブルと比べて魅力を引き出さない組み合わせかつコスパが悪い
Tanchjim ONE DSP 結果:C+
Kinera Celest PhoenixCall 結果:A
低音の力強さ、音像の高さが印象的で、音場が上下にも広がり広大な空間表現です。解像度はほぼ変わらないかやや落ち着いた感じではあるのですが、全体として音の広がりは秀逸でこの価格のケーブルでこの音色は驚きでした。
低域の音の主張が強くなるのは良いのですがやや乾いており質感が気に入るかは意見が分かれそうです。
音の分離が丁寧に表現されて、空気感も良く定位の安定感も素晴らしいです。賛否はでる変化だと感じますが、個人的に解像度が上がらない点は残念ですがそれ以外については秀逸な変化です。
7Hz SOUNS 結果:B
音像重心が近くなり下がることや、解像感が向上します。やや高域の音色が目立つようになり少し音が軽くなった印象です。音場は左右が少し狭くなるでしょうか。明るい明瞭な音ですが重心が低いため暗くもある不思議な感覚です。
解像度はやや下がってまろやかな音色になります。かなり雰囲気が変わるので賛否がある変化だと感じます。味変としては良い変化です。
CVJ Freedom 結果:A
音像がやや俯瞰性を持ち、音場も左右に広がります。やや落ち着いた暗めのふくよかな暖色傾向に変化します。
中域から低域がしっかりとする他、音色が全体に優しくなることで高域の刺々しい部分が大きく減ります。
全体で音が丁寧に表現になり、大きく空気感が変わって土台がしっかりしたような音の安定感が出ます。
賛否はでる変化だと感じますが、個人的にはかなり有りだと思わされる変化です。
TRN BA15 結果 結果:A+
音はあっさり爽やかでスピード感がある音色になり、音像定位はやや上方になります。低音のキレが良くややドンシャリ傾向の音色になったと感じます。解像度、解像感が高くBA15の良さを引き出しつつより堅実な音色にしてくれている感覚があります。
縦と前後の音像も広めでボーカルも適度な距離感があり、価格を考えればかなり良いと感じます。
SeeAudio Rinko 結果:B+
音像の定位はやや上方で低音のアタックが印象的な音色です。RinkoのBassheadっぷりが好きな方には低音のパワフルさを感じつつ全体の音の音色を整えてくれる感じでしょうか。縦と前後の音像も広めでやや俯瞰性があるのですがボーカルは遠く低音は近いなどややチグハグな感じがします。
音はマイルドでややドライさをもち解像度も高いです。悪くない相性ですが良い相性でも無い様に感じます。
CCA HM20 結果:A+
音像の定位はやや上方に移動します。横の音像が広めでやや俯瞰性がある適度な距離感が魅力です。音はマイルドで解像度もSireneより若干高く、細部の描写が細かいです。やや暖色な傾向があることでHM20全体としてはニュートラル傾向の音色になる点も魅力です。
Sireneも良い相性だと思ったのですが、こちらの方がHM20の解像度をより引き出しており、更に良い相性だと感じます。
SIVGA LUAN 結果:A
変換コネクタを使って無理やりリケーブルしています(笑)。
音像がやや上方に定位し、音場が左右に広がり一歩引くような俯瞰性がでます。もともとほんの少し近めだったこともあり丁度良い感じでしょうか。低音も高音もしっかり出ているのですがやや落ち着いた印象の音色です。少しだけ暗くやや暖色傾向に変化するでしょうか。
中域から低域がしっかりとする他、音色が全体に優しくなることで高域の刺々しい部分が大きく減ります。音が丁寧で大きく空気感が変わって土台がしっかりしたような安定感が出ます。
こちらも直接変更することはできませんが個人的にはかなり有りだと思わされる変化です。
■ライバルケーブルとの比較
TRIPOWIN Altea 4.4mm
Alteaは同Tripowin社の元フラグシップケーブルですね。元の音から大きな変更を加えずにアップグレードする方向性のケーブルです。
少しウェットで音場が広く、弱ドンシャリの傾向で、解像度はAleteaの方が高いです。ただ組み合わせによっては音のスピード感遅くなりがちなため万能というわけではありません。
音質に対するコストパフォーマンス、4.4mmnバランスが欲しい場合はAlteaの方がオススメですが、予算や見た目を重視する場合はMirageも選択肢に入ります。
TRIPOWIN Sirene
同時に発売された同価格帯の残り2本のケーブルですね。
Sireneが勝る点はコスト、全体の音のバランス感、音の明るさや暗さなど全体の雰囲気を大きく変えない点で、派手ではありますが綺麗な線材も魅力です。
Mirageが勝る点は低音の強さ、解像度の高さ、やや暖色傾向な点です。また、線材の色が落ち着いており様々なイヤホンに合わせやすいのもこちらかと思います。
TRIPOWIN Solstice
同時に発売された同価格帯の残り2本のケーブルの最後の1つですね。
Mirageが勝る点はコスト、音の空気感の暖かさ、前後の音場、そして低音の深さとパワフルさでしょう。
Solsticeが勝る点は中域と高音の量感と解像感の強さ、解像度の高さ、やや解像感が高いハキハキした音色な点です。また、線材の色がシルバーと一般的なので様々なイヤホンに合わせやすいのもこちらかと思います。
