こんにちは
今日は表題の通り、マイクロプラナードライバ(Micro Planar Driver)の鳴らしづらさについてちょっと測定で少し判ったことがあったのでその雑記です。
平面駆動ドライバ(Planar Driver)とは
自分もこの分野に明るい訳ではないのですが、簡単に説明するとダイナミックドライバの親戚みたいなものです。ちょっと小難しい話なので嫌いな人は次の項目に行ってください(笑)。
ダイナミックドライバは構造が簡単なこともあり製造が安いのですが、見た目の振動版の形状が平面ではないので音が均一に出ないという特徴があります。
耳の中の音波のイメージとしては風呂に張ったお湯です。イヤホンはこの波面を波立たせて音を伝えます。この時に、下敷きとかまな板みないな平面に近い物体で前後に動かして波を作ると平面に広がる波ができると思いますが、一般的なダイナミックドライバのような凹凸がある柄杓や、しゃもじのような物体で波を作っても、不均一かつ球体状に波が広がってしまい、綺麗な波は作りずらいかと思います。
んで、平面駆動ドライバはどうやって平面にするのを実現しているかというと、ダイナミックドライバの後ろ側にあるコイルを、平面に作られた膜の中にしまい込んで、コイルの中にあった磁石を平面の膜の前後に配置するという感じです。つまり磁石とコイルの関係を横に展開した構造で、原理はほぼ同じです。
画像はS12の平面ドライバの構造イメージ
じゃあ平面駆動ドライバは全部同じかと言われると、ダイナミックドライバにも磁石がどうのやら、コーティングがどうの、と様々な種類があるように、プラナードライバにも種類があります。
さらに平面駆動ドライバは全てがダイナミック形より優れているわけではなく、プラナーならではの欠点もあるので(今回は割愛)その欠点をどう補うかや、音質に影響を与えずに如何に製造にかかるコストを下げるかなど、各社がしのぎを削っている分野でもあります。
マイクロプラナードライバ(Micro Planar Driver)とは
中でも今回取り上げるマイクロプラナードライバはSeeAudio Rinkoの記事でも取り上げた低コスト版のプラナードライバで、QDC FORK等にも使われている特許技術と言われています。最近の採用ではKinera Celest PhoenixCallなどでも2発採用されており、素晴らしい音色に驚きました。
このマイクロプラナーってじゃあ普通の平面駆動となにが 違うのというと下記画像の通り平面に展開されているボイスコイルがとても小さい円形状のものになっています。
HifiGoのRinkoの説明画像より
先ほどのS12などに採用されている画像と比べると平面に張り巡らされた配線の量が異なりますね。
また、画像から右側にダイナミックドライバがありますが、その中に磁石が入っている構造があり、左側のマイクロプラナーと違うこともわかります。
おそらくですが、小さいドライバユニットだったらこれぐらいの平面行動電極で十分という事という思想が伺えます。
そして、今回、PhoenixCall、Rinkoとこのタイプのマイクロプラナー平面振動版のイヤホン2つを使い込んでレビューしてみたところ、奇しくも両方共に上流の機材で音色が大きく変化するという特徴があり、その上でPhoenixCallのインピーダンス特性が高音に行くに従い大きく下がるという個性的な特徴がありました。
ということで、他の平面駆動イヤホンとも比べてどんなインピーダンス特性なのかを調べた記事です。
他の平面駆動型
ちなみにAK のZEROシリーズ、MADOOのTYP512、TYP821等もマイクロプラナーと日本名が付いていますが、これらは英語では「Micro SquarePlanar Magnetic」と表記されており、写真構造を見ても別物です。
MADOO公式サイトより
こちらはAKの公式サイトより
S12などの画像では省略されていますが、平面駆動タイプが如何に構成するパーツが多いかが良くわかります。(つまり製造コストが高いという話でもあります💦。)
インピーダンス特性の比較
変態同士の比較、PhoenixCall vs Bridge
まずはPhoenixCallと同じA20KクラスでTier1を付け、更に2DD2BA1PZTというほぼ変態構成のBridgeとの比較です。↓レビューはこちら
つまり、同じ様な変態構成なのにBRIDGEは聴感上アンプに大きく依存しないと感じた。けれども、インピーダンス特性についてはどうだったのかを調べてみる感じです。スイッチによってグラフが異なりますが結果はこちら。
えーっと、水色がPhoenixCall、それ以外の4本がSW変更によるBridgeのグラフです。方向性として高域になるほどインピーダンスが下がる傾向は同じですね。位相特性についても高域になるほど遅れいき、最後には少し進む方向に行く傾向も同じです。ただ、その量はSWにもよりますが、悪条件でもBridgeの方が2倍変動が小さく、良条件ならば普通のイヤホンより少ないぐらいの変動です。