音以外の要素
スペックとか
あまり興味が無いのですが、販売サイトによれば
TRIPOWINシリーズMirageは、日系オーディオケーブル専業メーカーと共同開発の導体を4芯Braid(編み)構造にしたアップグレードケーブルシリーズです。線材の中心に低域用OCC、外周に高域用OCC(高純度単結晶銅)を配置し、深い中低域と自然な広域を実現したOCCプラグ採用ケーブルです。抵抗値の低いOCCをプラグに使用することで、接続部が音質に与える影響を小くにとどめ、音を耳まで届けます。
とのことでどうやら日本のオーディオメーカーも一役噛んでいるような線材のようです。聴き込んだ後にこのコメントは書いているのですが全く感じませんでした。
重さ 「19.5[g]」
JS Hifi 銀月が46g、白龍が53g、NICEHCK FOURMIXが39g、KBEAR KBX4937が38gなので音質重視のケーブルとしてはMirageはやや軽めですね。
イヤホン標準ケーブルでは、NICEHCK NX7 MK4デフォルトが23g、LETSHUOER S12デフォルトが30g、水月雨Moondrop KATOデフォルトが33g、AriaSnowデフォルトが13gです。
コネクタ 「埋込2pin 0.78mm」
ノギスでピンの太さを測ってみましたが0.77±0.01mmでした。
RLの表記は埋め込み樹脂部分の赤Rと青Lの点で見分けるようで、RL表記はありません。
少し角度がキツめに癖が付けてありますのでイヤホンによっては再調整が必要かもしれません。ライターなどを使って焙ることで癖を付け直せるそうですが、危険性を感じる方で器用な方は素直に被覆をカッターなどで外してしまうのも手です。
プラグ「3.5mm3極」*3.5mmのみ
幾つかDAP等にプラグを指してみましたが挿し心地も良好でした。
品質に不安があるまでは言いませんが、DAPなどによっては「ザザっ」とノイズが入ることがあり、やや接触不良の様な挙動があったのは残念です。その場合は抜いてウェットティッシュやティッシュなどで表面をふき取るとやや改善しました。
プラグの根元も断線しにくい様に加工してあります。
根元の断線防止もしっかりしています。
導体 太さ 3.23- 2.58[mm]
線材をマクロ撮影してみました。落ち着いたダークブラウンですね。
こちらが分岐後です。
手触りは一番ペタペタとしたタイプです。ただ比較してなので実用上は適度な摩擦があるだけで使い勝手的には一番癖が付きにくい感じで使用感はほぼ互角です。
スプリッタ&スライダ
スライダは摩擦で止まっているだけのものですが、被膜の適度な摩擦で止まる設計です。
抵抗値(直流インピーダンス「HOT0.4[Ω], COLD0.4[Ω]」)
テスタ―*1で実測したところHOT, COLD共に直流インピーダンスは0.4Ωでした。
続いてインピーダンス測定環境*2で測ってみた結果がこちらです。
今回のTripowin4本分のグラフが載っていますがMirageの1KHzではホットコールドの往復で869mΩでした。KYORITSUのテスタで測った時は抵抗値が大きく驚いたのですがインピーダンスアナライザでもほぼ同じ値が出ていており、測定値の正しさの確度が上がったことと抵抗値の高さに驚きました。
一方で高周波に行くほどに出る位相の変化の影響はJellyに次いで少ないですね。
Tripowin既製2本を加えた6本分のグラフはこちらです。
その他、まとめ
解像度的には特にそこまでの影響は感じませんが、測定上は一番高い抵抗値という不思議です。
所感
Sireneでも言いましたが、概ね同価格帯の同クラスケーブルなので聴き比べる前は色とデザインで選べばよいぐらいかと思ったのですが、色々と使ってみて音のキャラクターは意外と異なりました。測定値も想像以上に異なり、中々に良い経験になっています。
音質評価的には今の時代4.4mmはラインナップに欲しいなと思った次第ですが、使い勝手を重視したカジュアル用途を見据えているのはよくわかり、3.5mmに絞ったと言う点は一貫性は感じます。個人的にSireneはやはり見た目重視がやや強めでしたが、Mirageはより音質と使い勝手のバランスが良いケーブルになっていると感じます。
最後に
LINSOUL様、このような機会をいただきありがとうございました。
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*1:KYORITSU KEW MATE MODEL 2000 オフセット除去
*2:
〇測定環境
ハードウェア:Apple Macbook pro 15 Late2013 BigSur11.6.4
:DIGILENT Analog Discovery 3 + Impedance Analyzer
ソフトウェア:WaveForms 3.20.1
ケーブル:MIX16 4.4mm 2pin
出力:50mV
Resister:10Ω
カプラ:IEC711クローン 刻印( IEC60318-4 Type E610A)※100〜10KHz用