また、位相、インピーダンス共に一番わかりやすい1KHz付近から大きく変動しており、聴感に影響が大きい部分です。
結論から言えばBridgeはインピーダンス的にはまともであり、PhoenixCallはやはり変動が大きいです。
尚、大事な補足ですが、インピーダンス変動はあったとしてもしっかりしたアンプであれば出る音にほぼ影響はありません。
マイクロプラナー同士の比較、PhoenixCall vs Rinko
Rinkoのレビュー記事は上記に貼っているので省略しますが、Rinkoも同じマイクロプラナーを搭載したハイブリットイヤホンです。んで、早速結果です。
水色がPhoenixCall、緑がRinkoです。
。。。
・・・・・・・似てね???w
というよりRinkoもインピーダンスが下がり過ぎですよねこれ?w10KHz以上の高域10Ωぐらいしかありませんよ???w。
1KHzが30Ω近くあるので可聴域内で3倍以上インピーダンスの差があります。
なるほどなーっと思います。
ちなみに位相についてもは4KHzが谷になっており、超高域に行くにつれて0度に戻ってきます。
他方式の平面駆動と比較、PhoenixCall vs S12 Pro vs Pandamon vs KZ PR1 Pro
S12ProはA20Kの平面駆動ドライバの雄とも言える存在で以前S12を測って平面駆動ヘッドホンと同じように一直線のインピーダンス特性に惚れ惚れしたのですが、S12Proは測っていなかったので準備してみました。レビューはこちらです。
Pandamonはスクウェアプラナードライバ型と言われているもので「今まで平面駆動型はダイナミックドライバみたいに円形に製造してきたけど、プラナーとして動かすなら四角形の形状に振動版を作っても音に影響が無いのでは?むしろその方が一緒に沢山作れるので安くできる」という思想で作られた平面駆動ドライバです。レビューはこちら
最後はKZ代表です。個人的に音は平面っぽいけど「本当にお前は平面なの?」という疑問があり、とりあえず手元にあったPR1 Proを選びました。今はPR2の方が絶対にオススメですで、レビューはこちら。
んで、結果です。
えー、本物(語弊がありますねw)の平面ドライバってやっパり可聴域のインピーダンス特性フラットなんですね。。。💦
そしてKZさん、お前はこの値段で本物の平面駆動ドライバを使ってたのね、ロッド変更を勝手にやるけどやっぱり刺さるとコスパ凄い。
PANDAMONさんは4KHzあたりからやや位相特性が変化して進んでいることがわかります。やはりこういうところで四角形状にした影響が出ているのでしょうか?いずれにしてもプラナーだからと言ってインピーダンスが一直線になるというわけではないことがわかります。
まとめ
PhoenixCall Rinko マイクロプラナードライバ(Micro Planar Driver)のインピーダンス特性をその他のイヤホンと比較しながら測定してみました。
結果としてマイクロプラナー単体のイヤホンが今のところ存在しないので何とも言えない部分はあるのですが、少なくともハイブリッドで搭載しているこの2機種は高域になるにつれてインピーダンスが大きく下がり、最大4倍程度の差があります。
これは、他の一般的なイヤホンよりも「記載通りの周波数特性になってない可能性が高い」ということを示唆しています。例えば中域、高域のインピーダンスが低いことで中域と高域が電流不足になったり、音が歪んで汚い音になってしまったり、アンプやケーブルの出力インピーダンスが高いことで分圧されて音の帯域バランスが低音寄りになる等が考えられます。
また、RinkoではSOUND TIGER CONCERTOとの相性が良かったことを覚えていますが、これぐらいしっかりしたアンプが必要なのだと思います。
ということでRINKOやPhoenix Callは是非アンプを変えたりして遊びたいイヤホンですね。丁度今日は出先で家に忘れてしまって今は試せないのですがAiyima H2やDAWN PROぐらいの値段でも良いのでアンプを挟むとガラリと印象が変わったりします。
こちらは、Aiyimaなのでやや上級者向けです・・・
個人的にはこうやって音が変わる喜びを知ることがオーディオの趣味の楽しみの一つなのでぜひもし、これらの2機種を持っていてイマイチだなと思ったりしていたら、ぜひ上流を変えてみると良いかもしれません。きっと楽しい世界が待っています。
というところで、今日はこのあたりにしたいと思います。ではまた明日~。
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